<PCシチュエーションノベル(ツイン)>
++ 脳内病原菌《聖筋界・腹黒同盟企画シリーズ》〜1〜 ++
《始まりは、いつもの如くに》
副題:腹黒イロモノ親父アニキ筋肉青眼鏡魅力一杯☆大胸筋ドリームと青眼鏡幻想ビバ聖筋界ソーン。
注意:心臓、若しくは肝機能、脳並びに精神的な障害をお持ちの方はお読みになることを極力お避け下さい。
ぴ〜ひょろろろろ
翼を大きく広げ、真っ青な空を孤を描くように優雅に飛び回る。
行ったり 来たり 風におされて流れゆくばかりの雲とは違う。
意志を持って 遥か遠方の標的を睨み据え――あるいは獲物を探して宙を舞う。
何の興味も無いふりをして 不意をついて襲い掛かる。
鋭い嘴で あるいは鋭い爪先で。
狙っている 何時の間にか狙われている。
気をつけて 捕まったら逃げ出すことなんて出来はしない。
だから、気をつけて―――
「駄目ですよ、オーマさん。そんなものを持って帰っては……また怒られてしまいますよ」
「大丈夫だって、心配するなよ……俺様の大胸筋に抱えた一物は今楽園へと向かって新たなるナマモノ桃色裏側ドキュメント☆めくるめく桃源郷での生活への第一歩を踏み出したんだぜ」
一物:企みや考え。ここではとっ捕まえたナマモノを指す。
「………僕は知りませんよ?」
「おうおうアイラスよ、一蓮托生☆腹黒ツートップの俺達は泣く子も黙ると噂の腹黒運命共同筋なんだぜ」
ふぅ、と軽く溜息をついた青眼鏡の青年、アイラス・サーリアスの肩を、巨大な筋肉の塊? オーマ・シュヴァルツがバシバシと叩きつける。
「………痛いです」
「だっはっは、気のせいだきのせい」
「えぇ、そんな運命の共同なんて御免ですよ。結婚式のケーキカットじゃあるまいし……」
「愛の共同作業筋ってか〜」
その言葉にオーマの腕の中で「一物」がぅぐぁるるきしゃぁ〜〜ッッ!! と、鳴き声(?)をあげる。
どうやら一物ナマモノの同意だけは得たらしい。
『おい、お前知っているか? あの同盟の噂!!』
「コ〜レは俺達腹黒同盟の噂に違いねぇ!! ナウヤング奇天烈筋達にもいよいよもって浸透しマッチョ☆ってか〜」
どこからか聞こえてきた「同盟」の言葉に、オーマの耳はピクピクとひくつき、具現拡大(怖)でもって当社比の3.5倍へと巨大化した!!(怖いです)
「オ…………オーマさん……」
「しっ……いいからちょっと静かにしてろよ、アイラス」
「………………………………………………………………」
『また襲われたんだってよ!!!!』
がくっっ
「あ〜ん〜だ〜とぉ〜〜〜〜っっっ!!!!?」
オーマの巨大な耳が更にぴくぴくと蠢いている!! そのサイズは見る見るうちに当社比5.5倍化した。
「………………………………………………………………」
「俺達腹黒同盟がんなコトする訳がねぇだろうが!! いってぇ何処のどいつだ腹黒同盟の名を語りやがって悪行三昧☆桃色トキメキ筋しやがってた〜のしくよ〜ろしくやってやがる野郎はよ!!!?」
「………………………………………………………………」
『マジかよ〜っ!!』
『あぁ、あの「例の同盟」の奴らがやってるに違いねぇよ』
『ここんとこやけに多くないか? その……………!!!!!!!?』
「おう兄ちゃんその話をく〜わしくきかせろや〜〜〜」
「「うっ……うわぁぁぁぁっぁぁああああああああ!!!!!!!!!?」」
ぬっと現れた巨大な筋肉宜しく色黒マッチョなトキメキ☆桃色も興醒めな親父に、ナウヤング筋たちは脱兎の如く駆け出した!! そりゃそうだ。耳が当社比5.5倍のままだ!!
オーマは寸でで逃げ出す彼らの首根っこをひっ捕まえると、にっこりと真っ白な歯を輝かせながら両手につり下げた二人の顔を順に見遣った。
「ひぃっ!!? バケモノーーーーーっっ!!?」
「こ、コレが噂のヤング狩り!!!!? 俺の想像の域を抜きん出ているぜ!!!!」
色々と発言がおかしいのもまた耳のせい。しかし此処で誰かが指摘してやらなければ腹黒同盟に明日は無い!!
「………………………………………………………………」
どうやら突っ込みの雛型・アイラス氏の今の心にはちょっと静かにしてろよ、の一言が影響しているようだ。
要するに現在突っ込み不在という事。
「おうおうおう、俺達は違うぜ! てな訳で今の話をちぃとばかし詳しく聞かせてくれんかね?」
「俺達」のカテゴリ別選出基準に不服を洩らす事無く、アイラスは無言のまま三人を見詰める。
「………………………………………………………………」
「………どうしたんかね、アイラス…何か気付いた事でも…」
「………………………………………………………………」
「どうした、まさか……!!?」
「…………みが………」
「「身が」!!?」
「みみ…………」
「なんだそりゃあ、何の鳴き声だ? アイラス、お前さんそんな特技もあったんかね」
色々と悲しくなりながらもアイラスはそのまま首を左右に振う。
「耳を元に戻してください、オーマさん」
「おぉっ!! そうだったな、俺様としたことが耳筋まで御自慢の腹黒拡大るんたったのままだったぜ!!」
「………ふぅ」
アイラスはまるで難儀な一仕事を終えたかのような溜息を尽き、額を拭ったのだった。
「それで…それは一体どのような噂なのですか?」
アイラスがオーマのとッ捕まえた二人の青年を見遣ると、青年はぎりぎり地面に足が着かない位置まで持ち上げられているのか、わたわたと落ち着かない様子で足をばたつかせながら話を始めた。
いや、目の錯覚か――ばたばたとしているのは足下で「一物」がかっぱりと大きな口を開いているからのような気がしないでもない。
なかなか鋭くて日々磨きに磨き抜かれたような輝きを放つその牙は、何だか何度抜いても生えて来ますvって感じだ。
「こ、このエルザードで最近若い連中が襲われているんだよ!!」
「犯人は何だかエッライがたいのいいボディービルダーも真っ青な奴らだったり、何か妙に真っ赤な格好をした赤い眼鏡の軍団だったりするらしいんだ!!」
「そうそう、近くエルザードの警備も強化されるんじゃねぇかって専らの噂なんだぜ!!」
「ほほ〜ぅなるほどなるほど〜」
「宣戦布告……と見るべきでしょうかね?」
「おう、随分好戦的じゃねぇか。明らかに俺達を意識してやがるぜ……犯人さんはよぉ」
オーマは若者二人組みを解放してやると、其の侭息巻く一物を引き連れてアイラスを道の隅へと追いやるように激しく迫り寄った。
僅か鼻先三センチの至近距離でオーマの素敵に輝く歯茎筋と白い歯列とがつやりと輝いて見える。アイラス君ぴ〜んち!
「…………あの…オーマさん…近いです」
「おう、アイラス! 妙な同盟が未来の腹黒原石ナウヤング筋を襲う事件多発ってぇ噂だがよ、どう思う」
「………少し離れて頂けませんか、話し辛いですから」
オーマは半歩後ろへとさがると、両手を腰に宛がい、仁王立ちのポーズでこくこくと首を数回頷けた。
ヘッドバット間違いなしだ。それを寸でで顔を逸らして避けたアイラスが(成る程…オーマさんの「少し」は半歩ですか…)と、首を縦に頷けたような頷けていないような……。
「意見を聞くにしてももう少し人気の無い所を選んだ方が良いかと思いますけど……」
「なーにいって や が る ん だ !!!!? 最高機密筋レベル緊急ツートップ桃色青色会談開催☆既に誰の耳にも聞こえやしねぇぜ」
「………そうですね。きっと誰が耳にしようとも何を話そうとも訳がわからないと思いますよ」
「あぁ、そうだろ? 間っ違いなく犯人はかまってかまって〜☆泣く子も喚くお馴染ギラリマッスルワル筋だったり全身が赤赤赤特に超絶ポイントは赤眼鏡な軍団だったりするってぇところがあっきらかに腹黒同盟に対する妨害腹筋行為だろうがよ!!」
端から聴いて居ても話が噛み合っていない。
「………えぇ、そうですね。赤眼鏡だなんて……明らかにこの僕に対する嫌がらせですね!!」
アイラスは何だかむっとした様子でこくりと首を頷けた。
「アイラス、此処は一つ囮作戦だ!!」
「………囮、ですか?」
「おうよ! ここはおまえさんがいっちょナウヤング腹黒代表筋として……」
『そ〜んなことしてもムダだもんね!! ムッキ〜ッ!!!!』
『そういや俺達泣く子も黙るワル筋同盟ツートップ♪』
「誰だッ!!?」
「……………ワル筋同盟のツートップ、だそうです」
アイラスは太陽の眩しさに目を細めながら、どこぞの民家の屋根の上ではいマッスルポーズをキメキメしている二人の影をじ〜っと見詰めている。
ムッキームッキー五月蝿いのと何か常に歌っているウザいヤツラだ。
この辺で一物は何処かへ逃げ出した!!!
『ワル筋同盟だけではありません!!』
『そうで御座います、我々赤眼鏡同盟ツートップも参上で御座いますよ!!』
更に響いた声に、オーマは後ろを振り向いた。
全身赤い上に赤い眼鏡を掛けた少年と何だか学者風の青年が塀に背を預け、腕を組んだ様な形をとりつつもメガネフレームを掴んでくいっくいっと上下させる。勿論顔は顎引き斜め四十五度の角度で流し目だ。
「なんだっ!!?」
「………気に入りませんね、赤眼鏡同盟ツートップさんもご登場ですよ」
しゅたっっ!!
どすこ〜いv
先ほどまで歌って踊っていた小さなワル筋筋肉塊・ムッキー(諸事情の為以後の表記はムッキーとさせて頂く)と、がっしり三メートルワル筋ごつごつ平成の歌謡曲・岩山カィ?(同様の事情により以後岩山カィ?とさせて頂く)とが民家の屋根から飛び降りた!!
ずどっごぉおおおおおおおおん!!!
地響きと共に地面に亀裂が入る。勿論岩山カィ? のせいだろう。
よろめきながらも辛うじてその振動に耐えたオーマとアイラスは、二人を取り囲んで不敵に笑うワル筋同盟と赤眼鏡同盟の四人を油断なくじっと見据える。
『これを見るんだムッキ〜ッッ!!』
ムッキー野郎がソツ無く一枚のビラを差し出す。
その横では「平成のぉ〜おんやんまぐゎぁ〜♪」と拳とパンチ(?)の効いた音程感覚でフレーズのたびにハイマッスルポーズを決めているハリセンバッティングで首ごと高速回転陰陽師の祈祷をお願いしに各地を駆け巡りたくなっちゃう相手NO.1候補になりそうな巨体が振動と共に舞い踊る。
「なになに……?」
オーマはビラを受け取ると、ふむふむ言いながらそれをアイラスと共に見詰める。
「【ソーンラブラブ胸キュンシリーズ大胸筋腹黒シリーズ特別編第一弾★イロモノ誇りは親父アニキの証マッスルマニアラブ☆伝説の聖筋界同盟フェチ悩殺セクシーバトル筋大会☆】……に貴方も出場しませんか? 出場資格は各同盟のツートップペア。同盟天下一の座を賭け激しく消耗ビンバンノンノ〜ン…………………?? 優勝賞品にはどうも毎度様で〜す、聖獣界同盟NO.1の栄誉と共に、他にも聖獣もびっくりな品が?
大会内容は……
1ラウンド・エルザード、
2ラウンド・ユニコーン地域外人類未踏地、
3ラウンド・アセシナート公国(突っ込み無視)
を舞台にし各地で様々な競技や頭脳戦やバトル等で戦い3ラウンド全ての総合得点が高い同盟が優勝。…………何か大雑把な説明だな、オイ? つぅかアセシナートって……………おい?」
「……また妙な大会の開催を許した物ですね……ここの所若者を襲っているという事件に関して貴方達は……」
『そんなの知りません!!』
『そうで御座います、我々赤眼鏡同盟ツートップはその様な事、風の噂にも聞いたことが御座いませんよ!!』
「「…………………」」
『本当だムッキ!!』
『そういや知らない俺達多分ワル筋同盟ツートップ♪』
「「…………………」」
『この大会で同盟天下一の座をかけて勝負してください!!』
『宣戦布告に参ったので御座います!!!!』
『ムッキ〜!!』
『こわけりゃ逃げてもかまわない〜♪』
四人の少々慌てふためいた様子に、オーマとアイラスはひそひそと話し始める。
「………アイラス…」
「えぇ、腹黒同盟を潰そうという魂胆が見え見えですね」
「ついでに聖筋界をワル筋赤眼鏡同盟色に染め上げようってぇ訳だな」
「そんな事……誰が許そうともこの僕が許しませんよ。世界中の眼鏡を赤にしようだなんて!!」
※要注意:アイラス・サーリアスさんの統一イメージ色は青です。
「おう、いつに無くやる気満々だな!! ついでに腹黒同盟大飛躍のチャンスだぜ!」
「えぇ、そうですね。この2同盟の好きにはさせません」
「じゃあ参加は決定っつぅ事だな」
最高機密筋レベル緊急ツートップ桃色青色会談開催終了。
二人はそれぞれ敵対する相手をじっと睨み据えると、にっと不敵に微笑んだ。
「この勝負、受けて立つぜ!」
かくして戦いの火蓋は切って落とされたのであった。
《第一ラウンド:エルザードで限界越えろ!! 悶絶パン喰い競争》
ざわざわと辺り中から人々のざわめき声が聞こえる。
エルザードの街――壁の向こうから、観客達がパンをぶら下げて楽しそうに笑っていた。
中には赤い眼鏡を赤いフードの奥に輝かせた者が数名居る。奇妙な笑みを浮かべながら紐で括りつけたパンを塀の上から吊り下げていた。観客の一員に紛れられても居ませんし、明らかにその存在を隠し切れていませんが……どうぞ皆様釣られないようにお気をつけ下さいませ。
しゅすっと衣擦れの音が響き、柔らかに微笑んだ王女が二人の元へと歩み寄ってきた。
「オーマ、アイラス。やっぱりお二人とも参加なさいますのね。「腹黒同盟」ですもの、来ると思っていましたわ」
「姫さん………やっぱりこの大会の開催を許可したの、あんたか」
「えぇ、そうですわ。とっても楽しそうでしたもの、ねぇ?」
エルファリア王女がくすくすと微笑んでアイラスに同意を求めると、アイラスは少し困ったような表情を浮かべた。
「まぁ……チラシだけを見たら運動会のようで楽しそうではありますが………」
「えぇ、そうでしょう? 皆様も楽しそうにしていらっしゃいますもの」
そういってエルファリア王女は市民の楽しそうな姿を見上げる。
市民は…壁の向こうからパンを括りつけた紐を握って楽しそうに笑っていた。誰が何と言おうともとっても楽しそうだ。
「なあ、姫さん……何でまたアセシナートなんぞ許可したんだ?」
「あら、アセシナート公国の同盟の方々が、参加を申し込んできましたのよ。とても友好的な方々でしたから、それなら是非其方も開催地として一役かって頂くというお話に…」
「………友好的?」
「オーマさん…僕、常々思っていたのですが……エルファリア王女って天ボケですよね? そうですよね?? でなければこの存在をどう表現すれば良いのかを教えてください」
「お……俺に訊いてくれるな、アイラス」
「そうでしたね………済みません」
エルファリアは目の前で交わされる二人の会話に微かに首を傾げながらも、にこにこと柔らかに微笑んでいる。
「今回も楽しみにしていますわよ。オーマ、アイラス。頑張って頂戴ね」
「まぁ、見とけよ姫さん! なぁ、アイラス」
「えぇ……やるからには勝ちますよ」
「うふふ、楽しみですわ。では私もパンの紐を持っていますわよ、オーマとアイラスがお魚さんのように食べに来るのを楽しみに待っていますわ」
「「………………………はぁ」」
城壁からパンを先につけた紐を楽しそうに釣り下げる王女なんて聴いた事が無い。
そんなやり取りをしている間に様々な同盟のツートップ達が位置についている。
「おうアイラス、俺達も位置につこうぜ」
「はい」
『レディースエンジェントルメーン!! 【ソーンラブラブ胸キュンシリーズ大胸筋腹黒シリーズ特別編第一弾★イロモノ誇りは親父アニキの証マッスルマニアラブ☆伝説の聖筋界同盟フェチ悩殺セクシーバトル筋大会☆】へようこそ!!! 私は司会も心躍る重役出勤☆真夏のサンタクロース!!!』
「司会者が随分な重役出勤ですね……」
「半年以上何処で何をしてやがったんだ……つぅかよ…何の司会なんだ、あいつ」
『そこのベイベ☆おじさんは不要な同盟をこの世から抹消させるべく誕生したブラッディサンタさんなんだよ〜Vv』
うふふふふぅ……と司会者が危ない目つきで二人を眺め見る。
何だか別の意味でぞくりと背筋に悪寒が走った。
『第一ラウンドはツートップの内我こそは!! という大喰らいの方を御選出の上競技に参加してください!! それでは、位置について〜っよーいどん!!』
「早ッッ!!!!?」
「オーマさん、走ってください!! 明らかに貴方の方が僕よりも大喰らいです!!!!」
「でぇぇええええええっっ!!?」
こうしてオーマはアイラスの言葉に促されるままに駆け出したのであった。デッドランである。
『一般市民のパンが三十点、赤いフードのパンが八十点、王女のおパンが二百点です!!』
「言うのがおっせぇんだよ!! そういう事はスタートの前に言っとくモンだろうが!!!」
オーマは踵を返してエルファリア王女のおパンを探し始める!!
勿論その間に市民のパンを幾つかイルカのごとくにつまみ食いVv
妖しげな赤フードのパンは極力というか全力で避けておいたが……その脇を赤眼鏡同盟の少年がすり抜けた!!
「愚かですね!! わが同盟のパンを避けるとは!!!!」
「んな見るからに怪しいモン喰えるか!!!!」
「そんな事を言うから大きくなれないんだよぅ〜ぃ♪」
一歩でオーマ達の大また五歩を歩き進むワル筋同盟の岩山カィ? がオーマの目の前のパンを紐ごと根こそぎ平らげた!!
「うあ!!? てめぇ卑怯だぞ!!!!」
「みんなで仲良く分かち合い〜♪そんなの寂しい幻想だ〜ぃ♪」
「お前が一番寂しいのわかってんのかこのワル筋野郎がーーーーーっっ!!!!?」
「ぅえっふぇっふぇっふぇ〜♪そんな事やってみなくちゃわからないんだぁんがぁんがぁんが〜♪」
「むやみやたらとコブシ利かせんじゃねぇ、腹黒度マックス不愉快だぁ!!」
ぁんがぁんがぁんがぁんが〜♪
その歌は遥か遠くまで響き渡っていた。
「くそっこれ以上パンはわたさねぇぜ!! イフリート!!」
オーマは自らの守護聖獣であるイフリートを呼び出すと、不機嫌MAXなご様子のイフリートににかっと笑ってみせる。
「あいつの足止めを頼むぜ!」
『………こんな下らない事の為に……呼ばないで欲しい物だな……』
そういいながらも此処は御主人様のお願い。イフリートは三メートルの巨体に向かって突進してゆく!!
岩山カィ? はその姿に怯みながらも、ひょいと交わしてはがっちりと取っ組み合いをしはじめた。
「オーマっ此処ですわよ〜!!」
「おぉっ姫さん!!」
オーマはエルファリアの声に、彼女のパン目掛けて口を大きく開いて飛びついた!!
すかっ
「ふがっ!!?」
すかっすかすかっっ!!!!
「くぉらぁあああああああああああああっっ!!! 寸ででかわすんじゃねぇ〜っっ!!?」
「うふふっだってオーマったら手も使わずにお口をパクパクして、まるで金魚さんみたいで面白いんですものv」
「これはこういう競技だーーーーーーっっ!!!?」
すかっ
「………姫さん、頼むぜおい……」
がっくりと項垂れるオーマ。
「うっふっふ…ほ〜ら食べて御覧なさい、オーマVv 美味しそうなパンが待っていますわよv」
悪意が無いだけにかなり性質が悪い。
「それっ今だ、赤眼鏡〜ぃ♪」
「了解ですっ」
項垂れたオーマを岩山ですカィ? のヒップアタックが襲う!! オーマはノォオオッッ!!? といいながら仰向けに地面に倒れ込んだ――そこへ赤眼鏡の少年が赤眼鏡同盟のパンをむぎゅっと詰め込んだ!!
「うっうぐぐっっ!!?」
「飲み込んでください」
少年はぐいぐいとパンを詰め込んでくる!! 良い子の皆は一口百回は噛んで下さいね。
ぼっぼぼんっっ
パンを飲み込んだオーマの巨体が、腹黒ミラクル生まれ変わった!!!
どすこ〜いv
オーマはあまりの巨体に起き上がることが出来ない!!
どすこ〜いv
オーマはひっくり返された亀のように自力で起き上がることが出来ない!!!
ある意味巨漢になってしまったオーマは、筋肉が脂肪に埋め込まれてしまった自身の体を見詰め、あまりの衝撃に地団太を踏んだ!!!
大地がゆれ、虚しく彼の奇声が木霊する――
「オーマ……済まない」
「……………いいから…起こしてくれ」
あぁ、タイトルは《エルザードで限界肥えろ!! 悶絶パン悔い狂騒》の間違いだ、コレ。
恐るべし!! ワル筋同盟&赤眼鏡同盟!!!!
《第二ラウンド:ユニコーン地域外人類未踏地にて眼鏡狩り》
巨漢オーマと何だか妙に爽やかな微笑を湛えたアイラスは何故だかわからないが誰も知らぬ密林へと来ていた。
ソーン早世の鍵を握るという、ユニコーン地域外人類未踏地に数ある遺跡―――それすらも見当たらぬ密林へ。
何故だ。何故此処を選んだんだ。
「………暑いですね」
「あぁ………あっちぃな…………」
それはそうだろう、オーマ氏は特に………泣く子も呆然と見送る巨漢なのだから。
『第二ラウンドは人類未踏・何か居るかも密林ジャングルにてチマチマ眼鏡狩りーーーーーーーーッッ!!!! 各同盟ツートップの皆様はそれぞれシンボルとなる眼鏡をかけてご出場ください!!!! では、よ〜いすたーとーーーっっ!!? あ、ついでにいいますと総帥眼鏡が百点でNO.2の眼鏡が五十点ですVv』
「だからついでが重要な上にスタートが腹黒フライング滅相も御座いません位に早いんだっつぅの……それにしても、シンボルとなる眼鏡………?」
オーマがにやりと微笑、フレームが筋肉手腕で耳をがっちりキャッチ☆勿論言うまでも無くレンズ部分は桃色紫外線防止加工済みの特性眼鏡を二人分具現しようとした所へ――すっとアイラスの手が伸びる。
「さぁ、オーマさん。これで貴方も青眼鏡同盟の一員ですよ」
オーマの顔に、アイラスとお揃いの青眼鏡が装着された!!! むっちりお顔に中々のお似合いだ。ていうか…二重レンズですか!!?
「なっなにぃいいいいっっ!!? アイラス、おまえさんやはりそんな野望を日々悶々と抱えてやがったのかーーーーっっ!! 俺NO.2ーーーッ!!?」
オーマの心に333のダメージ!!
「ふふっ……馬鹿な事を言わないで下さい」
アイラスが眼鏡のフレームを掴んでかちゃりとかけ直した。
「………愚問ですね!」
ぐ……愚問ですかぁーーーーーーーーーーーッッ!!?
オーマの精神にぐったり500の負荷と120のダメージ!!
と、そんなコントはさて置き、二人の目の前に軍隊宜しく規則正しい振動と歩行音が響き、隊列を微塵も乱す事無く真っ赤な軍団が登場した。
赤眼鏡同盟…というよりはもう軍隊。赤眼鏡軍隊行進。オーマの巨体がその振動に合わせて激しく揺れている!!
ツートップの二人が前へと進み出て、オーマとアイラスを目の前にふっと笑った。
ちゃっと素早く眼鏡を掴むと、後ろに控えた赤眼鏡軍団が其れに倣って素早く自身の眼鏡を掴む。
「アカメガネーーーーッボンバーーーーーーーーーーーッッ!!!!!?」
眼鏡のフレームを掴んでびょ―んぼーんびょーんぼーん。
眼鏡のフレーム掴んで皆でびょーんぼーんびょーんぼーん。
シュバシュバシュババッッ!! 素早い動作で以って皆等しい動作で眼鏡を上下する。
アイラスの精神に135のダメージ!!
「くっ…!! 強烈な技だぜ!! よし、アイラス!!!」
「はいっ!」
「………………………………………………………………えぇと…」
アイラスはまごまごしている!!
「………………………………………………………………うぅんと……」
アイラスはまごまごしている!!
「………………………………………………………………あの……」
アイラスはまごまごしている!!
「………………………………………………………………その………」
アイラスはまごまごしている!!
がくっっ!!!
アイラスは膝を付き、項垂れた!!
「どうしたっ大丈夫かアイラス!!?」
(ちっ!! まさかアカメガネ同盟の野郎どもの目に見えねぇ攻撃がっ!!?)
オーマは巨体をゆっさゆっさ揺らしながらアイラスに駆け寄ると、彼の呟くように洩らした一言に一瞬足を止めた。
「――――……できません」
「……なにっ!!?」
「まだ僕には……そこまでのキャパシティが!!!!!」
「ぬぉおおおおおおお!!!! その言葉わかんねぇ!! 訳わかんねぇぇええええええっ!!!!!」
「あ〜っはっはっは!!!!」
「アオメガネともあろう者が「ボキャ貧」!!!!?」
「あ〜っはっはっはっはっは!!!!!!!!!!!」
「くっ!! 今の別な意味で巨漢のオーマさんなら兎も角、この僕をコケにしようだなんて、許しませんよ!!!」
アイラスは釵を高々と構え、空を切るように振り下ろした!! そう、皆の者、掛かるのです! とでも言わんばかりに。
しかし、振り下ろした体勢のままアイラスは硬直した!
「…………しまった!!!」
「おう、今度は一体どうしたっつぅんだアイラス!!」
「ぼ……僕には手下がいない!!!!」
いえ、それ反則ですから。
がっが〜ん!!!
アイラスの心に109のダメージ!!
「許しませんよ……この僕を……」
アイラスはゆらりと立ち上がると、土煙を舞い上げつつ足を開いた。
「この僕を、お笑いにしようだなんて!!!! オウル!!!」
その言葉と共に、アイラスは自らの守護聖獣であるオウルを呼び出した。
遥か上空から大きな翼を広げ、一羽の鳥が舞い降りる!!
「適当に散らしてくださいよ!!」
『……………了解しました』
加減不機嫌そうにオウルがばさりと翼を広げる!!
オウルの翼から放たれた疾風は、赤眼鏡同盟員達の眼鏡を風に乗せて奪い去った!!
相手が怯んだ隙にアイラスは宙に身を躍らせ、常人の三倍以上の速度で以って赤い眼鏡フレームを次々とその釵の餌食とした!!
からんから〜ん!! と時差付きで眼鏡のレンズが彼らの足下に散らばった!!
今の彼の心の中に大音量で反響しているモノを擬音語で表しておく。
ぅがぁあああああああああああああああっっ!!!!?
……失礼致しました。
しかし彼が次々と狩っているのは、嫉妬からか赤眼鏡同盟ツートップの部下達の赤眼鏡だった。ついでにオーマの青眼鏡も狩られている!!! 手違いに違いない!!!!!
「アイラスッ後ろだ!!」
オーマのどすこい篭った声が密林内に木霊する。勿論当人はどすこいであるが為に汗につるつるっとすべってろくに動けやしない!!
しかしそれは多分一瞬の出来事だった!!
『なにぃ〜っっ!!! 青眼鏡君の眼鏡が狩られた〜〜っっっ!!!』
密林内に司会者の叫びが木霊した。
アイラスの顔から、青いフレームの眼鏡がスローモーションで地面へと向かって落下してゆく!!
かしゃんっ
にやりと赤眼鏡ツートップが笑う。その背後ではワル筋印の眼鏡をポイ捨て禁止区域外にポイ捨てした修羅の如き悪鬼・ワル筋同盟ツートップ達の姿があった。
『第二ラウンドは赤眼鏡同盟の勝利です!! 腹黒同盟、二連敗!! もう後がありません!! 次で高得点を獲得しなければ今回の【ソーンラブラブ胸キュンシリーズ大胸筋腹黒シリーズ特別編第一弾★イロモノ誇りは親父アニキの証マッスルマニアラブ☆伝説の聖筋界同盟フェチ悩殺セクシーバトル筋大会☆】は敗退です!!』
「なっ……!!」
「あんだと〜っっ!!? 大体にして赤眼鏡の野郎どもはそんなにたくさん居やがるくせに、相手はアイラス一人だぜ!!? アイラスがどんだけ赤眼鏡どもの眼鏡を狩ったと思っていやがるんだ!!」
いやいやいや〜、それって大会の趣旨変わってますから。
ぴーぴぴっぴーーーーっっ!!
司会者は首から下げたサンバホイッスルを匠も唸る周到な技で吹き鳴らしてみせると、不敵な笑みを洩らしながら二人にこう告げた。
『褐色カード!!』
「かっ……褐色!!?」
『二枚揃うと真っ赤ね!! 真っ赤な嘘ね!!!!』
「嘘かよっ!?」
『二枚揃って口答えしたらそのヒト強制的にワル筋赤眼鏡同盟参加!! 因みにコレ、蓄積型だから気をつけてね〜』
「あ…あんだとぉーーーーっっ!!?」
オーマが猛るその横で、アイラスは呆然と司会者を見詰めていた。
「あの……サンバホイッスルは…………」
「アイラス、大丈夫か?」
「はい、ご心配お掛けしました」
アイラスは眼鏡を拾って立ち上がると、すちゃっとそれをかけなおしていつもの冷静さを取り戻した。
「それよりも…オーマさん、見てください……あのサンバホイッスル…」
「あぁ、見事に操ってたな!! 並みの手慣れじゃねぇぜ……!!」
アイラスちょーっぷVv
……が、オーマの頚動脈にメガヒットする!!(大変危険)
オーマはくらりとよろめきながらも、アイラスの真剣な表情を見詰めた。
「あの印が見えますか?」
「あれは………!!」
二人は司会者のサンバホイッスルに刻まれたマークを目にし、顔を顰めた。
なぜならば――そのサンバホイッスルにはくっきりと「ワル筋模様の赤眼鏡を装着したアセシナート公国のマーク」が刻まれていたからだ。
「あの野郎ども……最初から結託してやがったのか!!」
「どうやら…最初から仕組まれた罠だったようですね。僕達はまんまとその罠に引っ掛かってしまったという訳です」
『私は……そろそろ帰っても良いのでしょうか?』
「えぇ、済みませんでした…こんな事で呼び出してしまって」
『………いえ、いいのですよ』
恐るべし!! ワル筋同盟、赤眼鏡同盟!!!!
もう後が無いぞ、腹黒同盟、青眼鏡同盟(現状そんな物は存在していない…筈)!!!!
《第三ラウンド:アセシナート公国(突っ込み無視)にて間抜けにラストバトル!!?》
砂埃が舞っていた――此処は、アセシナート公国とエルザードが幾度も戦いを繰り返した場所――
オーマとアイラスは顔を見合わせると、少々困惑気味に顔を顰めてみせた。
『さぁ、いよいよラストバトルです!! 一応此処までの得点数を発表しておきます!!』
第一位:ワル筋同盟 550
第二位:赤眼鏡同盟 520
第三位:走馬灯体験済同盟 430
第四位:腹黒同盟 350
第五位:ネコカン命同盟 340
『因みにそれ以下の同盟は既に破棄しました!! あぁ、参加しなければ良かったのに〜』
「………え? 破棄!? わ、ワル筋総帥!!?」
「いやぁ赤眼鏡総帥、俺はそんな話聞いてないぞ!? ムッキ〜!」
「どういう事だの〜ん♪」
「おかしいですね…こんな説明は私たちは受けては居りませんよ!!」
激しくマッスルポーズをキメながら…或いは激しく眼鏡を上下させながら――ワル筋同盟と赤眼鏡同盟のツートップ達が俄かにざわめき出す。
「はっは〜ん、成る程おまえ等や〜っぱり裏で結託していやがったんだな?」
「ムッキーさん(注:名前ではない)の方が総帥だったのは兎も角…僕にとっては赤眼鏡同盟の総帥が少年の方だったという事に驚きなのですがねぇ……」
アイラスは加減首を傾げながら呟いた。
『無駄に蔓延る同盟に制裁を……!! 雑草は除草剤で根絶やしにするものですよ』
うふふふふ……と、司会者が薄暗い笑みを浮かべる。
例えが良くわからないが、兎に角最初から五位以下の負け組み同盟は破棄するつもりであったらしい。
『さぁ、我等がアセシナート公国へようこそ! 我等がネコカン命同盟がお相手いたしますよ………ニャンv』
「「「「「「走馬灯体験済同盟かと思っていたんですけど…………」」」」」」
「成る程……道理で五位まで拾った訳ですね。カルカン命同盟の得点数の低さに感謝しなくてはなりませんね……」
「………確かに、四位からいきなり得点が低いですからね………」
アイラスは赤眼鏡同盟総帥と視線を交し合うと、ちゃきりと眼鏡を掛け直し、くすりと微笑を浮かべた。
「さて、今度の勝負は一体何だっつぅんだ? 司会者のネコカン命同盟さんよ」
『ぐぬぬっ……馬鹿にしやがってぇぇえええええ!! 勝負だ!! 猫は狡賢いんだぞ!!!! 従って我々獣な魔族を嘗めるな!!!!』
司会者はそれまで優越感に浸ってマイクを握っていたお立ち台から飛び降りると、そこは猫らしく身軽に着地して見せた。
『クイズ・アセシナートってなんですか〜??!!!!!!!!!』
爪をキラリと覗かせながら指を指す――どうしてもマイクは離さないのか。
「此処まで来てクイズですと……?」
赤眼鏡同盟NO2が眼鏡を上下する。
「そりゃあれだろ、司会者が司会をしなくても済みそうな……」
オーマはそこまで言って、ふと動きを止めた。
「……あいつ、此処までの2ラウンドとも……司会をしていたよな?」
「えぇ、……ネコカン命同盟は…これまでたった一人で勝ち抜いてきたという事でしょうかね」
「すげぇぜムッキー」
「あぁああああニャンコはは〜るか遠くまで〜♪」
意味がわかりません。
『このラウンドの勝者には500点を与えます!!』
「………………オイ、いいのかコレ?」
「………展開的にはありえませんが…僕達にとっては有利に働きそうですね」
「な〜るほど。此処はいっちょ腹黒マックス冥途にGoGoおつれ申し筋☆………」
筋肉が見えない。
「まぁそう云う訳で……だ。皆さんには悪いが…勝負、願おうか」
ざっと砂煙を巻き上げ、彼らの背後に黒い影が現れた――――
「お…おまえは!!」
『総帥!! お疲れ様であります!!!』
ぇ?? と、皆の心から滲み出る疑問の声が荒野に木霊する。
「ちょっと待つんだムッキー! ネコカン命同盟の総帥は司会者!! お前じゃないのかムッキ〜ッ!!!?」
「………私が総帥だ。何もおかしなことはあるまい…違うか?」
「「「「「「いえ、すっごくぴったりだと思います」」」」」」
ネコカン命同盟総帥は軽やかに大地を蹴り上げて、司会者の肩にすたっと着地した。
とても身軽だ。何せ黒猫だから。
「喋る猫が総帥か……」
「………居ましたっけ? あんな猫さん」
「突っ込んではいけない、青眼鏡よ、突っ込んではいけないのだ!! 見ろ、第三位の同盟など影も形も見えないぞ!!」
「…………不条理ですね」
ふっとアイラスが目を細める。いえ、そんな事はありません。きっと走馬灯でも見ているのでしょう。
『さて、それではクイズをはじめまーす』
「いいえ、問題は私が出させていただきますわよ」
司会者のマイクを横からすっと奪い取ると、エルファリア王女がにっこりと柔らかに微笑んだ。
『一度やってみたかったのですわ、一般司会者。うふふ。これで私もはらぐろにずむを一つ理解できるかしら』
「……姫さん……ナイス?」
「……いえ、返ってどんな問題が出るか……わからなくなってしまいましたよ。あの司会者だったら猫限定だったでしょうから」
「「「「確かに…」」」」
「クッ……ネコカン命同盟総帥、これでは我々がエルザードに侵入し、エルザード一の同盟としての座をゲットして、まぁにゃんこVvと全ての人民の心を鮮やかにゲットで牛耳りあわよくば工作員ゲットで内・外部からの同時破壊を行うという本来の目的が……」
ぴたんっ ぴたんっ……
元・司会者の額に猫の尻尾がぺちぺちと叩きつけられている。
「お前はどうしてそう余計な事ばかりを口にするのだ……ん?」
「す…すすすすっすみませんッッ!!」
「お前などマイクを取り上げてしまえばその辺の一市民と変わらぬ位平平凡凡とした喋りに過ぎず、全く以って影の薄い存在だという事がまだわからないのか………ん?」
「ん?」のあたりで尻尾がきゅっと元・司会者の額を締め付ける。頭部の長さの微調整を行うのだろう。違うか。
「な…なんて恐ろしい事を」
「腹黒いおニャンコだぜ……是非腹黒同盟へ!!」
パンフレットを差し出したオーマの手首を猫の尾がきゅっと締め付ける!!
「………スミマセンデシタ」
「なぁに気にするな、腹黒同盟総帥よ……!」
二人の間にバチバチと電撃エフェクトが迸り、猫の毛玉がぽやんと浮いた!!
『第一問ですわ。エルザードの王女の名前は何でしょう?』
ピンポーン
『はい、アイラス』
「エルファリア王女です」
『大正解ですわv良く出来ました〜』
「「「「「「……………」」」」」」
『第二問ですわ。エルザードのエルファリアのお友達の猫ちゃんは何色でしょう?』
「そ……そんなモン知らんぞ……?」
「おい、お前知ってるか? ムッキー」
「わからないんだ〜よぉいぉいぉい……♪」
ピンポーン
『はい、オーマ』
「黒だろ」
『大正解ですわv流石ですわね〜』
「「「「「「……………」」」」」」
『第三問、これが最終問題ですわ。エルザードのエルファリアが大きくなってしまったのは何を沢山含んでいたからでしょう?』
「……何で御座いますか、この問題は」
「……全くの未知ですね!!」
「…私も…知らんな………」
「わぁ……総帥でも知らない事があるんですね!!」
ぺちっぺちっぺちっ……再び猫の尾が元・司会者の額を叩く音が響いた。
ピンポーン
『はい、オーマ』
「海水だったな…でもあれは姫さんじゃなくて…」
『いいのよオーマ、大正解ですわvきっと貴方もお腹に針でも刺してみたら元に戻るかもしれないわよ。
それでは、優勝はオーマとアイラスの腹黒同盟に決定ですわね。おめでとう』
ぱんぱかぱ〜ん!!
…………いいのかこれで。
「み………見事だったぞ……腹黒同盟!!」
何だか色んな疑問符を浮かべながら、その他の同盟の者達が未知の知識に挑み、勝ってみせた腹黒同盟の二人に賞賛を浴びせた。
「おう、ニャンコ総帥! あんがとよ」
「私はネコカン命同盟総帥だ」
「おうおう、すまねぇ……どっちでも良いんじゃねぇか?」
「ではお前は巨漢同盟総帥で構わないのだな」
………「巨漢同盟」誕生!!!?
「僕は絶対に嫌ですよ?」
「……………ハイ、済みませんでした」
「気にするな、時期にパンの効果も切れるだろう……それよりも、だ」
ニャンコ総帥もといネコカン命同盟総帥は尻尾で布を被せた巨大な何かの塊をオーマの方へと寄越した。
とても重い物であるという事が、その地響きから伝わってくる。
「今回の優勝商品だ――受け取れ」
「おぉっ!!」
待ってました! とばかりにオーマの双眸に光が宿る。
アイラスは何だか首を傾げながら、訝しげに布の端をじっと見据えていた。妙な輝きが見え隠れしている。
「見よ!!」
ネコカン同盟総帥が尻尾の先で布をばさっと取り払う――その中から現れた物、それは……
「ネコ缶一年分だ!!」
一瞬の空白と体中を駆け巡る激しい衝撃――――
「お前なんかニャンコ総帥決定だーーーーーーーーっっ!!!!!!」
その日、うわーんっと大の大人が大声を張り上げ、ずっしんずっしん地響きを響かせながらエルザードの方へと向かって走り去っていく姿を、幾人もの人間が目撃したという。
皆が彼を呆然と見送る最中、ニャンコ総帥は「今決めた…必ず野望を叶えてみせる……私は決してこの屈辱を忘れはせんぞ……腹黒同盟!!」と呟いたとか、呟いていないとか……。
――――FIN.
※ オーマ・シュヴァルツ氏、褐色カード一枚ゲット!!
※ アイラス・サーリアスは眼鏡狩りの極意を「拾得」した!!
※ 優勝商品として聖獣もびっくり! ネコ缶一年分をゲットした!!!!
※ 追加は兎も角、加工・修正は固くお断り致します。
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