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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


都市マルクト【ビジターズギルド】初めての会員登録
野盗撃退

ライター:高原恵

 ビジターズギルド。ゲートの前のでかい建物だと言えば、その辺の婆ちゃんだって教えてくれる。
 中に入っても迷う必要はないぞ。上のフロアにお偉方の仕事場があるんだろうが、用があるのは一階の受付ロビーだけだ。階段昇らずまっすぐそっちに行けばいい。
 軌道エレベーター『セフィロト』探索を行う者達は、まずここで自らを登録し、ビジターとなる。書類の記載事項は余さず書いたか? 書きたく無い事があったら、適当に書いて埋めておけ、どうせ誰も気にしちゃ居ない。
 役所そのまんまで、窓口ごとに担当が別れている。お前が行くのは1番の会員登録窓口だ。
 並んで待つ事になったり、待合い席に追いやられる事もあるが、気長に待つんだな。
 同じような新人を探して、話なんかしてるのもいいだろう。つまらない事で喧嘩をふっかけるのも、ふっかけられた喧嘩を買うのも悪かない。
 まあ何にせよ、書類を出せば今日からお前はビジターだ。よろしく頼むぜ。

●神話と現実
 『バベルの塔』という伝説がある。天まで届くほどに高い塔を建てようとして神の怒りに触れ、一夜にして崩壊させられた塔の話だ。
 だがそれはあくまで伝説、旧約聖書に記された話でしかない。けれども――今、高町恭華が目の当たりにしている光景は、決して伝説などではない。現実であった。
「あれがセフィロト……」
 頭部をフードで覆ったまま、前方に見える建物に目をこらす恭華。『バベルの塔』の話をふと思い出したのは、そのせいだったかもしれない。
 そこにあるのは、上部の崩壊した塔のごとき建物。神の怒り、いや『審判の日』の影響を受けた建物。『バベルの塔』ならぬ『セフィロトの塔』であった。
「あと少しで着く。……そろそろ行こう」
 恭華はマントをひるがえすと、セフィロトへ向けて再び歩き出した――。

●ビジターズギルド
 都市マルクト――そこはセフィロトの第1フロア。都市区画『マルクト』の入り口に新しく作られたビジターの街である。
 街といっても、タクトニムの排除が終了した地域の周囲を、無骨で頑丈な外壁で取り囲んだ区域であるに過ぎない。『審判の日』以前はどうだったか知らないが、今の都市マルクトの街並みは廃虚同然である。それでも上下水道や電気が今も生きている分、廃虚よりは遥かにましであるのだが。
「ああ、ビジターズギルドかい? それならゲートの前だよ。ほら、でかい建物が見えるだろ。そこさ」
 都市マルクトに足を踏み入れた恭華は、ビジターズギルドの場所を通りがかりの青年に尋ねていた。恭華は簡単に礼を言うと、教えられた建物へ向かって歩き出した。
 そんな恭華の背後から、青年のやや呆れたようなつぶやきが聞こえてきた。
「何もわざわざ、好き好んで死にに行くこたないと思うんだがなあ」
 その言葉から察するに、青年はビジターではなくビジター相手に商売など行っている者であるのだろう。ビジターという生業はハイリスクハイリターン、常に死と隣り合わせであるのだから。
 寄り道することなくビジターズギルドに到着した恭華。ビジターズギルドの建物は、一見してかなり古いように見えた。でも古いのは外観だけで、中に入れば十分綺麗で……ということはない。内部も同様に、あるいはそれ以上に古くぼろぼろであった。
 何せ床が擦り切れてコンクリートの下地が見えていたり、壁のあちこちにひび割れが走っていたり、所々に弾痕が残っていたりもするのだから。
 けれども恭華に驚いた様子は全く見られない。ぐるりと内部を見回してから、階段のある方へと向かおうとした。
「おいおい、そっちじゃねえぞ。お前が用のあるのはあっちだ」
 その時、恭華を呼び止めた者が居た。振り向くと、そこには筋骨隆々な大男が立っていた。
「ギルドの会員登録に来たんだろ。それならあっちの受付ロビーだ。書類を書いて1番の窓口に並びな。書類を受け付けてもらえりゃ、それでお前も今日からビジターだ。ま、よっぽどでなきゃ書類を突き返されたりはしねえがな。おおっと、書き漏らしがあるともちろん突き返されるぜ。とにかく埋めちまいな」
 なかなかに親切らしい大男。口調はあれだが、会員登録に必要な事項をちゃんと説明してくれている。
「そうか……感謝する」
 恭華はそうとだけ言い、受付ロビーへ向かった。そしてテーブルの上に置かれていた書類を手に取り、フードを降ろして必要事項の記入を始めた。
「何だ、女かよ。セフィロトは女子供の遊び場じゃねえぞ?」
 女である恭華が居ることに気付き、同じく会員登録に来ていた男が馬鹿にした口調で言った。同意とばかりに聞こえてくる嘲笑や失笑、しかし恭華はそれらを一切無視して黙々と書類を書いていた。
 やがて書類を書き終えた恭華は、1番窓口の前に並んだ。恭華の前にはすでに20数人が列を作っている。前の方には先程恭華を馬鹿にした男の姿もあった。
 受付の順番を待つ間、恭華は何気なく受け付ロビーを見回していた。いくつもの窓口があり中で受付嬢が働いている様子など、まるで役所そのものである。けれども決定的に違うのは、窓口の前で並んでいたり待合席に座っている者たちが物騒な格好をしていることであろう。中には拳銃を取り出して、惚れ惚れした様子で眺めている者だって居る。
 こういう状況だからして、壁に弾痕があったとしても何ら不思議はないのである。

●襲撃
 会員登録の列はなかなか前に進まない。人数のせいか、それとも受付嬢の手際が悪いのか、とにかく遅々として前に進まない。
 ただ自分の順番を待つしかなかったそんな時である。血相を変えて、ビジターズギルドに飛び込んできた者たちが居たのは。
「大変だ! 野盗の襲撃だーっ!!」
 その言葉に、ギルド内はざわめきたった。嬉々として武器を抜く者が居たかと思えば、おろおろとしている者も居る。ちなみに会員登録の窓口に並んでいた者たちの大半は後者の反応であった。
 中には即座に階段の前に走っていった者だって居た。受付嬢たちは奥の部屋へ退避した模様である。
 野盗がセフィロト自体に襲撃をかけてくることはそうはない。普段セフィロト近辺に出没する野盗は、セフィロトを訪れようとする者を道中で襲ったり、周辺の集落を襲うことが大半であるからだ。
 なので、こういうことは滅多にあることではない。ましてや都市マルクト内部まで侵入を許すことも。そういう意味では、今ここに居る者たちは貴重な体験をしているといえよう。
 建物の外から悲鳴や怒号、銃声などが入り交じって聞こえてくる。どうやら野盗の侵入を許してしまったらしい。そのうちに声や銃声が近くなってきた。明らかにこちらへ向かってきているのだ。
「ひゃっほーいっ!!」
 そうこうしているうちに、サブマシンガンやらハンドガンやらを手にした頭の悪そうな野盗が、数人建物の中へと入ってきた。たちまち建物の中でも戦闘が発生する。火薬の匂いが辺りに立ちこめ始めた。
 野盗の1人がハンドガンを手に受付ロビーの方へとやってくる。前に並ぶ者たちが逃げ惑う中、恭華はマントで身を包んで微動だにしていなかった。まるで自らを的にするかのように。
「いい度胸だ! お前からあの世に送ってやるよ!!」
 野盗が恭華へハンドガンを向け引き金を引こうとした瞬間、先に銃声が聞こえた。
「うおっ!!」
 呻きハンドガンを取り落とした野盗は、右手首を押さえてその場にうずくまった。
「……新しいマントを買わないと」
 小さな溜息を吐く恭華。見ればマントに穴が空いている。その向こうから拳銃――ベレッタM92FSがちらりと見え隠れしていた。マント越しに、恭華は野盗の右手首を寸分違わず撃ち抜いたのだった。
 建物内外の声や銃声が次第に小さくなってゆく。自警団やビジターが野盗を排除していると思われる。この騒動もじきに片付くことだろう……。

●最初の1歩
 30分後。野盗も無事に撃退し、受付ロビーでは何事もなかったように業務が再開されていた。
 野盗襲撃前と変わった所といえば、ロビーに居た者のうち何人かの姿が見えなくなったことと、壁に弾痕が増えたことと、そして――恭華が窓口の真ん前に居たことであったろうか。ちなみに恭華の後ろには、先程まで恭華の前に並んでいた者たちが神妙な表情で順番を待っていた。
 さて、何故このようなことになったかというと、野盗撃退後に先程恭華にあれこれと教えてくれた大男がやってきて、恭華を窓口の前まで連れていったからである。
「野盗ごときでおろおろしてるお前らより、こいつの方が先にビジターになるべきだろ。文句あるか、ん?」
 大男はそう言って、前に並んでいた者たちを威圧したのだ。反論は全く出なかった。
「ありがとう……」
 大男に礼を言う恭華。大男は少し照れたようにこう答えた。
「なーに、礼を言われるこっちゃねえよ。いずれどっかで一緒になることもあるかもしんねえが……そん時はよろしく頼むぜ」
 大男はそれだけ言って、そそくさとロビーを後にした。
 恭華は戻ってきた受付嬢に書類を渡し、しばらく窓口の前で待った。書類に不備はなし、無事に受理された。これで今から恭華はビジターの仲間入りをした訳である。
 恭華はギルドの建物を出ると、空を見上げた。空といっても見えるのは薄暗い空間、本当の空などここでは見えやしない。
「よし……」
 恭華は決意の言葉を改めて口にすると、ビジターとしての第1歩を踏み出した。差し当たって最初にすべきことは、新しいマントを見繕うことであろう――。

【END】


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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名:クラス

【0490】 高町・恭華:エキスパート


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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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・『サイコマスターズ・アナザーレポート PCパーティノベル・セフィロトの塔』へのご参加ありがとうございます。本パーティノベルの担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・さてさて、今回はビジターズギルドでの会員登録の模様でしたが、いかがだったでしょうか。野盗の襲撃もありましたが、無事に撃退しております。これからのビジターとしてのご活躍、期待しております。頑張ってくださいね。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、またお会いできることを願って。