<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>
『竜騎士誕生』
●竜騎士への道程
『堕ちた都市』郊外の静かな森の一角。
グランディッツ・ソートはそこで自然石の上に座り、静かに目を閉じていた。
そして、どれだけの時間が過ぎただろう。
「俺は……、絶対に竜騎士になってやるんだ!!!」
森の静寂は唐突な叫び声によって中断された。
木々の間から小鳥たちが飛び立ち、その営みを邪魔してしまった自分にグランは気がついた。
大きく深呼吸を一つ。
そして、自分の目の前にある一振りのショートソードに目を向けた。
「未だ、その声を聞く事すら出来ない……ってか」
視線の先にある『鍵』をじっと見つめながら、グランはそれを借り受けたときのことを思い出していた。
●ギルドの守護者
「え? シディアスの奴も街を離れているのか?」
水竜王の神殿から帰ってきた翌日。
少しでもドラグーンに慣れようと、『ローレル』を借りにシディアス・ランダーの元を訪れたグランだったが、彼は既に『明日に吹く風』を引き払った後であった。
元々、彼や師匠は他にも護るべき地を持つ立場の人間である。必ずしもいるわけではなかった。
「まいったな……他にドラグーンの当てなんてありゃしないしなぁ」
既にグライダー乗りとしては完成されたグランである。
あとは実際に触れていかなければ竜騎士としての成長はない。
宿の酒場で悶々としていた彼に、二階から降りてきたジェイク・バルザックが声をかけてきた。
「お、こんなところにいたのか。呉先生がお前にも話があると言っていたぞ。明日にでもギルドの倉庫に顔を出してみてくれないか?」
「鑑定所の?」
そうして訪ねていった先で渡されたのが、一本のショートソードだった。
文明は彼だけに自らの素性を明かし、それがドラグーンの『鍵』であると話した。
ギルドマスターである呉文明が、その広い人脈を持って創り上げた第三世代ドラグーン。
アトランティスのゴーレム魔法。天界の高い技術力で作られた素体ゴーレム。そして『墜ちた都市』に伝わる特殊な竜語魔法によって完成したスモールドラグーンである。
費用の関係により、その大きさに止まったものの、並みのラージドラグーンを上回るスペックデータを記録しているという。
『刀匠』操白紋がブランとプラチナから鍛え上げた刀を装備しており、ゲイルドラグーンと呼称されている。
『竜の翔破』と呼ばれる秘術が応用されており、鍵となるショートソードを持つ者の呼びかけに応じて出現する事が可能だ。
これらを聞き、ショートソードを受け取ることの重みに愕然としたものの、現状ではこれに頼るしかない。
ゲイルドラグーンを自らの相棒にするべく、グランは『鍵』との会話を開始したのであった。
●飛翔
どうにも対話が進まなかったある日、彼が『堕ちた都市』を離れている間に、突如として街が何処かへと転移してしまった。
慌てて舞い戻るが、そこで彼が見たものは、かつて街のあった痕跡だけだった。
一日。
二日。
焦燥と苛立ちだけが募る中、彼は気がついた。
ゲイルドラグーンに空間を渡る力があるのなら、あるいは『堕ちた都市』を追跡できるかもしれない。
この時初めてグランは心の底からドラグーンを欲した。
あればいいな、ではなく。
それが必要だと、心から願った。
その想いが、ついにゲイルドラグーンを出現させた。
風のエレメンタルカラーに彩られた機体。
近づいただけで感じる圧倒的な精霊力。
これこそが彼が夢にまで見た存在であった。
『主よ。私を呼びましたか』
「ああ。お前の力が必要なんだ! 俺に力を貸してくれ!」
『主の望むままに』
制御胞に乗り込む。
もちろん操縦方法などは『ローレル』と変わらない。ただ、無線機など天界の装備が搭載されてるようだったが。
「まぁ、そんなの関係ねぇ! レベッカたちを追うぞ!」
制御胞に座っただけで、機体の操作方法については伝わってきた。
翔破の使い方もだ。
脳裏に対象を焼きつけ、現在位置を探す。どれだけの時間が流れただろう。
大体の場所は判明した。
「よし、飛ぶぞ。お前の力で仲間を救い出すんだ!」
ドラグーンの前の空間が歪み、門のように開かれた。
グランの意思を受けて、ゲイルドラグーンが起動する。
「いけぇっ!!」
その行き先がカオス界の真っ只中だとも知らず、彼の戦いは幕を開けたのであった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
3108/グランディッツ・ソート/男/14歳/竜騎士見習い
※年齢は外見的なものであり、実年齢とは異なる場合があります。
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■ ライター通信 ■
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どうも、神城です。
結局、本編と同時になってしまいましたが、お届けします。
この後、完結編の中で描かれているように、ユランの元へと転移したわけです。
一応設定上はゲイルドラグーンに認められたので、いつでも乗れる事にはなっています。
それでは、合わせて本編もお楽しみください。
では、また。
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