<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


お茶していきませんか?



 アルマ通りに店を構える「晴々なんでも屋」は今日も暇だった。
 店内には店長の晴々なる子と居候のココとヴィンセントの3人が暇をもてあましていた。
「みんなー、お茶が入ったわよ。さぁ飲みましょう」
 ココはソファーに腰掛けると、頭に巻いてある布を少しずらしてお茶を飲んだ。
「美味しいわ〜。みんな、飲まないの?」
「い、いらないわ。だって貴方のお茶でしょ? きっと何か変な効果でもあるんじゃないの?」
 ふふふ、と笑うココは、当然のように言った。
「当たり前じゃない」と――

■□■
 カランカラン
 ドアを開閉すると鳴るようしてある鐘が鳴り、二人のお客様が来店した。
「おうおう、筋賀新年★ゴットカカア天下と下僕のお宅訪問マッチョ2006年★しにゴーツゥ親父乱舞参上筋!」
「シキョウもいるよ〜〜!!」
 味気ない見慣れた空間に、バンと花咲いたような豪華絢爛袴姿のオーマ・シュヴァルツの背中には黄金色で『腹黒同盟』と書かれていた。その後ろにいるシキョウは大柄で真っ赤な桜が描かれている振袖を着ていた。
「まぁまぁ、オーマ! それに貴方はシキョウちゃんね。いらっしゃ〜い、ゆっくりしていってねぇ」
 営業スマイルで向かえるココに対し、なる子は2人に圧倒され目が点になり、ヴィンセントはそれをマネした。
「今日はよ、腹黒同盟普及伝導伝説伝染汚染聖筋界徘徊中に、ラヴ巣ビビビ親父愛キャッチしちゃって乱入よ!!」
「らんにゅ〜〜!!」
 この光景に笑っているのはココだけであった。手をパンっと叩くとコップを2つ出し、
「あら、そうなの、うふふ。そうそう、偶然なのだけど今お茶を入れたところなの。そこに座って飲んでね」
「お、すまねぇなぁ!」
「わ〜い!!」
 2人は椅子へ座ると、ココは円状の机に各自1つずつコップを並べた。もちろん、なる子やヴィンセントの分も。
「えーっと、レモン? それともミルク? ストレートでも美味しいわねぇ〜。ま、適当にっと」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
 ココの自分勝手な行動により、オーマはレモン。シキョウはミルク。なる子はストレート。ヴィンセントはオレンジジュースがコップに注がれた。
 一口飲むと、口の中にパッと広がる風味に皆、酔い痴れた。しかし一人だけ、苦い顔をしている。
「うげぇ、にが〜い。それにちょっと! なんでヴィンはオレンジジュースになってんのよ!!」
 そんななる子を知ってか知らずか他の4人はワイワイとお茶を飲んでいる。
「初キッスの味だぜぇ」
「まぁ、うぶなこと言うわね」
「美味しいよー! シキョウ全部飲んじゃった〜〜!!」
「まぁ、可愛い」
「ちょっと聞いてるの?!!」
 こんな調子で進む午後のお茶会は和やかに、しかし飲んだものを着実に虫食んでいった。

「そういえば、シキョウちゃんは皆と会うのは初めてよね?」
 目の前でショーが始まっているかのように目を輝かせて返事をするシキョウに対し、オーマは身体に違和感を覚えたが、話は進んでゆく。
「私はココよ。ココちゃんって呼んでね♪」
「☆#$W・・・あたしは晴々なる子よ。よろしくね、シキョウちゃん、オーマさん」
「むにゅにゅー!」『訳:ボクはヴィンセント・フィネスです』
 オーマとシキョウは同時に返事をしたが、口を開いただけで一瞬動きが止まった。
「なんだったんだ??」
「オーマさん!! それにシキョウちゃんも?!! 鏡見て! 早く!」
 なる子は急いで姿見を持ってくると、2人の姿を映した。
 2人は鏡の前でポーズをとったり、ジッと見つめてみたり、目を擦ったり・・・思い思いの行動をしてから叫んだ。
「らぶりぃぃいい!!!」
「かわいい〜〜♪♪」
 オーマの顎には長い桃色のひげが生え、シキョウは耳に白い羽が生えている。
「喜んでもらえて嬉しいわ♪」
「やっぱりお前の仕業か!」
 なる子はココの胸倉を掴むと怒鳴った。しかしココは依然冷静である。
「あら? 2人は楽しんでいるわよ。しかし貴方も迂闊だわ。私の紅茶に変な効果があるって言ってたの、貴方じゃなくて?」
「うっ」
 ココの胸倉を離すと、なる子は姿見で自分の姿を見た。
「なんじゃこりゃああぁぁぁあああ!!!」
 そこに映っていたのは犬。2本足で立つ茶色い犬。
 ついでにヴィンセントは頭に桜が咲きました。
「こんならぶりぃなヒゲ、始めてだぜ! ありがとよっココ!! お礼にこの前渡し忘れた物をあげるぜ!!」
 感涙しながら渡す物は、巷で今ひそかなブームがある無限筋%増量マッチョ中☆オーマ等身大セクシーフィギアであった。
「あ、ありがと〜」
【ココは顔が引き攣らせた】
「他にもあるぜ! 準備するから待ってな」
「まってー、シキョウも〜〜〜」
 フィギアを置いたココは台所を壊されかねないと思い、2人に付いていくと、部屋に残ったのは姿見の前で呆然と立つなる子と転がるヴィンセントだけであった。

■□■
 数分後、台所から出てきた3人は人数分のコップと大きな袋を持っていた。
「さぁ、お茶会を再開するわよ。座って」
 皆が椅子に座ると、振袖姿のシキョウが腕をブンブン振りながら話し始めた。
「まずはシキョウからねーー!! これはゼノビアにさいている、おくったひととえいきゅうにきずなでむすばれるおちゃなのーー。それでね、そそいであげるひとのことをおもってそそぐと、なななーんと! いろがかわっちゃうの〜〜♪♪」
 シキョウは最初にココ、それからなる子、ヴィンセント、オーマ、自分の分の順に注いでいった。
 目を瞑り、トポトポと注がれていくお茶を相手が見つめると、ポットから出るときは茶色でもコップへたどり着いたときには、もうすでに茶色ではなかった。
 目を開けたシキョウは興味心身で皆のコップを覗き込む。
「みんな、なにいろになったの〜〜??」
 ココのコップを覗くと、お茶の色は赤になっている。オーマも同じく、赤のようだ。
 しかしココのお茶は赤をさらに増し、限界まで達すると燃え上がり、お茶は無くなった。
「あれれー?」
 なる子のお茶は真っ白になり、ヴィンセントは青になったが、しばらくして紫になった。
「シキョウちゃんは何色になったの?」
 後悔・反省を終えたなる子はシキョウのコップを覗くと、一瞬赤くなったと思ったら急に緑に変わった。
「不思議ね。味は普通なの?」
「うん♪♪」
「おーっと、お茶飲む前にお菓子があるぜ」
 オーマは机に大皿を乗せると、そこにクッキーを並べた。
「お茶がいいと思ったんだがな、3杯もいらんだろ」
 そのクッキーは、桃・虹・黒・茶・金の5種類あり、各1枚ずつある。
「うわぁ〜、凄い色のクッキーだね」
「まぁな! ささ、食べてくれ」
「美味しそう〜」
 なる子は虹。ココは茶。シキョウは金。オーマは黒。ヴィンセントは桃のクッキーを取り、口へ運んだ。
 次の瞬間、眩い光が部屋中を照らし、クッキーは効果を発揮した。

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「・・・」
【なる子は考えるのをやめた】
 なる子の体にはオーマのような肉体の男が抱きついていた。
「24時間お守りしまッス! ムッフーン♪」
 その様子に感動するオーマの肌には光沢が出ている。
「オーマ、貴方の肌いいわね〜。まるで赤ちゃんのようだ・・・わねぇ♪」
 オーマやシキョウの服が見えない。ココには何もしていないのに服が見えず、目を擦っても変わらず、視界一杯にR指定ワールド全開している。
 ついでにヴィンセントは頭に薔薇が咲いた肉天使に抱っこされています。
「あれーーー??? シキョウは何もなってないよ?? オーマ!」
「お前の横に沢山沸いてるぞ」
 シキョウのすぐ横に黄金のマッチョ軍団が立っているが、小さい。
「あは〜んむふ〜ん♪ シキョウ様! ピンチのとき、我々を呼んでください! 必ず助けてきますから!!」
「わ〜〜い、ありがとう♪♪」
 喜ぶシキョウに敬礼をすると、マッチョ軍団は煙となって消えた。
 
 ヴィンセントを突付いて遊んでいたココにシキョウが話しかけた。
「ねぇねぇ、ココちゃんはヴィーちゃんとどこで、らぶらぶになったの〜〜??? なれそめききたいなぁ♪♪」
 依然ヴィンセントを突付いているが、顔だけシキョウのほうを向け、体を見てから考えた。
「まぁ♪ そうね〜、あれは今から何年か前・・・
 ソーンの外れに館を構えていたときよ。私が術や薬の研究に明け暮れていた頃に、ヴィンセントがやってきたの。
 広い館だったけれど、ヴィンセントの目的は私だったみたいで、すぐに私がいる部屋へ入ってきたわ」
「それでそれで♪??」
 ココは暗示をかけるとヴィンセントのお茶を飲んで微笑んだ。
「焦らないで。ずいぶん前の話で曖昧なところがあるのよ。えーっと、確か・・・
 ヴィンセントが部屋に入ってきたとき、やっと新薬が完成したの。
『貴方が魔女さんですね? 探しました』
『魔女なんて酷いわねぇ。目的は何?』
 寝たことなんて忘れるくらい寝不足だったから、確かに酷い顔だったかもしれないわ。でもそのときの私は酷なことしかしない、悪者だったわ。
「今でもそうじゃない」
「黙ってろ、しつけがなってない犬ね」
「クゥーン・・・」
「まぁ、ドタバタあって、ヴィンセントと私はラブラブなのよ♪」
 シキョウはよく分からないといった様子で質問した。
「じゃあ、ぎらーーん☆なおもちゃもって、ラブラブおいかけっことかするの〜〜???」
 クスっと笑ったココは、
「冗談言わないで、私はそんな野蛮なことしないわ」
「やばんってなぁ〜に?」
「シキョウちゃんが知らなくていい言葉よ。ふふふ」
 首を傾げるシキョウに笑うココ。そんな2人の隣でオーマとなる子が喋っていたが、オーマは立ち上がると、思い出したように言った。
「忘れてたぜ!! 今から初詣にいかねぇ〜か?? ちと遅いが、その分人がいねぇ〜だろ」
 突然の発言でなる子とココは驚いているが、シキョウはわくわくしながら目を輝かせた。
「でも、犬人間になっちゃって・・・それにコイツが離れない!」
「ヒドイじゃないですか〜、こんなに貴方のことを守っているのに〜ムッフーン」
 ココは手を叩くと、なる子のほうへ行き、
「何言ってんの? 犬なんてどこにもいないじゃない」
 なる子はゆっくり隣にある姿見へ目を向けると、そこには綺麗な振袖を着た自分が映っていた。
「さぁ〜善は急げ! 行くわよ〜〜♪」
「シキョウもワクワク!!!」
 しかしヴィンセントの頭の桜は消えちゃいない。薔薇天使はとっくにココの怒りを買ったが。

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【一行は筋肉神社に到着した】
「ここへ来ると正月って感じだな〜」
「あの・・・一つ質問いい?」
「なるちゃん、どうしたの???」
 オーマは両手を大きく広げると、神社の広場でグルグル回り、堪能している様子である。シキョウはその後を楽しそうに追いかけている。振袖を着ているのに。
「こんな神社、ソーンにあったっけ?」
 門の色は桃色。植えられている木の枝も桃色。砂の色も桃色。境内も桃色。賽銭箱からお守りまで全て桃色で巫女様は筋肉マッチョな女性である。
「ムッフーン。お一ついかが?」
「けけけ、けっこうですー」
 ココはさっさと礼儀を済ませ、賽銭箱の前まで行っていた。なる子は急いで追いつくと、賽銭を入れ、鐘を鳴らして祈った。
『今年も健康でいられますように』
「平凡ね」
「あ! ちょっと人のお願い聞かないでよ!!」
 なる子から逃げたココは桃色の砂埃が立ったが、オーマとシキョウに寄っていき、なる子は抱きついて離れない筋肉さんを見て、微笑んだ。
 ついでにヴィンセントは桃色砂まみれです。
「いや〜〜、今年も良いことあるといいな!」
 良い運動したぜ! という汗をかいているオーマは境内の知り合いへ新年の挨拶をして回った。もちろん後ろにシキョウも付いている。
 神社の丁度真ん中にある、筋のブツ像様にたどり着いた時、
「ことしもよろしくね!! みんなにとって、とーーーーってもいい、いちねんになりますよーに」
 後ろでココが狙っていることも知らず、ニコニコ笑顔で話した。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1953/オーマ・シュヴァルツ/男性/39歳(999歳)/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】
【2082/シキョウ/女性/14歳(14歳)/ヴァンサー候補生(正式に非ず)】

 NPC
 晴々なる子
 ココ
 ヴィンセント・フィネス

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、今年も一年宜しくお願い致します。田村鈴楼です。
 今回、ご参加頂きありがとう御座いました。
 どうでしたでしょうか?
 シキョウさんにはココとヴィンセントの馴れ初めを、簡単にですが語ったココですが、もう少し好感度が高かったり、他のシナリオの中で語る可能性もございますので、気になりましたら見てみてください。
 今年もオーマさん&シキョウさんのご活躍に期待しております。

 それでは、またどこかで会えることを祈って。