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【Life×Life〜遭遇編〜】
■志摩■

<欅/Beast's Night Online(fa5241)>

 休日。
 それは何かが起こったり起こらなかったりするものだ。
 家の中で過ごすのなら家具に小指をぶつけた、とかなんかデター! などなどありうる。
 そして、それが外ならば、雨にふられた、犬に追いかけられたなどなど……。
 Tシャツにパーカーはモデルで俳優の同居人のものを勝手に拝借、帽子をしっかりかぶって欅は街に出る。
 今日が休日の欅に起こったのは、とある人物との出会い。
 それも行きつけの楽器屋の前で。
「「あ」」
 重なる声は同時で。
「こんちわーって、おお、どーした! え、もしかして常連?」
「こんにちわ、常連ですね。渋谷さんもですか? 今日はヒッキーな日じゃないんですね」
「うん、今日はアクティブデイ! ここにはよく遊びに来て騒いで帰ってるんだけど、今まで出会わなかったの不思議だね」
 出会った人物、渋谷蓮は笑った。
 欅と蓮はつい最近大所帯ライヴを成功させた。
 長い時間かけての準備もあったために、単なる知り合い友達、というよりも戦友と言った方が近いかもしれない。
 二人はそろって店の中へ。
 すると店長とこれまた顔見知りの常連客しかいない。
「お、二人揃って……そういやこの前ライヴ、お疲れさん! 楽しかったよ」
「おお、よかった!」
「ありがとうございます」
 ちゃんと行ったんだぞ、と店には回ごとに違うクラフトのカードが飾ってあった。
 それがなんだか嬉しい。
「ケヤッキーカッコよかったぞー」
 良い歳のおっさん店長はニカッというように笑う。
「え、ケヤッキーって呼ばれてるの?」
「ええ、いつの間にか」
「……ケヤッキー」
「はい」
「呼んでみただけ」
 その言葉にそうだと思った、と欅は笑う。
「あれ、ギター新しいの入ってる……」
「お、あれは俺がデザインした特注、世界に一本ものだぞ」
「店長…・・・」
「何やってんのあんた」
 だって作りたかったから。
 そんな一言だけ返ってくる。
「ちょっと弾いてもいいですか?」
「ああ、飾ってても意味がないからなぁ」
「ありがとうございます」
 ギターを手にとって、爪弾く。
「なんか、凄く手になじむ」
 欅はそのギターで、つい最近演奏した曲のメロディを弾く。
 それに瞬間的に反応して蓮が軽く声を乗せる。
 曲はライヴで一緒に演奏したばかりの曲。自然手拍子や口笛もまじって、あっという間に一曲。
「やっぱ弾き手がいいといいな。そのうちそれ、ケヤッキーに譲ってやろう」
「本当ですか、待ってますよ」
 楽器が増えるのは嬉しいことだ。
 欅は店長の言葉に笑顔を向ける。
「そういえば、ケヤッキーの父さんは元気?」
 と、ふと蓮が言う。
 おなじみの話だ、出会えば一度はしなければいけない話、というレベルになりつつある。
「父さんは今頃実家でビール造ってますよ。ビールが目に染みて痛いって煩くて」
 きたか父さんネタ。
 この日の欅は準備ばっちりだった。
 次このネタを振られたらこう返そうとシュミレーション済み。
「父さん……ビール風呂に入ってるんだね」
「そうなんですよ、俺よりデカイ図体で。たまに母さんから愚痴の電話がかかって来ます、痛い痛いと煩いと」
「母さん! あれか、母さんもやっぱり!」
「やっぱりって何考えてるんですか」
「え、いや右目が実はとか……」
「そう実はこの右目は……ってそんなことありません」
 ノリツッコミに周囲は笑う。
「いますよ、母さん。京美人の母さんと」
「目玉の父親が」
「八頭身ドイツ人の父親です」
 まじめに、でも笑いながら欅は言う。
 他のメンバーにとってあったことのない欅の両親は気になる存在だ。
「今度写真もってこいよ」
「うん、見たい見たい」
 その見たい! には店にいたメンバーも頷く。
 そしてこの後二人はその店であーだこーだ世間話から芸能界裏話、ノロケ話など色々話をひろげて、店長の好意にあやかって昼食も店の奥のスペースで。
 ピザとったりお好み焼き焼いてみたりそれはもう好き勝手に騒がせてもらった。
 店長ありがとうと、欅と蓮は店長をひそりと拝んだ。
 もちろんそんなこと店長は知らない。
 そして楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
「じゃあまた!」
「お邪魔しました」
「いつでも来いよ、またライヴするときは声かけてくれよ」
 店長に見送られ、二人は外へ。
 陽は少し傾く時間帯。
「や、楽しかったね!」
「そうですね、有意義な時間でした」
 店を出て繁華街を歩いて行く。
 この時間帯は学校終わってちょっと遊んでいこうという学生が多い。
 この二人が一緒にいて、目立たないわけが、もちろんないのだ。
「ネェケヤッキー」
「ナンデショウカ」
「チョット視線ガホラ」
 ぐさぐさとちくちくと。
 目立たないように、ばれないように一応工夫はしているのだが、やはりばれるときはばれる。
「あ、あのっ! 欅さんと渋谷さん、ですよね!?」
 と、少女二人が勢いよく二人の元へと駆け寄ってきた。
「いや……その……」
 欅と蓮は一瞬、視線を合せる。

『これ捕まったら次から次へときますよね』
『来るね、絶対来るね! そんなことになったら死ねる!』
『……それならやっぱり』
『うん』

 逃げるしか!!!

 意思疎通した瞬間、同じタイミングでダッシュ!
「あっ! 逃げたっ!!」
「やっぱりホンモノー!!!」
 本物だとわかれば、周りも遠慮なく追いかけてくる。
 そんな中を二人はダッシュ。
 ダッシュダッシュダッシュ!!
 人ゴミかきわけ、そして抜けていく。
 もみくちゃにされそうになるのを逃げきって、落ち着いたのは30分後。
「げっほ! あーああああ、ライヴより、ある、意味酸素、たりな、い……」
「……酸素っ……! ライヴ、は……楽しいけ、ど……これは……」
 ゼェゼェハァハァ、ひっそりとした路地で座り込み息を整えること五分。
 どちらからともなく笑いが漏れる。
「や、でもスリリングだった」
「たまには、ですね」
「うん、たまには」
 たまには。
 たまの休日だからの体験。
 今日は刺激がいっぱいだったと欅と蓮は笑う。
「さって、そろそろ帰らなきゃね!」
「はい、また」
「うん、じゃあ……どっかのライヴかまたうっかりあの店でね!」
 バイバイと手をふり、歩む方向は。
「……あれ、ケヤッキーもこっち?」
「地下鉄あっちですから」
 地下鉄のホームまで、まだ二人のさよならはお預けだった。



 一日が終わる。
 ちょっといつもと違う日常は欅にとって良い刺激に。
 また明日からも、音楽もなにもかも頑張ろう!

<END>




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この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。

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