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■秋篠神社奇譚 〜参拝日誌〜■

藤杜錬
【7061】【藤田・あやこ】【エルフの公爵】
緑に囲まれた小道を抜けあなたは階段の前に立っている。
この階段の上にあるのは秋篠神社の境内だ。。
あなたは何かを祈願にやって来たのだろうか?
それともここの住人に用事があってきたのだろうか?
あなたはそっと一息ついて、ゆっくりと階段を上り始める。
階段をのぼった貴方はそこで人影を見かける。

「あの今日は……。」

そう言ってあなたはその人影に声をかける。

秋篠神社奇譚 〜参拝日誌〜

藤田・あやこ編

●騒動の始まり
「あら? これは何かしら?」
 そう言って藤田あやこは研究室に据え置いてある、コンピューターサーバーPCの間に挟まっている物に気がついた。
 ゆっくりとあやこが隙間に手を伸ばしその挟まっている物を手に取った。
「これは紙切れ?」
 手に取った感触からそうあやこは呟き、その物を引っ張り出した。
 あやこは引っ張りだしたその紙切れをまじまじと見つめた。
「何かしら?これは……」
 あやこがテーブルの上に置いたそのくしゃくしゃになった漢字の書かれた紙を引き伸ばしていた。
「ふむ、それは神社のお札のようだな」
 あやこの後ろから声がかかる。
 あやこが振り向いたその先にはあやこの研究室の教授が立っていた。
 教授はあやこの持っていたその紙を手に取った。
「でもなんでこの研究室にお札なんか?」
 不思議そうに呟いたあやこに教授はやれやれといった顔を浮かべる。
「1+1は2を証明するためには必要な事がある。 それには整数を用意する事だ、つまり完全な理論などはない、すなわち科学で全てを証明できると言う訳ではないのだよ」
 まるで自分達の存在意義を自分で消し去るような事を平気で教授は切り出す。
「つまりだ……」
 教授がそこまで言ったときである。
 お札を剥がした辺りから地響きのような『ごごごご……』という音が響き始める。
 音のする方をみると、一台のコンピューターサーバーがその音を立てているようだった。
「いかんこのお札によって封じられていた何かが目覚め始めたようだ。 再び封じるためにはより以上のお札を見つけなければならん。 このコンピュータをもってそのお札を見つけてくるのだ」
 教授はそう言いきるとあやことコンピューターを研究室から外へとはじき出したのだった。

●神社へ
 研究室を追い出されたあやこはよく判らないながらも、コンピューターを研究室の備品の軽トラックに積み込むとそのエンジンを始動させた。
「取りあえず東京に行ってみよう。 あそこなら何かしら手がかりがあるはずだわ」
 自分が昼間通っている神聖徒学園の事をふと思い出しながら、深い根拠もなくそう決め付けると、一路東京へと向かって車を走らせたのだった。
 高速道路を軽トラックにしてはありえない速度で走り抜き、関東の入り口へとあやこはたどり着く。
「さて、どこに行こうかしら?」
 車をコンビニの駐車場へと止めすでに世も明け始め、すっかり明るくなった周囲を見渡しながらあやこは呟く。
 荷台に積んだコンピューターはとりあえずお札を貼って今はおとなしくさせているが、いつまで持つかは判った物ではなかった。
「こう言う時はまずは歴史のある所に行くと良いよのね。きっとそうに違いないわ」
 やはりよく判らない理論だが、あやこはそう決めると歴史のある場所はどこかを考え始めた。
「歴史のある場所って言えば、昔から栄えている場所……。昔からって事は江戸時代よりは昔よね、それより前というと室町時代……、鎌倉時代……。鎌倉そう鎌倉よ、鎌倉に行けば良いんだわ!」
 一人ぶつぶつ言いながら一人で納得すると、軽トラックのエンジンを始動させ一路鎌倉へと向かう事に決めたのだった。

 鎌倉へとたどり着いたあやこは、軽トラックに積んであった地図で手近な歴史のありそうな神社を探し始める。
「秋篠神社、ここなんてなんとなく古そうね、感だけど行ってみましょ」
 やはり深い理由などなくそう決め付けると、秋篠神社という神社へとあやこは向かうのだった。

「ここね……。 私の思った通り古い神社だったわ」
 どこにその根拠があるのかは判らなかったが、勝ち誇ったようにあやこはそういうと境内へと続く階段を急ぎ足で登り始めた。
 一気に階段を登りきり、鳥居をくぐるとあやこは大きく息を吸った。
 そして大声で叫ぶのだった。
「たのもうーー!!」
 辺りに生えている木々も倒れるのではないかというような大音声が静寂の保たれていた周囲に響き渡った。
 その大声に驚いたかのように一人の巫女装束をまとった少女が慌てたように神社の社務所から出てきた。
「なんですか!? 一体」
 明らかにむっとしたような表情で、巫女の少女はあやこに話かける。
 あやこは巫女の少女に向かってタンカを切るかのように言った。
「ここにあのコンピューターを封じるお札があるはずよ。 とっとと出しなさい」
 あやこのその言葉に訳がわからないといったような不思議な表情を巫女の少女は浮かべた。
「あなた、一体何を言って……」
「だからお札を出しなさい。 ここにあるのは私には判ってるのよ。 とっとと出しなさい」
 あやこの言っている支離滅裂な事の意味がわからず、頭の周囲には『?』マークが飛び交ってる様子で巫女の少女はますます怪訝な表情を浮かべたのだった。

●巫女の疑問
 二人がそんな問答をしている頃、あやこの乗ってきた軽トラックの中ではあやこの荒い運転でコンピューターからはがれそうになっていたお札がついに地面に落ちていた。
 今まで静かだったそのコンピューターから昨晩と同じような地響きが響き渡り、そのままゆらりとコンピューターが宙を舞うのだった。
 ゆっくりと空に舞い上がったコンピューターは軽トラックの中を飛び出し、黒い影をその周囲に撒き散らしながら、あやこと巫女の少女の元へと向かったのだった。
 いきなり姿を現した黒い影に、巫女の少女はますます訳がわからないという顔を浮かべる。
「ああ、ついに動き出してしまったわ」
 あやこはそう叫ぶとコンピューターがどこから出しているのか、声を出した。
「我は……、恐怖心増幅実験炉なり……っ!?」
 黒い影のような物をまとったコンピューターはそう威厳のあるのだかないのだがわからないような声で喋ると二人の事を見た。
 瞳らしきものは見当たらなかったがあやこと巫女の少女は、確かにそれに見られたと感じたのだった。
「あ、アレはなんですか?」
 あやこに巫女の少女は問いただすと、その問いには答えずあやこは巫女の少女に叫んだ。
「巫女さん!! 私がアレの足止めするからアレを封じて!!」
「足止めって……、どうやって……」
 やはり訳が判らないといった様子の巫女に、あやこはどこから出したのかライフルを取り出して巫女の少女に見せる。
「これでよ!!」
 そう言うが早いかあやこはライフルを連射してコンピューターを地面へと叩き落す。
 巫女の少女はよく判らないながらも懐から呪符を取り出し、呪を唱え始める。
 そしてその符をコンピューターへと投げつける。
 符はまるで吸い寄せられるかのようにコンピューターへと張り付くと、コンピューターは断末魔のような雄叫びを上げつつ静かになった。
「いやー助かったわ。急に研究室でこれが暴れだしちゃってね。これでここまできたかいがあったよ」
 まるで説明になっていない説明をマシンガンのようにまくし立てると、あやこはうれしそうにコンピューターを軽トラックに詰め込んだ。
「それじゃありがとう、巫女さん」
 そうお礼をいうとあやこは軽トラックへと乗りこみ、そのエンジンを始動させる。
 そしてきたときと同じようにまた嵐の様に秋篠神社を去って行ったのだった。
 神社の境内に残された巫女の少女は一人狸にでも包まれたような顔を浮かべるのだった。
「なんだったの……、アレ?」
 そんな巫女の少女の疑問などどこ拭く風、あやこは満足げに研究室へと戻るために車を走らせたのだった。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■藤田・あやこ
整理番号:7061 性別:女 年齢:24
職業:女子大生

≪NPC≫
■秋篠宮・静奈
職業:高校生兼巫女

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■         ライター通信          ■
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 どうもはじめまして、藤杜錬です。
 この度はゲームノベル『秋篠神社奇譚 〜参拝日誌〜』へのご参加ありがとうございました。
 楽しんでいただければ幸いです。

2007.06.18.
Written by Ren Fujimori