<PCクエストノベル(1人)>


詩を紡ぐ者達の集い

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前  /       クラス      】
【0929 / 山本健一/アトランティス帰り(天界、芸能)】
【助力探求者】
【カレン・ヴイオルド/吟遊詩人】
【その他登場人物】
【集落のエルフ達/??】
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◇禁断の森
 聖都エルザードより西部に広がる森。そこは森の支配者であるエルフ達の住む集落があると噂され、近くの住民は立ち寄ろうともしない。集落の周囲には幾重ものトラップが仕掛けられており、進入者を容易を許さないからだ。
 そんな中。二人の勇者(?)が森に訪れた。一人の名をカレン・ヴイオルド。ソーンの世界の伝承を知る吟遊詩人。もう一人の名を山本健一(やまもとけんいち)。アトランティスという異界を旅した普通の人である。

カレン「そろそろ集落の場所です。準備は良いですか」
健一 「準備……?」
カレン「はい。彼らは部外者には容赦がありません……それなりの覚悟が必要になります」

 いつになく真剣なカレンの顔にごくりと息を飲む健一。慎重に歩みをすすめていくとそこかしこに白い骨らしきものが転がっているのが見えた。
 ……やつらは本気だ。
健一 「あのぉ。本当にこの道であってるんでしょうか?」
カレン「大丈夫です。私を信じてください」
健一 「信じたいのはやまやまなのですが……この光景はちょっと居心地がよくあり
ませんし……」
カレン「気の持ちようです。あ、そこ落とし穴がありますよ」

 カレンの言葉が終わるか否かにすぽっと穴に落ちる健一。

カレン「ほら、注意しないと危ないですよ」
健一 「……そ、そうです……ね」 
 
 そのときだ。木の上からすたりとエルフが降りてきた。いぶかしげな目でふたりを見つめながらも、何も言わずに健一を穴から出る手伝いを始めた。

健一「あ、ありがとう」
エルフ「まさかこの穴に落ちる人間がいるとは思わなかったよ。まったく、これじゃあ作り直しだ」

 いそいそと落とし穴を作り直すエルフ。どうやら小動物用の罠だったようだ。幅はともかくかなり深く作ってあるので一度はまったら大抵の動物は抜け出すことができないだろう。
 それはともかくとして、二人は通りすがりのエルフに集落への道筋を聞くことにした。

エルフ「集落に行きたいのか? そっちの女はともかく……人間は連れて行くわけには行かないな。人間は村の女を連れ去って子供を生ませるんだろう?」
健一 「……オークじゃないんだから……それぐらいの分別ぐらい、ちゃんとわきまえていますよ」
エルフ「さあな、顔の良いやつは油断がならない、と村長がよく言っているからな」
健一 「……………」

 がっくりと肩をおろして息を吐く健一。人間がそう思われていたのは少なからず……もとい、かなりショックだったようだ。

エルフ「集落の入り口までだったら案内できるが、村に入れるかどうかは保障しないぞ」
健一 「それでも構いません。お願いします」
エルフ「ひとつ聞いておくが、一体なんのために行くんだ? 他種族のものがいったところで門前払いされるのがオチだし、お互いあまり良い気分になれるとは思えないぞ」
健一 「どうしても会っておきたい人がいるんです。集落にいけばもしかしたら会えると思ってきたんです……どうしてもあの人に言わなくてはならないことがあるんです……!」

 健一は決意に満ちた瞳で言った。その強い思いが伝わったかどうかは謎だが、エルフは集落へ入れるよう交渉してみると約束してくれた。

◇吟遊詩人の手腕
 無事に集落に入れた健一は早速集落にいるエルフ達に質問していこうとした。が、いくら集落にはいるのが認められたとはいえ、人間という彼を警戒してかエルフ達は健一に近づこうとしない。

カレン「どうやらずいぶんと嫌われてしまっているようですね」
健一 「はあ……一体どうすれば良いのでしょうか?」
カレン「そうですね……折角ですからひとつ曲でも披露するとしましょうか。確か演奏がお得意でしたよね。楽器はお持ちですか?」
健一 「あ、はい」

 健一の鳴らす竪琴にあわせてカレンが笛を鳴らす。初めての合奏であるにも関わらず、2人の音色は絶妙に絡み合い、更なるハーモニーをかもし出していく。警戒していたエルフ達も音楽に誘われてか次第に二人の元へ近づいてくる。

健一 (そろそろ大丈夫でしょうか……?)
カレン(もう少し様子をみましょう。少し術も交えますか?)
健一 (もしかして魅了の術?)
カレン(ええ、私の曲に合わせて追いかけるように奏でてください)

 言うなりカレンは曲調をがらりと変えて、軽快な音楽を奏で始めた。健一は瞬時に音を合わせて見事なセッションを奏でだす。どうやら術の効果はかなりきいたらしく、エルフ達は1人、また1人と集まって二人の演奏に魅入っていた。
 もうそろそろだ、とカレンは目線で合図する。健一は一歩エルフ達に歩み寄り、精一杯の声を張り上げる。

健一  「すみません。皆さんの中で……キャロルという名に覚えのある人はいませんか?」
エルフA「……おい、誰か知ってるか?」
エルフB「あまり聞いたことのない名前だな……」
健一  「小さな手がかりだけでも結構です。ずっと……探しているんです」

 健一は「キャロル」の特徴を覚えている限り告げる。だが、エルフ達は首を縦に振ることはなかった。無理もない、この集落にいる者たちは外界を拒絶し、一生を森の中で過ごしているのだから。

健一「ご存知ないですか……それならば仕方ないですね」
エルフC「吟遊詩人のエルフだったら、よくここから東の森にいるって話をきいたことあるぞ。そうだ、あんたの相方なら何か知ってるんじゃないか?」
カレン「東の森の吟遊詩人……? ああ、導きの者達ですか。確か異世界から来た者達が集まって森の番人をしているそうですね」

 カレンもあまり面識がないらしく、詳しくはあまり良く分からないらしい。

エルフA「確か今日は星詠み(ほしよみ)の日だったな。今夜は東の森のやつらも集まるって聞いたし、もしかしたら会えるかもしれないぜ」
健一  「星詠みの日?」
カレン 「この辺りに住む吟遊詩人達の月に一度の集まりですよ。大抵はその村々で個別にやっているそうですが……今回はこの周辺の集落全体で行うようですね」
健一  「行うようって……カレンさんは参加してないのですか?」
カレン 「私はこの森の出身ではありませんからね。それに各地を旅しているので集まりに参加できないことが殆どなんですよ」
健一  「なるほど。それじゃあ日程を知らなくても同然ですね……」
エルフA「集会は夜からだからまだ時間はあるな……俺の住処でよければ休憩場所として貸してやるよ」

 ありがたい誘いに二人は感謝の意をのべて、夜がふけるまでの間をエルフの宿ですごすことにした。もちろんタダでとは言わず、精一杯の演奏を捧げて。

 そして夜がやってきた……

◇星詠みの集会にて
健一 「うわ……すごい人の数ですね。この中から探すのはちょっと大変かも……」
カレン「よく似た人を手当たりしだい当たってみるしかなさそうですね。とにかく行ってみましょう」

 祭りのため、人であふれている広場を二人は歩き始めた。途中何度か似たような風貌のエルフに声をかけるが、誰一人として良い答えを返すものはなかった。しばらく歩き、あきらめ始めた頃。健一は聞き覚えのある音色を耳にした。

健一 「この音は……」
カレン「どうかしましたか?」

 音に導かれるまま歩きだす健一。カレンは眉をひそめながらも健一の後をついていく。
 広場のほぼ端の方に一人のエルフがいた。彼女は健一を見つけるなり、演奏を止めて大きく目を見開かせる。

健一「……ひさしぶりですね……」

 にっこりと微笑む健一。
 仲良く会話を始める二人を眺め、カレンは安堵の微笑みをもらした。

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【ライターより】
 このたびはご参加ありがとうございました。この星詠みの集会はエルフでしか参加
できないため、かなりの幸運だったといえるでしょう。無事に探し人がみつかり旅の目的は成功といったところでしょうか。

 それではまた新しい冒険談をお楽しみ下さい。
 
執筆担当:谷口舞