<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


『漂流都市』

●鬼か悪魔か? 白の最強騎兵!?
 カグラのギルドは人で溢れかえり、緊張と熱気が辺りを包んでいく。
 その、出発までの短い時間の中で、グリム・クローネはそわそわと辺りを見渡していた。
 彼女の師であるゼラ・ギゼル・ハーンが『夢渡り』を用いてまで呼び寄せたという助っ人。その人物が未だ現れていないからだ。
「ところで、どんな人なのかは聞いているのか?」
 さっさと支度を済ませたカイ・ザーシェンが尋ねる。彼はこういう時の準備等は早い。
「えーと、なんでも『四度カオスゴーレムと戦う宿命を帯びている』人物だとか」
「ほう? あたしは『アミュートでカオスゴーレムの障壁を突破した猛者』だって聞いたぞ? かなりの体格をしてるんだろう……会うのが楽しみだぜ」
 不敵な笑みを浮かべながらジル・ハウが呟く。
 むしろ、敵として戦うのが楽しみとさえ聞こえそうな口調に、二人が苦笑する。
 それからも『白の騎兵』と呼ばれているとか、二度の動乱で予言された救世主だとか、噂話が後を絶たない。
 その、あまりにも凄まじい噂を聞いて、虎王丸や蒼柳凪らも興味深げに聞き耳を立てていた。
「……」
 そんな中で、武器庫からエクセラを取ってきた山本建一が一同を見渡した。そして、少し離れた所で壁にもたれかかっていた女性を見て、軽く会釈をした。
「あれ? 山ちゃん、あの女性とお知り合い?」
 カイが目敏く反応する。彼もその女性の佇まいが気にはなっていたのだ。彼女の外套がジェトの騎士服に良く似ていたからだ。
 もっとも、そんなカイの反応をグリムは別の意味で注視していた様だが。 
「ええ、まぁ。昔の戦友……とでもいったところでしょうか。多分、先程から皆さんが話している人物……彼女の事だと思いますよ?」 
「はぁ!?」
 呆気にとられる一同を尻目に、建一はゆっくりと女性に近づいていく。
「お久しぶりですね、風見さん。地上で別れて以来になりますか」
「あなたも元気そうで何より。SFES……ずっと持っていてくれたのね?」
 目を細めて建一の持つ杖を見る雪乃。その視線は鋭かった。
「貴女が来たという事は……『アレ』も?」
「マリンがこちらをトレースしてくれてるはずよ。今はあの子達もいないし、剣も普通の物だけどね……もしかしたら借りる事になるかも、それ」
「そんな状況にならない事を祈りますよ」
 肩を竦めて建一が言う。
 話が一段落した事を確認し、グリムが声をかけてきた。
「あの……貴女が天界の?」
「ええ。風見雪乃と申します。よろしく」
 すっと差し出された右手を握り返すグリム。その手は、鍛え抜かれた戦士のそれであった。
「へぇ……どんなゴリラが来るのかと楽しみにしてたんだけどね」
 傍らに立つジルが挑発的な態度に出る。
 その視線を真っ向から受け止め、雪乃は笑みを交わす。
「ご期待に添えなくて残念だわ。お詫びは働きで返しましょう……戦場でね?」
 二人の間に緊張感が走る。
 だが、それは一瞬で掻き消えた。
 お互いになんとなく判ってしまうものだ。二人はどこか似た者同士なのである。自分の意思をまっすぐに貫き通すところなどが。
「その服……やっぱりジェトの服だったんですか?」
「ええ。微妙に手直ししながら着ているけど。……それより、私の方からも聞きたい事があるの。ロウ・ルーンという騎士の行方を知らないかしら? どんな些細な事でもいいの」
 雪乃の問いかけに、グリムは首を捻った。
 恐らくはジェトの元騎士なのだろうと推測はつくが、あいにく彼女が知っている当時のレジスタンスメンバーにはいなかった。
「ちょっと待ってね……レベッカ! ジェイク!」
 グリムが二人を呼び寄せる。
 彼女の仲間であるレベッカ・エクストワとジェイク・バルザックは旧ジェト国系のレジスタンスに顔が広い。元騎士であれば知っているかもしれない。 
「ロウ……ロウねぇ……。僕は記憶にないなぁ。ジェイクは?」
「確か、カニンガ砦系のレジスタンスの中にいたような気がするが……。その後の事は知らんな。バジュナ攻城戦以降、消息を絶った者も多いしな……」
 甚だ頼りなくはあったが、それでも雪乃にとっては貴重な情報であった。
「ごめんね? あまり力になれなくて……」 
 レベッカがすまなそうに頭を下げる。
 しかし、雪乃は少しも落ち込んだ素振りを見せなかった。
「いいのよ。カニンガ砦まで行けば、その後の足取りも掴めるでしょう。私はあの人と交わした誓いを果たしに行くわ……絶対にね!」
 力強い微笑みに陰りの色はなかった。
 言葉にした事は必ず実行する。これまでもそうしてきたのだ。
 風見雪乃とはつまり、そんな女性であった。


●西へ〜風の制御球攻防戦〜
「左奥! 新手が来るぞ……数は3体!」
「そちらは太行に任せろ。俺達は中央を突破する!」
 カグラギルドを出発し、西の施設へと向かったのは総勢9名。
 ジェイク、レベッカ、雪乃。それにワグネル、エトワール・ランダー、レドリック・イーグレット、孫太行、猛明花、ファルアビルドといった面子である。 
 彼らが突入すると同時に、ギルドのメンバーを中心として陽動をかける手筈になっている。
 カオスゴーレムに対抗するには厳しいが、全く無視をされても意味が無い。その辺りの駆け引きは陳将已の得意とするところであり、太行も心配はいらないと保証した。
「新しい力……試させてもらうぜ!」
 誰よりも早く、レッドが敵のゴーレム群へと突進していく。
 今のところ、以前のアミュートとなんら変わった様子は見られないが、その一撃一撃が比べ物にならないほど強化されていた。
「フレイムソード!」
 竜族の持つ、破魔の力を秘めた炎が彼の持つ両手持ちのエクセラを包み込む。
 レジスタンス上がりの彼らは、こういう1対多数の戦いに慣れていた。ゴーレムの武器を持つ腕を一撃で斬り払いながら、踊る様に走り抜ける。
「行くぞっ……何やってんだワグネル!」
「いや、この施設ってまだ人が入ってないからな。金目のものがあるんじゃないかと……」
「そんなのは生き残ってからにしやがれ!」
 明花に耳を引っ張られながらワグネルも後を追う。
 幸い、明花が雷の魔法付与を得意としている事もあり、内部への一撃が非常に有効打となっていた。ワグネルも自分の大刀で正確にゴーレムを停止させていく。
「こりゃいいや。正直、ここでは大して戦力にはなれないと思ってたからなぁ。明花が来てくれて助かったぜ」
「べ、別にワグネルの為に来たんじゃないんだからねっ!」
 『兎跳姿』と呼ばれる形意拳の技を駆使してゴーレムの攻撃を回避し続ける明花。
 速度のある二人が撹乱をすることによってゴーレム達の陣形が崩れていく。カオス因子の影響で個々のゴーレムは強化されているのだが、連携が取れないという欠点は改善されていないようだ。
 その後、エランらアミュート戦士達が個別に分断された敵を掃討していく。
「さすがね」 
「でも、十年ぶりよ。面倒ねぇ」
 雪乃も今はアミュートを着て戦っている。ここしばらくは鎧騎士としての働きが多かった彼女だが、そこは昔とった杵柄。アミュートの扱いも慣れたものである。
 しかし、何といってもレッドの独壇場であった。
 炎の翼と尻尾を形成し、屋内を跳ね回るように立体的に飛びまわる。
 一つ一つ新しいアミュートの能力を確かめるように戦うその姿は、既に個人戦闘の域さえも超えている様に感じさせた。
 並みの剣であれば刃を通さぬゴーレムの装甲でさえ、すれ違いざまに斬りおとしていく様は、ドラグーンを髣髴とさせるものがあった。
「よし。大方の動きは止まったな。広場の方に向かおう!」
 疲れも感じさせず、再び先頭に立って駆け出すレッド。
 しかし、ジェイクの目にはそれがいささか危うく映った。
(初めてのドラゴンアミュートのせいか、いささか飛ばし気味だな……。杞憂で終わればいいが……)
 そのレッドの横に、レベッカがすっと近づいていった。
「前よりも飛行がスムーズになったね。やっぱり竜の尻尾のせいかな?」
 彼女の様に『飛行制御』を身に付けているアミュート使いというのはそう多くない。だが、その彼女の目から見ても、今のレッドは自在に空を飛んでいる様に思えた。
「ああ、俺の空間認識に瞬時に反応できる様になったよ」
 そして、レッドは口元に笑みを浮かべた。
「前に一緒に飛ぼうとした時の事、覚えているか? 俺はレベッカと共に飛べる翼が欲しいと思っていた。あの時は失敗して数分だったけどな。同じ場所を見て、同じ時間を共に歩みたいと思っているんだ。今回の敵はかなり厄介だ。でも、絶対に一緒に街へ戻ろう……!」
「うん!」
 二人が笑みを交わす。命を賭けた戦場にはいささか不似合いな、それは爽やかな笑みであった。


 石造りの通路を走りぬけた先に、ほのかに緑の灯りに満たされた広場があった。
 第一の目的地。
 ついに辿り着いたと、一瞬だが気が緩みかける。
 そこへ、幾つもの火球が降り注いでいった。
「くっ……最大パワーでぇっ……!」
 先頭をきって広場に入ったレベッカが、咄嗟に『風の翼』を展開する。半透明の翼を大きく広げ、一行を包み込むように庇う事で強力な風の防壁を作り上げ、火球を逸らした。
 周囲に着弾して燃え盛る熱波をコントロールして上空へと逃がす。
 爆炎が収まった時、全員の視線の先に黒きカオスナイトが姿を現した。十数体のカオスゴーレムを従えており、どうやら射撃戦に特化したタイプが揃っているようだった。
「皆は周りのゴーレムを頼む! あいつは俺が……!」
 レッドの言葉に、弾かれるように仲間達が飛び出す。
 固まっていては集中砲火の餌食になる。個々が火砲を掻い潜ってゴーレムに肉迫する必要があった。
 ワグネルと明花が意識的に的になるように注意を惹きつけ、ぎりぎりのところで爆風を回避していく。二人の防御力は通常の防具のそれである。一度でも直撃を食らえば致命傷になりかねなかった。
 その間隙をぬって、雪乃の『ウインドスラッシュ』とファラの『竜の息』がゴーレムにぶつけられる。
 正直、魔法抵抗力が極めて高いゴーレムに対しては目くらまし程度の効果しかないが、それでも接近までの貴重な時間を稼ぎ出した。
 『局部障壁』とオーラシールドを発動させたジェイクが迫る火球を払いのけるようにしながら先陣をきった。その背後からエランとレベッカが飛び出す。長い付き合いである。一呼吸のずれもなく彼女らはゴーレムの群れに飛び込んでいった。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
 アミュート戦士達に懐に入られ、フォーメーションが崩れたゴーレムに太行が一気に間合いを詰める。
 彼自身の『気』と火炎槍の魔力が迸り、長大な槍が風車の様に振り回される都度、ゴーレムのパーツが宙に舞った。
 仲間達が優位に戦闘を展開していく中にあって、レッドはカオスナイトとの一騎打ちを続けていた。
(いける……いけるぞ!)
 ジェントスでの戦いとは違い、相手の動きに何とかついていける。火の精霊力が活性化していることで反応が上がっているおかげらしい。
 しかし。
ガキン!
「くっ……!」
 それでもなおパワー、スピード共に向こうの方が一枚上手だった。
 シルバーアミュートに比べれば、その差は縮まってこそいるものの、まだ基本的な能力で押し負けているのが実状だ。
 さらに、フレイムソードを『局部障壁』で受けられ、『風の翼』で空中戦に持ち込まれる。
 いかにドラゴンアミュートによって飛行が容易になったとはいえ、風の属性の特殊能力が相手では分が悪かった。
 高速で飛ぶカオスナイトの槍が執拗にレッドに迫る。
「ちぃっ!」
 炎の尻尾を叩きつけるようにしてチャージを逸らし、距離をとった。
「レッド!」
 一番近い所に居たジェイクが駆け寄る。
 カオスゴーレムも既に半数近くが稼動を停止しようとしていた。ここまでは特殊能力を温存してきた彼らも、ここでは出し惜しみをしている余裕は無かった。
「少しでいい……あいつの動きを止められたら……」
 肩で息をするレッドをちらりと見て、ジェイクが無言で前に出た。
 そのままエクセラをクロスボウに変化させると、空中にいるカオスナイトに向かって矢を放った。
 もちろんそれは軽々と避けられ、次の瞬間、空中にいた敵は瞬時にこちらに飛び込んできた。
「『クリスタルパーリング』!!」
 ジェイクはそれを見越していたかのように防御系の精霊剣技を発動させた。そうでなければ間に合うはずもないタイミングだったのだ。
 両者を結ぶ中間地点に橙色の水晶剣が形作られ、高速で飛び込んできたカオスナイトを迎え撃つ。
 全力を振り絞ったのだろう。眩しい光を発して形成された水晶の剣はチャージを確かに受け止めた。
 しかし。
「あっ!!」
 レベッカの悲鳴が広間に響く。
 ジェイクのアミュンテーコンが解けたのだ。特殊能力と精霊剣技の乱発で、アミュートに蓄積されていた精霊力を使い果たしたのだろう。
 輝きを失って床に落ちる水晶球。
 甲高い音を立てて、水晶の剣が粉砕された。
 幾分か勢いは落ちたものの、充分なスピードを持ってカオスナイトの槍がジェイクに迫る。
 その時だった。 
「紅く駆ける風、シュペルガルドの加護の元、我が翼となれ!」
 もう一つのアミュート、シルバーアミュートがジェイクの体を包んだ。
 再び『局部障壁』の輝きがジェイクのオーラシールドに重ねられ、槍の穂先を真正面からしっかりと受け止める。
 数メートル後退したところで、両者の力は拮抗した。
「今だ、レッド!」
「おう!!」
 全身を覆うアミュートに、レッドが念じた。
(竜の力よ……! 我のもとへ!!)
 広間に炎の精霊力が吹き荒れる。
 紅い甲冑は瞬時に姿を変え、そこに小さな赤竜の化身を誕生させた。
 カオスナイトの漆黒の瞳に束の間、光が走る。
 僅かに生まれた隙を、レッドを見逃さなかった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
 禁断の『ドラゴンモード』を発動させた彼は、特殊能力で作り上げた陽炎の分身を展開した。それは実体を持たない幻に過ぎないはずだった。
「!?」
 時間差で繰り出せる分身体の攻撃は全てカオスナイトの急所をヒットし続けていった。 
 敵が間合いをとろうにも、行く先を塞いだそれが次々と炎を纏った剣を叩きつけていく。
(いける……いけるぞ! タイムラグはない!)
 瞬間移動を繰り返しながら、分身体の動きに完璧に連動して攻撃を繰り広げていくレッド。
 離れた所でそれを見守るエランでさえ、神技といっていいその攻撃に固唾を呑んでいた。
 4体のドラゴンアミュートから繰り出される8本の剣が、カオスナイトの装甲を削りとっていく。なんとかして包囲網を突破しようと敵は無理な回避行動を続けていった。
「詰んだわね……」
「えっ?」
 エランの呟きに、レベッカが振り向く。その言葉の真意に、気がつかないまま。
 そしてついに、カオスナイトが4体の包囲網を突破した……かに見えた。 
 その背後に、5体めのドラゴンアミュートがいた。
「チェックメイト……!」
 元通り両手持ちに変化させたエクセラに、灼熱の竜炎気を纏わせて。
「ヴォォォルカニック!! ブレェェーードーーー!!!」
 必殺の精霊剣技が放たれる。
 蒼白の閃光と化した一撃がカオスナイトを直撃し、広間の壁ごと残りのゴーレムを呑み込んでいった。
 砕かれたのではなく、溶かされたかのように壁に大穴が開いた。
 広間を覆いつくした閃光が退くのと同時に、静寂が戻る。
 息を呑んで状況を見つめる仲間達。その視線の先に、首だけの存在となったカオスナイトの亡骸があった。
「見せてもらったわよ。イリュージョンラッシュの完成形をね……」
 エランがため息と共に呟いた。
 それは、彼女とレッドがずっと求め続けてきた戦闘の型といって良かった。
 高度な空間認識力を持つ戦士が、戦闘の流れをコントロールするスキル。戦いながら敵の動きを制限し、自分のとどめを打ち込める位置に誘導する技であった。
 アミュートの特殊能力のようにコピーされるものではない。戦技を磨き続けてきた者だけが得る、珠玉のスキルである。
「ナニヲモトメル……」
「!?」
 首だけになったカオスナイトから声が響いた。
「人ならぬ身となって……それでもなお人の為に戦うと言うのか……? 愚かな……」
 まだ全身に熱気を漂わせたレッドがゆっくりとそれに近づいていく。
 その両手にはエクセラが握られていた。
 右手の剣が大きく振り上げられる。
「レドリック・イーグレットの剣は牙無き民の為……そして、たった一人の女性を守る為にある。俺が何者になろうとも、それだけは変わらない……」
 その言葉は小さく、背中越しに見守る仲間達のもとへは届かなかった。 
 そして、炎と共にエクセラは振り下ろされた。


●大いなる力の代償
「やったな!」
 仲間達がレッドの下に駆け寄る。それに笑みを返そうとした次の瞬間、レッドは絶叫と共に膝をついた。
「ぐっぅぅうぅっ!?」
 『ドラゴンモード』の解除と共に、想像を絶する痛みが彼の全身を貫いていた。
 ジェイクらも顔色を変える。
 歴戦の精霊騎士であるレッドが、生半可な事で膝をつく様な男でない事は、彼らが一番良く知っているからだ。
「大丈夫?」 
 外傷をチェックしたエランが、オーラリカバーをかけた。
 もっとも、外傷はそれほど深手のものがあるわけでは無い。どちらかといえば、回復魔法による鎮痛効果を期待しての事だった。
 しかし、両腕で体を抱きしめる様にしてうずくまる様子から、効いている様には見えなかった。
「どう?」
「い、いや……少しは楽になったよ……」
 口ではそう言うものの、未だ立ち上がる事さえ出来ずにいる。
 もっとも、レッド自身はこの痛みが何なのか、薄々の見当がついていた。
(『ドラゴンモード』の副作用か……!) 
 肉体に竜因子を付与していた状態から元の状態に戻る事は、全身の神経を引っこ抜くような激痛を彼に与えていたのだ。
 と、同時にレッドは恐ろしい事実に気がついた。
 それは『ドラゴンモード』を発動させたが最後、戦闘が終了するまで解除する事が出来ないということであった。長時間使えば使うほど、彼の体は竜因子に蝕まれていく。だが、下手に解除すれば、敵の眼前で棒立ちになる事もありえるのだ。
 少し離れた所で、ジェイクと太行が話し合っていた。
「どうする? あいつの回復を待って先に進むか?」
「うむ……どの道誰かはここに残していく事になるわけだからな……。戦力ダウンは避けられんが、レッドにはここで待機してもらった方がいいかもしれん」
 それはレッドの耳にも入った。
「待てよ。俺はまだ戦える……っ!?」
 立ち上がりかけて、やはり崩れ落ちるレッド。それでも無理に立とうとする姿を見て、レベッカが強引に横に寝かせた。
「お、おい……」
「いいから!」
 レッドの赤い髪を優しく撫でて、レベッカはそっと彼の頭を自分の膝の上に乗せた。
「僕もここで待機する事にするよ。万が一、ゴーレムの増援が来た場合に戦える人間がいるでしょ?」
「しかし、今の状態では危険すぎるぞ」
 心配するジェイクに、レベッカは真剣な顔で答えた。
「僕なら大丈夫。指輪があるから、いざとなればライトニングブレードも使えるしね。それに、これ以上戦力を減らすわけにはいかないよ」
 さすがにジェイクもそれ以上の事は言えなかった。
 ここでアミュート使いが二人減るだけでも厳しいのだ。それ以上をここに残していくわけにもいかない。
 元々、風の精霊力を使える人間を置いていかないと制御球の起動は怪しいのだ。レベッカに任せる以外には無いようであった。
「それじゃ、ここは頼んだぞ」
「時機がきたら、私が『竜の言葉』で合図を送りますわ〜。出来るだけ、制御球の近くに居てくださいね〜」
 ジェイクとファラの言葉に頷き、二人のアミュート使いは小さく手を振って一行を見送った。
 東側から突入しているグリム達からの連絡はまだ無い。
 戦況はまだ混沌としているようであった。


●戦場へ続く道
 高い壁に遮られた回廊を北へ走る一行。
 全般的に大きく作られた道は大理石で作られているが、魔術的な強化が施されており、多少の事では砕けない。
 それはつまり、敵に出会ってしまえば突破するしかないという事でもある。 
「ん……嫌な感じだな……」
 戦闘を走っていたワグネルが足を止める。
 その視線の先には十字路があった。
「どうした?」
「俺の感覚が正しければ、あそこら辺がちょうど北西にあたると思う。突っ切るのは簡単だが、追っかけて来られたら面倒な事になるぜ」
 その言葉に太行も顔をしかめる。
「挟撃か……あいつらは連携が取れないのが弱点だが、こういう空間じゃ囲まれただけで厄介だしな……」
 言ってる先から、カオスゴーレム達が姿を見せ始めた。
「どうやら楽はさせてもらえないらしいな……。よし、いいか? あれを突っ切ったらお前達はそのまま真っ直ぐに走り抜けろ。殿は俺が引き受ける」 
 太行の言葉に、明花が目をむいた。
「何言ってんのさ。あいつら一人で引き受けるつもり!?」
「時間を稼ぐだけなら何とかなるさ。山賊やってた頃はこんなもんじゃなかったしな」
 ファラに言って『竜の盾』を譲り受けた太行が、にやりと不適な笑みを浮かべた。
 乱戦はレジスタンス上がりのジェイクらにとっても得意とするところであったが、こと持久戦に関しては彼のタフネスぶりには目を見張るものがあった。
 恵まれた体格と、攻防のバランスが取れた『気』の使い手である事も要因であるが、とにかくしぶといのである。
「来たぞ!」
 バラバラに向かってくるゴーレム達を掻い潜って一向は十字路を抜けた。
 案の定、前方からも新手が近寄ってくる。
「双雷旋!」
 雷を付与した足で空中から多段蹴りを放つ明花。破壊が目的ではなく、スタン効果を重視した連続技だ。
 一行が殆ど剣を交えぬまますり抜けると、太行が殿でゴーレムの群れを引き受けた。
 数十メートルほど進んだだろうか。
 すっと明花がワグネルに近づき、呪文を唱えて彼の背中に手を当てた。
 ほのかに彼の体が発光し、守護の魔法らしきものに包まれた。
「ごめん。やっぱりあたし、太行の兄貴を置いては行けないや。死ぬなよ、ワグネル!」
 道を引き返す彼女を、仲間の誰も止めなかった。 
 先に進むのと、あとに残るのと。どちらが危険かなんて判りはしない。 
 ただ、ワグネルはなんとなく明花がこうするだろうと思っていた。
(お前も死ぬんじゃねぇぞ……!)
 ワグネルは振り向きもせず、言葉を胸に飲み込んだ。
 その背中で、大刀が再び小さく鳴っている事には気がつかず、彼の視線は通路の出口だけを見据えていた。、


●異界の門、開く時
 途中、グリムとのテレパシーが繋がり、お互いの状況を伝え合う。
 どうやら向こうも火の制御球を押さえるのに成功したらしい。短い交信の中で、こちらの方が展開が速い事だけは確認できた。
「こちらも今から水の制御球を押さえにかかる。あとでもう一度連絡しよう」 
 出口が間近に迫り、ジェイクが交信を切り上げる。
 先行していたワグネルが、待ち伏せの無い事を伝える。それを確認して、一行は中への突入を開始した。
 ほのかに青い灯りに包まれた広場に立つと、制御球の傍に二つの人影が立っている事に気がついた。
「辿り着いたのは5人……残りは犬死にでもしましたの?」
 相変わらずの笑みを湛えて、ヒルダが立ち塞がる。その隣にはギルドナイトのレグ・ニィの姿もあった。
(あの鎧が『闇を統べるもの』……?)
 エランの目がレグに釘付けになる。
 『闇を統べるもの』とは、かつて彼女と仲間達が幾度も戦ったカオスの魔物の名前である。だが、それが何らかの理由でプレートメイルに封印されているらしい。
 一応、どんな魔物であったかは簡単に仲間達に説明はしておいた。
 彼女がそちらに一歩踏み出そうとした矢先。
「貴様の相手は俺だ。ジェスの居場所……吐いてもらうぞ!」
 ジェイクが一足飛びに斬りかかった。
 普段冷静な彼らしくはないが、ここに至るまでずっと気にかけていたのだろう。その剣筋にためらいなどは微塵も感じさせなかった。
 一歩踏み出し遅れた間に、ヒルダの呼びだした漆黒の炎が降り注いだ。 
「陰険年増の好き勝手にはさせないわよ!」 
 雪乃のウインドスラッシュが空を切り裂いてヒルダに迫る。
 同時に、ワグネルもスライシングエアを放っていた。敵は鎧もつけていない女一人である。当たりさえすれば致命傷になるはずであった。
ザシュッ!
 避ける素振りも見せず、二つの刃を受けたヒルダが鮮血に染まる。黒いドレスが切り裂かれ、異様なほどに白い肌が露わになった。
 しかし、それらの傷は瞬く間に塞がっていく。
「その程度の攻撃では、まだまだ死にはしませんわ。お馬鹿さん達からたっぷりと精気をいたただきましたもの……ふふ……」
「!?」 
 エランは瞬時に思い至った。
 何故、さほど意味があるとも思えないジェントス襲撃を敢行したのか。それは、彼女自身の『保険』も兼ねていたのだと。 
「お返しはさせていただきますわよ……!」
 ヒルダが右手を振ると、無形の衝撃波のようなものが雪乃とワグネルの体をすり抜けていった。
 次の瞬間、体の奥底からかきむしる様な熱が広がり、二人がどす黒い血を吐く。
「毒か!?」
 二人の顔色を見たエランは瞬時にそう判断した。体内に残留する分、下手な攻撃魔法より始末におえない。
 雪乃はアミュートのおかげもあって抵抗には成功したようだが、ワグネルはしゃがみこんで、血の混じった咳を続ける。
 間合いを取ったエランが腰のポーチを外し、彼の方に投げた。
 こういう状況を予期していたわけではないが、薬草学に秀でた彼女は多少の毒消しは持ち歩いているのだ。
「青い袋のを飲んで!」
「す、すまねぇ……」
 その間に雪乃がヒルダに斬りかかる。
 鋭い斬撃が繰り返しヒルダを襲う。魔法で作られた障壁によって遮られるも、何発かは致命傷に近い傷を与えたのだが、それらは見る見る間に回復していった。
「まるでアメーバか何かね……」 
 呆れた口調で雪乃が舌打ちをする。
 どうやら多少の傷を与えたところで回復されてしまうようだ。恐らく、取り込んだ命を自己修復に回しているのだろう。
「ならば、体が真っ二つになっても生きていられるか……試してみる!?」 
 ワグネルがフレイムジャベリンで援護射撃を行い、ヒルダの足を止めた間に、エランは一気に間合いを詰めた。
 青いアミュートから氷の結晶を放出させながら、その精霊力をエクセラに注ぎ込む。
「これならどう? 精霊剣技! フリーズブレードーー!!」
 魔法障壁をものともせず、必殺の剣技がヒルダに放たれた。
 肩口から打ち込まれたエクセラが、心臓付近で止まる。
「!?」
 硬質な何かに刃を阻まれた感触を感じ、エランは瞬時に飛びのいた。手ごたえから言えば、あの程度の魔法障壁など関係なしに両断できたはずだ。それだけの力は込められた筈なのに。
 半身を白く氷漬けにされながら、ヒルダはにやりと不気味な笑みを浮かべた。
 楽しくて仕方が無い。
 そういった感じの邪悪な笑み。
 かろうじて動く右手を、傷口を抉るように突き刺す。フリーズブレードの凍気によって斬り裂かれているため、血は出ない。
 彼女が己の体内から抉り出したもの、それは大きく傷つけられた蒼いオーブであった。
「礼を言わせてもらいますわ……ふふ……ここまで傷つけられれば壊れたも同然」
「何!?」
 エラン、雪乃、ワグネルの三人は状況がつかめないままヒルダを遠巻きに囲む。
「竜の守護力に守られたコレは、わたくし達の黒魔法では破壊する事ができなかった。でも、同質の力であれば……ね?」 
 いつの間にか、レグがヒルダの傍に来ていた。
 感情を浮かべぬ顔で、そのオーブを眺めている。
「そうか……貴様、制御球を!」
 遅れて駆けつけようとするジェイクをあざ笑うかのように、蒼いオーブは彼女の手からするりと落ちていき……床に落ちて二つに割れた。
 同時に、回廊全体が大きく振動を始める。
 初めは小さかったそれが、次第に大きな地鳴りと化して、建物を揺らし始める。
「ふふっ……感じますわ……心地好い風を。混沌の彼方から吹き寄せる風を……ね」
 その頃にはもう、仲間達は膝をつかなければ立っていられないほどの地鳴りが辺りを包んでいた。
「『門』が……!」
 ファラの悲痛な声が響く。
 誰もが感じ取っていた。回廊の中心方向から、胸が悪くなるような瘴気が溢れ出そうとしているのを。
 レグの身に付けていた漆黒のプレートメイル。それが滲むように背後の闇と同化し、姿を変える。
 人型のそれは……。
「『闇を統べるもの』……っ!」
「どこかでお会いしたかな? 矮小なエルフよ。礼は言っておこう……おかげで力を取り戻すことが出来たとな!」
 血の色をした唇が歪んだようにつり上げられる。 
 闇の貴族と称された、カオスの魔物は完全にかつての姿を取り戻していた。
「間もなくだ、間もなく我が故郷への通路は開かれる……!」
「ピョン吉風情がえらそうな口を叩くか!」
 地鳴りの中、雪乃が立ち上がる。
 月道を通る時のような空間転移の気配を彼女も感じ取っていた。急がなければならない。
「マリン!」
 エクセラを高く掲げると、彼女の背後の空間に白き光が差し込んだ。
 空間が膨張し、次の瞬間、圧倒的な精霊力を宿した純白の巨像が出現する。
「みんな! エレメンタルフィールドの内側に!」 
 周囲の瘴気を寄せ付けもせず、ブランゴーレムはその場に眩いばかりの輝きを放っていた。
 さすがに、ヒルダの顔色も変わった。
「白のユラン……!? 馬鹿な、何故ここに……!?」
 『闇を統べるもの』が広げたマントを翼の様にはためかせ、ヒルダとレグを抱えたまま大きく跳び退った。
 その時には、彼女の口元にもいつもの笑みが戻っていた。
「でも遅い……一歩遅かったですわ! ここにカオスの『門』は開かれた!!」
 ヒルダが高らかに笑う。
 そして次の瞬間、天と地とが逆転し、全ては闇の中へと飲み込まれていった。


●『外』にいる者
「な、なんなの……あれは……!?」
 夫の駆るゴーレムグライダーの後ろに乗りながら、リメディア・エクストワは悲鳴を上げた。
 ジェイクから修理を依頼されたシルバーアミュートを持ってきた彼女が見たものは、天空に浮かぶ黒い月と、大地を抉るかのように遺されたクレーターであった。
 そこは間違いなく、かつて『墜ちた都市』と呼ばれた遺跡があった場所のはずであった。
「レベッカ……ジェイク……何が起こっているというの?」
 旋回を続けるグライダーの後ろにあって、リディはただ祈るように呟くことしか出来なかった。
 

●『内』にいる者
「ジェイク! これじゃキリがないぜ!」
「弱音を吐くな! 相手は手加減してくれんぞ!」
 押し寄せるカオスの魔物たちに、ワグネルのスライシングエアが飛ぶ。
 8匹をまとめて地に落とすが、宙を埋め尽くすばかりの魔物の群れは、さほど減った様には見えない。
「吐いてねーよ! これからどうすんのかって聞いてんだ!」
「……」
 ジェイクも、傍らにいるファラも、その言葉に返事が出来ない。
 あの時、突然空間転移が起こった後、ユランの近くに居た二人とは別れ別れになってしまった。
 3人は気がつくと、『墜ちた都市』の瓦礫の中に倒れていた。
 場所さえ特定する事ができない。一度や二度行った場所では位置関係を掴む事が困難であるし、何しろ天空が虹色の膜に覆われていて日の光を確かめる事も出来ないのだ。これでは時間すら判然としない。
 そんな状態の中で、彼らが出会ったのは瓦礫の中に出現した、かつてのジェントスの街並みと避難したはずの人々であった。
 殆どパニック状態の人々から聞けた話を整理すると、『門』の震動はシティの外にまで達し、カグラとジェントスを巻き込んだ形でどこかへ転移したらしい。
 彼らから話を聞いてる間にも、小型の魔物がそこら中を飛びまわっているのが見てとれた。
 ジェイクは付近の住民をまとめ、何とか安全な場所へ避難しようと逃避行を始めたのであった。
「皆さんの疲労とストレスはピークですわ……もちろん私たちも含めて、ですが」
 常にマイペースなファラの顔にも疲労が窺えた。
 どこに行けば安全なのか判らない。
 いつ襲いかかってくるか判らないカオスの魔物たち。
 水も食料も最低限しかない状況の中で、ここまで逃げてこれたのも3人のおかげと言って良かった。
 だが、それも限界が近づこうとしていた。
「せめて、場所だけでもはっきりすればな……」
 さすがのジェイクからも溜息が漏れた。
 その時である。
バサッバサッ!
 大きく、何者かが羽ばたく音が聞こえた。
 ジェイクが即座にアミュートを展開させる。今までのような小型の魔物の羽音では無い。それを瞬時に判断しての行動であった。
 身構える3人の前に、空から1体の影が舞い降りた。
「お前は……」
「よう、久しぶりだな。探すのに苦労したぜぇ!」
 それは、火竜王の神殿で出会った『侍』の片割れであった。
 主の命により、ずっとジェイクを捜していたらしい。
「捜していた……だと? どういう事だ?」
 侍は、このシティの現状を簡単に説明してくれた。
「現在、天空都市レクサリアはカオスの異界の中にある。周辺にあった街も一緒に吸い上げられたようだが、風竜王の力によって都市内部に収容した……まぁ、瓦礫の上に置いただけだがよ」
 にやりと笑った……ような気配がする。
 もちろん、人間ではない彼らの顔が笑うことは無いのだが。
「カオス界の侵食を防ぐ為、三竜王は『四天結界』を発動させてらっしゃる。だが、もちろん完璧なものじゃねぇ。地竜王が欠けた状態で完璧な結界が張れるわきゃあねぇからな」
 その状態で、街にいた住人の大半は各神殿に身を寄せているらしい。
 神殿の結界は全体を包んでいるものよりは強固だし、冒険者たちが『竜王の騎士』に協力して魔物を撃退しているからだ。
「主たちは不完全な結界の維持だけで精一杯で身動きが取れん。それで、おめぇに協力を依頼するためにわざわざ来てやった……って訳でぇ」
 現状では結界の外にいる大型の魔物を防ぐ強度を維持するだけで限界との事だ。
 小型の魔物はどんどん入り込んで来ているし、空気も漏れ出している。
 あまり、時間的な猶予は遺されていないようだ。
「解った……で、俺達は何をすればいい。元の世界に戻れるのであれば、出来る事はさせてもらう」 
 ジェイクの返答は速かった。
 他に選択肢が無いというのが本音であろうが。
「まず、南天地竜王の復活が最優先だ。そうすれば四天結界が完全になり、都市の安全が確保されるからな。その上で、今回の元凶である『門』を閉じることだ」
「待て。『門』を閉じる云々も気になるが……それ以前に、どうやって地竜王を復活させるというんだ?」
「そいつぁ決まってらぁな。今ある亡骸の操り人形を破壊した上で、新しい奴が地竜王に任命されるしかねぇ。任命権は三竜王にあるから大丈夫だ」
 場に沈黙が降り、三人が困惑したようにそれぞれの顔を見合う。
 沈黙を破ったのはワグネルであった。
「で……その地竜王になる為には何か特別な力が必要なのか?」
「まぁ、地の精霊力属性を持ってないと無理だろうな」
 それを聞いて、ワグネルが傍らに立つジェイクの方を見る。
 しかし、彼は首を振った。
「いくら地の精霊力を行使するといっても、多分大前提があるだろう。竜の力を行使出来るという……な」
 侍は当たり前だと言わんばかりに頷いた。
 ワグネルは、今度はファラの顔を見た。
 ファラも二人の顔を交互に見た後、おずおずと手をあげた。
「あの〜、私……でいいんでしょうか……?」
「これを手のひらに乗せてみてもらえるか……?」
 ジェイクがアミュートの水晶球を取り出す。
 受け取ったファラの手の中で、水晶球は淡いオレンジの光を放っていた。
「地属性……だ」
 呟くように漏らしたジェイクの言葉は、再び沈黙をその場にもたらした。 
 そして今度の沈黙は、すぐには晴れそうにはなかった。



                             ……to be continued final stage





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0929/山本建一/男/19歳/アトランティス帰り
1070/虎王丸/男/16歳/火炎剣士
1856/湖泉遼介/男/15歳/ヴィジョン使い・武道家
2303/蒼柳凪/男/15歳/舞術師
2361/ジル・ハウ/女/22歳/傭兵
2365/風見雪乃/女/27歳/ゴーレム乗り
2787/ワグネル/男/23歳/冒険者
3098/レドリック・イーグレット/男/29歳/精霊騎士
3116/エトワール・ランダー/女/25歳/騎士
3127/グリム・クローネ/女/17歳/旅芸人(踊り子)
3216/アレックス・サザランド/男/43歳/ジュエルマジシャン

※年齢は外見的なものであり、実年齢とは異なる場合があります。

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■         ライター通信          ■
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 どうも、神城です。半年以上ぶりの更新になります。

 まずは納品が遅れたことを深くお詫びさせていただきます。
 
 現在の環境では、これまでのような商品作成は不可能であると考え、この形式での執筆は次回の完結編を最後にしたいと思います。
 本当は3部作にする予定だったのですが、前後編にすることにしました。
 次は半年も待たせることはないと思いますが、夏休み前の8月頭に最後の募集をしたいと考えています。出来ればもう一回お付き合いください。
 東側の突入組もアップしていますので、よかったらそちらも合わせてご覧くださいね。 

 『街のどこかで』については、遅れない程度には開きたいと思ってはいますが、これも不明です。

 それではまた、お会いしたいと思います。
 
>レッド
 人数、戦力差、レベッカとの兼ね合いなどを考え、東側に来てもらいました。ご勘弁を。