<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


すうぃ〜と☆ぽてと



 ………草木も眠る丑三つ時…………
(良く来たな、てめぇら)



 地獄の二丁目にようこそだぜ……
 声を顰めて、草むらの中で骸骨がカタカタと奥歯を鳴らして笑う。
(今日は、なんのようなんだよ)
 つられて、声を抑えて骸骨のうつろな眼孔を覗き込んだ。
(よくぞ聞いてくれた、本日のミッションは……と、隠れろ!)
 見つかっちまう!と頭を押さえつけれ思わず、地面にキスする寸前で手を付く。
 その頭上をランタンをもったかぼちゃのお化けが通り過ぎていった。

(今日の獲物はあれだ!)
 骨の先が指す方向には………一面に広がるさつまいものつる。
(あれをいただこうって算段よ)
(あれをか?)
(おう)
 持ち主に黙って作物を奪い去る……それ、即ち悪党のすること。
(素直に欲しいっていえねぇのかよ……)
 呆れて物も言えない。
(いいんだよ!とにかく今日の目当てはアレをいただくことだ)
 そうだな……一人頭2、3キロってところか?
(そんなに盗むんかよ……)
 いやに張り切る、骸骨に無理やり引きづられるような形で冒険者達は悪事に加担することになるのであった……



「持ち主にお願いして普通に取らせて貰った方が絶対早いと思うんだけど………ちゃんと許可は取ってあるのよね?」
 眉を潜め、先頭を行く骸骨に尋ねたのはカミラ・ムーンブラッド(1988)。
「さぁて、どうかな?」
 うひひひひと骸骨は、人の悪い笑みを浮かべ明後日の方向を見る。
「おまえさんの家もラブなハニーに色々と搾り取られて家計が火の車なんだな、よっしゃ任せとけ、俺がその芋をゲッチュしてきてやるぜ!」
 男泣きに滂沱の涙を零しながら、うささん頭巾が妙にぷりちーなオーマ・シュヴァルツ(1953)の手にはイチゴ模様のスコップが両手に握られている。
 暑苦しさと、可愛らしさの絶妙のハーモニーで芋ほりに挑戦するらしい。
「お芋大好きにゃ♪」
 うにゃにゃ♪♪と、こちらは夜行性のワーキャットの為に、かなりハイテンションなミリア・ミーア・キャット(2589)。
「盗賊の血が騒ぎまくりなのにゃ!」
 元気いっぱいやる気満々で獲物に狙いを定めるのだった。

 芋、芋、芋。見渡す限りの芋の蔓が広がるさつま芋畑がよく見渡せる場所に、全員が一度集った。
 身を屈め芋畑へ徐々に近づく。
「見張りは、3体。まぁ、見ての通りの南瓜頭だからあんまり警戒することもないだろうけど、気をつけろよ」
「あなたの頭も中身がはいっているかどうか……」
「任せろ兄弟!俺の下僕主夫魂にかけて、芋の100や200!取って来てやるぜ!」
「おう、頼んだぜ!」
 カミラの突込みを他所に、家計の苦しさを分かち合う野郎二人の間には、いつの間にか漢同志の友情が結ばれたようだった。
「見つからないようにとるにゃら、お任せなのにゃ♪」
 一番乗りはいただきなのにゃ!と。ダッとミリアが駆け出した。

 柔らかい猫の足は、足音一つ立てず芋畑へミリアを到達させた。
「にゃ、にゃ♪」
 柔らかく耕された畑の土は、クッションのようでそれでなくても足音を立てにくい。
 見張りのジャック・オー・ランタンがこないのを確認して、手始めに直ぐ傍の蔓に手をかけた。
「お芋、掘るのにゃ♪」
 シャキーンと爪を伸ばし、ミリアはガシガシと芋ほりを開始した。

「ぬおぉぉ――――!ふんっ!!」
 まだ見ぬ芋に向けて愛の波動送りつつ、両手のイチゴ模様のスコップを神業的に動かしオーマも猛然と掘り出した。

「およ?カミラは堀りに行ってくれないのか?」
「掘ってるわよ」
 ディースの傍らで、悠然とカミラが畑の方向を指差した。
「力仕事って私には向かないのよね」
 こちらは、スコップ自体に魔法をかけて余裕の表情。
 まるで、見えない人が扱っているかのようにスコップは畑の中をザックザックと掘り返していた。

「お芋……でてこのないのにゃ……?」
 掘れども、掘れども芋には到達できず。
「俺の愛が足りないのか……そうなんだな!だったらもっと親父愛を注ぐまでよ!!」
 地下茎は下に向かって延びているのだからその先になるものがあるはずなのに…肝心の芋が見当たらない。
「あー?いい忘れてたけど。ここの芋は『ディープ・ディープ・スィート』っていう種類でな。結構深いところになるらしいんだわ」
 がんばれよーと、まるで他人事の骸骨の補足事項は今更な感があった。
「そういう重要なことは……早くいいなさいよね」
 それにしても10キロ近い芋を強奪して何をしようというのか……。
「まさか…骨のくせに芋を食べるきなのかしら……」
 あんまり、見たくない光景だわとカミラ呟きは闇夜に溶けて消えた。
 半刻程たち……其々の方法で其々に身の丈ほどの穴を掘りつつあった。
 流石に畑の中にでっかい穴ぼこが開きつつあるのだ、すかすかの南瓜頭の面々も騒ぎに気が付いたらしい。
 ランタンの明かりが近づいてくる。
 最初に動いたのはオーマだった。
「む、見つかったかならば……」
 ばっと、穴の中から飛び出し近づいてくるランタンに立ちはだかった。
「桃色親父筋肉の極意見せてやるぜ……秘技!」

 う さ さ ん 頭 巾 闇 夜 の 案 山 子 

 両手に苺模様の移植小手。頭にはウサ耳のついた頭巾を泥棒スタイルで鼻の位置で結んだ、立派な体躯の一本足の案山子が畑のど真ん中におりっ立った。
 これには南瓜頭たちも度肝を抜かれたらしい。
 人にはわからぬざわめきのような声で、うささん案山子の周りを取り囲む。
「チャンスにゃ!!」
 背後からその南瓜頭を狙ったミリアは………ずでん!と芋の蔓に足を取られ見事に顔面からすっころんだ。
「ふにゃ!?」
「……あぁ、もう」
 見てられないわ。
 同行者の行動に頭を抱えながらミリアが、宙に指を滑らせた。
「ジャック・オー・ランタンって眠るわよね?」
 指が宙に次々と複雑な紋様を紡ぎ上げていく。それは確認。眠らなかったら別の手を考えればいいわ。
 カミラの呪文は、直ぐに完成した。
「安らぎの月に擁かれて、眠ってなさい」
 悠然と笑みを刻んだミリアの宣告が、3体のジャック・オー・ランタンに下された。

「お芋いっぱいなのにゃ♪」
 目を開けたまま(というか瞼がない)眠るジャック・オー・ランタン達を縛り上げ、その後芋堀は滞りなく行われた。
「これだけ全部、シェアトに乗るかしら?」
 身の丈3倍ほどの深い場所からごろごろと掘り出された、芋の山と一緒に連れてきた黒い天馬を見比べる。
「大丈夫だろ?いざとなったらオーマと俺がいるからな」
 立派な体躯のオーマはともかく、筋肉皆無な骸骨にいわれてもちっとも安心できない。
「だめにゃら、ボクも一緒に運ぶのにゃ」
 皆で運べば大丈夫。とミリアも胸を張った。
「で、オーマはどうしたんだ?」
「さっきあっちの方にあるいていったにゃ」
 いっぱいなんか持って。ミリアが指差すのはオーマがあけた芋掘りようの穴の方向。

「やっぱり、来年の為にこれを残しておくべきだよな」
 その手にあるのは悩ましいアニキの人面が浮いた聖都天然記念物人面芋と名付けられた芋と毎度おなじみ腹黒同名の桃色パンフ。
「……あんまり、変なもん埋めるなよー」
「どうせだから筋肉親父マッチョも一緒にうめるのにゃ」
 そうすれば、来年もお芋がいっぱいとれるのにゃ。
「そうね…なんか筋張ったお芋になりそうだけど………一緒に埋めた方が世界のためかもしれないわね」
「まて、こら!俺まで一緒に埋めるな―――!?」
 がっさがっさと、ミリアが両手で傍の土の山を穴の中に投げ入れ、カミラも再び傍のスコップに呪文をかけるのだった。


 その後オーマが無事に穴から這い出したのは、日も昇ってからだったとかなんとか……
 最後まで騒ぎを起こしながら、ディースの芋ほり大作戦はこうして終了した。

 

Mission complete Cooperation of gentlemen is appreciated.



【 Fin 】


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


【1953 / オーマ・シュヴァルツ / 男 / 39歳(実年齢999歳) / 医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】

【2589 / ミリア・ミーア・キャット / 女 / 18歳(実年齢9歳) / 盗賊】

【1988 / カミラ・ムーンブラッド / 女 / 18歳(実年齢18歳) / なんでも屋/ゴーレム技師】


【NPC / ディース】


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


始めまして、又はこんにちはライターのはるです。
今回は…当方骸骨が企画いたしました、どうしようもない作戦に参加してくださってありがとうございました。
皆様のご協力のお陰で無事、芋が入手できましたのできっと、ティーパーティーの際にお芋を使ったお菓子が振舞われることかと思います。
最後までドタバタしておりますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

イメージと違う!というようなことが御座いましたら、次回のご参考にさせて頂きますので遠慮なくお申し付けくださいませ。