<PCクエストノベル(2人)>


  巫女さんクエスト(多分後編)

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 今回の冒険者
【整理番号 / 名前 / クラス】
【1070/虎王丸/男/16才/火炎剣士】
【2303/蒼柳・凪/男/15才/舞術師】
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1.巫女さんを探そう

 アーリ神殿の巫女をユニコーンの元へと導く為の護衛。
 しかし虎王丸と凪は、その予定ルートを離れ、何故かエルザードに来ていた。
 護衛をするはずの巫女が何故か逃げ出して、エルザードへ来てしまったからだ。
 二人は、あわてて追いかけてきたところである。
 人通りの多い都会。
 さて、巫女は何処に居るのやら…
 
 虎王丸:「どうせ大通りに居るよな?」
 蒼柳・凪:「そうだね、賑やかな所に憧れてたみたいだったしね」

 2人の考えは一致する。
 確かに、都会へ憧れる思いが強い娘に見えた。
 二人は手分けして、大通りで巫女姿の子が居なかったか、聞いてみる。

 虎王丸:「なーなー、おっさん。
      この辺で巫女見なかったか?頭悪そうな奴」
 エルザードの通行人A:「巫女…うーん結構居るしなー?」
 
 都会だけに、巫女も結構居るらしい。

 蒼柳・凪:「すいません、友達とはぐれてしまったんですが、少し頭が可哀想に見える巫女さんを見ませんでしたか?」
 エルザードの通行人B:「頭が可哀想ですか?
            水神ルキッドの巫女なら、さっき見かけたわよ?」

 水神ルキッド?
 そんな聞いたことも無い、マイナーな神の巫女ではない。
 エルザードには色んな巫女が居るようだ。
 ともかく、2人は、しばらく巫女を捜して大通りを歩く。
 巫女自体はエルザードでは珍しくもないのだが、それに加えて、
 『ちょっと頭が足り無そう』
 『ピアスとかネックレスとかしている』
 などのオプション付きの巫女は、やはり少数派のようだった。
 その日のうちに、二人は巫女を見つける事が出来た。
 大通りの外れ辺りにある金物屋である。
 
 虎王丸:「おい、パティ!見つけたぞ何やってんだ、こんな所で!」

 虎王丸は巫女の名を呼んだ。

 巫女A:「あ、虎さん、エルザード来ちゃったんですか?
     あはは、見ての通り買い物ですよ、買い物。
     こんな機会滅多に無いですから、色々買っておかないと!」
 
 悪びれた様子が、あまり無い巫女A。何やら色々と買ったようだ。
 いつのまにか、凪が彼女の荷物を手にしている。

 巫女A:「わー、ちょっと何するんですか!」

 抗議する巫女。

 蒼柳・凪:「鋼の針と糸、ドアや窓に注すような油、建物の補修用資材。
       …結構、実用的な物ばかりですね」
 巫女A:「ええ、こういう機会に買っておかないと、あの神殿って何にも無いですから!」

 都会で実用品を買い漁る巫女。たくましさを感じなくも無い。

 虎王丸:「装飾品は、この後買うつもりだったのか?」
 巫女A:「ええ、それはもう、全てのお小遣いをかけて!」
 虎王丸:「ふーざーけーるーなー!」

 怒る虎王丸。
 でも、一応、5分間だけ買い物する事を許してあげた。
 その5分間の巫女の動きが、神懸かっているように、虎王丸と凪には見えた…

 蒼柳・凪:「…で、その荷物は、どうするつもりです?」

 まさか持っていくつもりじゃないですよね?
 と、凪が巫女の山のような荷物を指した。
 5分の間に、荷物の量が2倍ほどに増えたように見えた。
 巫女A:「あー、ほら、頼りになる男の子が2人も居るじゃないですか!」

 虎王丸:「ふーざーけーるーなー!」 
 蒼柳・凪:「そろそろ、怒っても良いですか?」

 虎王丸と凪が怒っている。
 荷物は置いていくか、神殿に届けるかしろと二人は言った。

 巫女A:「あ、あはは、もちろん冗談ですよ。
      ユニコーンさんの神殿、エルザードにも支部がありますから、そっちに預けて送っておいてもらいますね!」

 2人の剣幕に押された巫女Aが、あわてて言った。
 ともかく巫女を見つけた二人は、彼女を連れてエルザードを後にした。
 
 2.ユニコーンに会おう

 思わぬ寄り道をしてしまった。巫女を連れた二人は、少し道を急ぐ。
 だが警戒もしていた。
 エルザードに来る前、巫女は盗賊以外の何かに襲われた。恐らく今も、何かが巫女を狙っているのだ。
 
 巫女A:「ふえー、疲れましたよー、もうちょっと、ゆっくり行きましょうよー?」

 巫女は疲れたと言った。
 
 虎王丸「だーめだ!もうちょっとがんばれ!
     ユニコーンとの約束に遅れてもいいのか?」

 説教する虎王丸

 巫女A:「ぐ、そ、それは…」

 仕えるユニコーンの事を言われると、さすがに巫女は弱い。

 蒼柳・凪:「あと1000歩、数えながら歩いたら休憩にしましょうか。
       結構歩きましたしね」

 巫女が限界と見た凪が言葉を添える。
 自然と、アメとムチに役割が分担されている。
 もっとも、これは放っておくと虎王丸が意地を張って、巫女が倒れるまで歩かせかねないから、凪がフォローに回った、単なる結果なのだが…
 そんな風にして、巫女を連れて歩きながら、休憩にしようとした時の事である。
 凪は、静かに意識を集中していた。
 休憩の時こそ、彼の出番である。
 何かが近づいて来た時には、すぐに察知出来るよう、『視界の野』を発動させている。
 ここ数日は何も無かった。
 ユニコーンの所に着くまで、それが続けば良かったのだが、そう甘くは無かった。

 蒼柳・凪:「来たみたいです」

 一言呟くと、凪は立ち上がる。
 広げた扇を顔の前で交差させる。舞踏の開始の構えだ。
 辺りを冷気が包んだ。
 雪でも降り出しそうな寒さである。そういう舞踏だった。
 …なんだか寒いなぁ。
 巫女が、てくてくと凪の側に寄った。
 そよ風のような風と、静かに落ちてくる雪。
 優しい吹雪が、辺りを包む。
 そういう舞踏だった。
 例え姿が見えない者の上にも、凪が起こした雪は舞い落ちる。
 ある場所で、白い雪が人の形を象った。
 虎王丸が、それに向かって走る。
 凪が扇を銃に持ち代えて、人型の雪に向かって引き金を引いた。
 銃弾の形で雪に穴が開き、炎を纏った剣が雪を溶かしながら人影を切り裂いた。
 
 虎王丸:「なんだ、もう終わりか?」
 
 自分で斬っておいて、少し呆気に取られたような虎王丸の声。
 確かに、気配はすでに感じない。
 
 蒼柳・凪:「隠密能力に特化した魔物だったみたいだね」

 一度捕らえてしまば、呆気ないものだった。
 もっとも、そこまでが大変だったわけで、ここ数日は警戒して神経が磨り減る日々が続いたわけなのだが。
 凪が舞踏をやめると魔法の吹雪は止む。冷気は、まだ残っている。
 虎王丸と凪は、ひんやりとした空気を楽しんだ。
 …ただ、見えない魔物が一体だけである保障は何も無い。
 まだ、完全に油断をする事は出来ない。
 
 巫女A:「雪だるまは、さすがに作れませんね…」

 消えていく雪を、巫女がぼーっと眺めていた。
 その後は、ユニコーンの所に着くまで、何事も起こらなかった。
 ユニコーンとの約束の場所にやってきた巫女は、静かに佇む。
 
 虎王丸:「おーい、何にも居ないぞ?」
 巫女A:「そのうち姿を見せてくれはずです!ちょっと待っててください!」
 虎王丸:「そ、そうか」
  
 ユニコーンの素人は黙っててくださいと、巫女は言った。
 そうして、森の中でユニコーンを待つ。
 足音は聞こえない。
 ただ、足元の草を掻き分ける音だけが微かに響いた。
 真っ白な馬が姿を現した。
 額から角を生やしたその馬は、巫女でなくてもユニコーンだとわかった。
 巫女をユニコーンの下に届けるという依頼は、ひとまず完了である。
 
 虎王丸:「何を話してるんだろうな?」
 蒼柳・凪:「さあ…多分、俺達には理解できないだろうね」

 穏やかな微笑と共にユニコーンの首筋を撫でながら、何かを囁いている巫女。ユニコーンと語らっているようにも見えた。こうしていると、巫女にも見える。
 しばらくの時間を自分の巫女と過ごした後、ユニコーンは森の中へと消えていった。
 やはり足音が無い。
 実体は無いのだろうか?

 巫女A:「ユニコーンさん、最近、神殿付近に怪しい気配が漂ってるから気をつけろって言ってましたよ。
     襲われたって言ったら、ちょっと驚いてました」

 虎王丸:「ずい分、呑気だな…」
 蒼柳・凪:「確かに…」

 ユニコーンは頼りになりそうで、あんまり頼りにならないのではないかと、虎王丸と凪は思った。
 その帰り道は、何事も起こらなかった。
 神殿へと戻り、偉い巫女に事の顛末を伝えた。

 アーリ神殿の偉い巫女:「どうやら、予想以上の仕事になってしまったようですね。ご苦労様でした…」
 
 報告を聞いた偉い巫女は、ユニコーンを訪れた巫女と、その護衛2人をねぎらう。
 やはり、男は神殿の中へは入れてもらえなかったが、神殿の外での茶会に、虎王丸と凪は招かれた。
 そうすると、やはりピアスにネックレスの巫女は、かなり特殊なのだという事がわかった。
 二人はアーリ神殿を離れる。 
 結局、透明な魔物の正体と目的はわからなかったが、ひとまず盗賊は退治された。その後、アーリ神殿周辺の治安は良くなったという。
 後になって思うと、『襲う』事ではなく、『調べる』事が透明な魔物の目的だったのかもしれないが、それも推測に過ぎない。
 ともかく、今の所、アーリ神殿に再び不穏な影が差したという話を、虎王丸と凪は聞いていない…

 (完)

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(ライター通信もどき)  
 
 お買い上げありがとうございます、MTSです。
 巫女の面倒を、最後まで見て頂いてお疲れ様でした…
 また、気が向いたら遊びに来て下さい。それでは