<PCクエストノベル(1人)>


 宝石は輝くかな?

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 今回の冒険者
【整理番号 / 名前 / クラス】
【 3557/ アルメリア・マリティア/冒険者】

 その他登場人物
【宝石屋の店員A/その辺の宝石屋の店員】
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 1.近所の宝石屋

 店員A:「…お、あんたエルフか?
      随分、健康的だなー」

 とある街の宝石屋である。
 何となく宝石を物色していたアルメリアは、店員Aに声をかけられた。
 特に珍しくない、よくある出来事である。
 アルメリアの細い体と銀色の髪は、人間にしては神秘的過ぎるから、こうして声をかけられる事も多い。
 
 アルメリア:「あはは、よく言われるけど、ちょっと違うよ!」

 聞きなれた質問に、アルメリアは首を振った。大きく首を振ったから、銀色の髪が左右になびいた。
 その、大きな仕草と、彼女の赤い瞳、程好く日光を浴びていそうな小麦色の肌は、エルフのような妖精にしては、活発過ぎる印象だった。
 彼女はエルフというわけではない。しかし、人間というよりはエルフに近い。森の民と呼ばれる長命種の出身だった。
 神秘的な人間、もしくは健康的なエルフ。どちらに近いかと言われると、少し微妙である。
 ただ、そんな彼女の容姿や軽い仕草が人間の男性の気を引く事、同時に彼らが気軽に話しかけたくなるような雰囲気である事は確かだった。

 店員A:「ほーう、森の民か。じゃあ、見た目よりもずっと長く生きてるのか?
     きっと、俺よりも年上なんだろうな」

 宝石屋の若い店員は、にこにこと笑いながら宝石を物色しているアルメリアに声をかけ続ける。
 彼女が商品を買う気が無い冷やかしであろう事は、見ていてわかるが、そんな事はどうでも良かった。

 アルメリア:「ん、そんな事無いよ!
        17歳だよ!」
 
 これも、聞きなれた質問だ。エルフに似た長命の種族と聞くと、人間の男は、すぐに本当の年齢を聞きたがる。
 
 アルメリア:「店員さん酷いなぁ。
        女の子を年齢の事でからかったりしたら、だめだよ?
        …あ、そーだ!
        罰として、何か余ってる宝石でも頂戴よ!
        そしたら、許したげるよ?」

 もちろん、アルメリアは本気で怒っているわけでは無い。
 にこにこ笑ったまま、店員に詰め寄る。
 聞きなれた質問だけに、こんな風に切り返す事は手馴れたものだった。彼女好みの男性相手なら、もう少し違った返事をする事もあるが、残念ながら、目の前の店員はそういう感じではなかった。

 店員A:「い、いや、余ってる宝石なんていうのは…」
 アルメリア:「よ・こ・せ!」
 店員A:「で、でも、ここにあるのは、全部売り物だし…」
 アルメリア:「だ・ま・れ!」

 店員に詰め寄るアルメリア。
 やがて、店員は、宝石はあげられないけど…と、情報を教えてくれると言った。

 アルメリア:「んー…ま、いっか♪
        とりあえず、言ってみなよ?」

 大体、思惑通りである。店員から内緒話を聞けそうだ。

 店員A:「貴石の谷って知ってるかい?」

 話を始める店員。

 アルメリア:「う、全然知らない…」

 即答するアルメリアに店員が説明してくれた。
 そういう谷があるらしい。
 昔は宝石を取る坑道で、今は完全に廃坑。
 探せば宝石は落ちているだろうし、何よりも奥の方には虹の雫と呼ばれる宝石があるそうだ。

 アルメリア:「虹の雫…って、魔王の城の前まで持ってくと、何か橋がかかるやつだっけ?」
 店員:「いや、それは何か違うような…」
 
 アルメリアの言葉に、店員が眉をひそめている。
 そうして、宝石屋の店員から貴石の谷の話を聞いたアルメリアは、そこへ向かった…

 2.貴石の谷

 もう、炭鉱としては使われなくなってから長い時間が経つ貴石の谷。
 そうした廃坑となった炭鉱では、常に望む物ばかりが発掘されるとは限らないとアルメリアは聞いた事がある。
 極端な話、
 『壁を掘っていたらガスが出てきて、ついでに魔王が出てきちゃいました、えへへ☆ま、いっか♪』という事例もあるらしい。
 そうして廃坑で発掘された魔王は、急いで退治すると仲間にする事が出来るという伝説も聞いた事があるが、それに関しては、さすがにデマだろうとアルメリアも思っている。
 貴石の谷の入り口までやってきたアルメリアは、谷を目の前にして色々と考えた。
 魔王うんぬんはともかくとしても、廃坑の暗さが目についた。奥が全く見えない暗さは、光が差す地上で暮らす者にとっては恐怖の対象である。
 ついでに、壁も脆くて落盤寸前らしい。
 
 アルメリア:「うーん…
        宝石がいっぱい輝いてて、外よりも明るい廃坑だったら良かったのになー…」

 貴石の谷を目の当たりにして、無茶な事を考えるアルメリア。
 こうなったら、ここは1つ…
 見なかった事にして帰っちゃおうかなー♪
 …いや、でも、せっかく来たんだしなー。
 色々迷うアルメリア。
 小一時間程、入り口で考えた結論は…

 アルメリア:「灯りの魔法!いつもの3倍!」

 貴石の谷の入り口付近が、魔法の灯りで照らされた。
 とりあえず、無理矢理明るくして行ってみようというのが、アルメリアの考えだった。
 いつもの3倍明るい灯りの魔法に照らされて、ゴツゴツした岩肌が露になる。
 …あれ? 明るくなっても怖いな?
 無駄に明るくなった炭鉱の中に漂う埃っぽい空気を、アルメリアは何だか禍々しい空気に感じた。
 ま、まあ、何かあったら逃げよう。うんうん。
 明るくなってもやっぱり怖い廃坑に、アルメリアは足を踏み入れた。
 ゆっくりと、奥へ進んでいく。
 いつもの3倍明るい灯りの魔法に照らされた廃坑だが、魔法の範囲を少しでも越えると真っ暗である。
 …魔力が半分位になったら帰ろうかな。暗くなったら嫌だもんね。
 灯りの魔法無しで、廃坑を歩くつもりには、とてもなれなかった。
 きょろきょろと、街でそんな態度では挙動不審で捕まってしまいそうな態度で周囲を警戒しながら、アルメリアは歩く。
 確かに、怪しげな物が目に付く事もあった。
 ただ、暗い洞窟を住処とする生き物は、それが暗闇に慣れていれば慣れているほど、強い灯りの魔法を見ると逃げてしまう。
 問題は、灯りなど気にしない生き物だった。 

 アルメリア:「な、なんかスライムみたいだけど…気のせいだよね、きっと!」
 
 壁に、緑色のドロドロした物が張り付いている。
 水分の多い、淀んだゼリーみたいな形状をしている。食べても、あんまりおいしくなさそうだ。何だか動いているみたいだから、多分、生き物だろう。
 その緑色の塊から、じーっと目を逸らさないまま…むしろ逸らせないまま、アルメリアは歩いてみた。
 すると、緑色の塊は、壁を這うようにして、アルメリアの方ににじり寄って来る。
 グリーンスライムという魔物を聞いた事がある。
 知能は一切無し。生き物を見ると、まとわりついてくる、ゼリーみたいにドロドロした魔物だ。
 まとわりつかれると、ドロドロしていてくすぐったい。だからといって一緒に遊んでいると、いつしか、まとわりつかれた生き物もグリーンスライムになってしまうのだ。
 つまりは、生き物に張り付いて、吸収して同化して魔物というわけである。
 いつか、世界はグリーンスライムに覆われてしまうかも知れないと、警戒している学者も居るとか居ないとか。
 うんうん! やる事は決まってるね!
 グリーンスライムを見つけたアルメリアの対応には迷いが無い。
 一角杖を掲げて、魔法を準備する。
 グリーンスライムは知能が無いだけに、魔法の耐性は余り高くないのだ。

 アルメリア:「速度変化の魔法!いつもの3分の1位!」

 生き物の行動速度を遅くする魔法を、アルメリアは唱える。
 もともとゼリー状の不安定な外見通りに動きが早い魔物ではないグリーンスライムは、目に見えて動くのが遅くなった。
 
 アルメリア:「じゃあ、そういう事でね♪」

 グリーンスライムに愛想笑いをしながら手を振って、走った。
 別に、魔物退治に来たわけじゃないのだ。
 虹の雫を求める冒険者は、大急ぎで、廃坑を走った。
 目の前には別れ道。
 右側と左側。
 広かったので、右側を選んでみた。
 少し進んだところで、アルメリアは足を止めた。
 …あー、なるほど。これが、ここが廃坑になった原因の1つかな?
 何となく、アルメリアは理解した。
 モンスターが出るようになったので、廃坑になったとは聞いていた。有名な所では、宝石喰いというモンスターが居る。
 そうした炭鉱が閉鎖される原因となったモンスターの1つが、きっとコレだろうと思った。
 目の前に、大きな緑色のゼリーがあった。
 その幅は、ダンジョンの幅と同じ。その高さは、ダンジョンの高さと同じ。奥の方は、よく見えない。
 …そりゃ、宝石掘ってる場合じゃないよね。
 ダンジョンを埋め尽くす大きさのグリーンスライム。メロンゼリーみたいだけど、食べても美味しく無さそうだ。むしろ、こっちが食べられてしまう。
 くるりと巨大グリーンスライムに背を向けて、来た道へと走った。
 これは、だめだ。もう帰ろう。
 そんな彼女の正面に見えたのは、やはり緑色の塊。
 ダンジョンを埋め尽くすほどでは無いが、人間と同じ大きさのゼリーが、いくつも壁に張り付いていた。
 背中に巨大グリーンスライム。正面に、結構大きいグリーンスライムの皆さん。周囲は壁。
 みんな、アルメリアと1つになりたそうにしながら、彼女に近づいてくる。 

 アルメリア:「うーん…グリーンスライムとは、お友達になりたくないなぁ?」

 さすがに困った。巨大なスライムが動いたせいか、周囲の壁が少し崩れて、岩の破片がパラパラと降っている。
 背後の巨大スライムも、いつもの3倍明るい灯りの魔法で見える範囲に迫ってきている。
 …よ、よし、こうなったら!
 アルメリアは、かくなる上はと、一角杖の形状を槍モードに変えてみる。
 それから、天井や壁を手当たり次第に突いてみた。

 アルメリア:「死なばもろともぉ!
        …みたいな感じかな?」

 彼女に突かれると、元々落盤寸前のダンジョンは見事に揺れ始めた。
 生き埋めになる方が、グリーンスライムに吸収されるよりは、幾らかマシである。
 天井の岩が通路へと降ってきて、アルメリアとグリーンスライムの間で壁になった。
 もちろん、アルメリアの頭上にも崩れた岩が降ってきそうになるが…
 …あ、日頃の行いが良かったのかな?
 アルメリアは微笑んでしまった。
 突いてみた通路脇の壁が、開いている。その先には、隣の通路が見えていた。
 迷わず、そちらに逃げ込んだ。
 それから、揺れ続ける廃坑の中を、アルメリアは走り続けた…

 3.何かの宝石
 
 アルメリア:「あーあ、埃だらけになっちゃった…」

 落盤を駆け抜けて、埃だらけになったアルメリアが呟いた。早く、お風呂に入るか、森で水浴びでもしたいと、独り言で文句を言う。
 やっぱり、アルメリアは、日頃の行いが良かったのかも知れない。
 少し小石が頭に落ちてきて、たんこぶが出来た位で、何とか逃げ延びる事が出来た。
 随分と廃坑の奥まで逃げ込んだ所で、はぁはぁと、息をついてみる。
 その視線は、文句を言いながらも、廃坑の壁に釘付けだった。崩れやすい廃坑の壁の中に、小さく輝く物が幾つも埋まっている。
 おそらく、これが虹の雫だろう。
 いつもの3倍明るい灯りの魔法に照らされた石は、それを受けて輝いていた。
 慎重に、壁を崩さないようにして、槍モードの一角杖で宝石の周囲を突く。
 今度は、先程のように壁を崩すのが目的ではない。慎重に時間をかけて、壁が崩れないように注意しながら、幾つかの虹の雫を壁から抜き取った。
 …うん、お姉ちゃんのお土産、出来たね。
 埃だらけだが、満足である。
 しかし、まだ終わりでは無い事をアルメリアは理解していた。
 今度は来た道を帰らなくてはならない。
 アルメリアは、ゴツゴツした壁にもたれる。
 …でも、疲れたから、今は一休み。
 貴石の谷の最深部で、アルメリアは目を閉じた。
 いっぱい魔法を使って、いっぱい走ったから疲れた。
 少しの休息が、彼女には必要だった。
 目が覚めたら、行きと同じ位に厳しい帰り道が待っているのだ。
 その後、貴石の谷から命からがら帰ってきた彼女の姿が街で見られるようになったのは、数日後だという…

 (完)

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(ライター通信もどき)

初めまして、今回はお買い上げ頂き、ありがとうございました。
普通にダンジョン探索なのかと感じましたので、そういう風に書いてみたのですが、いかがでしたでしょうか?
戦いを避ける方向での探索も良いなと思います。戦うばかりが冒険じゃないですしね。
ともかく、おつかれさまでした。また、機会がありましたらよろしくお願い致します。

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