＜聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記＞
もっと飛べ！ペットボトル
(オープニング)
ペットボトルという、飲料水を入れる容器がある。エルザードでも一般的な容器なのだが、これを用いた遊びに、魔道ペットボトルロケットという遊びがある。
空になったペットボトルに水(等の液体)と空気、そして魔力を込めて、物理的＆魔法的力により飛ばしてみようというのが魔道ペットボトルロケットの理論である。
「別に、深い意味は無いんだけども、子供達に魔法の体験学習をさせるには良い教材だからね」
魔道士ウルは、言う。
「まあ、おもちゃとしては、面白いわよね」
ウルの仲間、盗賊のルーザは答える。
主に子供向けの魔道ペットボトルロケット大会は、ソラン魔道士協会の夏のメインイベントだったが、一部の大人達が、
『魔道ペットボトルロケットでソーン初の成層圏突破を目指す』
と、乗り込んでくるイベントでもあった。
「というわけで、よろしく…」
「はいはい…」
ウルとルーザは、エルザードの広場の片隅で話している。
今日は、エルザード夏祭り。
地域密着型魔道士協会、ソラン魔道士協会に所属するウルは、例年通りに魔道ペットボトルロケット大会の運営を担当させられていた。さらに例年通り、盗賊協会のルーザは、自分の祭りの出し物は子分達に任せてウルの手伝いに来ている。
広場を挟んだ反対側では、ウルの弟子、見習い魔道士のニールが働いている。
「魔道冷気石はいかがですかー…」
マジックアイテム作成の実習で創った魔法の石を、ニールは籠に入れて売り歩いている。
懐に入れるとほんのり涼しい魔道冷気石は、ソラン魔道士協会の夏の主要収入源でもあった。見習い魔道士達は自身の小遣い稼ぎも兼ねて、手製の魔道冷気石を売り歩いているのだ。
一方、盗賊協会では鍵開けや罠外しの実演、罠付き宝箱の販売や盗賊協会推奨戸締り講座を開催していた。
そうして、様々な団体がイベントを開催する中、エルザードの夏祭りは今年も始まる。
「祭りの勝者って、きっと、一番楽しんだ人の事を言うんだろうね」
ウルは呟く。
「はいはい、いいから働きましょ」
ルーザは、テキパキと準備をしている。
夏の終わりも近い、エルザードの出来事だった。
(依頼内容)
・魔道士ウルが、魔道ペットボトルロケット大会の運営を手伝ってくれる人を探してます。
・ついでに、参加者も募集しています。
・それはともかく、エルザード夏祭りが開催中です。
・独自のイベントの開催などもOKですので、気が向いたら遊びに来て下さい。
１．夏祭り
今日は、エルザードの夏祭りである。
「暑いね、しかし…」
残暑の厳しさに、ロミナは愚痴を漏らした。
ロミナはニールに会いがてら、何か涼しくなるマジックアイテムでも調達しようと思い、彼の所属するソラン魔道士協会へと向かう。
…が、魔道士協会には、ニールどころか、魔道士の姿が全く無かった。
「こら、魔道士共が全員留守とはどういう事だい！？」
魔道士協会で留守番をしている受付娘に、ロミナは詰め寄る。
「あ、はい、みんなエルザードの夏祭りに行っちゃいました」
いきなり魔族の傭兵戦士に殴りこまれた可愛そうな受付娘は、あわてて事情を説明した。
「なるほど、ニール達見習い魔道士も、みんな祭りに行ったんだね？」
…しかし、あんたみたいな小娘に留守番をさせて祭りに行ってしまうとは薄情な魔道士共だねぇ」
話を聞いたロミナは、むしろ留守番をさせられてる受付娘に同情してしまう。
「いえいえ、私、夜は非番なんです。そうしたら、男と夜祭に行っちゃいますんで、全然問題無いんですよぉ」
えへ。と、受付娘は笑った。
…夜の祭りと書いて、夜祭。
男と夜祭。むしろ未成年と夜祭。
ロミナの脳裏で、様々な思考が交錯した。
「ふふ…なるほどね。
情報料だ。とっときな」
と、ロミナは上機嫌に受付娘に金貨を１枚放った。
「あ、どもですー」
受付娘は、きょとんとしながらチップを受け取った。そのまま、ロミナは祭りへと向かう。もちろん、ニールを探す事が第一目標である。
２．駆け抜ける祭り
さて、まずはニールを探さない事には仕方が無い。見習い魔道士達は祭りの会場に散らばって、魔道冷気石の売り子をやっているとの事である。まあ、ニールも馬鹿じゃ無いだろうから、人が多そうな所で売り歩いているはずだろう。ロミナは祭りの下見がてら、適当に会場を歩く。ごく普通の縁日のような場所にも人が集まっているようだったが、一番人気は盗賊協会の各種イベントのようだ。特に仮設の家まで用意して行っている、盗賊の進入手口やら防犯対策の実演劇には多くの観客が詰め掛け、観客相手に商売をしている売り子の姿も目立ったので、ロミナは演劇の会場でニールを探した。
･･･盗賊協会の推奨する防犯対策なんて、そんなものを信じたら、それこそ盗みに入られると思うんだけどねぇ。と、演劇を横目で冷ややかに見物しながらロミナは会場を歩くが、結局ニールは見つからなかった。
｢ん、ロミナさんも来てたのか。どんなもんです、盗賊協会の演劇は？｣
ただ、別の顔見知りには会った。医学生の日和佐幸也という青年である。何となく、一人で祭りをふらついているらしい。
｢まあ、茶番にしては上出来だね。
それよりあんた、ニールを見なかったかい？｣
｢ああ、ニールさんなら、さっきちらっと見かけたな。
ペットボトルロケットのイベント会場の近くに居たっけかな｣
ロミナの問いに、幸也は答える。
｢そうかい、ありがとよ｣
と、ロミナはペットボトルロケットのイベント会場の近くへと向かった。
…しかし、暑いねぇ。と、汗を拭うロミナは、ようやくニールを見つけた。
だが、ニールは一人ではなかった。彼の手を引いて走る女性の姿が、同時にロミナの視界に入った。背はかなり低く、まだ子供にも見えるが、子供に見えるから子供とも限らないのがこの世界である。
…悪い虫か？
とりあえず、ロミナは無言で人並みを掻き分け、二人に近づく。
ニールと少女もロミナに気づいたようだ。少女はニールの手を引いて、ロミナから逃げるように走り出した。
…逃げるという事は、追っかけてくれってわけだね。随分可愛いじゃないか。
と、ロミナは乱暴に人並みを掻き分けて走るが、小柄な二人は人並みを潜るようにして逃げる。群集はロミナにとっては障害物だった。だが、それでもロミナはニール達への距離を着実に詰めていく。ロミナが無意味に疲れを感じてきた頃、ニールと少女は足を止めてロミナの方を振り返った。
「全く、ちょこまかと…
お前達、何で人の顔を見るなり逃げるんだい！？」
ロミナはぜいぜいと息をつきながら、ニールと少女に怒鳴った。
「あ、え、えーとー、ニールさんのお知り合いの方なんですね？」
少女がロミナに答える。
「ああ、あたしとニールはパートナー同士さ」
「パートナーというか、まあ、他人では無いです」
ロミナとニールが答えた。
「すいません、なんか、怖い人かと思ったんで…」
逃げちゃいました。と、少女がペコリとお辞儀をした。
「そうかい。
まあ、あたしが怖いか怖くないかは、あたしの相手次第だね。
…それより、あんたこそ何者だい？
ニールとはどんな関係なんだ？」
悪い芽は若いうちに摘んでしまうに限るね。と、ロミナは少女を観察する。
少女は天界人のマリアローダ・メルストリープ(通称マリィ)と名乗り、簡単に事情を説明した。
「ニールさんとは、さっき初めて会ったんです。ペットボトルロケット大会の受付に行く途中、道でぶつかりまして、それで、一緒に行こうって事になったんです。
私、他に好きな人居ますし、本当に全然、そんな事無いです。
…て、早くしないと大会に遅れちゃうわね！」
『私、他に好きな人居ますし』
…なるほど。少なくとも『敵』では無いようだ。
「ペットボトルがどうしたって？」
と、ロミナは態度を軟化させて尋ねた。まあ、あたしにいきなり追いかけられたら、そりゃ、逃げたくもなるか。と、自分でも思う。何やら受付の締め切りが近くて急いでいるようなので、ひとまずロミナはニール達と一緒に走った。
｢うちの魔道士協会で、魔力を込めたペットボトルロケットを飛ばしてみる一般参加のイベントがあるんですよ｣
「ほー、そういうイベントがあるのかい」
イベントの事は良くわからないが、何となく興味を示すロミナである。そうして、事情が良くわからないまま、ロミナはマリィ、ニールと共に魔道ペットボトルロケットの会場についた。会場で受付嬢をやっているのは、無意味に背中に大剣を背負ったヒュムノスの娘である。
「お、ニール君にロミナちゃん、相変わらず仲良しだねー。
ていうかマリアちゃん？すんごい久しぶりだね。何か、前より元気そうだね！」
魔法戦士のフェイルーン・フラスカティである。彼女は元気そうにロミナ達に声をかける。受付嬢が大剣を背負って客を威圧してどうするんだろうかとロミナは疑問に思ったが、あえて何も言わなかった。
「フェイさん、お久しぶりですね。医学生のお兄さんは、今日は一緒じゃないんですか？」
確か、フェイさんには天界人の医学生の相棒が居たような？
「幸也、どっか寄り道してるみたい。多分、飽きたら来るよ！」
「そうなんですか…」
ともかく、受付の時間には間に合ったらしい。ロミナも一応、受付を済ませた。
「そーだ、私もペットボトル用にとっておきの魔法を準備してきたから、後で見せてあげるね！」
と、フェイが会場に向かう三人を見送っている。
『とっておきの魔法』
その言葉に、三人の顔が微妙に変わった。ともかく受付から離れ、本部の方でペットボトル等の道具を受け取りに向かいながら、三人はひそひそと話す。
「フェイさんのとっておきの魔法って…やっぱり、近寄らない方が賢明ですよね？」
久しぶりにフェイに会うマリィだが、彼女は前回のイベントでのフェイの魔法を思い出して眉をひそめる。
「うん、やめといた方が良いと思うよ…」
「ああ、何にせよ、これ以上邪魔が入るのは御免だね」
ニールとロミナもそれぞれの思惑で賛成した。皆、多少なりともフェイの事は知っている。そうして話がまとまった所で本部に着いたロミナ達は、ウルとルーザが居るのを見つける。
「ロミナさんに、マリアちゃん…は、随分久しぶりだね。
…ん、ニール？魔道冷気石は、もう売り終わったのかい？」
ロミナ達に気づいたウルが声をかけてきた。
「いえ、全然…」
「売れないと…自腹だよ？」
大丈夫かい？と、ウルは言った。
…うむー、事情がわからん。ちゃんとニールに聞いてみよう。と、ロミナは思った。
３．夜祭へ
ペットボトルロケットのイベントの受付も終わり、ロミナ達は本部で道具を受け取ろうとしている。
「はい、僕は別にペットボトル大会の参加者じゃなくて、魔法の石を売ってただけなんです」
今更のように、ニールが事情を説明した。彼は所属している魔道士協会の指示で、小遣い稼ぎも兼ねて、魔道冷気石という魔法の石の売り子をしていたのだと言う。
「あ、そうだったんですね…ま、まあ、ニールさんも魔道士なんですよね？
せっかくですから一緒にやりましょうよ」
そもそも勘違いで、ニールをここまで連れて来たマリィだが、せっかくだし一緒にやろうと彼に言った。
「そうだ。小遣い位、あたしが出してやるよ。気にするな。
どーせ、魔道冷気石とやらは買うつもりだったからね。
全部で幾らするんだい？」
どうせ、泡銭だ。退屈しのぎにギャンブルに注ぎ込む位ならニールにくれてやるさ。とロミナは言った。
「あ、あの、師匠、そういうわけで良いですか？」
目の前に師匠が居るので、さすがに伺いを立てないわけにもいかないニールである。
「…ソラン魔道士が重要視するのは、常に結果だよ。
『上』は、君がノルマを納めさえすれば何も言わないさ」
「ま、世の中金って事よ。
ニール君はあんまり細かい事は気にせず、好きにしろって事ね」
ウルの言葉をルーザが補足した。一応、ニールはペットボトルロケットのイベントに合法的に参加出来ることになった。
「じゃあ、名目上、、ニールはロミナさんとマリィちゃんの指導員という事にしておくよ」
と言って、ウルはペットボトル等の道具をロミナ達に渡した。ロミナ達はウル達に別れを告げると本部を後にして、なるべくフェイから離れた適当な場所に陣取る。
「よし、ニール。ちゃんとあたしに、ロケットについて教えるんだよ。
そもそも、あたしは魔道士じゃ無いし、見りゃわかると思うけど、不器用なんだからね」
ロミナがペットボトルとにらめっこをしながら、ぶっきらぼうに言った。
…なんか、この人、ちょっと可愛いかも。と、マリィは思った。
マリィは、さらに考える。
「あの、ロミナさんはともかく、ニールさんは見習い魔道士なんですよね？
だったら、どっちが遠くまでペットボトルを飛ばせるか競争しましょうよ」
１０歳の少女らしい可愛いい提案だとロミナは思ったが、
「…おい、ともかくとは何だ、ともかくとは」
とりあえず、『ともかく』扱いされた事に憮然とする。
「見ての通り、勝負事はあんまり好きじゃないんですけど…」
ニールは即答する。
「ていうか、ニールさん！
好きとか嫌いとかじゃ無くて、私みたいな、その辺の少女Aに魔法で勝負を挑まれてるのに逃げても良いんですか！
素人の女子に負けるのが怖くて逃げたって、噂になっちゃいますよ！」
可愛らしい挑発だ。
「大丈夫です、マリィちゃんとロミナさんが黙っていてくれれば噂にはなりませんから」
ニールは素っ気無い。
「マリィの言う事にも一理あるね。
ニール、相手をしてやんなよ。時には思い上がった女を力づくでどうにかする事だって、男には必要だよ！」
マリィが少し可愛そうなので、ロミナは口添えをしてやった。
「力づくって…いえ、それは、どう考えても物理的に不可能ですよ…」
ニールはロミナの体と自分の体を見比べて、あわてて首を振る。
「お前…何か別の事考えてないかい？」
「あ、いえいえ。
…でも、そうですね。勝負しようか、マリィちゃん」
結局、ニールはマリィの申し出を受けたので、マリィ達はペットボトルロケットの組み立てに入る。
「それじゃあ、そろそろロケットの組み立てを始めましょうか」
名目上は指導員のニールが言った。
「マリィちゃんは去年も来てくれたらしいから知ってると思うけど、やる事は去年と同じです。
夕方までにロケットを組み立てて、それから、魔力で空気を込めて打ち上げる感じですね
というわけで、まず、ロケットを組み立てましょう」
よし、それじゃあ、あたしにもわかるように教えろ。と、ロミナはニールに尋ねた。
「はい、そーですね。
えーとー、風船ってわかりますよね？」
ニールはロミナに尋ねる。
「お前、あたしの事を馬鹿だと思ってるだろ！？」
ロミナはニールの胸ぐらを掴んだ。
「い、いえ、そんな事無いです。ペットボトルロケットも、同じような物だって言いたかったんです」
「へー、なるほどねぇ」
ロミナはニールを膝抱っこしながら話を聞く。
「風船もペットボトルも、中に入ってる空気を外に押し出して飛んでくわけなんですけど、ペットボトルは風船より丈夫ですからね。前に向かって飛びやすいんです。」
「ほー、なるほどねぇ」
ニールはロミナでもわかるようにと、難しいことは省いて説明する。
「まあ、そーいうわけで、ペットボトルを二つ組み合わせてですね、水と空気を詰め込むんです。
そうすると、飛びますから」
極めて簡単に説明を終えたニールは、ロミナと一緒にペットボトルロケットを組み立て始める。
「何だか、子供の遊びみたいだねぇ…」
「いえ、だから、子供の遊びなんですってば…」
明らかに柄じゃない、細かい作業に苦労しながらロミナはぼやいている。それでもニールに手伝ってもらいながら、彼女はロケットを組み立てる。
「ふふふ、魔法はともかく、ロケットの組み立てだったら負けませんからね！」
幾つかロケットを組み立て、暇つぶしにサインペンや布で飾り付けをする余裕があるのはマリィである。手先は器用なようだ。
「ほーう、確かにやるもんだね」
「しっかり組み立てる事は大事ですからね」
ロミナとニールは、へぇー、と感心している。
それから少しして、ようやく一つロケットを組み立てたロミナは、試しに飛ばしてみたいと言った。
「あたしも魔族だったら、魔法の一つも覚えろって言われる事もあるんだけどねぇ」
ロミナはニールの補助を受けながら、風の魔法をペットボトルに送り込んでいる。
「ロミナさん、がんばれー」
マリィの声援を受けながら、お試しの風の発動させるロミナだったが、
ポン！
風の送り過ぎで、ロケットは破裂してしまった。ロミナとニールは水浸しになっている。少し離れた所に居たマリィに被害は無かった。
「ロミナさんらしいですね…」
と、ニールとマリィは笑ってしまう。
「うーん、やり過ぎちまったね。
…よし、こうなったらペットボトルの調達だ！
割れないペットボトルを探しに、縁日に行こう、ニール」
と、ロミナは強引な理論でニールを誘った。
「ペットボトルの調達…ですか？」
嫌とは言えないニールである。
「あんたも行くかい？」
と、ロミナは義理でマリィにも声をかけたが、
「私はいいです、後で夜祭にでも行きますよ」
と、マリィは首を振った。気を利かせているようだ。世の中の事をわかっている娘である。
彼女と別れたロミナとニールは祭りに繰り出して、縁日を歩く。
「こういうのも、たまには良いもんだね」
その辺の屋台で買ったたこ焼きを摘みながら、ロミナが言った。
「そうですね、祭りっていうと、いつも売り子やらイベントやらで仕事がいっぱいでしたから…」
参加者として関わる祭りが、ニールとっては新鮮だった。
「いや、あたしはそういう意味で言ったんじゃ無いんだけどね…」
ニールも色々こき使われてるんだねぇと、ロミナは思った。
「しかし、派手に濡れましたね…」
ニールは、ペットボトルの破裂の為に濡れてしまったロミナの体を眺めている。
元々、上半身は胸に布を巻いているだけのロミナだったが、その布も水に濡れてぴったりと胸に貼り付き、彼女の胸の形を際立たせていた。普通に水で濡れた他の場所も、良い具合に光を反射してみずみずしい。１５歳の少年の目には多少悪い影響があるかも知れない。
「ふふ、お前こそ大分濡れているじゃないか。何なら、ローブを脱いで体を拭いたほうが良いんじゃないか？」
そういうニールを見ていると、ロミナはからかいたくなってニールのローブに手を伸ばす。
「セクハラ反対です…」
などと、縁日でのんびりくつろぐロミナ達だった。こんな普通に普通のデートも悪くないものだ。とロミナが一応満足したところに、ふいに、
ゴロゴロ。
と、雷の音がした。
見れば、上空に雲が現れて暴風雨が起こっているようだ。
…ただし、ペットボトルのイベント会場の上空限定で。
ロミナ達の上空は、さっきまでと変わらず晴れている。
「あれは…何かの魔法かい？」
「多分…」
ペットボトルロケットのイベント会場だけ大嵐。そんな都合の良い嵐は自然には吹かないだろうと、ロミナもニールも思った。
そーいえば、『とっておきの魔法を用意した』と誰かが言っていたような気もする。放っておく事も出来ず、ロミナとニールはペットボトルのイベント会場に戻った。
ロミナとニールが会場に着いた頃には、暴風雨も止む。本部近くに居たルーザに尋ねると、やはり、フェイの用意してきた魔法が暴走したそうだ。広場を離れていて良かったと、ロミナとニールは思った。
…そーいえば、広場に残っていたマリィはどうしただろう？
ロミナとニールが彼女を探してみると、服を着たまま湖にでも飛び込んで泳いできたかのようなマリィが広場の隅でくしゃみをしていた。
「マリィちゃん、大丈夫ですか…」
「ま、まあ、たこ焼きでも食べな」
とりあえず、ロミナは持っていたたこ焼きをマリィに渡した。
「風邪引いちゃいそうな感じですね…」
マリィは、再びくしゃみをする。
その後、全体でペットボトルを打ち上げる時間になったので、ロミナはニール達とロケットを飛ばして遊んだ。
子供の遊びだねぇ。と思いながら、ニールに手伝ってもらいながらロケットを飛ばす。
ニールとマリィの飛距離勝負はニールが意地を見せて勝ったようだが、まあ、どっちが勝っても大した問題では無かった。
「ニールさん、さすがにウルさんの弟子ですね。見直しましたよ。ただの弱虫君じゃ無かったんですね」
「マリィちゃんも、災難だったけどがんばったね」
と、ニールとマリィが何やら健闘を讃え合っている。
…まあ、こういう普通の祭りも良いさ。と、イベントの終わりにロミナは思う。
その後、祭りが夜祭に移行し、ペットボトルロケットの関係者が打ち上げの宴会をしている頃、花火大会が始まる。
…さて、ここからは夜祭の時間だね。
「ニール、花火でも見に行かないかい？」
ロミナはニールに声をかける。
「そうですね、行きましょうか」
と、ニールは何も考えずに付いて行く。
ここぞとばかりに趣向を凝らす花火師達の仕事を眺めながら、やがて、ロミナはニールの手を握る。そして、唇を彼のそれに近づけ…
その後、ニールがどうなったかは定かでは無い。
(完)
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ クラス】
【0401／フェイルーン・フラスカティ／女／１５才／魔法戦士】
【0402／日和佐幸也／男／２０才／医学生】
【0846／マリアローダ・メルストリープ／女／１０才／エキスパート】
【0781／ロミナ／女／２２才／傭兵戦士】
（ＰＣ名は参加順です）
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■ ライター通信 ■
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毎度ありがとうございます、夏はペットボトルロケットのMTSです。
マニアックな依頼に来て頂いて、ありがとうございます。
え、もう９月？いえ、最近の９月は夏だと思います。ほんと。
そーいうわけで、今回は全員個別の話になっています。
今回は援助交際万歳という感じのロミナでしたが、いかがでしたでしょうか？
ニールと縁日を回ったおかげで、結果的に暴風雨の被害を免れ事に関しては、一応ラッキーだったロミナでした。
ともかく、おつかれさまでした。また、気が向いたら遊びに来てくださいです。
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