―――それはまるで、花弁のように
白い雪を緋く、紅く、染め上げた―――
・・・僕は・・・
・・・僕は 何故ここに居るんだろう・・・
・・・僕は 何処で失くしたんだろう・・・
・・・僕は 何を探しているんだろう・・・
・・・僕は どうして死んだんだろう・・・
・・・僕は 一体誰なんだろう・・・
「ってワケで。」
七七七町に在る変わった―未だ名前がない―骨董品屋の店主、藤井・敦耶(ふじい・あつや)はいつものように口を開いた。
「今日の依頼は、七七七町駅構内に出るって言う男子学生の幽霊―――仮に幽太くん(仮名)としよう。その彼をどうにかして欲しいって事らしい。」
…おいおい、もう少しまともな名前にしてやれよ。仮にしても余りにも余りじゃないか?
そんな視線に気付いているのかいないのか。彼はそのまま何事もなかったように言葉を続ける。
「どうにかってのもなんだけどなー。ま、駅としてはそんなのが実際に居るのは勿論の事、噂が立つだけでも困るからって事で、退治出来るならそうして欲しいし、よそへやれるならそれでも良いってさ。」
最初は酔っ払いの戯言や、よくある噂だと聞き流していたが、その後も目撃証言が出て来て駅としてもこのまま放置する事は出来なくなり依頼に至ったらしい。
しかし、よそへとは…それもどうかと思うのだが。
だが、一般人からしてみれば彼らの様な存在に対して何が出来るかなど解る筈もなく、まさに「どうにか」して貰えればそれで良いのだろう。
「さて、で――――どする?」
・・・僕は・・・
・・・僕は 全て忘れてしまった・・・
**************************************************
■内容■
依頼:七七七町駅構内に出ると言う、男子学生の霊をどうにかして下さい。
備考:証言から得られた対象の情報
・出現したのはここ最近(約二週間前)、平日の夜8時以降〜大体終電までの間に出没する。(時折は見間違いと思われているのか報告がない)
・六道高校の制服、その上にさらにダッフルコートを着用。
・駅構内で探し物をしているらしい。
一応秘密裏に。ただ駅長自体は依頼者であり話は通っているので多少の融通は利きます。
募集人数:1〜4人
報告書の構成:モノクロ(一部カラー)
■任意取得情報■
六道高校を調査すると5年前の卒業(予定)生だった事が解り、当時の担任だった教師に話を聞けます。
内容は「彼は進路に酷く悩んでいてよく相談された。大学の試験を受け、その結果を見に行った帰りに駅前で交通事故に遭い、そのままこの世界に別れを告げた。合否に関わらず、第一に報告してくれると約束していたのだが結局その約束は果たされないままとなってしまった。」
|
|