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■はちゃめちゃ? 隠し芸■
なにわのみやこ
【0284】【森杜・彩】【一般人】
「ふふふ。ついに完成じゃ」
 押し殺した声で、妖しげな言葉を発した初老の男の後ろから、若い女性があきれた声を出す。
「博士。また、何かくだらないものを開発されたのですか」
「くだらないとは何じゃ! これこそ人類の夢じゃ!」
 じゃじゃーん! と、助手に博士と呼ばれた男は、効果音つきでフラスコを高々と差し上げた。
「これさえ飲めば、あなたもエスパー! どんな超能力も望みのままじゃ!」
「本当に効くんですか?」
 助手の疑わしげな視線など、まるで気にかけずに博士は胸を張る。
「効く! ただし、1回きりじゃが」
「それじゃ、意味がないじゃないですか」
 チッチッチッ。博士は指を振る。そんなキャラじゃないのにと言いたげな、助手の冷たい視線は、やっぱり全く気にかけない。
「その1回で人生が変わるかもしれんし、命拾いするかもしれんぞ。1回だけ超能力が使えたらやってみたい野望なんぞも、あるかもしれんじゃないか」
「そうでしょうかねえ」
 助手は、まだ納得がいかない顔だったが、博士は自信満々に頷いた。
「そうじゃ。じゃが、実際に使ってみんと、どんな物か分からんじゃろう。それを、これから調べるのじゃ」
「調べるって‥‥そんな妖しげな実験に協力する人なんて、そうそういませんよ」
「実験と思わせなければ良いじゃろ。進んで参加したくなるようにするのじゃ!」
 びしぃ! と、博士は指をさす。別にどこを指すかはどうでも良く、ただそんなポーズを取りたかったようだ。
「隠し芸大会じゃ!」
「は?」
 つまり、一度だけ超能力を使えるなら、どんな技を披露できるか、競い合おうというのだ。
「笑わせるもよし、感動させるもよし。とにかく、より大きな驚きを生み出した者がチャンピオンじゃ」
 もし超能力が使えたならという、日頃の希望を活かすなり、普段の宴会芸をパワーアップするなり、そこは出演者次第となる。
「後で参加者の感想を集めてレポートにまとめれば、わしの目的は達せられる」
「博士はよくても、参加者の人はどうなのでしょう。賞金が出る訳でもないのでしょう?」
「現金なやつじゃな、君は」
 博士はちろりと助手を見た。
「そんなものは、宴会の口実じゃ。皆で楽しく騒ぐ。それ以外に、隠し芸大会の意味があるかね。まあ、どうしてもと言うなら、賞品を用意しても良いが」
「その超能力薬を1年分とか、言うのではないですよね」
 ちろりと見返されて、博士は急に咳き込んだ。
「ともかく、皆で愉快に芸を競い合えば良いのじゃ。すぐに皆に知らせるのじゃ」

■コメント■
 使用できる超能力は、1種類1回きり。アナザーレポートのHPに超能力一覧のページがありますので、その中から選んで下さい。
 アドレスはこちらです。(頭にhをつけて下さい)

ttp://www.jportal.net/psycho_omc/data_main06.html

 元からエスパーの人も、普段使えない力を含めて1種類1回のみで参加して下さい。
 募集期間は10日程度を予定しています。詳しい期日はクリエイターズショップにてお知らせします。

■はちゃめちゃ? 隠し芸■

 兄に命じられて会場に到着すると、早速彩は準備にとりかかった。
「これは、こちらでよろしいのでしょうか」
 料理や配膳を手際よく整え、一息ついた所で出掛けに渡された手紙を開く。
(お兄様からのお文‥‥一体何でしょう)
 読み進むにつれ、ほんのり赤く染まった頬は、次第に青く変わっていく。
「お兄様‥‥私に一体何をせよとおっしゃるのですか」
 一緒に渡された包みを改めると、こちらはカメラだった。
「これに、皆様のお姿を収めるのですわね」
 そちらは良い。問題は。
 指令書を、再度すみずみまで詳しく読み直す。何度読んでも、どう読んでみても、あれをせよという内容だ。
「お兄様‥‥とっても『まにあっく』ですわ」
 年頃の娘に何をさせるのかと、るると泣いてみても、相手はここにいない。たとえ居ても、指令は変わらなかっただろうけれど。
「でも‥‥お兄様がそこまで楽しみになさっているのなら」
 健気に涙を振り払い、彩は衣装の仕込を始めるのだった。

 隠し芸大会の最初に、主催者の助手は審査員席をすちゃっと指した。
「ウィルフレッド・ベイトン氏とゼラフィナ・イブリス女史が審査員を務めて下さいまーす」
 ぱちぱちぱちぱち。
「では、早速ですが1番手。森杜・彩(もりと・あや)さん、お願いしまーす」
 舞台の袖からしずしずと、清楚な少女が進み出た。
「ベイトン卿、あの衣服は巫女装束というものですわね?」
「そうです。本来は東洋で神に仕える女性が着用するものです。しかし、最近はファッションの1つとして、各地に出回っていますな」
 なんと、ステージ衣装での登場だ。相当な気合を感じさせる。その割には、恥ずかしそうに顔を伏せたまま、彩は中央で一礼した。
 腰まで届く淡い銀色の髪が、さらさらと流れ落ちる。一呼吸置いて、すうっと息を吸い込むと、両手を合わせて目を閉じ、天を仰いだ。
「「「おおおーっ」」」
 ゆっくりと猫化していく彩の姿に、どよめきが起こった。
「これは、どの力でしょう」
「いや、プロフィールによれば、これは超能力ではありません。生来、彼女が持つ獣化の特殊能力です」
 体型もほぼ人間のまま、巫女装束を纏った猫娘は、ぱちぱちと銀色の瞳をまたたいた。
 そのままゆっくりとしゃがみ込み、いわゆるヤンキー座りの姿勢で片手を地に付き、もう片手を肘と手首を曲げて目の高さまで上げた。手を挙げる途中に巫女服の一部をそっと叩くと、きらきら眩い光が飛び散る。
「これが、お題の置き物ですか。『金の招き猫』となっていますわね」
 ゼラフィナは、事前の申請内容に目を走らせた。
「東洋で福を招く縁起物ですな。演目の立案者は、かなり東洋に造詣が深い人なのでしょう」
 一部のマニアな人達には受けている。そうでない人からも、ポーズが面白いのでそれなりに笑いを取っている。
「条件の「超能力1つ」は、体皮硬化で使用。衣服は、光学変化と通電硬化の技術を使用しています。この衣装は戦闘強化服で、そちらの機能を付加してあるようですな」
 ウィルフレッドが解説する間に、助手がステージに出てきた。
「どの位、置き物になっているか確かめてみましょう。うわ、ホントに硬いですねー。肉球もぷにぷにしませんよ」
 腕を叩くと、コンコン硬い音がする。猫なら反射的に反応する耳付近に指先を近づけても、反応しない。
「ちょっとくすぐってみようと思いますが、猫のくすぐりポイントが分からないので、咽触ってみまーす」
 返事がない。ただの置き物のようだ。
「彼女は普通の猫にもなれる所を、敢えて巫女装束の猫娘を選んだ点が、ポイントでしょう」
 再び人の姿に戻った彩は、茹で蛸状態だった。素早く一礼すると、脱兎の如く袖に駆け込んだ。
「猫娘を選んだ点がポイントって、やはりまにあっくな方が良かったという事なのでしょうか」
 まだ、動機が激しい胸を押さえながら彩はぽつりと呟いた。
 単に、人が演じている雰囲気が残って良いという程度だろうが、あの時の自分の格好を思いだすと、恥ずかしさで再び顔が火照る。
「もうお嫁に行けない」な心境だったりするが、遠い空を見つめて彩は再び呟いた。
「お兄様。私、がんばりましたわ」

「それでは、2番手。アリーチェ・ニノンさんでーす」
 替わって、天パの赤毛をショートボブにした女性が歩み出た。こほんと軽く咳払いを一つ。
「加齢、停止ーッ!」
 ぼぅん。もくもくもく。
 炸裂した煙球とドライアイスが、アリーチェの姿を隠す。やがて拡散した煙幕の中からは、なんと!
「傍目に変わりは無いのだが?」
 ウィルフレッドから容赦の無いつっこみが入る。
「‥‥意外に‥‥可愛い事を気になさってたのですね」
 とは、ゼラフィナの弁だ。ごく僅か苦笑が混じったような、微笑ましいような、なんとも言えない顔でウィルフレッドと目を見交わす。
「ああ、成る程。この方はさ‥‥」
 スパーン! どこからともなくスリッパが助手を直撃した。
「1日しか持たなくはないのかね」
 構わずにウィルフレッドは博士に問うた。
「いや、1回きりじゃが、効果は通常通り。持続型の力は、大会後も有効じゃ」
 急に何かに思い至ったのか、博士の目が輝き出した。
「永遠に若く美しく。それは全ての乙女の夢! 是非、今後も継続してモニターをもごまがもぐ」
 復活した助手は博士を取り押さえ、引き攣った笑みを浮かべた。
「えー、若返りの力なら分かり易かったのですが、残念ながらそういった力はありませんし。来年の隠し芸大会で結果が分かるでしょうか。では、3番手、シオン・レ・ハイさん、ナイフ投げの準備をお願いしまーす」
 続いて現れたセクシーダイナマイツボディーな女性は、まっすぐ客席に降りてきた。
 博士の前でやや屈み込み、にっこり笑って手を差し伸べる。おおっと、博士の視線はボリュームたっぷりな胸の谷間に釘付けだ。
 これでは、何を頼まれても断れないだろう。そのままでれっと立ち上がり、足取りも軽く舞台に向かう‥‥おや?
 すざざざざざっ。博士の周りから、急激に人が引いた。逃げ遅れた博士は、涙目で半ば無理矢理、舞台に連行されている。
 博士の頭上にりんごがセットされる間、場繋ぎにシオンは躍っていた。ダンスは、素人芸としては、まあまあだ。更に、シオンはダンスに合わせて歌い出した。
 その瞬間、人々は博士が涙目になった理由を知った。
「こ、この声は」
 思いっきり、正真証明おっさんである。
 審査員の二人も虚を突かれたが、すぐに冷静に解説を始めた。
「女装で、自分が女性と思わせて男の声で話しかける。瞬間芸としては古典的ですけれど、光偏向を使うと完璧に化けられますわね」
 元がどんなにいかつい男性でも。露出度ばっちりな際どいドレスであろうと、危ない水着であろうとノープロブレムだ。
「2回にカウントされなければ本番のナイフ投げでも光偏向を使用との事でしたが、これは2回カウントになります」
「という事は」
 ヒュンッ! ドスッ! 博士の顔の横20センチに、ナイフは一直線に飛んでいった。
 ここで光偏向を使っていれば、ピストル型に構えた指先からバきゅ〜んっ! と光の刃が飛んでいた。どんな軌跡も自由自在に、魅惑と幻想の光のイリュージョン状態になっていた筈だ。しかし。
 ダン!
 素でナイフ投げになっている。しかも、躍りながら。
「当たったら、ごめんなさ〜い」
 野太い声で、語尾にはぁとマークをつけられてもちっとも可愛くない。
「治療班が控えていますから、即死しなければおっけーでーす。存分にやっちゃって下さーい」
 バキッ! ボコッ! プス。
 5射目でナイフはりんごを刺した。博士、ダウン。
「光のナイフ投げでも、見応えがある余興になりそうですわね。今回は、お笑いを優先されたようですけれど」
 と、その時。客席から一人の青年がふるふると立ち上がった。
「シオンに、あ、あんな趣味があったなんて」
「キウィ!? 何故ここに?」
 客席の隅に戻り、何故かがっくりと憔悴していたシオンは、うろたえた。
「こんな恥ずかしい思い、もう耐えられない」
 いい年をした青年がぼろぼろ泣いているのもかなり妙な雰囲気だが、見様によってはまだ少年のようにも見える。小道具の兎もちゃっかり抱きしめていたが、涙を拭う振りをして地面に下ろした。
「もうシオンとなんて一緒にいたくない! 死んでやる〜!!」
「待て! 誤解だ、待ってくれ」
 両サイドに細く編んで垂らした白い髪を跳ね上げて、キウィ・シラトは窓に向かって駆け出した。
 どぼーん!
「うわああああああっ! キウィーっ!」
 全速力で表に出て行くシオン。会場内もざわつき始めたが、助手は陽気に声を張り上げた。
「キウィさんの隠し芸はマジックでーす。池に落ちたキウィさんが、あら不思議! どこからか現れる筈でーす」
 でろでろでろでろ、じゃん!
 スポットライトを浴びた一角に、ひっそりと置かれていた箱が開く。優雅に投げキッスを送るのは、確かにキウィだ。
「マジックと言えるのでしょうか? テレポートすれば簡単ではありませんの」
「そうとも言い切れないのですよ。よく誤解されますが、テレポートは着地点が見えていなければなりません。肉眼で見えているか、さもなくば透視や映像送信を併用しなければならないのです」
 ウィルフレッドは一旦言葉を切る。
「彼が窓から出て行くまで、箱の中は見えていない。超能力の使用は1回きりですから、いつ、どのようにテレポートを試みたかで、立派にマジックと言えます。無論、マジックですから仕掛けはありますが、そこまでここで話すのは野暮でしょう」
 写真を撮る者、盛大な拍手で場を盛り上げる者。皆の協力で、隠し芸大会は盛会の内に幕を閉じた。
 因みに、博士の当初の目的が達せられたかというと。
「ナイフ投げの的になった時、死ぬかと思った。あれほど切実に、一度だけで良いから超能力を使えたらと思った事はない」
 と、当人のコメントが残されている。
「お兄様、褒めて下さるかしら」
 写真の束を抱え、胸をときめかせながら彩は岐路についた。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0284 / 森杜・彩 / 女性 / 18歳 / 一般人】
【0347 / キウィ・シラト / 男性 / 24歳 / 連邦アイアンメイデン】
【0375 / シオン・レ・ハイ / 男性 / 46歳 / オールサイバー】
【0395 / アリーチェ・ニノン / 女性 / 35歳 / 医療スタッフ】
【0415 / ウィルフレッド・ベイトン / 男性 / 43歳 / 医療スタッフ】
【0419 / ゼラフィナ・イブリス / 女性 / 32歳 / 連邦参謀】


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■         ライター通信          ■
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>彩さん
 ご発注いただき、ありがとうございました。
 お兄様‥‥謎な人です。