トップページお問い合わせ(Mail)
BACK

【スポーツの秋! 地下秘密通路〜宝なんて本当にあるのですか〜】
■切磋巧実■

<フローラ・エリクセン/アシュラファンタジーオンライン(ea0110)>
<シーン・オーサカ/アシュラファンタジーオンライン(ea3777)>
<篠原 美加/アシュラファンタジーオンライン(eb4179)>
<リア・アースグリム/アシュラファンタジーオンライン(ea3062)>

 ――寺根スポーツワールド。
 秋に彩られた寺根町にオープンした巨大スポーツレクリエーション施設である。
 ここで様々なスポーツを体験できるとの触れ込みで、無料利用券が紙吹雪の如く舞っていた。
 そんな中、乙女達は或る噂を聞きつけたのである――――。

●浪漫への誘い
「‥‥地下秘密通路、ですか?」
 リア・アースグリムは端整な風貌を訝しげに曇らせると、長い金髪から覗く碧の瞳を上目遣いで向けながら、不安そうに薄く微笑んだ。彼女の視界に映る短い茶髪の娘は、豊かな胸を抱くように腕を組み、眼鏡のレンズを煌かせて自信たっぷりの笑みを浮かべる。
「そうよ。この地下秘密通路は遺跡になっていてね、宝が隠されているって情報を掴んだのよね」
「は、はぁ‥‥そうなんですか‥‥」
 篠原 美加を見つめる少女の眼差しに変化はない。否、一層不安に彩られた気がする。
 ――地下秘密通路。
 テラスポ正面ゲートを通らずに入場できる文字通り『秘密』の通路らしい。
 有名人等の正面ゲート利用に抵抗のある場合に対応すべく用意されたとの事だが、そもそも美加が何ゆえ秘密を知るに到ったかも信憑性に欠ける。
 ‥‥確かに知れ渡る名声は持っているが――――。
「‥‥それだけなの?」
 眼鏡の奥で黒い瞳を見開き、拍子抜けした彼女は素っ頓狂な声をあげた。
「‥‥私に何を言わせたいのですか?」
「だ・か・ら♪」
 椅子に腰を下ろしているリアの両肩を掴むと、美加の瞳がニンマリと微笑む。
「遺跡探索しようと思うのよね。宝なんて浪漫でしょ♪ トゥームなんとかや、ナショナルどうとかさ☆ 遺跡は謎を用意して僕たちを待っているんだよ!」
「し、知りませんっ」
 ブンブンと揺すられながら少女は顔を逸らし、誘いをキッパリと断った。美加は肩から手を放さず、深い溜息を吐く。
「嘆かわしいよ‥‥遺跡が怖くて冒険者だなんて‥‥」
「こ、怖いと言っているのではありませんッ! 情報が疑わしいからお断りしているのです。そもそも、なぜスポーツ施設の地下に遺跡があって、しかも宝があるのですか?」
「‥‥‥‥ろ、浪漫じゃないかな?」
「帰りますっ‥‥」
 スックと立ちあがるリアの腰に美加がガッシリとしがみ付いた(因みに身長は低いが若干年上だ)。胸の谷間を押し潰しながら、子犬のように瞳を潤ませる。
「行こうよー。何も無ければスポーツを愉しめば良いでしょ? ねー、リア〜☆ シーン達も誘ってさー、皆で遊びましょうよー」
「あなたはどこの聞き分けの無い子供ですか‥‥。分かりました、ではこうしましょう」
 まるでお嬢様に縋りつく召使いの様相の中、リアは深い溜息の後、ピッと人差し指を立てて続ける。
「シーンさん達が行かないと言ったら、この話は忘れて下さい」
 だが、この条件が後に仇となる事を彼女は知らなかった――――。

「地下秘密通路の遺跡やて? なんや胡散臭いなぁ‥‥けど、おもろそうな話やん♪」
 ――えっ?
 リアは瞳を見開き、固まる。視界に映るシーン・オーサカは、美加と意気投合して遺跡の話題に華を咲かせていた。思わず碧の瞳を輝かせて無邪気な微笑みを浮かべている愛らしい娘へ声を掛けると、後頭部で結った長い金髪に弧を描かせ振り向く。
「なんや? リアは行かへんつもりなんか?」
「で、ですから‥‥怪しいではありませんか? 誰かの仕組んだ罠なのかもしれません」
 胸に手を当て、拭い切れぬ不安を促す少女。シーンは豊かな胸を左右の脇で押し寄せながら腕を組み、神妙そうな色を浮かべた。美加が彼女の背後で胸元の両拳を固めて息を呑む。
 どうやら考え直してくれるかもしれない。リアが安堵の溜息を小さく洩らした時だ。
「罠やったら遺跡に付き物やさかいなぁ‥‥ええんちゃう?」
 ――は?
「流石ッ、僕の見込んだシーンだよ☆」
「罠も楽しみの内やわ♪」
 なんて事でしょう。二人は両手を互いに合わせ、たわわな四つの果実を弾ませながら楽しそうにピョンピョンと跳ねているではありませんか。
「そ、そんな‥‥」
 金髪をフワリと舞い泳がせ、リアがガクリと膝を着く。まるで絶望を告げられた様相だ。
『私も‥‥賛成‥しかねます』
 希望の声は落ち着いた響きで紡がれた。瞳を見開き、リア、美加、シーンが、まるで推理ドラマの1シーンのように視線を流す。三人の瞳が捉えたのは、首の後ろで結った銀の長髪から尖った耳を覗かせる小柄な少女だ。中央から分けた髪から覗く額に装飾品が輝いており、赤い瞳も相俟って神秘的な雰囲気を漂わす。はしゃいでいた娘は金髪の束を棚引かせ、戸惑いの微笑みを浮かべながらフローラ・エリクセンへ近付く。
「な、なに言うてはるんや‥‥おもろそうやんか?」
「リア様が仰る通り‥‥です。無茶‥無謀‥無計画‥にも‥程があります」
 淡々と痛い部分を的確に指摘してシーンに次々と見えない矢の洗礼を心に叩き込むフローラ。リアは胸元で手を組み瞳を潤ませた。
「ああ、神様☆ ‥‥救世主はこんな傍においでになっていたのですねっ!」
 ‥‥大袈裟だろう。
「ち、ちょっとシーンッ! こんな所で時間を割いている余裕は無いんだよっ!」
 美加の悲痛な声が届く中、床に倒れ込んだシーンは、まるでカウントが響き渡っているような様相で、ゆっくりと膝を戦慄かせながら立ち上がった。試合再開だ。
「まだや‥‥まだ終わらへんでッ。フローラッ!」
「‥‥何でしょうか? シーン様」
「テラスポ行きたくないんか? 巨大スポーツ施設やで? うちらより長生きしとるエルフかて見た事もないもんが、仰ーッ山っ用意されてる筈や! 探究心を擽られるやろ?」
 身振り手振りで金髪と胸を舞い躍らせ、説得を続けるシーン。彼女を見上げるフローラの白い頬が興味をそそられ、桜色に染まる。
「‥‥た、確かに‥‥テラスポには‥‥行きたい‥‥ですっ」
 ニヤリと愛らしい風貌と碧の眼差しが不敵な笑みを描く。
「そうやわなぁ☆ ほなゲートで長蛇の列に並ぶより、合理的に近道した方がええやろ?」
「‥‥そう‥‥ですね」
 神秘的な赤い瞳がリアへ向けられる。
「‥‥リア様、地下通路を‥‥進みましょうっ」
「えぇっ!? か、神よ‥‥」
 金髪を床に泳がせ、再び絶望の淵に落とされた少女は、暫く立ち上がらなかったという――――。

●後悔先に立たず
「ち、ちょっとッ、通路はこっちですよっ!」
 地下秘密通路にリアの声が響き渡った。しかし、遺跡に誘われるように歩いてゆく美加とシーンには聞こえていないらしい。
「この遺跡から宝の匂いがするわね♪」
「うちもそんな気がしてたんや〜☆」
 ――ダメだ。
 深い溜息を洩らす中、フローラが相変わらずな雰囲気で言葉を紡ぐ。
「‥‥困った皆様ですが‥‥仕方ありません。リア様、参りましょう」
「そうですね、仲間を放って置く事は騎士として許し難い行いです。深みに入らない内に引き止めましょう」
 結局四人は遺跡に足を踏み入れ、奥へと進んだ。懐中電灯が模るリアの影が何度も引き返す事を告げるものの、暗闇に虚しく響き渡るのみである。
「地下通路は灯りがあるからって、懐中電灯を予備として一個だけ用意しましたが‥‥」
「喧しいわ。狭い遺跡の通路でギャンギャン吠えんと聞こえてはるわ」
「なっ、ぎゃんぎゃんなんて吠えていませんッ!!」
 ‥‥否、今のは吠えただろう。
 思わず言い掛りに口調を荒げた時だ。後方を歩くリアとフローラの背後で、鈍重な振動と共に巨大な石版が落下した。ふわりと金髪と銀髪が砂埃に合わせて舞う。
「‥‥」「‥‥」
「もう、気をつけてよね。遺跡は振動に脆いんだから」
「どないすんねん‥‥リアの甲高い声が落盤させたんやで」
 美加とシーンが呆れたような響きを紡いだ。暫しの沈黙が流れると、少女が困惑気味に口を開く。
「‥‥わ、私の所為だと言うのですか!?」
「気にしないで‥‥下さい。これは‥自然に落ちたものでは‥‥ありません」
 恐らくトラップでしょう‥‥。と、石版に触れながらフローラが告げた。リアが顎を引いて涙目で睨む中、何事も無かったようにギコチナク微笑む二人が背中を向ける。
「そ、それより退路を塞がれては先に進むしかないわよね? シーン」
「そ、そやなぁ‥‥まあ、油断せんとこ?」
 ――カチッ☆
 シーンが一歩を踏み出した時だ。踏み込んだ床が乾いた音と共に沈み込む。
「‥‥カチ?」
「‥‥ッ!?」
 刹那、左右の壁から何かが残像を描きながら少女に放たれた。赤い瞳が呆然と見開かれる中、駆け寄ろうとして立ち止まるリア達が霞んで見える。まるで竜巻の中に佇んでいるような感覚だ。耳に届く耳障りな音は何だろう? 風を巻いて舞う黒い紙吹雪のようなものは一体‥‥。
 フローラは動けなかった。否、動かないと言った方が適切かもしれない。
 ――あれ‥‥?
 霞む視界が光景を鮮明に甦らせる。不安げなリアが駆け出そうとした瞬間、戸惑いと共に佇んだ。懐中電灯の明かりが注ぐ中、ゆっくりと戦慄く指先が少女に向けられる。
「フ、フローラ‥‥さん」
「ん‥‥私が‥‥何か‥‥っ!?」
 視線を我が身に下ろしたフローラは、一瞬にして真っ赤に染まった。彼女は一糸纏わぬ白い肢体を曝け出していたのである。ライトに照らされる標準的14歳位の容姿は、蕾のような危うい色香を放っていた。少女は慌てて裸体を両手で庇い、ぺたんと座り込む。
「な‥‥何を呆然と‥‥見ているの‥ですかっ!?」
「そ、そうですねっ」
 頬を染めながらリアはマントを外すと、羞恥に戦慄くフローラを包み込んだ。美加とシーンは暫く佇んだ後に唇を開く。
「き‥‥器用なトラップだね‥‥何が起きたか分からないけど‥‥」
「服だけ切り刻んだって感じやな‥‥と、兎に角‥怪我ぁなくて良かったわ」
「‥‥ふ、不愉快‥ですっ。なぜシーン様が作動させたトラップで‥私がこんな‥‥醜態を‥‥」
「ホラー映画に有り勝ちなシチュエーションやわな。安心せや☆ 醜態やないで? 恥態さかい♪」
 ――同じ目にあいやがれ‥‥ですっ。
 兎に角、前に進むしかない。隠された宝を探索する冒険は、彼女達を遺跡奥深くに誘ってゆく。
「よろしいですか? 足元には十分に気をつけて下さい。よく観察すれば‥‥」
 ――カチッ☆
「えっ!?」
 ぶわッと金髪を舞い上げ、瞳を泳がせて狼狽するリア。彼女の手が着いた壁が僅かにヘコみを描いていた。次の瞬間、前方を歩いていた美加が悲鳴と共に掻き消える。
「きゃああぁぁぁあああぁぁぁあぁぁぁっッ!!」
「お、落とし穴やな?」
「な、なんでしょう? 布地を引き裂くような音が聞こえるのは気の所為ですか?」
「シーン様‥‥電灯の明かりを‥‥」
 ライトの明かりが斜面を照らし出す。転げ落ちた形跡を物語るよう、彼方此方に衣服の切れ端が貼り付いていた。どうやら粘着質な細工が施されたトラップらしい。
 明かりが流れる先に、両腕でたわわな膨らみを辛くも隠して瞳を潤ませる美加の肢体が、艶かしく照らし出された。呆然を眼下を見つめる三人が三種三様に息を呑む。
「うちも胸には自信あるんやけど‥‥美加の外見ちゅーんかな? むっちりしてやすなぁ」
「何と申しましょうか‥‥大人の躯ですね」
「‥‥熟女‥ですっ」
「こらーっ!! 僕は未だ21なんだぞーっ!!」
 かくして、救出された美加はシーンの上着を一枚羽織って再び冒険に加わった。
「すーすーするんだけど‥‥」
「美加様‥‥気にしてはいけませんっ。‥‥後方を歩いていれば‥見えません‥からっ」
 励ましながらも頬を染めるフローラもとても恥ずかしそうだ。そうは言ってもリアやシーンとて、流石に与える衣に限りがある。尤も、前列に移った少女とて、不安は拍車を掛けるばかりだ。
(‥‥もし同じような罠に見舞われたら‥‥私は隠すものがなくなってしまいますっ)
(仮にうちがトラップに嵌まったら‥腕づくでリアの服を奪うしかないさかい‥‥堪忍な‥ッ!?)
 腹黒い考えが浮かんだ刹那、金色の結い髪を弾ませながら、床の出っ張りに躓いたシーンが踊るように片足でピョンピョンと跳ね進む。前のめりに倒れまいと姿勢制御に努める様が必死だ。
「とッ? と、と、と‥ひんッ‥はわあっ!?」
 グキリ★ と擬音が鳴りそうな程に足が傾き、金髪の娘は豪快にぶっ倒れた。
「シーンさんっ!」
 床に転がる懐中電灯をひっ掴み、シーンを照らす出す。彼女はうつ伏せのまま苦悶の呻きを洩らしていた。
「あたたた‥‥あかん、足を挫いてしまったみたいやわ‥‥ッ!? ‥‥っ!?」
 せめて半身を起こそうと両手に力を込めるものの、ピクリとも動かない。用心しながら傍に寄ったフローラが片膝を着いて様子を窺う。
「‥‥美加様と‥近いトラップ‥らしい‥‥です。ゴキブリなくとか‥‥ですね」
「ん? これダメだよ。衣服が半分侵蝕して剥がせないみたいだね」
「侵蝕って‥‥このままではシーンさんの身体も‥‥っ!?」
 怖い話だが可能性はある。赤い瞳が半泣きのシーンを捉えると、眼差しを背中へ流す。
「‥‥リア様、剣で背中の衣服を切って‥‥シーン様を救出‥‥しましょう」
「なっ、そないな事されたら、うちは‥‥」
 ジトリとした美加とフローラの眼差しが注ぐ。
「まさか、自分は恥ずかしい目に合いたくないなんて、言わないわよねぇ?」
「‥‥恥態‥ですっ」
「助けられるか‥私達のような愚か者が次に訪れた時に床として踏まれるか‥選びなさいッ!」
 切っ先を目の前に翳された彼女に選択の余地は無い――――。

「せーのっ!!」
 シーンの両手をリアと美加が引っ張る中、フローラは白い背中に跨り、腰を掴んで頬を上気させた。まるで納豆の如く粘液が糸を引くと、“たぷん”と大きな胸の膨らみを舞い弾ませ開放される。幸い皮膚は無事なようだ。半裸の娘は四つん這いで安堵の息を洩らす。
「はぁ〜、助かったわ〜。しかし、納得いかへんわな」
 視界を流せばリア以外のうら若き乙女達は柔肌を晒す有様だ。気まずい空気が流れるものの、金髪の少女は端整な風貌で瞳を伏せ、胸元で両手を組む。
「やはり神様は私を見守ってくれているのですね☆」
 ふわりと金糸が舞う中、リアは微笑みを浮かべて腰を落とした。気の所為だろうか? 膝を着いた床が浅く沈んだ気がする。
 ――カチッン☆
 刹那、四人は一斉に固まった。少女の頬をタラリと汗が伝う中、フローラの耳がピクンと跳ねる。次第に届いて来たのは押し寄せる濁流の旋律だ。驚愕に見開く美加の瞳が激しくうねる洗礼に戦慄く。
「後方は落下した石版に塞がれているんだよっ! このままじゃ僕たち‥‥」
 ――溺れてしまうっ!!
 戦慄に染まる中、四人は一気に呑み込まれた。世界は一瞬にして水面に包まれ、濁流に巻かれるよう次々と布切れを散らせて吹っ飛ばされてゆく。
「‥‥っ!?」
 その時リアは苦悶の色を浮かべながら我が目を疑った。
 衣服が水中で溶解してゆき、次第に柔肌を曝け出したのである‥‥。

●悪夢の終着点
「うぅ‥‥ん‥‥ッ!?」
 何度か咳き込みながら少女は意識を取り戻した。虚ろ気な眼差しで半身を起こそうとすると、水分を含んだ金糸が重く感じる。滴る雫が冷たい。碧の瞳をゆっくりと下げ、瞬時に悲鳴をあげる。
「きゃっ‥‥」
 肢体に張り付く長い髪が晒される部分を庇ってくれていたが、やはり恥ずかしい事に変わりない。
「気が付いたようだね」
「お嬢はん、目覚めはどないやす?」
「‥‥これで‥‥仲良く‥恥態‥ですっ」
 仲間達に視線を流すと、穏やかな響きの割に誰もが眼差しを研ぎ澄ませていた。彼女達の睨む先を窺うと、夥しい数で群れる半獣の如き生物を捉える。
「な、何ですかっ!? ち、地底人?」

「どうやらトラップは装備を剥いで無駄なく肉を喰らう為の仕掛けって感じかな?」
「うちらに武器は無いさかい‥‥どないする?」
「‥‥因みに‥‥魔法も‥発動‥しませんっ」
 四人は各々裸体を互いに密集して庇いあう。
「お好きなようにお召し上がり下さい‥‥とは言いたくないタイプですね」
 拳を握り締める中、化物の軍勢が一気に群がった――――――――。





『リアっ!? 聞こえる? リアッ! リア様‥‥!』
 少女が目覚めると漆黒の中にいた。仲間達の声は聞こえるが姿は見えない。
『‥‥夢? 私‥‥生きているのですか?』
 横たわっている感覚から両手に力を込めて半身を起こそうとした時だ。掌に柔らかい感触が伝わった。同時に艶かしい音色の悲鳴が響き渡る。
『んあっ、リ、リア? 急に何するんだよっ?』
『ひゃあッ、ど、どこ触ってるねんっ!』
『‥‥あ、申し訳ありま‥‥』
『‥‥んんっ、リ、リア様‥‥』
 どうやら下手に動かない方が良さそうだ。しかし、闇は明ける気配がない。心なしか呼吸も苦しくなっているようだ。次第に荒い吐息が漆黒の中で溢れ出す。
『‥‥声を、掛け合いながら、状況を、把握、しま、せんか?』
『‥‥そ、そうだね、このままじゃ、生き埋めと、同じ、だ、からね』
『‥‥出口を、見つけるんが、最、優先、やな』
『‥‥手分けして、触って、みま、しょう』
 何故だろう? フローラだけいつも通りに聞こえる。
 かくして、『お触り厳禁、触るなら壁』をスローガンとした調査が直ちに行われた‥‥。
『ん? 皆様‥‥この、壁、力を込めれば、動く、よう、です‥‥』
『ハァ、ハァ、この、壁やな?』
『ちょっと、もう少し、場所、空けて、よね?』
『そ、それでは、一斉に、押し、ま、しょう』
 せーのッ――――。
 鈍い音と共に視界が閃光に包まれた。眩しさに戸惑う中、前に突き出した両手は宙を泳ぎ、外気が肢体を擽ると、一気に体勢の崩れる感覚が襲う。
「「「「き、きゃあぁっ!」」」」
 雪崩込むような衝撃が肢体に痛みを与える中、各々が柔肌の温もりを感じ合っていた。一際苦悶の色を放っていたのは美加だ。ザラザラする地面に谷間を押し潰され、背中に当たる膨らみと身体の重みが彼女を圧迫する。
「お、重いよおぉぉっ!?」
 この時、初めて視界が景色を取り戻す。瞳に映ったのは、唖然として立ち尽くす人だかりだ。好奇の眼差しを向ける者もいれば、真っ赤に染まった顔を手で覆い、耐えられないように駆け出す女性もいた。挙句はデジカメのシャッターを切り捲る輩が群がる始末だ。
 レンズ越しの視界が、うつ伏せに積み重なったうら若き乙女達の肢体を写す。下から美加、リア、シーンと積み重なり、愛らしく陽光に曝け出されたフローラが乗っかっている。
「「「「ひっ‥‥」」」」
 忽ち羞恥に染まった四人は、空を切り裂くような悲鳴を響かせた――――。



●ライターより
 この度はイベント発注ありがとうございました☆ 切磋巧実です。
 いかがでしたでしょうか? 先ずは一度撃沈されています。遅くなり申し訳ありません。
 舞台はスポーツの秋なれど、芸術の秋! 裸体の秋なのですね! あっちもこっちも脱ぎ捲くりで、思考がどうにかなってしまいそうです(笑)。これ、なんてえろげ? って展開ですが、頑張って引っ掛からないように努めさせて頂きました。
 トラップも、どんなハイテク導入されているんだ? って感じですが、深く突っ込むのは止めましょう。流石にバッドエンドは後味が悪そうなので夢オチとし、結果的に大変な目に合わさせて頂きました(どうやって帰ったんだか(汗))。
 今回、4名とも異なる口調だった為、折角なので台詞で演出させて頂いた部分があります。どんな表情だったのか、どんな光景だったのか、想像してみるのも一興かと思います。
 楽しんで頂けたら幸いです。最後となるかもですのでよかったら感想お聞かせ下さいね☆




※この文章をホームページなどに掲載する際は、必ず以下の一文を表示してください。
この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。

BACK



このサイトはInternet Explorer5.5・MSN Explorer6.1・Netscape Communicator4.7以降での動作を確認しております。