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■スタッカートと口封じ■

藤森イズノ
【7888】【桂・千早】【何でも屋】
 深夜0時を過ぎた瞬間。HALの本質は、明らかになる。
 真夜中でも、校内は大賑わい。生徒たちは『ハンター』へと肩書きを変え、
 美味しい仕事はないかと、目をギラギラさせながら獲物を捜し求める。
 入学・在籍して2日目の夜。いよいよ、自分もハンターとして本格的に活動。
 自分の意思で、というよりは、学校の方針というか雰囲気に流された感じだけれど。
(スタッカート、ね……)
 中庭にあるボードに貼られたフライヤーを一枚、手に取って見やる。
 ハンターとして、捕獲・討伐せねばならぬ存在、スタッカート。
 イラストを見る限り、妖怪というよりは……魔物?
 絵本や神話で『害』として登場する悪魔のような風貌だ。
 どうして、こんなものが出現するのか。いつから出現したのか。
 わからないことは、山ほどある。てんこもりだ。
 教員に尋ねてもみたけれど、曖昧な返答しか返ってこない。
 遠回しに『自分で理解しろ』と言っているような感じだった。
 まぁ、何せよ、動かなければ何も始まらない……か。
 何事もそうだ。ただジッと動かず待っていても、何も起こらない。
 知りたいことがあるのなら、未来を変えたいと思うのなら、先ず動かねば。
 うん、と頷き、中庭を後にする。手には、剥がしたフライヤー。
 スタッカート討伐。やってみようじゃありませんか。初陣、いきますよ。

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 STACC.HUNT // NOID−BR00383
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 スタッカートレベル:C / 出現確認:赤坂サカス付近
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 報酬:30000 / ソロ遂行・グループ遂行 両可
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スタッカートと口封じ

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 深夜0時を過ぎた瞬間。HALの本質は、明らかになる。
 真夜中でも、校内は大賑わい。生徒たちは『ハンター』へと肩書きを変え、
 美味しい仕事はないかと、目をギラギラさせながら獲物を捜し求める。
 入学・在籍して2日目の夜。いよいよ、自分もハンターとして本格的に活動。
 自分の意思で、というよりは、学校の方針というか雰囲気に流された感じだけれど。
(スタッカート、ね……)
 中庭にあるボードに貼られたフライヤーを一枚、手に取って見やる。
 ハンターとして、捕獲・討伐せねばならぬ存在、スタッカート。
 イラストを見る限り、妖怪というよりは……魔物?
 絵本や神話で『害』として登場する悪魔のような風貌だ。
 どうして、こんなものが出現するのか。いつから出現したのか。
 わからないことは、山ほどある。てんこもりだ。
 教員に尋ねてもみたけれど、曖昧な返答しか返ってこない。
 遠回しに『自分で理解しろ』と言っているような感じだった。
 まぁ、何せよ、動かなければ何も始まらない……か。
 何事もそうだ。ただジッと動かず待っていても、何も起こらない。
 知りたいことがあるのなら、未来を変えたいと思うのなら、先ず動かねば。
 うん、と頷き、中庭を後にする。手には、剥がしたフライヤー。
 スタッカート討伐。やってみようじゃありませんか。初陣、いきますよ。

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 STACC.HUNT // NOID−BR00383
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 スタッカートレベル:C / 出現確認:赤坂サカス付近
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 報酬:30000 / ソロ遂行・グループ遂行 両可
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「千早くん……。何してるの? それ」
「あぁ。少し準備をと思いまして」
「パソコンで?」
「はい。……気にしなくて良いですよ」
「なかなか難しい注文ね、それは。教えてよ」
「……ですよね。すみません」
 一番の目的は、周囲への被害を避けることです。
 なるべく、一般の人に見られないように配慮してくれと先生達もおっしゃってましたし。
 万が一、とばっちりを受けるようなことになったら大変ですから。
 僕の能力……ウィザードには、二重の意があるんです。
 ひとつは、それこそ一般的な魔術師という意。
 もうひとつは、コンピューターシステムに関わる問題を解決する専門家の意。
 この二重の意を持つウィザードは、そうそういないみたいですけど。
 僕の存在自体が、曖昧なものですからね……。まぁ、その辺りは追々ということで。
 コンピューターウィルスに魔術を組み合わせたものを、そこらじゅうに撒いてます。
 目には見えないものですが、確かにあります。
 大丈夫。標的にしか効果はありません。
 更に、このウィルスは、結界内部でしか発動しません。
 結界は……。ここに着いた直後に張ってあります。
 これも目には見えないものですが、確かにあります。
 外部からの視線をシャットアウトする性質も兼ねてますので、
 一般の人には、僕達の姿も見えていません。
 ほら……みんな、素通りして行くでしょう?
 まぁ、こんな感じなんですけど……。
 本当、気にしなくて良いですから。
 あなたに不利な要素は作りません。
 好きなように動いてくれて構いませんよ、いつもどおりに。

 初ハントとなる今宵。
 千早は、別のクラスに在籍している生徒、木ノ下・麻深に同行を依頼した。
 手助けして欲しいだとか、協力して欲しいだとか、そのような言葉は一切放っていない。
 ただ、ついて来てくれないかとだけ告げた。
 どうして麻深なのか。さほど面識があるわけでもないのに。
 そこに深い理由はない。ただ、興味を持ったから。
 もう一人の自分、そのクラスメートである存在に興味を持ったから。それだけのこと。
 現場に到着してから20分ほどが経過した。
 事前の準備は万端。
 千早と麻深は、初めて組んだと思えぬほどに息が合っている。
 作戦会議の会話が見事に噛み合うことにしても、
 待機中の沈黙に気まずさが一切ないことにしても。
 二人の雰囲気は、幾多の経験を共に経てきた戦友のようなもの。不思議な雰囲気だ。

 今宵は満月。

 街頭よりも月灯りが眩い夜。
 ストリートミュージシャンの演奏に聴き入る一般人のフリをしながら待機していた二人。
 やがて、あたりに冷たい風が吹いた。その風に妙な気配を感じたのは、二人だけ。
 一般人に、その独特の気配を感じることは不可能だ。
 月から湧いてきたかのように出現した標的、スタッカート。
 昼間の授業で、ひととおりの情報は得ている。
 現場へ向かう前に、麻深から聞いた情報も頭に入っている。
 なるほど。これがスタッカートですか。確かに不気味ですね。
 僕達にしか見えていない……みたいですね。
 向こうも、僕達しか見えていないようです。
 いや、見ていないというべきでしょうか。
「じゃあ、行くわよ」
「はい」
 同時に立ち上がり、バサバサと翼を揺らしながら降りてくるスタッカートを迎え撃つ二人。
 事前に張っておいた結界範囲へ踏み入れば、二人の姿は忽然と消える。
 一般人には目もくれず、二人に向かって急降下してくるスタッカート。
 その姿は、ゲームや漫画に出てくる "ドラキュラ" それに酷似している。
 見えぬ結界を警戒することは出来ない。
 不気味な鳴き声を上げながら、急降下するスタッカート。
 スタッカートが結界内部に入った、その瞬間、千早はエンターキーを押下。
 エンターキーは、発動スイッチ。
 合図に従うかのように、そこらじゅうに撒かれたウィルスが牙を向く。
 呪縛の魔法が込められたウィルスが体中に張り付き、
 スタッカートの降下スピードは大幅に減少した。
 見えないが故の戸惑いと苛立ち。
 思うように動けないもどかしさに怒りを露わにするスタッカート。
 動きを鈍らせたら、そこを突いて猛攻を仕掛ける。躊躇いなんぞ不要だ。
 千早は、カタカタと片手でキーボードを操作し、
 ウィルスの貼り付けを続けながら、空いた手でナイフを投げやる。
 光のスキルを込めたナイフが描くは、闇を裂く白美の線。
 麻深から教えてもらった、このタイプのスタッカートの弱点。
 目、胸、膝。その三点を狙って次々と投げ放つ。
 千早の動きや攻撃に合わせるように動く麻深。
 麻深の指先から放たれる闇針もまた、
 スタッカートの急所を次々と的確に捉えていく。
 本来、光と闇は真逆の属性だ。
 決して相容れることのない属性。
 けれど、ごく稀に。光と闇の融合スキルが発動される場合がある。
 発動条件は "均衡" 光と闇の調和。双方の魔力が、誤差なく同じであること。
 他にも細かな条件があるようだが、明らかにはなっていない。
 パチンパチンと、どこからか何かが弾けるような音が聞こえた。
 千早と麻深は、揃って首を傾げながらも、それぞれのスキル発動を続ける。
 その結果。
「……!」
「きゃあ!?」
 二人のスキルが混ざり合い、光と闇の混合スキルへと変わる。
 スタッカートの急所に刺さった白いナイフと黒い針が、虹色へと変色を遂げて―
「…………」
「……な、何なの、今の」
 二人は茫然自失。無理もない。
 虹色に変色したナイフと針が、爆音を伴って弾けたのだから。
 標的、スタッカートは木っ端微塵。その残骸が、雨のように降り注ぐ。

 *
 *

「とりあえず……先生に報告してくるわ。千早くん、ここで待ってて」
「……はい。わかりました」
 突発的に成功した融合スキル。
 その報告も兼ねて、麻深は一人、学校へ戻って行った。
 残された千早は、辺りに散らばるスタッカートの残骸を拾い上げて物思い。
 何だったんでしょう。確かに、気になります。一瞬のことだったから余計に。
 あんな現象は初めてです。それなりの歳月を生きてきて、
 自分の能力について、ひととおり把握していたつもりですけど。
 こんなこともあるんですね……。果てなきものなのでしょうか、魔術とは。
 久しぶりに湧いてくる好奇心のようなもの。
 家に戻ったら、魔術書を読み返してみようか。初心に戻って。
 あらゆる知識を求めて躍起になった、あの頃のように、もう一度……。
 そんなことを考えながら、千早は、スタッカートの残骸を持ってきた小瓶に入れた。
 討伐の証として、これを学校に提出すれば……ハントは終わりだ。
 フゥと息を吐き落とした時だった。背後に気配。
 千早は、小瓶を懐にしまいながら目を伏せて尋ねる。
「……何してるんですか? こんなところで」
 振り返らずとも理解った。その人物が纏う雰囲気は、独特すぎる。
 千早の言葉にクスクス笑いながら、保健医のJは言った。
「覗かれるほうが興奮するけど。覗くのも、たまにはいいね」
「……悪趣味ですね」
 微笑みながら返した千早。
 Jは、そんな千早に音もなく歩み寄り、その頬に触れようと腕を伸ばした。
「……用件は、何ですか?」
 微笑み続けてはいるものの、千早はさりげなく身を引いた。
 笑顔の裏の本音。気安く触れるな。そう訴える、メッセージ。
 Jは肩を竦めて笑うと、伸ばした腕を戻す。
「いいや。特に何も。ただ、俺がここにいたことは秘密にしておいて欲しいかな」
「わかりました。……そろそろ戻ってくると思いますけど」
「キミは利口だね。じゃあ、お暇するよ。ハント、お疲れ様。……またね」
 軽く手を振り、逃げるように立ち去って行くJ。
 どうして秘密にするのか、その理由は何なのか。
 尋ねることなく素直に、その要求を飲んだのは、拒絶の類。
 深く関わってしまわぬように、余計なことに首を突っ込まぬように。
 面倒事に巻き込まれぬ為、素直に利口に回避をば。

 構わないよ。拒絶してくれて構わない。
 もっともっと、拒んでくれれば良い。
 何度も続ける内、キミは気付くはずだから。
 拒絶なんかじゃない。その逆なんだってことに。
 キミが気付くまで、待っていてあげる。
 触れて欲しいと、キミが言わざるをえない状況になるまで。
 ゆっくり楽しもう。……ゆっくり、ね。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7888 / 桂・千早 / 11歳 / 何でも屋
 NPC / 木ノ下・麻深 / 16歳 / HAL:生徒
 NPC / J / ??歳 / HAL:保健医

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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