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■【SS】最終決戦・後編■

朝臣あむ
【6408】【月代・慎】【退魔師・タレント】
 大都会東京。
 煌々と夜の闇を照らすビルの頭上で、不可思議な現象が起きていた。
 空を覆う黒い雲――それを吸い込むように渦を巻く一角に、複数の雷鳴が光を生み、門の様な存在が覗く。
 そして門が完全に姿を現すと、地上でも何らかの影響が出始めた。
 激しすぎる風が花や木を倒し、舞い上がる砂が渦を巻いて家々に激突する。その度に凄まじい音が辺りに響く。
 正に、嵐が舞い降りた――そう表現できる光景が都会のど真ん中で繰り広げられていた。

 * * *

 冥界門を見上げる1人の人物。
 口を開く門の向こうには冥界と呼ばれる世界が広がっている。
「……手元に残った魂は此れだけ、ですか」
 優しげな風貌で見下ろすのは、掌の上に漂う青色の光のみ。彼はそれを掌で転がすと、柔らかに握り込んだ。
「雪弥君も華子さんも私の元には残らなかった……あれだけ大事に育てたというのに、薄情ですね」
 思わず口を吐いた自嘲の笑み。
 それを隠すように口角を上げると、彼は青色の光――空田幾夫の魂を口に運んだ。
「佐久弥さん!」
 あと少しで口に入る。
 そんな折に響いた声、それに佐久弥の目が動く。
「……華子さん。無事だったのですか」
 圧倒的な数の悪魔を退けるだけの力を彼女が所持していたかという疑問。同時に、精神を崩壊させないだけの心を持っていたのかという疑問。
 それらが脳裏を過るが、何よりも喜ぶべきことがある。
「生きていて嬉しいですよ。さあ、私の元にいらっしゃい。昔のように優しく抱きしめてさしあげましょう」
 穏やかな微笑みと共に差し出した手に、駆け付けた華子の眉間に皺が寄る。
 それだけで彼女の様子がオカシイことはわかった。
 それでも佐久弥は囁く。
「華子さん、いらっしゃい」
 華子が持つ無垢な魂は幾夫の魂が与える力の比ではない強力な力が得れる。
 もし、彼女の魂と幾夫の魂の両方を得れれば、『冥王誕生』を確実の物に出来る筈。
 しかし――
「……行かない」
「!」
 首を横に振りながら呟き出された声に佐久弥の目が見開かれる。
 長い間一緒にいた少女の、始めて見せた拒絶に、彼の顔に驚きが浮かぶ。
「華子さん、如何したのですか? 私が頼れるのは貴女しかいないというのに――」
「そりゃあ、自分がそうなるようにしちまったからな。仕方ねえよなぁ?」
「!」
 佐久弥の目が再び驚いたように見開かれる。
 視線を向けた先に居たのは不知火だ。
 彼は確か――
「死んだはずでは」
 攻撃を当てた確かな手応えがあった。
 にも拘らずこの場に立っているのは如何いうことか。
 だが彼もまた無垢な魂の1つ。
 つまり、この場には佐久弥が欲する魂が複数存在すると言うことだ。
 それならばやるべき事は1つ。
「此れも日頃の行いのお陰でしょうか……」
 喉を突くクツクツとした笑い声に、不知火の眉と、華子の顔が上がる。
「貴方がた2人の魂を喰らえば冥王どころか、神にすらなれる筈――良いでしょう、今すぐその無垢な魂を我が身に吸収して差し上げます!」
 言葉が途切れた瞬間、彼は手にしていた幾夫の魂を口に含むと、喉仏を上下させて呑み込んだ。
――と、次の瞬間、冥界門から耳を裂くような音が響く。
「さ、佐久弥さん……っ!」
 金属を掻くような音、それに耳を塞いだ華子の目に、変化してゆく雪弥の姿が見える。
 メキメキと音を立てて変化してゆく骨格。米神から生える二本の角と、白く美しかった髪が漆黒に染まる様子は、実際に目にしても信じられない光景だった。
「あの野郎……幾夫の魂だけじゃ、完全には行かねえぞっ!」
 幾夫の魂は確かに無垢だ。
 しかし冥王復活には力が足りない。その原因は不知火を一時でも冥界に封じるために力を使用したためだ。
「……佐久弥さん……どう、なっちゃうの……」
 止めなければいけない。
 今の段階で止めなければ取り返しがつかない事は分かっている。それでも足が動かない。
「自我が無くなって、人には戻れなくなる……止めるぞ!」
「あ、あ……」
 先程までは確かに人と同じ大きさだった佐久弥の身の丈は、既に冥界門に届きそうなほど大きくなっている。
 今の状態でも人とは言えない姿なのに、これを戻す事が出来るのか。
 華子は狼狽えて動くことが出来なかった。
 代わりに動いた不知火が地を蹴り飛び掛かるが、見えない電磁波のような物に阻まれてしまう。
「っ……佐久弥……」
 佐久弥が冥王となった経由は、不知火の代わりに彼が生贄になったところから始まる。
 生まれたばかりの弟を犠牲にしない為に取った兄の愛情。それがいつしか思考を冥王のモノに変えられ、自身を貶めた人間を憎むモノへと変化した。
「魂を集めろって言ってた時点で、もう佐久弥じゃなかったのかもな……」
 不知火はそう呟くと拳を握り締めた。
「華子ちゃん、佐久弥を倒すぜ」
「え……」
「もう、それしかねぇ」
 明らかに人とは違う容姿になってしまった佐久弥を見上げ、不知火は転がった体を叩き起こした。
「……俺たちだけじゃ無理だが、もうすぐあいつらが来る」
「で、でも……」
 佐久弥を見上げた華子の目に薄らと涙が浮かぶ。
 孤児院から引き取って育ててくれた、言わば父親のような存在。
 その彼を倒せという不知火の言葉に未だ戸惑いがある。
 それにまだ聞きたい事が聞けていない。
「あ、あたしは……」
「迷ってる暇はねえ、急がなきゃ東京が無くなっちまう!」
 この声に、華子はギュッと手を握り締めると自らの刀に手を添えたのだった。
【SS】最終決戦・後編 / 月代・慎

 必死に繋ぎ止める不知火雪弥の魂。
 彼は自らの力を抑えるために右目に嵌めていたコンタクトを外すと、改めて手を翳した。
「おじさん……まだ、働いてよ!」
 そう言って結んだ掌。彼の指が見えない糸を手繰って、横たわる不知火の体に光を招く。
 そうして左手で糸を結ぶように指を動かすと、不知火の唇が微かに揺れた。
 漏れ始める息にホッと安堵するのも束の間、嫌な気配が彼の背筋を駆け抜ける。
「これって……」
 呟き上げた顔、その肩に触れた手に反射的に視線が飛ぶ。
 まだ顔色は良くない、だが此方を見る紅い目に慎は唇を引き結んだ。
 これは覚悟の目だ。
「……先に行ってる。坊主……いや、慎、だったか? お前なら他の奴らの居場所も分かるだろ」
「他の奴ら……それって、お兄さんたちのこと?」
 問いかけに、不知火は頷く。
 そうして立ち上がると、彼の手が慎の肩を叩いた。
「佐久弥を止めておく……出来るだけ早く来い」
 彼はそう言うと、慎の元を離れた。
 それを見送り、彼は自らを守護する蝶を招きよせる。
「お願い。あのお兄さんたちを、呼んできて」
 彼はそう言うと、月の子に自らの護衛を任せ、この場を駆け出して行った。

  ***

 冥界門から響く金切り音を耳に、慎は不知火の姿を探し当てていた。
「おじさん!」
 そう言って駆け寄った姿に、不知火が振り返る。
 だがその目は直ぐに目の前の存在に向けられた。
「すまねぇ、止めきれなかった……」
 見上げた先にあるのは冥界門だ。
 そしてその真下に存在する、人とは明らかに大きさの違う存在に、慎の眉が寄る。
 白くうねる髪がまるで蛇のようで、くすんだ瞳が異形に写る。そして額から生える2本の角は、もう人間ではないことを物語っていた。
「これが、冥王……あの、おじさん……?」
 思わず呟いた声に、不知火が頷く。
 そして彼の赤い目が慎を捉えた。
「他の奴はどうした?」
「もうすぐ着くと思うよ」
 金と銀の光を放つ蝶。それらは今、不知火の言った人物たちを連れて戻ってくるはずだ。
「それよりも、これが、本当に――」
「ああ、佐久弥だ……幾夫ちゃんの魂を喰らって、冥王に変事やがった」
――冥王。
 その声に慎の目が眇められる。
 人ではなく、破滅にのみ物事を、そして世界を導く存在。
 慎は自らの手に視線を落とすと、小さくそれを握り締めた――と、そこに聞き慣れた声が届く。
「っ……馬鹿女、てめぇは何1人で突っ走ってやがんだ!」
 目を向けた先に居たのは神木・九郎だ。
 彼は刀を抜いた華子に怒声を浴びせながら、彼女の前に立っている。
 そして不知火を振り返ると、そのままの勢いで冥王を指差した。
「おい、てめぇはあの化けもんの倒し方を知ってんだろ。教えろ!」
 この声に不知火の眉が上がった。
 倒す方法はあるにはあるのだろうが、彼は首を縦に振らない。
 そこに見覚えのある鎌が差し出された。
「探し物はこれかい?」
「お前は……」
 聞き慣れた声と共に差し出された鎌に、不知火と、そして慎の目が上がる。
 そこにいたのは葛城・深墨だ。
 彼も九郎と同様に、慎の蝶に招かれてやって来たようだ。
 彼は自分を見る不知火を目にして、鎌を受け取る様に促すと首を傾げた。
「今度こそ、一緒に戦ってくれるんだろう?」
 到着する前のやり取りは分からない。
 それでも武器を探し悩む姿は、闘う意思がある事を告げている。
「弱い人間同士、助け合わないとな?」
 そう言って、悪戯っぽく片目を瞑って見せると、不知火の口元に苦笑が乗った。
 彼は僅かに息を吐くと、差し出された鎌に手を伸ばした。
 そしてそれを受け取って目を伏せる。
「佐久弥を倒す方法は、この鎌で魂を狩る……これが一番手っ取り早い方法だ」
「魂を狩って、このランプに封印する――かな?」
 深墨はそう言うと、手にしていたランプも差し出した。
 これに不知火の目が見開かれる。
 彼の手元に集まった物は何とも懐かしく、そして忌わしい物。
 それらは今集まった3人と対峙していた時、不知火が持っていたものだ。それを彼に渡すと言う事は、彼を信用すると言う事でもある。
「これも渡しておくよ。冥王であろうと元が人間なら、魂の封印もできるだろ?」
 言って問いかけると、不知火は深墨の手からランプを受け取った。
 その様子を見ていた九郎が息を吐く。
「それが一番の方法だってんなら支援するぜ」
 ただ倒すだけでは完全にそれを成し得るか疑問が残る。
 だが、封印する事で完全に倒すことが出来るなら、それを支持しない手はない。
「それなら、冥王の魂を取り出せるよう闘いつつ、取り出したら封印……この流れで良い?」
 時間は殆どない。
 これに異論がある場合は完全に倒すほかないのだが、誰も慎の提案に異論を唱えなかった。
 全てが決まった。
 そうして自らの力を確認するように手を開いた所で、ある声が聞こえてくる。
「さっき殴ったツケは返して貰うぞ」
「!」
 反射的にあがった瞳。それに九郎の目が眇められる。
「聞きたい事、言いたい事があるんだろ。なら、それをぶつけてこい。それまでの間は俺が守ってやる」
 佐久弥は既に人ではない。
 そんな彼に言葉が通じるとは思えないが、華子が信じる以上はまだ通じると思いたいのだろう。
 皆、それぞれに思うところがあると言う事だろう。
 慎は聞こえる声、会話を耳に、瞼を伏せる。
「倒せるのか?」
 ふと耳を突いた声に、慎の瞼が上がる。
 そして不安を漏らした深墨の肩を叩くと、彼の足が一歩前に出た。
「支援は俺に任せてよ。お兄さんたちは思う存分闘って」
 言って、ニコリと笑う。
 右目の封印は解いた。この力で冥王の動きを抑え、自らの召喚する者達の力を借りれば、彼らを支援することも可能なはず。
 慎はゆっくり息を吸い込むと、心の中で念じる。
「――出でよ」
 この声に、3つの影が姿を現した。
 地を這い出るように姿を現した緋色の悪魔王。
 そして光を纏い、慎の前に優しく降り注いだ月の子。
 最後に姿を見せたのは、黒き獣の様相で慎の前に立ち塞がる黒き獣だ。
 彼らは慎の言葉を待つようにその場に待機する。
 そして――
「月の子は、おじさんとお姉さんの護衛を。残りは攻撃に回って」
 頼むよ。
 そう言葉を添えると、彼らは一気に動き出した。
 冥王の形をとった佐久弥は、冥界門から無数の悪魔を召喚する。だがこれを慎が見逃すはずもない。
「緋色の悪魔王、怨霊の力を削って!」
 声と共に作りだされた無数の魔方陣。
 そこから放たれる光が次々と悪魔を撃ち落してゆく。
 それだけではない、撃ち落とした存在を、自らの力に変えて吸収し、再び攻撃を放っているのだ。
 これを目にした不知火の口元に苦笑が浮かぶ。
「相変わらずエグイな」
「褒め言葉として受け取っておくね」
 クスリと笑って両の手を結ぶ。
 そんな彼が見つめるのは深墨だ。
 彼に迫る雷撃は冥王が放ったもの。それは真っ直ぐ深墨に向かうが、それよりも早く慎の手が何かを掴みとる。
「あれ……痺れない……?」
 深墨の目が見開かれた。
 雷撃は確かに彼の胸を貫いたのだ。
 だが彼の体に変化はない。
 これも慎の為した技だ。
 彼は服の繊維を遠方から操作すると、雷撃を弾く素材に変化させた。
 その為、雷撃を胸に受けても深墨が無事でいられたのだ。
 お蔭で深墨は迷うことなく前に進めている。
 それを見てホッと息を吐くと、慎は未だ自らを守護する2匹の蝶を見上げた。
「いける?」
 問いかける声に蝶がヒラリと舞い、不知火の元に向かう。
 彼は蝶の存在に気付くと、慎を振り返った。
「佐久弥の動きが鈍いが、何かしたか?」
「まあね」
 肩を竦めて少しだけ笑む慎の右目が光る。
 それを視界に、不知火は鎌を握り締めて足を動かした。
 そこに慎の手が差し出される。
「ねえ……これ、使いたんだけど」
 彼が差し出したのは、不知火にとっても、慎にとっても懐かしい代物だ。
「魂の欠片か、よく持ってたな」
 紅く光る小さな欠片は、怨霊が浄化された際、稀に現れる物だ。
 怨霊と化した魂の陰の部分だけが残り結晶化したもので、攻撃にも防御にも使用できる。
 不知火はそれをじっと見つめた後、慎を見やった。
「どう使いたいか、言ってみな?」
「実は――」
 そうして語られた使用方法に、伝え聞いた不知火の目が落ちる。
 思案気に唸り、間を置くこと僅か。
「効果があるかはわからねえが、やるだけやってみるか? 援護してやるぜ」
 ニッと笑った彼に慎は頷く。
 2人は同時に地を蹴ると、冥王の元に向かった。
 当然攻撃が降り注ぐ。
 しかし彼への攻撃は、前を掛ける黒き獣が咆哮を放って追い払ってくれる。
 防御は万全、慎は黒き獣に冥王の腕を攻撃するよう指示を加えると、降下してきたそれに飛び乗った。
「おじさん、ここから行くよ!」
 先程、九郎や深墨が腕を駆け上がって行くのを見た。
 確かにこの方法なら冥王へ最短距離で近付けるだろう。
 慎と不知火は途中妨害を受けながらも、肩の付近まで駆け上がる事に成功した。
 そこに声が届く。
「佐久弥さん!」
 この叫び声は華子だ。
 彼女は九郎に護られながら、必死に冥王に叫んでいる。
「……あのお姉さん」
 慎はチラリと不知火を見ると、彼は頷いて見せた。
「言わせてやれ」
 そう返されて慎も頷き、魂の欠片を握り締める。
 確か、華子は冥王になる為の生贄とされるはずだった。
 それは彼女も知っているはず。
 それに、操られて人を攻撃したこともあったはずだ。にも拘わらず、冥王に何かを伝えたいのだろう。
「あたし、佐久弥さんに聞きたい事があるの!佐久弥さんは、あたしを……あたしを、道具としか見てなかった? あたしやパカを引き取ったのは、この日の為だけ……?」
 声に冥王の目が動いた。
 華子を捉え、焦点を合わせた瞳を見て、彼女の口角が下がる。
「愛情は、何処にも、なかった……?」
 彼女の中には今までの出来事の多くが駆け巡っているのだろう。
 今にも泣きそうな顔で問う声に、慎は眉間に微かな皺を刻む。
 だが――
「っ、下がれ!」
 突如放たれた雷撃が、奇妙な爆発を起こす。
 それを九郎が魂の欠片を使って遮ったようだ。
 背に華子を庇い見据える先には、冥王がいる。
 これを目にした瞬間、慎も動いた。
「――もう、心すらないの?」
 ポツリと呟いた声に目が動くが、遅かった。
 僅かに開いた口に、魂の欠片を投げ入れる。
 直後、冥王の動きが止まった。
「おじさん!」
 慎の声と同時に不知火の鎌が振り上げられる。
 そして頃合いを見計らっていた深墨の刀が鞘を離れると、2つの刃が冥王の喉を掻き切った。

――……ッ、ゴオオオオオッ!

 まるで地鳴りのような音が響き、2人が再度刃を構え直す。
「深墨さん、弱点は胸だ!」
 叫び声の主は九郎だ。
 彼は肩を飛び降りて冥王の左の胸に直行している。
 そして深墨も同じようにそこを目指す。
 そして2人が同時に頷き合うと、鋭い攻撃が弱点とされる場所に見舞われた。

――グオオオオオオオオッ!!!

 雄叫びが耳を打ち、ガラスが砕けるような音が響く。
 そうして前を見ると、不知火が金色に光る魂をランプに納めるのが見えた。
「……これで、お終いだね」
 慎はそう呟くと、ランプの蓋が閉じられるのをじっと見つめていた。

  ***

 慎は右目にコンタクトを嵌めると、小さく息を吐き出した。
 その肩に何かが触れる感触がして振り返る。
「え……」
 振り返った先に居たのは不知火だ。
 だが何かがおかしい。
 僅かに目を見開く彼を見て、不知火は金色の光を納めるランプを掲げるとニッと笑った。
「コイツは、こっちで処分する……ありがとうな」
 そう言ってもう一度叩かれた肩。
 それに頷きを返すと、不知火は踵を返して行った。
 そしてそれを見送った慎の目が僅かに瞬かれる。
「今のって……」
 不知火の容姿が少し変わっていた気がする。
 だが――
「もう、考えるの面倒だよね」
 そう言って笑うと、慎はのんびりした足取りで東京の街に帰って行ったのだった。


――……END


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 6408 / 月代・慎 / 男 / 11歳 / 退魔師・タレント 】
【 2895 / 神木・九郎 / 男 / 17歳 / 高校生兼何でも屋 】
【 8241 / 葛城・深墨 / 男 / 21歳 / 大学生 】

登場NPC
【 不知火・雪弥 / 男 / 29歳 / ソウルハンター 】
【 月代・佐久弥 / 男 / 29歳 / SSオーナー(冥王) 】
【 星影・サリー・華子 / 女 / 17歳 / 女子高生・SSメンバー 】


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■         ライター通信          ■
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こんにちは、朝臣あむです。
SSシナリオ・最終決戦・後編にご参加いただきありがとうございました。
長かったSSもこれで終了となります。
最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
最後、微妙な謎を残しておりますが、少しでも納得のいく形で終了していれば書いた方としましても本望です。
また機会がありましたら、冒険のお手伝いをさせていただければと思います。
ご参加、本当にありがとうございました。