<PCクエストノベル(1人)>


THE SILVER LAKE 〜ルクエンドの地下水脈〜

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■冒険者一覧■
【整理番号 / 名前 / 性別 / 年齢 / クラス】

□1953 / オーマ・シュヴァルツ / 男 / 39 / 医者兼ガンナー(ヴァンサー)副業有り

■助力探検者■
□なし

■その他の登場人物■
□ 老人 / 骨董屋の店主
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 其処は底に繋がるとも云われるルクエンド地下水脈。
 奥に進めば進むほどに、熟練の冒険者にとっても困難で危険な場所である。が、一方では異世界への扉が存在するとして無視できない場所でも在った。
 ソーンという世界とは別に、
 多くの冒険者ははじまりの故郷を持つ。
 ―――、
 逞しい体躯を持ち、物見遊山の様な調子で闇を進むこの男にしても、それは例外ではなかった。
 迷路の様な、いや紛れもなく迷路であるはずの枝分かれの道を、地図さえ見ずに堂々と進み行く男。その姿には迷うという概念は皆無なのかもしれない。
 彼の名をオーマ・シュヴァルツ。
 オーマの求めるものは――『此処』での出会いを永遠のものとする為、ソーンとそこを訪れし者達の異世界を繋ぎ行き来出来る道探し…である。
 ――ルクエンド地下水脈。
 果たして其処で何を『視る』のか…。


***アルマ通りの裏にあるとある骨董屋にて***
 
 アルマ通りの裏に今にも潰れそうな薄汚い骨董屋がある。
 そこで一見して尋常でない風体の大男と、椅子に座ったままの華奢で小柄な老人とが、ささやかな議論を交わしていた。
オーマ:「ホントか? 爺さんの話を聞いていると胡散臭いことこの上ないんだが?」
老人:「これこれ、お前さんワシの言葉をちゃんと聞いとらんかったのか?」
オーマ:「だから、聞いてたから胡散臭いって俺様は言ってるんだ。爺さんよぅ――その地図、偽物だろ?」
老人:「……………」
オーマ:「だいたいなぁ、そんな貴重な地図ならこんな廃れた、おっと失礼――…骨董屋に、捨て値同然で売ってやしねぇ」
老人:「……………」
オーマ:「それに、だ。爺さん――」
老人:「やれやれ、近頃の若いのは夢が無いのぅ」
オーマ:「おい、人の説明をいかにも心外そうに遮らんでくれっ」
老人:「ふんっ、大体のぅ、例え地図が偽物であろうともじゃ、お主は夢にかけてみるという気概は無いのか!」
オーマ:「……………」
老人:「そもそも地図一枚に細かく難癖をつけること自体料簡せせこましいっ。まったくデカイのは図体だけか、近頃の若いのは嘆かわしいのぅ」
オーマ:「何気に酷ぇ言われようだな。俺はこれでも若く…って…こらこら、爺さん話逸らすなよ。大体料簡云々っていう問題じゃねぇだろうが? その地図一枚で俺様はもとより、他の冒険者が命を落としたら由々しい事態だぞ」
老人:「ふんっ、信じる信じないは勝手じゃが、もとより地図に罪は無い。信じた輩が夢に賭けた結果の悲劇ならばやむ得まいて。事実そうした話は何処にでも転がっておる」
オーマ:「詐欺だな。まあ騙される奴もそうは居ないだろうが」
老人:「ふんっ、何とでも言え。でっ、お主はこの地図を『信じずに買っていかない』気じゃな?」
オーマ:「いや、『信じずに買っていく』気だ」
老人:「っ!?」
 聊か驚いた老人。
 すかさず銅貨数枚を手渡して、さっと地図をもぎとるオーマ。
オーマ:「何処かの馬鹿が俺様のような被害にあって不幸に遭ったら、後味悪くていたたまれない。だからこいつは買っていく。例え地図が偽者だろうと俺様は生まれ付いての強運の持ち主だから、おそらく道に迷うことはない」
 後半は凄まじい捨て台詞である。
 老人は唖然としたが直ぐにしたり顔でニヤリと笑った。
 ともかくしてオーマは地図を手に入れたのだ。
 胡散臭いことこの上ない、ルクエンド地下水脈の秘密の地図を――。

***

 其処はルクエンド地下水脈。
 具体的に述べれば地下水脈に無数存在する暗い迷路の一角であった。
 目線を左右に向ければ鍾乳洞を想わせる土壁。耳朶を打つのは水流の音…である。
 オーマは自分でもよく此処まで無事に来れたものだと感心している。当初頼りにしたのは例の爺さんから買い取った古地図(凄く胡散臭い)であったが、結局使用することになったのは自分の直感と、そして強運になったらしい。やはり、というか前者はまるっきり当てにならなかったのだ…。
 勿論、此処まで来るにあたっては道以外にも、彼を阻むべき障害が幾つかあった。
 武器を手にした亜人やらの多集団とも出会ったし、つい先刻には巨大化した甲虫やら、怪異な変色蝙蝠の一群やら、結構な歓迎ぶりを示してくれたものである。
 オーマはその都度、ラリアットを食らわしたり、踵落としを叩き込んだり、或いは戦わずして逃げるなどをし、鮮やかに戦闘回避して退けた。彼の段違いの戦闘能力と豊富な経験の賜物であろう。なによりウォズ以外の並モンスター等は一向に問題にしていない彼である。必要がないから本来の武器も使っていない。実力推して知るべし。
 とにかく、持ち前の強運も手伝いこんな奥深くまで辿り着けているのだ。まあ――この道が正しいなどという保障は未だに無いのだが、少なくとも彼自身は自分の直感が正しいと思っていたので問題は無い…はずである。
オーマ:「なんだな、思ったよりも平和な探索で少し拍子抜けがする気分だ」
 隣に誰か居れば半日あまりの行程を省みて「嘘をつけ!」と罵ってくれたことだろう。
 が、生憎と今回は単身の冒険であった。
 偶にはいいものだ。
 誰も気にせず、
 孤高の危険に身を置くのも――。

***BULLET BEAST***

 深く、奥へと歩を進めるオーマが、ふと概視感にも似た違和感を感じ取ったのは、ちょうど一日の行程が終焉に及ぼうとしていた頃であった。
オーマ:「―――」
 一瞬彼の全身に緊張が走った。
オーマ:「この気配はアレだ。ったく、こんな場所にも現れやがる」
 気配は――宿敵ともいうべき彼の故郷に在る存在と同質。
 戦闘も最近はこの世界における一般的な魔物や怪物とばかりで、ウォズとの本格的な戦いは久しぶりだったが危険を感じとる嗅覚は冴えていた。無意識に握った拳がミシッと軋む。
オーマ:「――空気の流れが」
 小さく呟く彼を誘うように、狭い通路が途切れ。
 迷路のような地下水脈を抜ければ其処は開かれた場所。
 狭くじめじめした洞窟を抜けた先に広がっていたのは静寂一面の水の世界であった。
 そう、――地底湖、とでも云うべきか。
 あまりの静寂はこの場合は却って恐怖を煽るものだった。其処に潜む明確な悪意が訪れた者を恫喝するが如く。だがオーマ・シュヴァルツの逞しい体躯は微塵も揺るがない。

 恐怖の色もなく。
 不安の色もなく。
 戸惑いも、躊躇いも彼にはない。
 在るのは闘志と…好奇だろうか?

オーマ:「予想通り――まっ、俺様としては味気なくて辟易してたところなんで丁度いいんだが…」
 口の端を吊り上げたオーマ表情は、この上なく不適極まっていた。
 ゆっくりと湖の畔に近づいたオーマ。水面は澄み、淵に立つ彼の姿を鏡の如く映し出す。
 銀鏡を想わせる水面から感じた強力なソレ。
オーマ:「雑魚をチビチビ封印するよりは歯応えありそうで上等だ」
 静寂の世界で物騒な呟きを零す。
 一見すれば何処にも危険など皆無な光景だが、オーマはいよいよ脅威を感じ始めていた。具現化による波動の高まり――即ち、ウォズ!!!
オーマ:「だが…なんだな、この感覚―…それだけじゃなく、他にもまだ」
(不思議な空気を感じるんだが――)
 胸裏で紡いだ矢先、本来の「敵」であるソイツが出現した。
 静寂を打ち破るように、激しく水面を割り、湖の中から高々と跳ね上がる。
オーマ:「――ちっ」
 舌打ちは、眼前に迸った水柱に一瞬視界が妨げられたせい。
(?):「キシュア!!」
 遥か頭上から奇声が迸ると、何かがオーマに落ちてくる。
 否――落ちてくるなど生易しくはない、飛んで、放出されてきた。
オーマ:「―――っ」
 危機感が全身を駆ければ、咄嗟の判断で遠く後ろに飛び下がるオーマ。
 足が土を蹴ると巨体が身軽に宙を舞い、そのまま華麗に二転三転と身を捻りながら、十歩ほども離れた地面に着地する。
オーマ:「おお危ねぇ…まっ不意打ちは外れだ――残念だったな?」
 言葉を吐きながらコキコキと首を鳴らし「敵」を見上げるオーマ。
 目的の顔は、水面から測って遥か上に存在した。
 高さにすれば彼の三倍ほどもある。
 髪は存在せず、眼は二つあるが濁った赤銅色。鼻腔はオーマの数倍で、開いた口には物騒極まる、まるでノコギリのような牙の群れ。さながら人類未満――いや人類以上か?
オーマ:「これは子供が見たら泣くぜ。毎晩うなされそうで間違っても娘には見せたくねぇ…」
(?):「ガァァァァ!!!」
オーマ:「おっ、もしかして怒ったのか? お前さん口は利けねぇが言葉は分かる?」
 何のことはない、一見した敵は巨大なシーサーペント(水竜)であった。
 その巨大さときたら容易に小型の商船に匹敵する。
水竜:「キシュア!!!」
 叫びは肯定なのだろう。
 赤銅色が怒りの眼差しに染まり再び口腔が膨らむと、オーマに向かって飛び出したのは――水砲とでもいうべき水の塊であった。
 先ほどオーマに向け口から迸ったのもこれだろう。威力は先刻まで彼が立っていた場所に、嫌な感じで巨大クレーターが出来ていることから容易に想像がつく。
オーマ:「この短気野郎っ!!」
 口の端を吊り上げて吐き捨て、右手をかざせば具現化は一瞬。
 前もって準備していた故に対応には一部の無駄も隙もなく、研ぎ澄まされた集中力と精神力が時を得て、腕の一点に集約される。
 一見すれば回転式拳銃(リボルバーガン)、それが光沢を伴い右腕に出現し。
オーマ:「BULLET――BEAST!!」
 
 秒間の差――、
 綴りの如く――、
 放たれた獣は奔り――、
 
 ドンドンドンドンドン!!!!!
 豪快な銃声とともに分厚い銃杷から容赦なく伝わる激振動。跳ね上がるマズルを手首の力で抑え付け、オーマは連続で5連射を見舞った。
 単発、セミオートをフルオートの間隔で連弾する。
 1、2、3発が水弾を跡形もなく粉砕し、残りの2発は水竜の顔面へと炸裂した。
 ――――、
 声にならない悲鳴と豪快な爆裂音。
 悲鳴は無論オーマではなく水竜の苦鳴。
 水竜の首は激しく後方へと弾かれると、そのまま胴体もろとも湖に沈んだ。再び一面を覆い尽くすほどの激しい水柱が吹き上がり、それが頭上高くで散開すると雨となってオーマにも降り注いだ。
オーマ:「……………」
 頭から水を被るも微動だにせず水面を凝視する彼。そして秒が分に変わる頃、湖には再び静寂が戻っていた。放った銃弾の威力は、サーペイント程度ならば一撃粉砕する。
 ヴァンサーとして彼が具現化した武器は銃口から光り輝く硝煙を燻らせていた。
 まるで魔術師が揮う魔力の残照のように…。
 だが、
オーマ:「っち、――この程度ではくたばってくれない手合いとは。まっ、久々に重労働ってことかい?」
 眉を潜めながらのオーマの言葉。
 すると呼応するようにまたしても水面が激しく揺れた。
 再度不穏な気配が地底湖から迸り始める。
 最初からオーマは相手の外見がウォズ特有の擬態であることに気づいていた。都合上単に水竜を模していたに過ぎないのはヴァンサーである彼には一目瞭然であったのだ。具現化という同様の力を揮うものの性とでもいうべきか。
オーマ:「俺様の方は出るのに難儀してるっつーのに、お前らは際限なく俺様を追っかけてこっちに来るんだからよぉ。たくっ粋な美女ならいざ知らず、化物に追っかけまわされても嬉しくねえよ。封印作業に従事しても給料もらえんし――」
 還ったら纏めて請求してやる――と。
 心に誓ったかフメイのままに、第二ラウンドが開始したのだった。

***MILLIONFLAME***

 再び水面から姿を現したとき、水竜は既に水竜という形状を捨てていた。
 柘榴のように破壊された頭部はそのままに、新たな首が胴体から幾つも生え、まるでヒュドラを思わせる変貌を遂げていたのだ。
 頭を失った首を省いて数え、実に8つ。どれも出来の悪い海蛇を思わせる顔である。
 ――現在の武装では手に余る。
オーマ:「さぁて…」
水竜:「「「Guuuuuu」」」
オーマ:「8匹同時に吼えるなよ、1匹でも五月蝿ぇんだからなぁ」
水竜:「「「!!!!!」」」
 異様な雄叫びとと同時に凶悪に開かれた顎。そこから迸るのは先ほどの水弾、それが計8つ。間断なく容赦なくオーマの身に襲い掛かった。
オーマ:「おおおおおおおぉらぁ!!!!」
 左腕に今一つ。
 半自動拳銃(オートマチック・ガン)のシルエットが浮き上がれば、左右の銃口から飛び出す魔光の輝き。
 撃って撃って撃って撃ちまくる。
 この瞬間オーマの咆哮を聴く者が居たら足が竦んで動けなかったであろう。
 それ程の気合であり、続いた銃撃音の怒涛の如くは戦慄であった。
 強力な変貌を遂げた筈のウォズが再び二つの首を完膚なきまで破壊されて吹き飛ばされ、先ほどの再現よろしく、またも水中に没する。だが今度は敵もさるものだった、水撃を避けようと跳躍したオーマを残った首の一つが巻き込むように薙ぎ、彼の身体を強打したのだ。8つの水撃を避け反撃を成功させた彼も見事であったが、さすがに空中にあってこれは避けられず、オーマは湖へ跳ね飛ばされ水面に派手な水柱を上げた。
オーマ:「っ――ぐっ!!?」
 咄嗟に腹筋に力を込めて打撃に耐ええたが、すぐさま呼吸のままならない水の中に没する運命からは抗えなかった。そして例えオーマが尋常ならざるヴァンサーだろうとも水中では息が出来ないことに変わりは無い。対して水中はいわば「敵」の世界であり、自由の利かない四肢で戦うには圧倒的に不利であった。
オーマ:(俺様としたことが――…)
 油断というよりも、平和ボケのせいで著しく戦いの勘が鈍ったか。
 直ぐに危険を感じ後方を振り返れば、まさに水を得た魚か、いやこの場合は水竜か…巨大な影。赤銅色12の瞳が危険に輝くと、次には驚異的な速さで襲い掛かる触手のような首。オーマは舌打ちしながら身が不自由な状態にもかかわらず、悉くそれらを回避して浮上を試みる。
 水を掻き分ける腕には具現化した二丁の銃。
オーマ:(間に合うか!?)
 半端に傷を負わせるごとに強力に変異を遂げるウォズである。
 まして水中で銃を発砲する愚を犯すより、先ずは水面――。
オーマ:「―――ぶはぁ、」
 とにかく夢中で浮上し、やがて水面に顔を出したオーマは忙しく息を整えなければ為らなかった。
 のだが――、
オーマ:「――なっ!?」
 眩く照りつける陽光に目を細めつつ、眼差しが捉えた信じがたい光景に絶句する。
 遠方に認めたのは数限りなく立ち並んだ高層建造物。間違ってもソーン文明のものではない。どちらかといえば…そうオーマは自身の故郷を錯覚した。無論彼が浮かぶそれが紛れもない海であり、遥かに望める謎の都市の外観も、浮遊大陸ではないと認識できたが。
 だが其処はソーンの、ルクエンド地下水脈ではないと断言できる。
 異世界――?
オーマ:「おいおいおいっ?」
 展開に呆れた口調は、しかし直ぐに「!?」へと変わる。
 彼ほどの男もあまりの光景に暫し置かれていた状況を忘れていたらしい。気付いたときにはもう遅かった。二の足に触手じみたウォズの首が巻きつき、凄まじい勢いで再び水中へと引きずり込む。またも水中戦第3ラウンド開始であった。

***

 水竜VSオーマの戦端が開かれて一刻あまりが過ぎていた。
 本格的に水中戦に移行してからはオーマの劣勢だったが、彼は新たに両足に巻付いたウォズの首を二つとも、二丁銃により水中で吹き飛ばすことに成功し、成功すると具現化していた二つの銃器も、より強力な重火器へと変貌させていた。
 耳を裂く爆発音と途轍もなく大きな水柱が地底湖に吹き上がる。
 水柱の中から勢い良く飛び出したオーマの巨体。
 どのような手段を用いて水上へと急浮上を果たせたのか…おそらくは新たに具現化した凶器の仕業であろう。
オーマ:「――っ、今度は一瞬で塵だ!!!」
 空中にあるままで叫ぶように宣言すれば、両手に抱えた巨大で獰猛な凶器の砲身を下方へ向けてトリガーを弾く。
 彼の世界においてこの形状を司る凶器の威力は対戦車砲にも匹敵する。具現化された代物だろうと…いや寧ろ具現化の能力を持つウォズに対してこそ何倍もの破壊力を発揮する筈であった。
 両手で構えた巨大銃の砲身から直線状に迸る閃光。さながら高熱を放射するような光景。
 100万の炎を集約したような盛大な爆炎が迸る。
 同時にオーマを喰らうべく姿を現した水竜。4つの顎を開いた瞬間。
水竜:「――――!!!!」
 8つの眼差しが映した驚愕――瞬殺!!!
 ぼろぼろと総ての首が一瞬で粉砕され、閃光によって胴体を貫かれた水竜。
 蒸発するように崩れ落ちるウォズの姿を目の当たりにし、オーマは恋しかった土の上へと着地した。
 途端に振動。
 彼の放った光が湖の底に到達した影響だ。
 ガクンと体が揺れ、膝に力を入れて慌てて体制を直す。
オーマ:「やべぇ、やっぱり威力が派手過ぎたかねぇ?」
 残り火に焼かれるように、光の核の中で塵となりつつある水竜の残骸を一瞥しながら吐息する。
 ともかく、今の決定打が地底湖周辺に悪影響を及ぼしたことは間違いなさそうだった。
 となれば最悪この空間自体が崩れるかも知れず、長居は拙い選択だろう。
オーマ:「それらしき謎を拾ったままで退却か。惜しいな俺様っ――が、まあいい…そう簡単に目的が達成されてもつまらんし、今回は潔く撤退といこう」
 言葉ほどに惜しそうにない表情で残すと、後は踵を返して迅速かつ泰然とその場を退避したのであった。

 ルクエンド地下水脈。
 数多い謎めく通路の一つから繋がる地底湖の存在。そしてその底でオーマが視た謎の光景。それらの話は今しばらく誰にも語られることは無いのだが…。後に噂として広まり、異世界への路の一つだろうと囁かれたのは言うまでもないことであった。

 ―END―

***
 
 ライターの皐月時雨です。すろーぺーすでまことに申し訳ありません。
 しかも戦闘が蛇足になりかけm(_ _)m
 オーマさんのキャラクターはカッコいいです(子持ちだし?)
 設定も相当深そうで美味しそうなお方。
 水竜を模したウォズとの戦闘は、本当はもう少し細かく書きたかったのですが力量不足の感でした…(^^;
 何にしろもう少し精進せねば。
 それではこれにて失礼します。