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■蒼天恋歌 1 序曲■

滝照直樹
【6920】【暁・天音】【極貧錬金術師】
 あなたは、夜おそく帰宅しているときだった。
 遠くでサイレンの音や、繁華街からの活気が聞こえ、向かう先は静かな闇。つまり、街と寝るところの境界線に立っているといっても良いだろう。
 あなたはいつもの通りに生活している。しかし、今日だけは違っていたようだ。
 ゴミ置き場のゴミが転げ落ちて音を立てる。あなたは重さで落ちたのかと振り向いてみると、

 女性が気を失って倒れていた。
 あなたは驚いた。
 きらめくような金髪に整った綺麗な顔立ちに。

 はっと我に返る。けがもしている。警察と救急車? いや、何か足音が近づいてくる。
 銃声? いや剣戟?
 このまま悠長なことはしていられない。あなたは、女性を担ぎ、その場を離れた。
 運良く、境界線とも言える闇はあなたを助けてくれたようだ。


 自宅にて、簡単にけがの手当と、汚れた身体を簡単に拭いて看病する。
「……」
 気づいたようだ。しかし、驚いてびくびくしている。
 あなたは「ここは無事だ」と話し気を失っていた事も話していく。しばらくして彼女が落ち着いたとき、あなたは更に驚くことになる。
「私はレノア……でも、それ以外……思い出せないのです」
 がくがく震える彼女。


 一方、路地裏では、やくざ風の男が、舌打ちをしていた。
「こいつらじゃねぇな。あれを拾ったのは……誰だ?」
 と、塵になっていく“敵だったモノ”に唾吐く。
「虚無の境界の連中は逃げた……無駄足だったな」
 コートを羽織った男が闇から現れた。闇の中に赤い光〜煙草の火〜が灯っている
 やくざ風の男は舌打ちをする。
「なあ、あの女は、いったいなんだ?」
「わからん。ただ超常のたぐいの人物は分かるだろう」
 と、二人は……その場所を去った。
 その二人を遠くで見るように、何者かが立っていた。
「アレはディテクターと鬼鮫……か。贄を抹消するつもりなのか? さて、あの贄をどうするべきか……どこに逃げた?」

 あの戦いの音は何だったのか? 彼女はいったい何者なのか?
 しかし、彼女の美しさは天使のようだ。
 いきなり現れた非日常が、今狂詩曲とともに幕を開ける。
蒼天恋歌

 恋愛or友情orハードボイルド:行動により シリアスA コミカルE 個別〜少人数パラレル

 あなたは、夜おそく帰宅しているときだった。
 遠くでサイレンの音や、繁華街からの活気が聞こえ、向かう先は静かな闇。つまり、街と寝るところの境界線に立っているといっても良いだろう。
 あなたはいつもの通りに生活している。しかし、今日だけは違っていたようだ。
 ゴミ置き場のゴミが転げ落ちて音を立てる。あなたは重さで落ちたのかと振り向いてみると、

 女性が気を失って倒れていた。
 あなたは驚いた。
 きらめくような金髪に整った綺麗な顔立ちに。

 はっと我に返る。けがもしている。警察と救急車? いや、何か足音が近づいてくる。
 銃声? いや剣戟?
 このまま悠長なことはしていられない。あなたは、女性を担ぎ、その場を離れた。
 運良く、境界線とも言える闇はあなたを助けてくれたようだ。


 自宅にて、簡単にけがの手当てと、汚れた身体を簡単に拭いて看病する。
「……」
 気づいたようだ。しかし、驚いてびくびくしている。
 あなたは「ここは無事だ」と話し気を失っていた事も話していく。しばらくして彼女が落ち着いたとき、あなたは更に驚くことになる。
「私はレノア……でも、それ以外……思い出せないのです」
 がくがく震える彼女。


 一方、路地裏では、やくざ風の男が、舌打ちをしていた。
「こいつらじゃねぇな。あれを拾ったのは……誰だ?」
 と、塵になっていく“敵だったモノ”に唾吐く。
「虚無の境界の連中は逃げた……無駄足だったな」
 コートを羽織った男が闇から現れた。闇の中に赤い光が〜煙草の火〜灯っている
 やくざ風の男は舌打ちをする。
「なあ、あの女は、いったいなんだ?」
「わからん。ただ超常のたぐいの人物は分かるだろう」
 と、二人は……その場所を去った。
 その二人を遠くで見るように、何者かが立っていた。
「アレはディテクターと鬼鮫……か。贄を抹消するつもりなのか? さて、あの贄をどうするべきか……どこに逃げた?」

 あの戦いの音は何だったのか? 彼女はいったい何者なのか?
 しかし、彼女の美しさは天使のようだ。
 いきなり現れた非日常が、今狂詩曲とともに幕を開ける。



〈暁天音〉
 夜をただぶらついていた。
「今日も何もなかったか。」
 暁天音は、自宅に帰ろうとしているときだった。
 夜の光り輝く街と静かに眠りにつく住宅街の狭間。柄でもないが、天音はこの“境界線”の雰囲気に何かしらの感情を
 ――歌にする柄でもないけどさ、誰かが歌にしたらさぞかし儲かるのかしらね?
 と、金として考えた。
 彼女は金に準ずる。儲かるならほとんどの手段を選ばない。そう言う生き方をしていた。
 そんな心境とは別に、目の前のゴミ置き場から音がした。
 そこを視る。ゴミ置き場に人が倒れていた。
「よっぱらい? お気楽な事ね。」
 ご機嫌なこと。とおもって無視して通り過ぎようとはおもったが、近くでそのはたと止まった。
 倒れていたのは少女であった。
 だいたい自分と同じぐらいの年頃だろう。
 ブロンドも服も肌も、汚れでいっぱいだった。気を失い方からすれば、怪我をしていると思って正しい。しかし、それでも綺麗な姿であった。
 自堕落で美や徳など、無縁で無用な暁天音には、その倒れた少女の姿に見とれてしまうことだった。闇夜で視界の悪い中でも、その美しさは明かりが照っているかのように、はっきり見える。
 なにかしら、近くで銃撃のようなモノが聞こえる。叫び声なども。
「ふむ。」
 天音はすぐ我を取り戻し、
 だるそうな表情のままでこの倒れた少女を担いでその場を後にした。

 これが、彼女にとって退屈な日常から、この先分からない非日常の始まりであったことも知る由もない。


〈金に殉じる〉
 暁天音の家は安アパートだった。狭い廊下を挟んで、ドアが規則正しく並んでいる、家賃2万以下という、良く目にするぼろアパートである。学生用の下宿をアパートに微妙な改築(?)した典型的なものだ。あやかし荘の方が未だ良いかもしれないと言う物件でもある。
 中は狭い。六畳あるかないところに、フラスコや試験管、ガスバーナー、調理用とは思えない鍋といった化学実験器具、そしてどんなモノ判別つかないがらくたが所狭しと並べられ、散らかって無くても清潔とはほど遠い“異界”であった。彼女の職業柄散らかると大変なので、別に足の踏み場はないと言うわけではない。ただ、ごちゃごちゃしていることと、暗いといった要素で不潔感を漂わせている。
 このごちゃごちゃしたところでも、救急箱などをすぐさま取り出し、彼女の怪我を診る。幸い擦り傷ぐらいで、何かしらのショック(近くで起こっていた戦闘らしいことだろう)で気を失っているようだ。
「っち、金目のモノはないか。」
 頭をぼりぼりかきながら、天音は舌打ちした。
 倒れていた少女は、衣服しか身につけていなかったのだ。ため息をつきながら、適当に消毒し、ガーゼを当てて、一応手当てをしておいた。
「はあ、まあ、いいか。何か関係しているだろうし。」
 この様子だと、未だ目覚めそうにないので、天音は近くにある自販機まで降りていった。


〈まったく〉
 天音がココアを二本買ってくる。まだ、少女は眠っていた。
「未だ寝ているのか。いいけど。」
 ココアは後で飲むかと、この先のことを考えている。
 彼女を担いで帰ってきたのは、単純に金になると判断したのだ。おそらく、あの戦いはこの少女とつながっている。間接的に関係有るか、問題の原因かは天音にとって関係ない。交渉すれば、金が手に入るようにし向けるのだ。
 別に、可哀想などと言う慈悲の心など持ち合わせていない。
「うまくいくかは本当に博打だけど、ね。」
 と、独り言を言う。
 それから数分後に、少女がうなされて、起きあがった。
「きゃああ!」
「!?」
 起きるやいなや悲鳴を上げて、隅の方に隠れ、おびえる少女を、天音はただ単に観察していた。
「あ、起きたのね? 怖がらなくて良いから」
 と、淡々と語り、缶ココアを持ってくる。
 少女は、身を縮め、ふるえていた。
「道で倒れていたから手当てしていたの。怖がらなくて良いから。あなたの名前は? なに?」
「……怪我、手当て?」
 少女は、怯えながらも体のそこかしこにある包帯とバンドエイドをみる。そして、天音の顔を眺め、
「あ、ありがとうございます……。」
「で、私の質問に答えて。名前なんて言うの?」
 お礼より金と言いそうになったが、今はそれを横に置いておく。
「……名前、レノアです。でも……」
 と、少女は言うがしょんぼりしていた。そして、再び怯える。
「? レノア。ふ〜ん。私は天音。暁天音、初めまして、レノア」
「は、はい。天音さんありがとうござまいす」
 レノアはまだ怯えながらも、お礼を再び言った。
「倒れていた理由とかわかる? 私は倒れていたのを見つけたわけで、その事情を知りたいな」
 怯えたレノアをあまり刺激しないように、細心の注意を払いながら尋ねる。が、心の中では金となるネタを聞き出そうと考えていた。心持ち半分、怯えていることは真実とわかるので、刺激しないようにつとめているだけにすぎない。
「名前しか分からないんです。」
「そっか。と、なると記憶喪失なのか。やっかいね。」
 天音は考えて狭い部屋をうろうろし、テーブルに置いていた缶ココアを手に取る。
 やっかいというのは、金蔓の目星がつけることできないと言うことだ。レノアの素性などその情報にすぎないので個人的には全く興味がない。
「飲む? 飲み方は分かる?」
「あ、はい。 それは分かりますが?」
「記憶喪失でも、ピンキリらしいからね。」
「はあ。」
 おずおずとレノアはココアを受け取り、プルタブを外す。
 暖かいココアが喉を通りすぎると、レノアは落ち着いたため息を吐いた。
 そのあたりが、少しかわいいかもと正直天音は思った。何となく子犬だな。とか思った。単に持っても、今後の方針を変える必要はない。記憶と言っても、自分が何者か、どうして倒れていたのか、そう言ったことしか分からないのか、嘘なのかは分からないのだ。
 ――とりあえず、待ってみるか。うまくいけば今すぐにでも何か来るだろうし。
 天音はココアを飲んで、わずかに外を眺めることができる窓から闇夜を眺めた。
 星より強く光るのは近くの外灯。虚偽は真実を塗り替えることを見事に顕していた。


 しかし、錬金術師でも、いろいろな霊感を少しながら持つ。卑金属から貴金属に変換できる以上は。
 その、虚偽とも言える外灯が、不気味に消えたのだ。
 隅で隠れていた、レノアがまたふるえ出す。このふるえは恐怖からだ。
「見つけた。見つけたぞ。女!」
 姿は見えないが、この不気味さは肌でしっかり感じる。
 ――おお、きたきた。さてどうしようかね……。
 闇の中から、響くような不気味な声に、暁天音は、心の中でどうやってこのお客に金を絞り出そうかと考えていた。


2話に続く。

■登場人物
【6920 暁天音 17 女 極貧錬金術師】

■ライター通信
 滝照直樹です。
 このたび、「蒼天恋歌 1 序曲」に参加してくださりありがとうございます。そして初めまして。
 金に殉じる極貧錬金術師と言うことですが、性格的にこんな感じでいかがでしょうか?
 2話で謎の存在との対面です。どうやって、解決していく事になるでしょうか?
 この物語は、異界や設定項目に書かれているようにレノアとの関係などを主眼に置いているために、プレイング次第で、2話で終わり、6話まで話は進まず(7話は後日談風味)、終わってしまう可能性があります。ご注意ください。

 では、2話でお会いしましょう。

20070131
滝照直樹。