＜聖獣界ソーン・黒山羊亭冒険記＞
雪月花
------＜オープニング＞--------------------------------------
舞い散る雪がとても綺麗だった。
ただ降り続ける雪を見続けていた。
ボクはそうすることで自分の置かれた境遇から、淋しい気持ちから逃げようとしていた。
ただ庭に降り積もる雪。
哀しみを消してしまうような雪の白。
「綺麗‥‥」
ゆっくりとゆっくりと時間を掛けて降り積もる雪は、ゆっくりと時を刻むボクの時間に似ていた。
ボクに過ぎ去る時を教えるのは、何時全ての砂が落ちるのかさえ分からない大きな砂時計と雪の厚さだけ。
もう忘れてしまいたかった。
全部全部。
帰れないのなら自分の置いてきてしまったもの全てを。
此処にはボクと雪の女王が居るだけ。
「おや、私の可愛い子。気分はどう？」
「‥‥‥‥雪は止まないの？」
「止む訳がないさ。此処は雪の女王の城。どこまでも白く白く染め上げなくてはね」
白く染め上げなくては白に見えないほどに黒く暗く沈んでしまった城。
自分の世界も此処に連れてこられた時に黒く染められてしまったに違いない。
そんなボクの世界ならもう必要ないと思う。
「ボクを‥‥帰してよ」
「それは出来ない相談だねぇ。‥‥まぁ、少し位なら可愛い子の言う事を聞いてあげなくもないけれど。ただし、アンタは記憶をなくしてしまうよ。それでも構わないのかい？」
記憶などこれから作っていけばいいと思った。
だからボクは迷わずに頷いた。
女王はボクの身体の中に手を差し入れて一つの氷の鏡を取り出した。
「これはアンタの記憶だよ。これを私は割ってしまうよ。記憶の欠片となったピースを全て合わせてご覧。そうしたら元の世界に戻してあげる」
雪の女王の手から鏡が落ちる。パリン、と澄んだ音を立てて氷は割れた。
ボクはその瞬間、意識を手放した。
あの‥‥、と少女がジークフリートに連れられて黒山羊亭へとやってきた。
「ジーク！ あんた‥‥ついに‥‥」
「違いますよ。この子は途中で倒れている所を助けたんです」
ぺこり、とお辞儀をした少女はエスメラルダに言う。
「人を探して欲しいんです。ずっとずっと探してるのに何処にも居なくて‥‥やっと手がかりを発見したんです」
「人捜し？ そりゃ、ここにはその手のことを生業にしてる奴らがたくさんいるけど‥‥」
「アタシ、雪の女王に会わなくちゃ行けないんです。そしてノアを取り戻さないと」
「雪の女王？」
「遠くの方に見える一年中雪が降り続いている城に住む女王の事だそうですよ」
「お願い。やっと此処まで来たけれど、女王の飼ってる怪物がいてこれ以上近づけないの」
「じゃぁ、あんたを女王の元まで無事に送り届けるのが仕事？」
「えぇ。ノアを見つけることができたら‥‥取り戻せるような気がするの。女王はとても怖い人だけれど‥‥でも‥‥」
ぎゅっ、と胸の前で少女は手を組む。
一つの信念を胸に抱えて。
その様子を見てエスメラルダが優しく微笑み頷いた。
「分かったよ。それじゃ適任者をあたしが責任もって探してあげるから」
「ありがとうっ！」
ジークフリートもほっとしたようにその様子を見守っていた。
------＜黒山羊亭にて＞--------------------------------------
「今日は珍しく早いな」
「たまには‥‥ね」
いつものように先に来て依頼を見ていたジュドーは、好みの依頼が無かったのかカウンターに腰掛け、既に飲み始めている。
後からやってきたエヴァーリーンは、当たり前のようにその隣に座った。
「どうだ、何か良い依頼はあったか？」
「私好みのは最近さっぱりお目にかからないわね」
「エヴァ好みの依頼か‥‥‥どうせ‥‥」
途中まで言いかけたジュドーだったが、いや、なんでもない、と言葉を濁しグラスを煽る。
「ジュドー？‥‥‥まぁ、何が言いたいのかは分かるけれど」
エヴァーリーンは軽い溜息を一つ吐きながら、目の前に置かれたグラスを手にした。
賃金が良くて云々、ということを言いたいのだろうと。
溜息はただのスタイルの一つだ。
別にジュドーの言葉に呆れている訳でも気を悪くした訳でもない。
なんとなくこうしていつも一緒にいて、そんな事が心地よい。
黒山羊亭の雰囲気もいつもと変わることなく、賑やかで。普段、信じられない位の速度で過ぎていく時間。しかしここでジュドーと共にグラスを傾けている間は、ゆったりとした時間を過ごす事が出来るような気がしていた。
軽やかな音楽に合わせて踊っていたエスメラルダが、動きを止め入り口を見つめて声を上げたのに気付いたのはエヴァーリーンが先だった。
「どうやら依頼のようね」
「そうみたいだな」
二人の傍で話している為、話の内容は筒抜けだ。
しかしエヴァーリーンの興味を惹く内容ではない。
「あら、丁度良い所に」
どうでも良い、と思っていたエヴァーリーンだったが、その声にきょろきょろとしていたジュドーとエスメラルダの目があって狙いを定められた事に気が付いた。今度は呆れた溜息を吐く。
またいつものパターンだと。
エスメラルダが銀髪の青年と少女を連れてやってくる。
「二人とも、ここで飲んでるって事は今は仕事入っていないって事よね？」
「そういうことだな」
ジュドーが答えるとエスメラルダはにんまりと微笑んで、少女をジュドーの前に押し出した。
「それならここに依頼主がいるから是非話を聞いてやって」
ね、と軽くウインクをするエスメラルダ。
ジュドーが頷くと少女は先ほど話していた事柄とほぼ同じ事を二人に告げた。
違っていたのは目の前でノアという少年が連れ去られたという事。
そして氷の女王は艶やかな腰まである黒髪の持ち主で、雪のように白い肌をしている冷たい瞳の女だと。
少女は二人に頭を下げる。
「お願いします。アタシを女王の所まで連れて行って下さい」
「ボクも防御位なら出来ますから。足手まといにはならないようにしますし」
ニッコリと微笑む銀髪の青年。面識は無かったがよく黒山羊亭で謳っている吟遊詩人のジークフリートと呼ばれている人物だった。
歌の好きなエヴァーリーンも名前と声は知っていたが、防御関係の技も持っていたとは初耳だった。
「詩人と幼子二人だけで雪原を渡らせるわけにはいかん」
そこで一度息を吸い、ジュドーはエヴァーリーンを見る。
「私は行こうと思うが、エヴァもどうだ？」
エヴァーリーンは、軽い溜息を吐きつつも頷いた。
「子供の頼みを断るのは、後味悪いわね‥‥わかったわ」
なんだかんだといつものパターンだ。大体はジュドーに引きずられる形でエヴァーリーンも依頼を受ける事になる。
そしてこれもいつもの事。
「その代わり、夕飯はジュドー持ちよ？」
「あ？ あぁ、夕飯位は私が出そう」
少し嬉しそうな声音のジュドーに再び溜息を吐きつつエヴァーリーンは、私もずいぶん安くなったものね、とぼそりと呟く。
そんなエヴァーリーンの思いなどほったらかしで、ジュドーは改めて少女と向かい合うと少女に告げた。
「では私達が同行しよう」
「本当ですか？ ありがとうございますっ！ アタシ、レナって言います」
「良かったですね」
隣で笑うジークフリート。
そこへエスメラルダが人数分の防寒着を持ってやってくる。
「はい、決まった所でこれは必需品でしょ？ 貸し出ししてあげる」
雪の女王の城は深い雪に覆われている。
寒さも半端ではないだろう。
「ありがとう。借りるわね」
エスメラルダから防寒着を受け取ったエヴァーリーンが礼を述べると、エスメラルダが微笑んだ。
「行ってらっしゃい。気をつけてね。御礼は土産話で良いから」
エスメラルダの笑顔に、ジュドーも笑みを浮かべ頷いた。
こうして四人は雪の女王の城を目指す事になったのだった。
------＜雪の女王＞--------------------------------------
白銀に輝く世界。
誰も付けていない雪原に足跡を付ける事は楽しい事だったが、こうまで雪が深く見渡す限り雪景色が広がっているとそんな気分も失せる。
鍛えているとはいえ、歩くだけでかなりの体力を消耗する。
レナの事も考え、ペース配分をしながら一行は雪の女王の城を目指し歩いていた。
目には見えるがなかなか辿り着く事の出来ない城。
「全く。‥‥嫌になるわ、あの城を見ていると」
「全くだ」
エヴァーリーンが忌々しげに城を眺めながら呟いた言葉に、ジュドーも賛同する。
見ているともうすぐにでも辿り着きそうな錯覚が起きるのだ。
回りが白銀の世界に覆われているから余計にそんな感覚を起こさせるのだろう。
「それにしても狼‥‥来ませんね。このまま出ないかもしれませんね」
辺りを見渡しながら告げるジークフリートの言葉に、レナは首を左右に振った。
「ううん、女王は必ず仕掛けてくると思うの。ノアを迎えに行く私がきっと憎いから」
「しかし‥‥どうして雪の女王はノアを攫ったんだ？」
ジュドーの尤もな問いにレナは言う。
「きっと、心の隙に入り込みやすかったんだと思う。ノア、飼っていた兎を自分のせいで殺してしまったのを悔やんでいたから。多分、心の中が真っ暗になってて。ずっとぼんやりと降ってくる雪を見ていたの」
「そうか‥‥」
雪の女王も同じ瞳をしていた、と呟くレナ。
そう呟いて空を見上げたレナの頭をぽんぽん、とジークフリートは撫でてやる。
「ノアくん、待ってますよ。行きましょう」
ね、と笑顔を向けるとレナも頷き足を踏み出す。
その様子を見てジュドーとエヴァーリーンは小さく微笑む先へと進む。
その時、エヴァーリーンとジュドーが気配を感じて足を止めた。
それに気付いた後ろの二人も足を止め、遠くからやってくる雪煙を眺める。
来たっ！、と小さく呟いたジュドーは刀に手をかけながら言う。
「‥‥‥野に生きる者であれ、戦う意思を持って向かってくるのであれば、私も武士としてそれに応えよう。ジークとエヴァ、その子を‥‥‥」
そこまで言って隣に立つエヴァーリーンから冷たい闘気が立ち上るのを感じ、ジュドーはちらりと視線を動かす。
「ジェノサイドに見ておけってのも、酷じゃない……？ 見てるだけなんて体が鈍るわ……一頭は任せてもらうわよ」
ジュドーは仏頂面をしながら鋼糸を手にしたエヴァーリーンに苦笑してみせながら、前言撤回をする。
「わかった。一頭は任せる」
当たり前よ、とエヴァーリーンはジュドーと距離を取り、挑発をしつつ狼を分散させるようにし向ける。
「ジークって言ったかしら‥‥その子のこと、頼むわね」
エヴァーリーンはそう言うと更に遠くへと駆ける。
狼は二人の思惑通り、二手に分かれそれぞれに飛びかかった。
雪に足をとられながらも、エヴァーリーンはきわどい所で狼の鋭い牙と爪から逃げる。
「子供の前で殺しはしたくなかったんだけど‥‥‥」
小さく呟きながら、エヴァーリーンは素早く食らいつこうとする狼を必死に鋼糸で絡め取ろうとした。
しかし雪上といつもの地上とは勝手が違うのか、微妙なズレが生じエヴァーリーンは苦戦を強いられる。
エヴァーリーンの防寒着が段々と牙や爪で切り裂かれていく。
皮膚まで達している部分もあり、鈍い痛みがエヴァーリーンを襲った。
それでも致命傷に至っていないのは、エヴァーリーンだからだろう。
「……動物を、殺すのは好きじゃないんだけどね……殺すなら、人の方がよっぽど楽……」
きゅっ、と鋼糸を持ち直すエヴァーリーン。
狼は狙いを定めて体勢を崩したエヴァーリーンへと飛びかかる。
「でも、私に牙を剥くというのなら……これで、さようなら」
とどめを刺しに来た狼だったが、逆にエヴァーリーンがわざとよろけつつあちこちに張り巡らした鋼糸に絡め取られ動きを封じられる。
逆にとどめを刺されたのは狼の方だった。
エヴァーリーンがちらりと隣で戦っていたジュドーを眺めると、狼に黙祷を捧げている所だった。
相変わらずね、とそんなジュドーに小さく微笑む。しかしジュドーが顔を上げた時にはエヴァーリーンの表情はいつもの表情に戻っている。
鋼糸を仕舞いながらエヴァーリーンはジュドーと共に待っている二人へと近づく。
ふと立ち止まったジュドーが ふぅ、と軽く溜息を吐き空を見上げ呟いた。
「……ときどき、思うんだが……私は、より高みにいる者と闘うことを望む。だが……それと、殺すこととは、同義なのだろうか」
「‥‥‥どうかしらね」
エヴァーリーンは立ち止まったジュドーを振り返り、風に靡く髪を軽く押さえ言う。
「強き者と闘い、共に在ることは、できないんだろうか。多く闘い、多く殺してきた者が、何を今更と、思うだろうけど」
「‥‥‥今更だってなんだって‥‥これから見つければいいでしょう」
行くわよ、とエヴァーリーンは歩き出す。
それもそうか、とジュドーは苦笑しながらその後を追った。
あちこち傷だらけの二人にレナは駆け寄って、鞄から出した消毒薬で二人の傷を手当てし始める。
「これくらいなんて事はない」
ジュドーの言葉にレナは首を振る。
「ダメです。傷は浅くても痛いのには変わりないから」
真剣な表情で丁寧に傷の手当てをするレナ。
ジュドーとエヴァーリーンにしてみればやはり大した傷ではないのだが、そう言われると無視出来ないものに思え、二人は大人しくレナに手当をして貰う事にする。
手当が終わると再び一行は雪の女王の城を目指した。
城はもう目前だった。
やっと辿り着いた雪の女王の城へと四人は侵入する。
その中は城と言うよりも塔と言った方が良い作りになっていた。
何処までも続く石段を上がっていく。
上部から何か音がするのはそこに誰かがいるからだろうか。
最上階の部屋を目指しレナは駆け上った。ずっと探し続けてきた人物がそこにいると思うといてもたってもいられないのだろう。
しかしそれよりも早くエヴァーリーンが駆け上ると、中の様子を窺った。中に何が潜んでいるか分からない。この城の内部で何者からも攻撃を受けなかった事の方がエヴァーリーンとジュドーにすれば不思議で仕方のない事だった。
中に危険は無いと判断したエヴァーリーンが扉を開ける。
その部屋の中央には一人の少年が床に座り、何かを一生懸命にやっている所だった。
中に雪の女王の姿はない。
「ノアっ！」
レナはノアに駆け寄る。
しかし何度呼んでもノアは何の反応も示さない。
「どうしたんだ？」
ジュドーの言葉にエヴァーリーンが答える。
「認識出来てないみたいね‥‥あの子のこと」
「どうしたんでしょう‥‥記憶喪失とかそういった類でしょうか‥‥‥」
首を傾げたジークフリートの隣に、その時気配もなく現れたのは黒髪の女性だった。
真っ白い肌に黒いドレス。
「雪の女王‥‥！」
その姿を見たジュドーが思わず刀に手をかけるが、それを隣にいたエヴァーリーンに止められる。
「やめておきなさい、ジュドー。高みを目指すのは結構なことだけど‥‥自身の力量を弁えずに飛ぼうとしても、どこかの神話みたいに焼かれて落ちるだけよ……もっとも、今回の場合、氷漬けにされて落ちるだけかもしれないけど」
「……私とて、自分の力量ぐらいはわかっている。それに、私だけならまだしも、ノア達に累が及ぶ。今は抜かない」
しかし、いつかその高みへ上り詰める事は諦めない、とジュドーは伸ばしかけた手を下ろし雪の女王を見た。
「賢明な判断だねぇ。そういうのは嫌いじゃないよ。その目ぞくぞくするね」
くすくすと笑った女王は、先ほどからずっと必死に声をかけ続けるレナを見た。
「いくら声をかけても気付かないだろうねぇ。記憶はバラバラにしてしまったから。あぁ、勘違いしないで頂戴。あの子が自分から記憶なんて要らないと言ったのだから」
それでも私は優しいからね、と女王は続ける。
「あの子にチャンスを上げたのさ。記憶をバラバラのピースにして、それを組み立てる事が出来たら家に戻してあげると。優しいだろう？」
「何処が優しいんだ」
ぼそり、とジュドーが告げるが女王は笑って相手にしない。
「ねぇ、本当にアタシが分からない？」
レナの言葉に漸く反応を示すノア。
しかしノアは首を傾げてレナに酷く残酷な言葉を放った。
「キミは誰？」
「ノア‥‥‥覚えてないの？」
今まで気丈にもずっと必死にこらえ続けていた涙がレナの瞳からこぼれ落ちる。
やっと見つけた時には自分の事をすっかり忘れてしまっていた人物がいたら、それはどんなにその相手を落胆させ悲しませるのだろうか。
パズルをはめていくノアの手が最後の一つで止まった。
エヴァーリーンは小さく声を上げる。
「入る訳がないわ‥‥‥」
「形が違う」
ジークフリートもパズルを眺めてノアが手にしていたピースとその空いてる部分の形が違う事に気付いた。
ノアの記憶の欠片に突き刺さった黒い棘。
雪の女王がノアを引き留めておく為に打ち込んだ楔。
ただ自分の側に置く為だけにもいだ翼。
「ノア‥‥思い出してよ‥‥お父さんもお母さんも待ってるから‥‥」
レナの涙がポロポロと零れてノアの手元にも落ちる。
落ちた涙がその棘にかかるとゆっくりと雪が溶けていくように消えていく。
たくさんこぼれ落ちた涙が女王の冷たい思いの欠片を溶かしていく。
ノアはやっとはまるピースを見つけて、嬉しそうにそのピースをはめた。
するとそのパズルは光る球体となってノアの身体に吸い込まれていく。
それを見た女王が小さく舌打ちをし、踵を返して歩き出した。
皆、それを追おうとはしない。
ただその淋しそうな背を見つめているだけだった。
------＜雪解け＞--------------------------------------
無事に黒山羊亭まで戻ってきた面々は、エスメラルダの用意していた酒や料理を振る舞われる。
「さぁ、こんだけ用意してたんだから土産話も面白いんでしょうね」
腰に手を当て、エスメラルダが二人の顔を見つめる。
「めちゃくちゃだな‥‥」
「めちゃくちゃね‥‥‥」
苦笑した二人はとりあえず、乾杯、とグラスを合わせ軽やかな音を響かせる。
「雪の女王の城‥‥消えちゃったのよねぇ。そうしたら雪も溶けてきちゃって」
「もう春だから良いんじゃないのか？」
「‥‥今まで雪があった事の方が異常‥‥‥」
琥珀色の液体を飲み干しながらエヴァーリーンが呟くとジュドーも頷く。
「そうですね。‥‥雪解けの唄でも謳いましょうか？」
「それならエヴァも一緒に謳ったらいい」
ジュドーがエヴァーリーンにも謳うように勧める。
トン、と軽い音を立ててエヴァーリーンがグラスを置いた。
謳う気になったか、とジュドーが思ったのも束の間。
「‥‥‥私が謳うなら、もちろんジュドーも謳うでしょう？ この間特訓した事だし」
ニヤリ、と悪戯を思いついた時と同じ笑みを浮かべるエヴァーリーンに、引きつった表情で後ずさるジュドー。
「ジュドー、順番譲ってあげるわ‥‥‥」
「いやいやいや、私は良いからエヴァがだな‥‥」
ふふっ、とエヴァーリーンがジュドーを店の隅まで追いつめる。
「エヴァっ！ ‥‥‥悪かった、だから‥‥」
問答無用、とエヴァーリーンは艶やかな笑みを浮かべジュドーの事を捕まえた。
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■登場人物（この物語に登場した人物の一覧）■
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【整理番号／ＰＣ名／性別／年齢／職業】
●1149／ジュドー・リュヴァイン／女性／19歳／武士（もののふ）
●2087／エヴァーリーン／女性／19歳／ジェノサイド
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■□■ライター通信■□■
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こんにちは。 夕凪沙久夜です。
今回もお二人でのご参加ありがとうございますｖ
そして大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
雪の女王の話は如何でしたでしょうか。
またしても歌の設定を盛り込ませて頂きました。
ジュドーさんとのコンビを書かせて頂くのが楽しくて、ついつい‥‥。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
機会がありましたら、またどうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
またお会いできますことを祈って。
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