<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


■逃げたカンテラ■



 逃げたカンテラ。
 隠れたカンテラ。

 出てきて僕らの胸を照らして。


** *** *


 くせのある細工の仕方を気に入って、親の代から付き合っている職人なのだ。
 けれど自分の息子より幾らか若いその跡継ぎは、どうも腕を褒められ過ぎてでもいるらしい。
 嘆息して見る手の中の箱、そこで包まれているのは妻にかつて贈った首飾り。
 娘に渡そうかと少しばかり最近の流行に合わせて細工をつけてもらおうかと頼んだのはいいが、出来上がったものは――いや、出来はいい。頼んだものとはいささか違うものにされてはいるけれど、出来、だけは良い。けれどなによりも、預けている間どのような保存であったのか。
 足を止めてそっと包みを開く。
 見えたのは艶の失せた金属。本当は、きらきらと光を細かに弾く稀なものである筈なのに。
 信用して確かめなかったのが悪かったのか。
 ここ数日、散歩の度に持って出ては職人の跡継ぎ、いや仕事を請ける以上はれっきとした職人の一人である彼にやり直しと手入れを要求しようかと考える。考えて、天使の広場ほどではなくともそれなりの広場で時間を過ごす。そして結局諦めては沈んだ気持ちで帰宅するのだ。
 日増しに職人のもとへ言いに行くべきだという気持ちは強まってはいたけれど、踏ん切りがつかずに過ごして広場で溜息をついて、それなりに値の張る首飾りを抱えてまた帰ることになると。
 そしていつかそのまま言葉を呑み込んでしまうのだろうか。
 思いながら歩き、つと足を止める。
 広場に見慣れぬ長身の男が一人、佇んでいるのが見えた。
 黒髪が浮き立って男の存在を主張する。奇妙に人目を引くが警戒を抱かせない。優しげという訳でもないのに、親しみを感じさせて挨拶程度は自然と出来そうなそんな空気。
 そういった、害をなすようにも見えない人物であったので、一度止めた足をまたおっとりと進める事にする。
 男は、何処を見ているようにも見えず、なのに全てを見ているようにも見え、定まらぬ何か己とは違う空気があった。
「こんにちは」
 挨拶をする程の近くまで来て、その冷たい感情の見えぬ面を映す。
 それでも、やはり何処か人を惹きつける風な男だと。

 ジュダと名乗る男と、気付けば広場の隅に設えられた木椅子に座って話していた。
 件の細工と職人の事を自分が語るばかりでジュダは時折頷くだけの、会話とは言い難いものであるけれど。
「……その首飾りは、想い出の品か」
 一人胸の内で抱えていた重い気持ちを声にするだけでも随分と楽になる。
 静かに話を聞いてくれるジュダを有り難く思いつつ久しぶりに唇を綻ばせたところで、そのジュダが低く言葉を吐いた。
 問い返すように顔を上げれば、瞳もまた黒い彼は伏せた瞼の下からその眼差しを箱へと注いでいる。その中には、当然ながら先程彼にも見せた褪せた飾り物。自らも視線をそこに落としてから、顔を上げて少しだけ笑う。
 ええ、そんなものですよ。
 そう返せばジュダは「そうか」と短く答えて顔を巡らせた。彼が見遣る先には広がる街並みの上の、空。
 あるいはただ正面がそうだっただけだろう。けれどこの人物は何か意図を持っての行動のように思わせる。
 つられて空の辺りへ視線を上向けて。
 沈黙は、心を落ち着かせた。
 落ち着かず抱えていた細工物の事ばかりを考えた自分。それを冷静に、気持ちを見詰め返す余裕を作らせる。
 完成した品を受け取ってしまったからと、思い悩むばかりで何の結論も出ていない。本当にこの品でいいのか。
 やはり言うべきではないのか。しかし彼は機嫌を損ねはしないか。
 考えて、相手の反応を恐れている自分を改めて覚る。
 はたと瞬いたそれを見計らったようにジュダが再びこちらを見、唇を動かした。
「言えぬのであれば、所詮それだけの想いなまでだ」
 淡々とした声音に、けれどひどく居た堪れない気持ちになる。
 それだけ、なのだろうか。
 項垂れかけた面に差し出されたジュダの、硬い輪郭の手。
 箱を差し出すと、そこから首飾りを取り出して渡す。値の張るものではあるけれど、極端な代物でもないし、そもそも眼前の男が持ち去るという感覚は抱かなかった。違わず、ジュダはその瞳を首飾りに据えてただ見詰めるばかり。



 暑苦しく盛り上がっていたオーマ・シュヴァルツを無言のまま沈めはしたものの、結局のところ協力する事にしたジュダをマスタとかいう硝子森の主は愉快そうに見るだけだった。
 ユンナは音楽少年に会っただろうか。
 ちらりと過ぎる思考は一瞬で、受け取った首飾りを見る。
 ジュダが会ってみる事にした老人は、隣で己の手に預けたそれをひたと見るばかりだ。
 老人の視線を感じながら力を手に、首飾りに。
「具現。これで無から有を――命さえも生む事が出来る」
 驚き息を呑む老人に、違った細工の部分を確認してそこへ力を向ければすぐに伝えられた言葉の通りの装飾を施されたものに変わる。とても、簡単なこと。
 陽の光に晒してみれば艶めいた金属が粒子の煌きを周囲に撒く。
 感嘆なのか、今度は息をほろほろと吐く老人へとそのまま言葉を続ける。
「だが生み出した其処には想いも命の紡ぎも無い。ただ在るだけだ」
 手の中の首飾り。
 光を撒くそれはきっと老人が思い描いた通りの細工、元のままの品質、確かに完璧な造りなのだろう。想いのない作品ではあるが。
「人が其の手で生み出すからこそ、其れは生まれる物ではないのか」
 もう一度光の中に泳がせて、その瞬く様を示してから老人へと返す。
 全き形だろうそれを反射的に受け取って、けれど老人はジュダと首飾りとを見比べるばかり。
 ジュダは首飾りを見遣りながら尚も唇を動かすだけだ。彼にしては饒舌だとあるいは知人が見れば想うかもしれない。
「その人の手によってこそ成る灯火を紡ぎを其処で潰えさせても構わない、『形』だけが欲しいと言うのであれば其れで十分だろう」
 ジュダを見ていた老人の眸が今度は首飾りで止まる。
 唇の端が僅かに強く閉じて、口の奥に力が入っていると知れた。
「そのままでいいか」
「いや、それ、は」
「命、想いを灯したいか」
「……」
 興味が無いという態度で問う。
 そのジュダの言葉に老人はしばらく手に収めたままの首飾りを見ていたが、じきに顔を上げると再びジュダに差し出した。ひたと黒い瞳を見る。
「店でしてもらった状態に、戻して頂けますか」
 やっぱりがつんと言うくらいはしてもいいでしょうしね。
 そういって苦笑いする老人から無言のまま首飾りを受け取って、元に戻す。
「職人の元へ行け」
 ジュダにとっては簡単なその作業を終えてまた返す。その時に零した言葉に老人ははっきりと頷き一つ。胸の内でどんな風に考えたのかは解る訳もないが、それでも彼が今日までのように箱を抱えて歩く事は無いだろうと、そう思わせる顔だった。


 老人が、立ち上がり歩き去る背中を見送ってジュダがすいと顔を一点に向ける。
「――見つかったか」
 心の光、何気ない一歩の為の灯火。
 それを消されているにしては、老人は随分とあっさりと決断したものだと引っ掛かっていた。
 どうやら件のカンテラは、別の――ユンナの向かった相手の胸に隠れていたらしい。
 老人については、最早問題は無いだろう。
 空気の流れさえ変わらぬまま立ち上がり、ジュダもまた老人に続いて歩き去る。
 彼が向かうのは、音楽祭の会場。そこに招かれているユンナがカンテラと共に居るのだ。
「心の光、か」
 低い声だけが、その場所にしばらく残って。


** *** *


 少年と、その胸に隠れていた物語のカンテラを抱えてユンナがまず音楽祭の会場に着いた。
 進行役と打ち合わせる間にジュダ、そして母子を連れたオーマと現れる。
「ジュダ、いいかしら」
「……ああ」
 舞台に上がる者達が手を馴らしているのか、幾つもの音が鼓膜を叩く。
 半ば引き摺られる勢いで一緒に来た少年が楽器を抱えてその音達を拾う様を見ながら、まずユンナはジュダを手招くとその長身を滑らかな指先で引いて少しばかり屈ませた。心得たもので、表情を変えず耳を寄せるジュダ。
「歌に乗せる詩を紡いで頂戴。愛しいものやそれぞれが還る場所へ向けた想い、それを語る詩よ」
 寄せられた唇から洩れる言葉に、ジュダは何も問わずに少年だとか母子だとかに視線を走らせてから最後にユンナの抱えるカンテラを見た。今も灯りを抱えないその硬いシルエットを眸に映し、それからユンナへ向けて囁き程の大きさで「わかった」と返すと屈んでいた背を伸ばす。

 陽が空の端へと逃れ藍の色を濃く滲ませつつある空。
 その下で明かりを灯してさざめく人々。街路にも点々と灯が入りつつある時間。
 無意識だろうか指が弦を求める少年。人の多さに身を寄せる娘を抱く母。
 老人は今頃職人と話をしているだろうか。

 大きなものではなく、小さな、ささやかな事柄を言葉にしようか。
 ジュダがそのように思ったかは、表情からは読み取れない。
 ただユンナに伝えられた詩が何気ない暮らしの中で見る事の出来るものへ向けた言葉が多かったというだけだ。歌姫が、心の灯火を取り戻して貰う為にと考えた、その意図を組んだのかもしれない。
「やっぱり、素敵な言葉だわ」
「そうか」
 そうよ、と満足げに微笑むユンナが持っていた件のカンテラをジュダに差し出す。
 無言のまま、手入れされた指から硬質のそれを預かると桜色の髪を名残のように翻して背を向けて彼女は舞台へと歩き出した。


 気付けば音楽祭は、さざめきの中で始まろうとしている。


 幾人もが歌い奏で踊り。
 その様々な世界に少年が瞳を輝かせているのがユンナには確かに見えた。
 ジュダに紡いで貰った言葉は頭の中、唇の向こうの舌の上、胸の内、いまや息づく程に己の中に満ちている。
 少年が特に聴き入るものはどれも想いの篭ったものばかり。混ざる上っ面だけの楽にはさほどの反応を返さない彼の姿に瑞々しい唇をついと笑みの形に引いて、静かに舞台へと歩き出す。
 ――彼が紡いだ詩。私が歌う詩。
 それはきっと少年の瞳に想いの光を灯す。
 ジュダの会った老人にも、オーマが連れてきた母子にも。
 そしてカンテラ自身にも。
 あ、とも、ら、とも、不明瞭な一音を滑り出させると後は周囲の何もかもが歌声に溶けて広がるようだった。

 それを聴いてオーマは母子を見る。
 途切れがちながら、いまだあれこれと言い合う手を繋いだままの二人。
「きれいなこえ」
 娘が無意識に零した言葉に母親もまた無意識に頷き返す。
 スーツ姿のままのオーマは流れ広がる歌姫の声に聴き入る母子へと数歩近付いた。
 微かな砂利を踏む音に母親が視線を向ける。
「歌はお好きですか」
 連れ出しておいて今更だが、彼女は素直に頷いて再び舞台へとその目を戻す。
 合わせてユンナの歌う姿を眺めながら、オーマは更に言葉を連ねていく。
「歌われたことは……いや、やはり子守唄ですかね」
「そうですね。子守唄なら」
 こんなに綺麗な声ではないけれど、と付け加えるのには笑って否定する。
 声の質が良くても想いの無い歌は心には響かないものだ。
「まだ小さな子に聞かせる子守唄は、まるで贈り物のようじゃないですか?」
「贈り物、ですか」
「母が最初に贈る、子が最初に贈られる、深い愛情の篭った唄」
 体格からの威圧感は多少あれど、初対面から変わらず丁寧な口調のオーマが微笑みさえ湛えて言うのに母親は舞台から僅かに目線をずらして空を見る。繋いだ手の先の娘もいつのまにか、舞台から母親へと目を移していた。
「そのときどんな気持ちで唄われたのか」
「宝物のような、ほんとうに、愛しくて」
 ユンナの声。言葉はジュダが紡いだ詩。オーマの仲間は世界の様々なものを想い愛し、それを示す。
 彼らの示すそれが、母子と、そしてユンナの会った少年とジュダの会った老人と、今ここで聴く人々と、それぞれに伝われば。
 人面草や霊魂がもさりもさりと歌に誘われるように足元で揺れている中で、母子は立っている。
「唄を贈った時の想いを、少し思い出してみても良いかもしれません」
 言うまでもない事だろうと思いながら、オーマ自身も浮き上がる想いに瞳を揺らしてそれだけを告げた。

 カンテラに何事か語りかけるジュダをうかがう前に見たのは、母親と娘が繋いだ手を互いに包むように握り直す姿。

 その母子の姿はジュダからも見えていて、手に持つカンテラに瞳があればカンテラにも見えていただろう。
 呼びかけるように軽く揺らすと蓋が側面と触れて微かに音を響かせる。
「……お前が消した光を、取り戻しつつある」
 かた、と今度はジュダの手によらず小さな音。
 冷ややか、と言ってもいい眼差しでカンテラを一瞬見て舞台の上で今も己の紡いだ詩を歌う彼女を見る。
 昼よりも朧な明かりの中で優しげな髪色は光のようだ。声が聴く者達の心に少しずつ染み渡り火を灯す。
 その姿から目を離さぬままカンテラへと語りかける言葉。
「物語へ還らぬのであれば、具現にて代わりを生み其れを還してもいい」
 かたん。
 蓋が風も吹かないまま跳ねた。
「だが、代わりが還り其れで十分であったならば、お前は」
 カンテラが揺れたのはいっときの事だった。
 緩やかに、淡々と語るジュダの言葉の先はカンテラにも容易く察する事が出来たのか。
 錆びた軋みを最後に動きを止める。
「お前は還る場所を失う」
「いやいやいや、そんな厳しい事はちょっと置いといてだな――ぐは」
「……反射だ」
「いやいや気にすんな気にすんな、気に」
 言葉の先を告げたところで乱入してきた見知った相手を瞬間沈めてしまった。
 頑丈な相手は平然と起き上がり何やら繰り返していたがぴたりと動きを止める。見ればユンナが物言いたげな厳しい目付きでこちらを見ながら歌っているではないか。一瞬だけ視線を交わしてジュダも意識をカンテラに向けた。
 多分あの視線は「馬鹿にかまけてるんじゃないわよ」という類だろう。
 女王様には素直に従うのが懸命だ。
「どうする」
 カンテラを顔近くまで掲げて問うてみる。
 だが再びオーマが割って入るとカンテラへと笑いかけた。
「だからちょっと待てって。まあアレだ、お前もちっとユンナの歌聴いてみな。もう聴いてるか?」
 その笑顔を横目に見、オーマの意図する所を理解してジュダがカンテラをユンナの側へと向ける。
 歌であるしどんな風にしていても聞こえるかもしれないが、多少は違う筈だ。
 紡いだ詩は少なくない。
 それをゆったりと響き渡る声で歌うユンナ。
 彼女の歌をカンテラに改めて聴かせる。
 ジュダはそのまま唇を閉ざしてオーマが働きかけるのを待った。
「ユンナを見て、それから歌を聴いてる皆を見てみな。それぞれよく見れば心に光が灯ってる――解るだろう?お前が隠れ歩いたヤツだってそうだ。消えた胸の明かりを灯そうとしてる」
 真摯に語るオーマの正面に、カンテラの側面が来るようにとジュダは僅かばかり腕を揺らす。
 軋むような音をカンテラの角が立ててまるで返答のようだ。
「カンテラよ、お前自信はどうなんだ」
「繰り返しの物語から飛び出したのだったか」
「知ってるか?お前が照らしてた二人は今、暗い森の中で震えてるんだ――別に一方的に責めたりしねぇよ。ただな、そんな二人を想像して考えてみて欲しいんだ」
 オーマが、そこで指差したのは舞台の上の歌姫。
 旋律は更に力強く朗々と空をも震わせるかと思う程に大気を泳ぐ。その源の美女。
 ジュダが美しいそのシルエットへとカンテラを掲げれば、陽に代わって天に躍り出た月がカンテラの硝子に誇らしげに姿を映す。それはさながらカンテラの灯りのように。
「この音楽祭、ユンナだけじゃなく皆の唄でどれだけ聴衆が力を得たと思う。その唄でどれだけ心に力を受け、光を灯していると思う」
 ジュダの手の先で震えるカンテラ、その振動は持ち手の肘辺りまで軽く走った。
 長身の男が掲げているのだから、周囲より随分と高い場所からカンテラは見下ろしているだろう。
「なあ、本の中の少年達にとってのその唄ってのはよ」
「心を照らす、光になるものだ」
「そういうこった。それは」
 一拍だけ。
 ユンナの声が余韻を残して霞み、滲み、消える。
 オーマはそれを待った。
「それは、お前が灯すその光そのものじゃねぇのか?」
 がたがたと一際大きく震えるカンテラ。けれど光はまだ灯らない。
 ジュダが今度はカンテラへと言葉を連ねていく。
 たいした言葉ではない、ただ思い出す何かがあるだろうとそれだけの。
「繰り返しの物語の中で、二人の道と心を照らしながら抱いた想いは、ないのか」
 ――がたん、と。
 強く強く、硝子の側面が割れるのではと瞬間思う程に強くカンテラの蓋が跳ねた。
 がたんがたんと今も繰り返す。それは例えば、大変な忘れ物に気付いた様子。

 微かな熱が、硝子の中で煌いて。

 歌い終えたユンナが男共の元へ向かいかけ、そこで遠目にも解るカンテラの灯り。
 よしよしと頷いて笑んだユンナへと駆け寄る少年の姿が目に入ったのは、そんな時だ。
 興奮さめやらぬ表情は力に満ちていて、きっと明日にでも自分の望む道を両親に話すだろうと確信させる。少し探せば母子が互いに優しげに笑いながら語り合っている姿。
 完璧ではないか。
 思いかけて老人の事に気付く。けれど微かな達成感を滲ませる人影が会場に入りジュダに近付くのを見かけて、やはり完璧だと判断する。
 足を止めてユンナがあれこれ考えている間に、少年が彼女の元に辿り着いた。
「うた、ほんとに」
 体中で賞賛を示す少年の正直な様子に流石に苦笑を浮かべてしまうが、すぐにそれも消える。
 大切な楽器を抱えたままの彼の腕を取り歩き出す。
 怪訝そうにしながらも付いて来る少年と共にカンテラの元へ。

 少年へとユンナは、手前で一度振り返ると、こう言って笑いかけた。

「一曲頼むわね。私が歌うから」


 オーマに並んで話しかける母子。
 ジュダに箱を開いてみせる老人。
 ユンナの言葉に慌てながらも頷く少年。

 そこかしこから唄と想いが響く中、カンテラにも確かに小さな小さな光。


** *** *


 震える僕らの胸を照らすカンテラ。
 小さな光を抱えて戻ったカンテラ。

 君の中の光がほら、僕らを照らす。





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1953/オーマ・シュヴァルツ/男性/39歳(実年齢999歳)/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】
【2083/ユンナ/女性/18歳(実年齢999歳)/ヴァンサーソサエティマスター兼歌姫】
【2086/ジュダ/男性/29歳(実年齢999歳)/詳細不明】

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■         ライター通信          ■
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 解りにくいオープニングだったかと思います。ライター珠洲です。
 それぞれのNPCの視点からPC様へという代物で、前半をそれぞれのPC様にしてあります。
 NPCの悩みだとかが曖昧な状態となってしまいまして、考えが浅かったと反省しつつお届けさせて頂きます。揃って御参加、本当にありがとうございました。

・ジュダ様
 はじめまして。対老人はどんなものでしたでしょうか。
 多分なんとなくな雰囲気で好かれるのではないかなと思って老人警戒せず、としました。
 普段より饒舌かしらと思いつつ、音楽祭の部分でも色々話して頂いております。私的にさりげなく傍で見守ってそうなイメージですが、如何なものでしょうか。