■約束は虹の彼方に 第一話■
南京 武
【2470】【サクリファイス】【狂騎士】


――あの虹をこえたら…

彼女はひとつ、ため息を落とした。
その指に輝く指輪をみては、また青いばかりの空を見上げる。
そこにかかる七色の天弓。それは今にも雲を飲み込みそうなほどに高い。
「あの虹をこえたら、あの人に逢えるような気がするの。」
彼女はリノを振り返る。リノはきょとりと彼女をみつめかえした。
彼女は笑っていた。だがそうは見えないあまりにも悲しい瞳。
『会いたいの?』
無邪気なリノの問いに、彼女はひとつうなずいた。
『じゃあ、リノが探してきてあげる!』
今にも飛び出して行こうとする子供を、彼女は優しく抱きとめる。
「ありがとう、リノ。でもいいのよ。もう…いいの。」
涙をにじませながら、彼女はきつくリノを抱いた。
『リノがね、きっと探してきてあげるの。ね?』
その言葉に、彼女はただうなずいた。

それから長い年月がすぎたような気がする。
それでもリノはあの日の約束を忘れない。
引き離された最愛の人。
逢いたいと泣いた彼女のために

   リノはひとり旅にでた――…



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