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■Toy & Toy■

津奈サチ
【3489】【橘・百華】【小学生】
ここひと月、街中で神隠しにあうという事件が起こっていた。
しかし行方不明者は数日後にどこからともなく戻ってくるのだが、どこで何をしていたのか尋ねても、苦笑するばかりで当時のことには答えないという…

皆で集まりそんな噂話をしていると、古ぼけたドールハウスが視界の片隅に入った。今の今までそこには何も無く、不思議に思い手を伸ばすと周囲の風景が歪み始めた。
歪んでいく風景に不快な気配が胸に広がり眩暈が起こる。
一時的に意識を失っていたのか、はっと目を開けると目の前には、オモチャ箱を引っ繰り返したような光景が広がっていた。まるで小さな子供が散々遊んだ後のような、そんな賑々しい部屋だった。
ついさっきまで街に居た筈なのに……一同が呆然としていると、突然背後から何者かが声をかけてきた。
「ようこそお客様。私はこの屋敷に仕えているミル=グイヌと申します。どうぞ心行くまでお楽しみ下さい」

ミル=グイヌは不安そうな面々を見渡し言葉を続けた。
「この屋敷にお迎えしたかぎり、お客様には楽しんでいただかなければお帰りいただくことは出来ません。ただし、それはお客様方の中からお一人様だけでございます。
最も楽しんでいただけたそのお一人様には、当屋敷の主人から贈り物がございます。他のお客様には十分楽しんでいただけなかったお詫びに、心ばかりの……」
「心ばかりの?」渋面になっている皆に勿体ぶって言葉を続ける。
「罰ゲームがございます。あ、命にかかわることではございませんのでご安心ください」
安心できるかと騒ぐ面々を前に、涼しい顔でミル=グイヌが指をパチリと鳴らすと床が突然消えた。ぽっかり開いた暗闇に、皆はオモチャと共に落ちていったのだった。