<PCクエストノベル(1人)>


『お宝を求めて! 〜機獣遺跡〜』

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【冒険者一覧】
【整理番号 / 名前 / クラス】

【2887/ニアル・T・ホープティー/異世界技術者】

【助力探求者】
レーヴェ・ヴォルラス

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 この世界には沢山の不思議があり、その謎を解く為に冒険者や学者達が危険を冒してまで目的地に向かうという話を聞いた事がある。
 滅びた文明の図書館からは、その時代を伺える書物が発見さらた。また地底の世界からは、絶滅したと思われていた生き物が見つかった等、謎を追い求めて危険な場所へ行き、偉大なる発見をした人々の功績は大きい。
 だからこそ、最近発見された機獣遺跡も、そのような意味からすれば人々の探究心をくすぐる場所である事には違いないだろう。

船乗り:「機獣遺跡へ行くって本当か?寝ぼけているんじゃないだろうね!」

 機獣遺跡のそばまで行く船を捜していたニアル・T・ホープティー(にある・てぃ・ほうぷてぃ) は、たった今3人目の船乗りに乗船を断られてしまった。

ニアル:「でも、行ってみたいんですっ!機獣遺跡には、沢山の宝があると聞きましたし、どんな場所なのかこの目で見てみたいんですよお!」

 ニアルはさらに方に力を入れて船乗りを説得しようとしたが、その船乗りはニアルを呆れたような顔つきで睨み付けたのであった。

船乗り:「まったく、ガキに付き合ってる程こっちは暇じゃないんだよ!」

 その髭面の船乗りは、腕組みをしてニアルを見下ろした。

船乗り:「その遺跡がどんな場所なのかわかってんだろうな?わからないなら教えてやるよ!あの遺跡には機獣がウロウロしてるんだ、残酷な殺戮ロボットだ。そんなのが数百、数千って数のな。んなもんに囲まれたら、命がいくつあっても足りやしねえんだよ」
ニアル:「でも、あたし困ってるんですよ。どの船も遺跡のそばに行ってくれないんです!」
船乗り:「だから、わざわざ危険な場所のそば通りたがるヤツなんているわきゃないだろ?」

 ニアルがそこまでして、機獣遺跡に行きたいのには理由があった。
 ニアルは異世界技術者であり、この世界に迷い込んでくるあらゆる機械を集めては、それらを使えるように修理したり改造したりしていた。
 そんな彼女にとっては、発達した機械文明の都市とされる機獣遺跡は、まさに宝庫そのものであった。確かに、そこは決して安全な場所ではないということぐらいニアルにもわかっているが、それでも機獣遺跡に惹かれるニアルは、根っからの技術者であり冒険者とも言えるだろう。

ニアル:「でもー、海を泳いでいくわけにはいきませんですしっ!」

 機獣遺跡に行きたくて聖都エルザードに来たのはいいものの、ここまで来てニアルの旅は行き詰まってしまった。
 この町はかなりの人々が行き来するから、機獣遺跡の沈む海域まで行ってくれる船はすぐ見つかると思っていたのだ。

ニアル:「困りました。さすがに一人じゃ危険ですし!」

 聞けば、多くの船乗りが機獣遺跡のある海域を避けて通るというのだ。遺跡は海底にあるが、用心してとの事なのだろう。
 だからといって、一人で小船を出して海を行くわけにもいかない。だが諦める事もしたくない。ニアルが心の中でどうしようか迷っている時、一人の大柄な男が声をかけてきた。

男:「お前か?機獣遺跡に行きたがっている娘と言うのは?」
ニアル:「あ、はい、そうですよお!」
男:「やはりそうか。船乗り達が話しているのを、小耳にしたのでな。一体、どうしてあんな危険なところにわざわざ行こうと言うのだ?」

 その男はニアルが見上げなければいけないぐらい大柄で、そこいらの戦士達よりも良い武具を身に着けていた。今はニアルを見下ろし、不思議そうな顔をしている。

ニアル:「遺跡に珍しい機械が、ないかと思っているんですっ。どうしても興味を惹かれるんですよ、あたし技術者ですし。でも、誰も相手にしてくれなくて。船も必要だし、それに護衛もいないとさすがに心細いので」
男:「それなら、私が同行しても構わないが?」
ニアル:「えっ、本当ですかあ!?」

 突然の男の申し出に、ニアルは目を丸くして男を見つめた。そして、男が持っている盾に描かれた紋章を見て、男が何者であるのか、ニアルはようやく理解した。

ニアル:「あのー、騎士さんですかっ?!」

 頷いた男に、ニアルは満足げな笑顔を見せた。

ニアル:「それなら、心強いですよ!」

 ニアルは男と一緒に、すでに用意してあるという船に向かいつつ、それぞれの自己紹介をした。
 男の名前はレーヴェ・ヴォルラスと言うらしい。普段はこの国の謁見の間で見張りをしている門番であり、国王が城にいない時はこうして城下町に出て見回りをしたりするのだという。国王のそばで見張りをするぐらいの者だからレーヴェは、この町の人々からも顔を知られており、中には丁寧な挨拶をする者までいた。

ニアル:「いいんでしょうか、本当に一緒に来てもらって」
レーヴェ:「構わない。護衛も私の仕事の1つだからな。それに、ニアルのような子供が危険なところへ一人で行くのを、黙って見ているわけにはいかないでな」

 何て正義感の強い人なのだろうと、ニアルは思った。レーヴェと一緒にいれば、機獣遺跡に行き機械を手に入れる事が出来そうだと感じてくるのだ。



 エルザード国家の専用の船に乗り、ニアルとレーヴェは海へと乗り出した。上を見上げれば雲ひとつない青空が広がり、海鳥の鳴き声が、ニアルを今航海をしているのだ、という気分にさせてくれた。

ニアル:「レーヴェさん、ありがとうございます!あたし、とっても助かりましたよ!」
レーヴェ:「ああ、気にするな。門の前にずっといるのも暇なんでな。ちょうど広い場所へ出て行きたかったのだよ」

 真面目そうな口調で言うレーヴェを見て、ニアルはどことなくおかしくなってしまった。
 船はその間もずっと進み、海鳥達の鳴き声も聞こえなくなった頃、船の速度がだんだん遅くなってきた。

レーヴェ:「ついたぞ。この海面の下に、機獣遺跡がある」

 異様な程に静まり返っていた。ニアルは船から海面を見つめ、目を細めて水中を見つめた。

ニアル:「それで、どうやって機獣遺跡まで行けばいいんですー?」
レーヴェ:「小船で降りればいい」
ニアル:「小船ですかあ?」

 船の後ろに積まれていた小船を海面に浮かべ、ニアルとレーヴェはその小船へと乗り移った。
 これでは海中になどいけないではないかとニアルが思った時、レーヴェの合図と共に船からローブを着た魔法使いが顔を覗かせた。見たところ、老人のようであった。

レーヴェ:「王国専属の魔法使いだ。さ、頼むぞ!」

 魔法使いは杖を小船に向かって振った。その杖の先から青い光が飛び出したかと思うと、小船はその青い光に包まれ、それはあっという間に大きな泡になった。

ニアル:「凄い!シャボン玉の中にいるみたいですっ!」
レーヴェ:「水の魔法をかけた。これで、水中でも息が出来る」

 さらにその魔法使いが杖を振ると、今度は木で出来ている小船が石に変化をした。その石の重みで船は少しずつ水中に沈みだした。

ニアル:「帰りはどうするんですか?」
レーヴェ:「あの魔法使いが船の上で待機している。帰りの時は私が水中からこのライトで、光を水面に向かって照らす事になっている」

 と言って、レーヴェは小さなライトをニアルに見せた。おそらくは、それでまた船を浮かばせるのだろう。
 船はどんどん下へと沈んでいった。泡の向こうに魚が沢山泳いでおり、下に沈むに従って太陽の光も弱くなり、まわりはだんだん暗くなっていき、少々不気味でもあった。

レーヴェ:「それよりもだ。この先の遺跡は危険なところだ。私も護衛の役割は果たすが、油断と無茶だけはしないでくれ?」
ニアル:「あたしがそんな事するように見えるのです?」

 ニアルはレーヴェに向かってイタズラっぽく笑って見せた。
 しばらくすると、船は海底へと到着した。泡に包まれたままニアルとレーヴェは、海底を進む事にした。魔法のおかげで、海底にいてもまるで地上にいるように行動する事が出来るのだ。レーヴェが海底の地図を見つめ、機獣遺跡の場所の確認をしている。

ニアル:「あ、もしかしてあれ?」

 ニアルの目の前に、まるで金属で出来た様な建物が出現した。

レーヴェ:「そうだ。こんな海底にあんなもの、機獣遺跡でなければ、何だと言うのだ?」

 二人は遺跡の中央まで歩いて、そこでこの遺跡を改めて見つめた。入り口から放射線状に通路が伸びており、いくつもの小部屋があるのがわかる。地上の世界とまったく違うこの遺跡に、ニアルはしばらく呆然となってしまった。

ニアル:「驚いている場合じゃないですねっ!機械を探さなきゃ!」

 ニアルはレーヴェを連れて遺跡を歩き、そばにある部屋に入った。その小部屋には見たこともない機械が沢山あり、ニアルにとっては宝箱のようにも感じた。一体、この部屋は何に使われていたのだろうか。
 ニアルが機械を拾っている間、レーヴェはそばにいたものの、何かを調べているようにも見えた。最初は、この不思議な遺跡に興味津々であるのかと思ったが、何となくレーヴェにはそうではない印象を受ける。

ニアル:「レーヴェさんも、何か探しているの?」
レーヴェ:「いや、この遺跡のものに興味があってな」

 ニアルが問い掛けても、そのような返事しか返ってこない。気になる行動ではあるが、レーヴェが護衛としてついて来てくれているのには間違いなく、あまり彼に対して疑問を持ってもしょうがないとニアルは思った。

ニアル:「凄い収穫ですよ!これは、帰って機械をいじるのが楽しみ!」

 目の前の壁にはめ込まれた、何かの部品のようなものを取ろうとした時であった。その部品から急に光が発せられ、部屋中にサイレンが鳴り響いたのだ。

レーヴェ:「な、何をしたんだ!?」
ニアル:「何もしてません!ただ、あの部品を取ろうとしただけです!」
レーヴェ:「罠だ、ニアル!罠にかかったんだよ!」

 レーヴェがそう言い終わると同時に、部屋の入り口から沢山の機械で出来たマシンが雪崩れ込んできた。

レーヴェ:「あいつらここの戦闘機械…機獣だ!まずいぞ!」

 マシンは腕のようなアームを伸ばし、ニアル達に向かって銃の連射を始めた。レーヴェはすかさずニアルの前に立ち、大きな金属の盾で銃弾を弾き返す。
 だが、そのマシンの銃弾は強力で、レーヴェの金属の盾は銃弾こそ貫かなかったものの、数箇所がへこんでしまった。

レーヴェ:「このままじゃマズイな。逃げるぞ。海上に戻ろう」
ニアル:「は、はい!でも、入り口には」

 部屋の入り口にマシンが数体いる為、ニアル達は部屋に閉じ込め状態になってしまっている。しかも、マシンはどんどんこちらへ近づいてきているのだ。

レーヴェ:「何とか、やつらの動きを止められればいいのだが。あいにく、私は魔法は使えないのでな」

 苦笑するレーヴェを見て、ニアルはとっさに自分の能力の事を思った。あのマシンは全部機械なのだから、自分の能力でどうにか出来るかもしれない、と。

ニアル:「レーヴェさん、あたし、あいつらを完全に倒す事は出来ないかもしれないけど、麻痺させるぐらいなら、出来るかも!」
レーヴェ:「本当か?」

 ニアルはレーヴェに頷いてみせると、マシン達をにらみ付けて、やがて雷をマシンへ向かって放った。マシンから火花が飛び散り、その動きは一瞬止まる。

レーヴェ:「ショートしたみたいだな!よし、いまだ!」

 ニアルとレーヴェは、電気でショートして動かなくなっているマシンの横をすり抜け、機獣遺跡の入り口まで走った。
 石の船に乗り、レーヴェは水面にライトで光を送ると、船が再び木の小船へと変化し、二人を乗せて浮かび上がった。
 海底の奥に機獣遺跡の影が見えている。確かに宝はあったが、危険なところでもあった。海底にあるとは言え、船乗り達が怖がって近づかない理由も、ようやくニアルは理解出来たのだ。

ニアル:「今回は収穫あったです。レーヴェさん、どうもありがとうです!」

 船でソーンへと戻りつつ、ニアルは机に手に入れた機械を並べて、これからどんなものを作成しようかと、心が躍っていた。

レーヴェ:「いや、少しでも役に立てたのなら何よりだ」

 ニアルは、レーヴェが魔法使いの老人と、やはりあの場所には我が国につながる秘密があった、と話しているのを耳にしたが、自分が首を突っ込んでいい話題だとは思わなかったので、聞いていないフリをした。
 今はとにかく、機獣遺跡へ行き貴重な機械を手に入れ、無事に戻れた事が何よりも喜びであるのだから。(終)



◆ライター通信◇

 はじめまして!WRの朝霧と申します。クエストノベルの発注、どうもありがとうございました!
 機獣遺跡は海の中と設定にあったので、どう描写していいかかなり迷いました。機械の描写なども、水中だからもうちょっとゆっくり動くだろうか、それとも魚の形の機械にした方がいいだろうかと迷い、今回の形にしてみました。
 レーヴェとのやりとりは書いてて楽しかったです。コミカル路線にしようと思っていたのですが、頂いた内容から、どちらかというとシリアスな雰囲気になりました。
 それでは、今回はどうもありがとうございました!