■【楼蘭】チャーシューたずねて山海峡■
橘真斗
【0811】【イルディライ】【”料理人”】
「な、な、なんでアルかぁぁぁ!?」

 ここは桜蘭の朱雀大路沿いにある中華料理店『大熊猫飯店』の厨房から甲高い悲鳴が聞こえた。
「聾蛭(ロウシツ)の肉がこないってどういうことアルか!! あれは、ここのラーメンの売りアルよ!! これから昼定食の仕込みに入らないといけないというのにぃぃぃぃ!?」
 うがぁぁぁと整えられたお団子頭をぐしゃぐしゃにして、中国女性は悶えた。手に包丁を持っていることすら忘れるほど混乱しているようだった。食材輸送にきたおじさんはどうしたらいいのか困っている。

 さて、この中国女性。名は「焼く煌き」とかいて「焼・煌(チャオ・ファン)」炒飯(チャーハン)ではない。年齢は18を越えてからはカウントしていないちょっと変わった女性だ。現在の年齢は不明。知ったものは料理にされるという噂もある『大熊猫飯店』の厨房長だ。蒼黎帝国で王から『突級厨師』の称号を得ている凄腕料理人なのである。

「オジサン!! 昼前までにロウシツ狩ってこれる人集めてきて欲しいアルね。お礼はウチが最高のラーメンをごちそうするアルよ」
 包丁を突きつけてウィンクするチャオ。食材を届けにきたおじさんは一目散に逃げて人を集めに行くのだった…。


 

 
 
【桜蘭】チャーシューたずねて山海峡

一人的女人在被稱作為樓欄的街
(楼蘭と呼ばれる街に一人の女がいる)
不可那個女人,豪爽地附有餌給予
(その女、豪快につき餌与えるべからず)
雖然,那個女人製作的飯菜是絶品、也不輸給誰
(されど、その女の作る料理は絶品であり、誰にも負けない)
那個女人的名、叫燒・煌
(その女の名、焼・煌という)

≪起≫
 食料調達のおじさんが連れてきたのは二人だった。一人は背の高い美青年で、一人は厳つい顔をした細腕の剣士のような男だった。
それもそのはず、桜蘭の山海峡といえば『生きて帰ってこられるのはごくわずか』
といわれる樹海のひとつなのだ。その上、お墨付き出なければ入れない秘境でもある。
「オジサン、二人ってどーゆーことアルか」
 じとっとした目で見つめ、包丁を光らせるチャオ。
「りょ、量より質ってことで!!  毎度!!」
 命の危機を感じたのか、オジサンは一目散に逃げていった。
 その姿を見て、ため息一つ。包丁をクルクル回してまな板の上に置くと、二人に向き合った。
「ウチの名前はチャオ・ファンアルね、よろしく頼むヨ」
「山本健一です」
「…イルディライだ」
 挨拶を終え、簡単な質疑応答が始まった。口火を切ったのはイルディライだ。
「ロウシツというのは、こういう動物か?」
 すらすらと筆を動かし、この話を持ちかけてきた男の話を思い出しつつ絵を書く。中々上手だ。
「イルディライさんお上手ですね」
「ああ、それじゃないけど、近いアルヨ〜」
「昔、狩りのときに取り逃がしたのだが…こいつに近いか……それなら罠の準備はできる」
「それじゃあ、準備ができ次第いきましょうか。現場に行ったら、僕が精霊にききますよ」
 ポロンと竪琴を鳴らすと健一は微笑んだ。
「それじゃあ、しっかり頼むアルネ〜」

≪承≫
 山の海峡という名の示すとおり、険しい山と山に挟まれた樹海が、山海峡である。
人の手がほとんどはいっていないため、ここにしか住んでいない希少な動物、植物などが繁茂し、恵みにあふれている。
 だが、その一方で長く生きてきたことと、この精霊界の力によって妖怪化してしまった動物や、植物なども多数生息してしまう結果となった。
 そして、人の手が入らない秘境は仙人が住むといわれ、神聖な場所として部外者はほとんど入れなくなったのである。
 今回はチャオの許可により立ち入ることが許されたということらしい。

  その山海峡で山本は竪琴を鳴らした、その森に住む動物たちの言葉を聴くために魔力のこもった歌を歌う。
 小鳥たちが、狐たちがその歌を聴きつけ、答える。
『ロウシツはそろそろ水を飲みにあっちの小川のほうにくるよ』
『怖がりだからあまり近づいちゃだめだよ?』
 動物たちの言葉に礼をいうと、健一は演奏をやめて小鳥がしめした方角を見た。ここからでは河は見えない。
「時間との闘いですし、急ぎましょう…っと、イルディライさんにも連絡しないといけませんね」

一方、イルディライは…

『…ということです』
「わかった」
 声は聞こえど姿は見えないという不可思議な連絡を受けながらも、冷静に、そして確実に作業を進めていく。
「穴のサイズはこのくらいかな…」
 先回りし、罠のための穴を掘っていた。似たようなものを今まで狩って来たイルディライにとってはこの程度は慣れている。
あとは時間との勝負だろう…山本が来るまで時間があるなら…
「少し、食材を調達していくか…中々こられないからな」
 
≪転≫
 ガザガサ

「あれが、ロウシツか」
「猪と豚を足して二で割ったような珍妙な姿をしていますね…」
 罠を仕掛け物陰に隠れていると、目的のロウシツが草むらの中からあらわれ、小川の方に近づいていく。
豚とも猪ともいえない姿だが、周囲をきょろきょろ確認して動く姿はなかなか愛嬌がある。
 一歩、また一歩と罠に近づき、そして…

ブギィィィッ!!

「「よし!!」」 
 二人は踊り出て、捕獲に向かった。だが、ロウシツはもがきながら罠から抜け出した。
「穴の掘り方が浅かったか…だが、逃がさない」
イルディライはさらに用意していた投網を逃げるロウシツに投げた。
「ブギィィブギィィ!」
 投網に絡まれてロウシツは動けなくなってしまった。食べるためとはいえ、こうやって捕まえることに少し健一は抵抗を感じる。
 だが、同行者のイルディライは平然と刃物を取り出して、息の根を止めにいく。
「何も、今殺さなくても…」
「運ぶときに暴れられたら面倒だからな…」
 そのすぐあとに絶命の悲鳴が山海峡に響いたのはいうまでもない。

≪結≫
 しめたロウシツを持ち帰り、大熊猫飯店の裏口から入るとそこは戦場とかしていた。
もう、昼の売り出しは始まっている。
「おぉ、ギリギリよ〜〜奥義でチャーシューに仕上るネ」
「「奥義?」」
「そ、奥義アルよ、少し離れているネ…」
 まな板の上にしめただけのロウシツを乗せ、エプロンのポケットから両手で一本ずつ取り出す。ポケットの大きさは包丁の柄くらいのサイズなのだが、なぜか出てきた。
「はぁぁぁぁぁ!!」
 両手が優雅に動き、残像が伴う。昼間だというのに背景が黒一色に見えるのは気のせいか…。その両手が頭の上まであがり、チャオが目を見を見開いた!
「あーたたたたたたたたたたたた!!」
 ザクザクザクザクザクザクザクと丸々一頭だった豚がバラバラに切られていく、何よりもすごいのはきった皮などが宙を舞い、綺麗な弧を描いてゴミ箱へ吸い込まれるように消えていっているところだった。
 料理を心得ている二人だが、この光景にはぽかんと見守るしかなかった。
「アー、二人ともここから先は企業秘密ネ、客席で待つアルヨ♪」

≪食≫
 食事時でもあり、大熊猫飯店は繁盛していた。案内された席が予約席でなかったら座れなかっただろう。ウェイトレスが走り回し、料理の仕上がる音が厨房から聞こえてくる。
「こういう音聞いていると、じっとしていられなくなりますよね」
「そうだな、血が騒ぐというか…料理人として腕を振るいたくなる」
 料理をたしなむ二人は、多少居心地悪そうにまっていた…と、そのとき
「お待ちどー様アルネ」
 とん、二人の前に湯気の立つラーメンが運ばれてきた。
「うわぁ、久しぶりですね〜この香りはトンコツかな?」
 健一は懐かしさに心躍らせ、香り楽しみながらスープをすすった。
「おいしい」
「うむ…美味い」
 イルディライは淡々と感想を述べた。いつもそれしかいわないが…
「満足していただいて何よりネ〜、また食材調達は冒険者にかけることにするヨ。今回はギリギリだたアルし、もうちょっと余裕をもってネ」
 トレイをもって、厨房に方に帰ろうとチャオはくるりと向きを変えた。
「あ、ちょっと待ってください」
 健一はチャオを呼びとめ、空になった器を差し出し

『再來一粉(おかわり)』


                          終幕
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┗━┛     ★PCゲームノベル★      ┗━┛
【PC名(ID)  /性別/年齢         /職業】
イルディライ(0811)/男性/32歳(実年齢32歳) /料理人
山本健一(0929)  /男性/19歳(実年齢25歳) /アトランティス帰り

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■         ライター通信          ■
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 どうも、はじめまして橘真斗です。こんな、ノベルに参加していただきありがとうございました!!
 チャオの食材モノは今後とも出していく予定でありますので、もしよろしければ参加していってくださるとうれしいです(礼)
以下個別感想

>健一さん
 天界人(アトランティス)として扱ったつもりですがどうでしたでしょうか?
アシュラファンタジーオンラインが対応になるとのことで、そちらの資料とにらめっこ菜感じでしたけれど…

>イルディライさん
 大変だったのは名前をうち間違えそうになったことが多数(汗)なかなか難しい設定をしてらっしゃいましたので、表現に困りましたが楽しかったです。
次はもっと料理させたいですね(何)

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