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【V.S.】
■高原恵■

<ヤスノリ・ミドリカワ/神魔創世記 アクスディアEXceed(w3f660maoh)>
<緑川安則/Beast's Night Online(fa1206)>

●施設紹介
 『寺根スポーツワールド』という巨大なスポーツレクリエーション施設がある。寺根町に今秋オープンしたばかりの施設だ。
 ここに行けば様々なスポーツを体験出来るとの触れ込みで、それを広く知ってもらうためなのかこの施設は無料利用券をあちこちで配付していた。リピーター確保のために必要であると、施設経営者が判断したのであろう。だいたいどんな施設にしろ、巨大になればなるほど管理維持費なども膨れ上がってゆくのだから。
 まあそんな経営側の裏事情など、利用する側は知ったことではない。せっかくの無料なんだし、たっぷり楽しんで帰るかという心積もりだ。楽しまなければ損であるからして。
 ともあれ、今日の『寺根スポーツワールド』は利用客が多く訪れ、思い思いに皆楽しんでいるのであった――。

●射撃場にて
 さて、『寺根スポーツワールド』では様々なスポーツが体験出来るのだが、どんなスポーツが体験出来るのか、一部軽く触れてみよう。
 陸上競技場や室内プール、それにアスレチックフィールドといった基本的なものがあるのは当然。温泉やバンジージャンプ、バーベキュー場といったちょっと変化球なものもある。そして……これから紹介する射撃場なんてものもあったりする。
 この射撃場、なかなか内容が充実している。射撃場というのだから、普通に考えれば銃を撃つのだなとすぐに思い浮かぶことだろう。もちろんその通り、ここではクレー射撃やライフル射撃といったものが出来るようになっている。
 が、それだけではなく、弓道にアーチェリーのように銃によらない射撃も楽しめるのがポイントである。なので、手前で銃を構えている者の奥に、和弓を引き絞っている者の姿が見えるなんてこともあり得るのだ。
 あとはただ的を狙うだけではなく、いくつかシチュエーションを設定して楽しむことが出来るので、バリエーションとして考えればそれなりに多いのではないかと思われる。
 そんな射撃場だが、今日のこの時点では7割超の埋まり具合といった所だろうか。施設数を考えれば、なかなかの人気振りだ。男女比はやはりロマンゆえか、男性の方が割合が多い。
 その中に、迷彩柄の服装に身を包んでいる背の高い銀髪の眼鏡をかけた男性の姿があった。その男性は遠く正面に設置された丸い的をまっすぐに見据え、背筋をぴんと伸ばして右手で銃を構えて非常に姿勢よく立っていた。
(……ふむ……)
 銃口位置の微調整を行ったかと思うと、男性は立て続けに6発の銃弾を撃ち放った。銃弾は狙い違わず的を撃ち抜く。最初は的の中心より少し上、そこを起点に五角形を描くように時計回りに撃ってゆき、最後の一発を目との中心に見事命中させていた。言い方を変えれば、銃弾によって出来上がった五角形の中を最後に撃ち抜いたのだ。
 男性はポケットから小さなオペラグラスを取り出すと、それで的の様子を詳しく眺めた。遠目で見ていた時は綺麗な五角形に見えたのだが、こうして拡大して見てみると右下の頂点がほんの僅かだが外側に膨らんでいた。
「僅かにずれたか……」
 男性――ヤスノリ・ミドリカワは小さな溜息を吐くと、オペラグラスを目元から離した。そして何気なく周囲をゆっくりと見回してみた。
(ん?)
 と、ヤスノリの動きがぴたっと止まった。視線はヤスノリの居る場所から2人分ほどスペースを空けた左側。そこで1人の銀髪の青年が、やはり的に向かって銃を構えている所であった。背丈はおおよそヤスノリと同じほどであろうか。しかしながら、向こうの方が細身である。
 恐らく普段なら、ヤスノリはそのまま視線を外して再び自分の射撃へと戻っていたことだろう。けれどもこの時は、何かしら感じる所がありそのまま青年の様子を見つめていた。
 びしっと片手で銃を構える青年。腕の揺れや姿勢のふらつきなどは感じられない。
(経験者か?)
 青年のその姿を見て、ヤスノリはそう思った。何らかのきちんとした銃の訓練を受けている立ち姿であったからだ。そもそもろくに銃を撃ったことのない者であれば、両手で銃を構えてもその重みで腕が揺れてしまうのだ。姿勢だってそう簡単に定まるものじゃない。けれども目の前の青年にはそれがなかった。
 やがて青年は5発連続して銃弾を放った。ヤスノリはすぐにオペラグラスを取り出し、的の様子を確認する。丸い的の中心付近には銃弾による5つの穴が密集して空いていた。
(……たいした腕前らしい)
 青年の銃の腕に感心するヤスノリ。あれが的ではなく敵の急所であると考えるなら、かなりのダメージを敵に与えているはずだ。
 青年は銃を置くと、すっとヤスノリの方に顔を向けた。迷いないその行動からすると、どうも先程からヤスノリが見ていることに気付いていたのであろう。
「……何か用かい? サインなら、終わってからにしてもらえるかな」
 青年――声優兼俳優の緑川安則は口を開くなり、ヤスノリへそう言った。唇の端にほんの僅か笑みが浮かんでいることからして、本気でそう言っている訳ではないことが窺える。
「たいした腕前だ」
 それに対し、ヤスノリはこう静かに返した。自分が見ていたことは向こうにも分かっているのだから、率直に腕前について述べたのである。
 すると、安則の方から意外な言葉が返ってきた。
「そっちこそ、と言わせてもらおうか」
 ……つまり安則の方も、先程のヤスノリの射撃の様子を見ていたということだ。ならば話が早い、ヤスノリは安則の方へゆっくりと歩み寄っていった。そして互いに自己紹介を行う。
「戦闘集団ゼロ→駐屯地基地司令、ヤスノリ・ミドリカワである」
「伊達屋一座の緑川安則だ」
 無言で向かい合う2人。先に沈黙を破ったのは安則の方だった。
「あんたなかなかやるな。とても他人とは思えないよ」
「同感である」
 ヤスノリは短く答え頷いた。互いに僅かに腕前を見ただけではあるが……そこはそれ、何かしら2人だけに思うものがあるのだろう。時に『魂の双子』などといった言葉が使われたりするが、この場合は『魂を同じくする者』とでも言った方がよいのだろうか。
「……1度勝負してみたいよ」
 そう口にしたのは安則の方であった。他人とは思えなくとも、やはり高い腕前を持つ者が目の前に居るのだ。どちらの腕前がより優れているのか、確かめたくなる欲求というのは出てくる訳で。
「それについては構わぬが……」
 異論はなさそうなヤスノリ。ちらりと的の方に目をやってから答えていた。
(あの的を狙うというだけでは、簡単に優劣は決まらなさそうに思える)
 互いに狙った場所を撃ち抜くことの出来る腕前。的に当たった場所に応じて点数をつけたとしても、かなりの長期戦となることはヤスノリでなくとも容易に想像が出来た。ゆえに、勝負するのはよいがその内容を少し考えなければならないと思ったのだ。
 そのことは、安則の方も思ったのであろう。少し思案してから、勝負方法についてある提案をしてきたのである。
「どうだろうか――」

●勝負
 少しして2人は場所を移していた。といっても、同じ射撃場内だ。違うのは、遠くに見える的があるべく場所の様子だ。そこは家の窓や玄関といった外観が模されていたのである。
 目を転じてみると、ビル風の外観だったり、西部劇風の酒場の外観だったりといったものもある。
「つまりこういうことであるな」
 ヤスノリは安則に向かって確認をした。
「セット内において、いかに標的となる的のみを撃つか、と」
「ああ。もちろん白ヤギ、黒ヤギの的を撃てば減点だ」
 と補足する安則。どうやらここは、窓や玄関などといった場所からランダムにターゲットの的が出てきて、それを撃ってゆくというシチュエーションが楽しめるスペースのようだ。だからこそ雰囲気が出るように、外観も複数用意されているに違いない。
 安則が言った白ヤギと黒ヤギというのは、いわゆるダミーターゲット。一般人、あるいは人質といったものに位置付けされる的である。ゆえに、撃てば減点となるのは当たり前。
「公平を期するために、スタートは同時だ。いいな?」
「うむ」
 安則が確認すると、ヤスノリはきっぱりと答えた。そして各々位置に着き、使用する銃器の準備をする。オートマチックハンドガン、マシンガン、アサルトライフル……といった具合に。
 1人分のスペースを空けて並んだ2人は一瞬無言で視線を交わしてから、的の現れる前方へ顔を向けた。ともに、オートマチックハンドガンを手にして。
 スタートの合図が聞こえ、いよいよ勝負開始。窓の中、あるいは玄関先へ、ターゲットが順々に現れてゆく。
 2人ともそれらを確実に撃ち抜いていた。まあ腕であったり、肩であったりと、各人によって狙う箇所は異なっていたりはするが。
 無論白ヤギや黒ヤギが出てきた時には、誤って撃たぬよう引き金から指を外すなどしている。序盤はまるで差がないように見受けられた。
 ターゲットの現れるスピードは次第に早まってゆく。当初は1枚ずつ現れていたターゲットも、2枚3枚と同時に現れるようになってゆく。そうなってくるとオートマチックハンドガンでは追っ付かない、2人ともマシンガンに持ち替えターゲットを撃ち抜いてゆく。
「ふははははははっ!」
「はははははははっ!」
 ……途中こういった高笑いがステレオで聞こえてきたことは、あまり考えないことにする。これが世に聞くトリガーハッピー状態であるのだろうが。
 とはいえども、相変わらず白ヤギや黒ヤギを撃ってはいないのはたいしたものだ。さすがに銃弾を発射しないという回避法ではなく、白ヤギや黒ヤギに当てないという回避法が出てきはし始めたけれども。
 そしていよいよセットが終わろうかという時――とんでもないターゲットの出方になってしまった。ヤスノリも安則も、玄関先に手前から白ヤギ・黒ヤギ・ターゲットという並びになってしまったのである!
 白ヤギや黒ヤギが邪魔になって、ターゲットが非常に狙いにくい。こういうのは、実際の人質篭城事件などでもあるケースだ。さあ、2人はどう対処するのかと思ったら……。
 安則はオートマチックハンドガンを再び持ち、右側へ身体を動かすと、すっと身を屈めてターゲットを狙った。位置と角度を変えることによって、ターゲットのみを撃ち抜こうと考えたようだ。
 一方のヤスノリはアサルトライフルを手に取ると……ダンッ! と目の前の銃を置いてあるテーブルの上に飛び乗ったのである。そしてアサルトライフルの銃口をぴたりターゲットへ向ける。こちらも方法は違えど、角度を思いっきり変えることによってターゲットのみを撃ち抜こうとしているらしい。
 結果は互いに見事ターゲットに命中。咄嗟の判断力もたいしたものである。
 だが……これは困った状態だ。何しろターゲット命中ミスもなければ、減点もない。五分と五分なのである。それにこのまま引き分けで終わらせてしまうには、ちょっと互いにおさまりがつかない状態となっていた。
「……決着をつけないか」
 今度はヤスノリの方から提案を出した――。

●OK牧場ではないけれど
 射撃場の裏手、2人は人気のないこの場所へ移動してきていた。これから行う勝負は、射撃場内では出来ない内容ゆえに。
 勝負……いや、これはもう決闘だろう。何しろ今から、昔ながらの決闘よろしくクイックドロー勝負を行おうというのだから。すなわち、早撃ちだ。
 距離を取り、無言で向かい合う2人。時間にして数10秒……だったろうか。2人にとっては数分、ひょっとしたら何時間にも感じた瞬間だったかもしれない。しかし、2人は動いた。互いに銃を構え、相手へ銃口を向け――。
 チュイィィィィィィィンッ!!!
 高い金属音が聞こえたかと思うと、2人の中間点の地面にパシパシッと何かつぶてのような物が落ちる物音がした。2人とも構えていた銃を静かに降ろす。どちらも怪我をしたり、血を流したりといった様子は全く見られない。
「弾丸を弾くって言うのは……凄いじゃないか」
 安則がそう言って声をかけてきた。
「そっちもだ。安則」
 そう返し、ヤスノリはふっと唇の端に笑みを浮かべた。
 これまた互角な訳だが、ここまでやったのだから互いに気持ちはすっきりとしていた。やがてどちらからともなく歩み寄り、まずは安則がすっと右手を差し出した。
 ヤスノリはそれに対し、パシッと手のひらを叩くようにして安則の右手を握り締めた。互いに腕前を認め合った男同士の握手、それを裏付けるかのように2人にはとても満足げな表情が浮かんでいた……。

【おしまい】




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この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。

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