<PCクエストノベル(2人)>


豪商の沈没船〜勇気ある選択
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【冒険者一覧】 整理番号 / 名前 / クラス

 1940 / モラヴィ / 慣性制御バイク
 1552 / パフティ・リーフ / メカニック兼ボディガード
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 二人――というか、一人と一機は今、船を雇ってとある海域にやってきていた。
 目的はこの辺りに沈んだといわれる豪商の沈没船だ。海の底に沈んだ船には当時積まれていた宝石や金貨などの財宝が眠っていると言われているのだ。
 ただ……。

モラヴィ「ううう。パフティ、気をつけてね」

 一応は水中装備をつけているものの、機械であるため水を苦手とするモラヴィは船で留守番することとなっていた。
 当初はモラヴィも連れていく予定であったのだが、水を怖がって入るのを拒んだため、パフティも無理強いしなかったのだ。
 心配そうなモラヴィに、パフティはにこりと穏やかに微笑んだ。

パフティ「大丈夫ですよ。モラヴィは心配性ね」
モラヴィ「だって、こいつが沈んだのって魔物の仕業って噂だろ?」

 しかも話によれば、そいつはまだこの周辺に巣食っているという。

パフティ「ええ。だからちゃんと装備はしていきます。モラヴィは命綱の方、しっかりお願いね」
モラヴィ「うんっ。任せておいて!!」

 ぐっと拳を握ったモラヴィに頷いて。パフティは、海の底へと出発した。


■ ■ ■


 エマーン技術で小型軽量化されたアクアラングとウェットスーツを着込み、自衛と障害除去用にと高周波振動アクスを手に。
 パフティは薄明かりの届く浅い海から、下へ下へと降りて行く。海底が見える頃になると、光は持ち込んだライトだけが頼りとなった。

パフティ「……あれですね」

 海底に沈む船体を見つけて、観察してみるが、これといって魔物らしき姿はない。
 今はここにいないのか、ただの噂だったのか。後者であれば嬉しいが、警戒を緩めることなく船体へと近づいて行く。
 船体に辿り着いたところで水中カメラを起動し、周囲の様子を記録しながら先へと進む。

パフティ「無事船体に着きました。今のところ、魔物が出る様子はありません。財宝は、おそらくもう少し先ですね」

 額の精神感応サークレットを通してモラヴィに話しかけた。

モラヴィ「魔物はいない? 良かったあ!」

 返って来た声は、ほっとした声音であるとともに、わくわくと浮かれている口調でもあった。
 財宝の発見を期待しているんだろう。それはもちろん、パフティだって同じことだが。
 幾人もの冒険者が調査に入っているはずのそこは、だが、久しく人が入った形跡はない。水中ゆえ、そういった痕跡が長く残らず流されてしまっているのかもしれないが。

パフティ「ここまでは異常なし。船の奥に進みます」
モラヴィ「了解っ! パフティ、頑張ってね!」

 静かに告げたパフティに、元気なモラヴィの声が返ってくる。
 思わず小さな笑みを零して、それから、パフティはさらに船の奥へと進みはじめた。
 だが。

パフティ「……?」

 進みはじめていくらもしないうちに、何かが動く気配を感じてパフティはそこに立ち止まった。
 深海の魚であればよいのだけれど……。
 警戒を強めながら、そっと気配の方へと振りかえろうとしたその時。

パフティ「っ!!」

 どこからからか触手らしきものが伸びてきた。
 形だけで見れば、タコかイカの足のようにも見えたが、それにしてはあまりにサイズが大きすぎる。

モラヴィ「パフティ? どうしたのっ!」

 繋がったままの通信からパフティの異変を察し、モラヴィが焦りの声をあげた。しかし、今のパフティにはそれに答えるだけの余裕はない。
 伸びてくる触手をナイフで断ち切りつつ船の外へと移動して、ほんの少しの隙をつくって叫んだ。

パフティ「引き上げてっ!」
モラヴィ「うんっ!!」

 言うが早いか、体が海上へと引きあげられて行く。
 しかし、その途中でガクンと下へ引っ張られ、見ると足首に触手が絡みついていた。
 この体勢で触手を切るのは難しい。

パフティ「モラヴィ……。皆を呼んで下さい」

 船にはここまで一緒に来た仲間たちがいる。きっと助けになってくれるだろう。
 告げて、パフティは命綱へとナイフを向けた。
 ブチンと短い音がして、綱が途切れてパフティは下へと舞い戻る。
 伸びる触手を睨みつけて、パフティは改めてアクスを構えなおした。


■ ■ ■


モラヴィ「パフティ? パフティっ!!」

 突如、綱から重みが消え、モラヴィは慌てて船へと振りかえった。
 ただならぬ様子に船員たちのあわただしくなる。説明を求められて魔物が現れたのだと簡潔に告げ、モラヴィは海面の方へと視線を向けた。
 水は、苦手だけど……。
 怖いけど、このままパフティを放ってはおけなかった。

モラヴィ「行っくぞーーーっ!!」

 勇気と気合を振り絞って、勢いよく水の中へと身を躍らせる。
 耳元で大きな水音が鳴り響いて、空の青から海の蒼へ。視界を染める色があっという間に変わっていく。

モラヴィ「パフティ、大丈夫っ!?」
パフティ「モラヴィ?」

 見ればパフティは、大きな触手を相手に奮闘していた。触手の先は岩影に隠れてここからは見えないが、今は魔物退治よりもパフティを助けることが優先だ。
 水中用装備のひとつである水中銃を構えて撃てば、放たれたモリは狙い違うことなく蠢く触手へと突き刺さる。

パフティ「モラヴィ、大丈夫ですか?」

 苦手な水中へと飛び込んできたモラヴィに問うたパフティの言葉を聞いて、モラヴィはすぐさま言い返した。

モラヴィ「それは俺の台詞だよ。いきなり命綱切れちゃうし!」

 言って、もう一発。こちらに近づこうとしている触手に水中銃を撃ちこんだ。
 そうして触手の動きが鈍った隙を縫って、急いでパフティの元へと近づいた。
 伸ばされたモラヴィの腕がパフティの体をしっかと掴む。そうして、掴むが早いかモラヴィは、海の上へと向かって上昇をはじめた。

モラヴィ「っもう、しっかりしてよね!」

 言っている内容はともかく、口調はまるで子供っぽくて。
 心配をかけたのは悪いけれど、素直にそう言わないモラヴィの子供っぽさがまた可愛らしくて。
 パフティは思わずクスリと声を零した。

モラヴィ「なに笑ってるのさ!」
パフティ「いいえ、なんでもないの」
モラヴィ「なんだよー。心配して損したっ!」

 拗ねた様子で告げるモラヴィに、パフティは心からの謝罪の意を込めて告げた。

パフティ「ごめんなさい。心配してくれて、ありがとう」
モラヴィ「……わかればいんだけどさ」

 のんきな会話を交わしている今も触手は二人を追ってきていたが、モラヴィのほうがスピードは早かった。
 そしてまた、触手はどうやら、縄張りに入ってこない限りは襲ってこないらしい。ある程度船から離れたところで、触手は海底へと戻っていった。

モラヴィ「とうちゃーっく!」
パフティ「お疲れ様、モラヴィ」

 船上へ戻ると、船員たちの歓声が二人を迎えた。
 乗組員たちへも心配をかけたことに頭を下げて、落ちついたところで二人は船縁へと寄った。
 海は静かで、ここからの景色を見る限り、あんな怪物がいるなどとはとても思えなかった。

モラヴィ「財宝見つけられなくて残念だったね」
パフティ「そうね。でも、わかったことはあるし、二人とも無事で良かったわ」

 にこりと笑ったパフティの言葉には、モラヴィもまったく同じ気持ちだったから。
 だからモラヴィは、勢いよく頷いて。
 こうして、今回の探索は終わりを告げた。