<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


『月の紋章―第ニ話<対面>―』

 相談する間も与えられず、返答を迫られた。
 エルザードに滞在する3人の若者が、ここを訪れた理由はそれぞれ違う。
 故に、最終目的も決断も違った。
「俺はグラン・ザテッドに用がある。こいつらは必要らしいから手は出さねぇが、他なら協力しないでもないぜ? アンタらについたらキャトルにも会えるようになるんだろ?」
 そう言ったのは、リルド・ラーケンだ。
「あら、ザデット隊長の名前を知っているの?」
 ザリス・ディルダというアセシナート公国月の騎士団の女が言った。
「ああ、名はレザル・ガレアラっていう女魔術師が利用した騎士に聞いた。グラン・ザテッドとは剣を交えたことがある。俺を歓迎するって言ってたぜ?」
「うふふ、面白い人材を見つけたって言ってたことがあるけど、あなたのことかしら。いいわよ、あなたはザデット隊長のところに連れていってあげる。あの娘とは会う機会はあるかもしれないけれど、解放するつもりはないわ。でも……」
 ザリスは笑みを浮かべながら、言葉を続けた。
「騎士見習いから、騎士に昇格する際、望みの褒美を受け取ることができるの。あなたがあの娘を選んだら、あなたにあげることになるかもね。尤も、昇格するには、早い人でも3年はかかるわ。大きな功績を挙げれば短期間で昇格する可能性もあるけれど」
「5年か……。まあいい、連れていけよ、その“ザデット隊長”のところに」
 言った後、ザリスに背を向けて、共に乗り込んだ山本健一を見た。
「悪ぃな、面倒事抜きでキャトルに会えるなら俺は構わねぇし、こっちの方が下らねぇ御託抜きで楽しめそうだしな」
 片目を軽く細める。
 それだけで、健一はリルドの内心を察知した。
「で、あなた達はどうする? 異界人の“山本健一”さんと、聖都自警団の“フィリオ・ラフスハウシェ”さん」
 名を名乗ってはいない。
 ザリスは余裕の笑みを浮かべている。
 こちらの情報は全て頭に入っているのだろう。
「協力するつもりはありません。……お好きなように」
 健一が言った。
「私は……本部に伺います」
 軽く吐息をついて、フィリオが言った。
「あら、意外と諦めがいいのね。そうね……健一君も本部に来てもらおうかしら。レザルが喜びそうだわ」
 レザル・ガレアラ――。
 あの女魔術師の姿が、健一の脳裏に浮かび上がる。
 本部には、あのレベルの騎士が他にも存在するのだろうか。いや、いかにアセシナートとはいえ、一個旅団にあのクラスの騎士が5人を越えるほど存在するとは考えられない。
「じゃ、すぐに出発するわよ。みんなの気が変わらないうちに」
 薄く笑いながら、ザリスはヒデル・ガゼットに指示を出す。
 リルドとヒデルはグラン・ザテッドのいるフェニックスの聖殿へ、健一とフィリオはザリスとディラ・ビラジスに護送され、騎士団本部へと向うことになった。

**********

 日が昇ると共に、一行はカンザエラの研究所を出発した。
 フィリオと健一は黒塗りの馬車に乗せられ、本部へと向かっていた。
 フィリオの隣には、ディラ。健一の隣には、ザリスが座っている。
 ドアの側には兵士が二人。
 ディラは両腕を組みながら、時折鋭い目を、フィリオに向けていた。
 ザリスは健一の腕に腕を絡ませたまま、目を閉じている……眠っているようだ。
 一見、無防備に見えるが――そうではない。
 健一は彼女を策士と見ていた。下手な動きをすれば、腕を一本持っていかれる可能性もある。
 しばらく様子を見ることに決め、健一も目を閉じた。
「本部までは、半日ほどかかるのですよね? アセシナートの中心部だとか?」
 フィリオがディラに問う。
 ディラは不機嫌そうに「そうだ」と答えた。
 途端、車内の空気が変わった。
 ディラが身構えるより早く、フィリオが起した爆風がドアと窓を吹き飛ばす。
「貴様ッ」
 短剣を振りかざしたディラの顔は、喜びを表していた。フィリオを倒せる喜びを。
 フィリオは帯剣していない。しかし――。
 倒すのではない、振り切るだけなら!
 狭い空間を踊り狂う風に、兵士達は翻弄される。
 突き破るように、フィリオは体を外へ投げ出した。
 御者が馬を止める。
 フィリオは風刃で馬を繋ぐ綱を切り放すと、馬に飛び乗った。
 誰も追ってはこない。
 ……健一が引き止めてくれているのだろう。
 感謝をしながら、フィリオは馬を走らせた。

「追わないのですね」
 健一は、ディラや兵士の足を魔法でもつれさせた後、自分の腕を掴み続けているザリスにそう言った。
「彼は本部に行くわ。だったら、無駄な労力は使わない方がいいもの。それに……」
 切り込むような目を健一に向け、ザリスは浅く微笑んだ。
 その微笑みがどういう意味だかはわからなかった。
 しかし、ザリスは健一を逃すつもりはないようだ。
「近くの街で、馬を借りてきてちょうだい」
 そう兵士に言った後、ザリスは再び目を閉じた。

**********

 連なる黒い建物が見える。
 フィリオは馬を近くの木に繋ぐと、荒い呼吸を繰り返しながら、流れる汗を拭った。
 あの黒い建物が密集した場所が、アセシナートの中心部だろう。
 カンザエラの研究所出発時に聞いた話によると、月の騎士団の本部は王城の近くに存在しているらしい。
 ザリス以外の人物にもそれとなく聞いてみたが、全て同じ答えだった。ディラも。
(あの街にキャトルが……)
 王城の近くともなると、警備も厳しく、多くの兵士が配置されているはずだ。
 それでも、フィリオに迷いはなかった。

 街は、聖都のように、人々で賑わっていた。
 ただし、いたるところに兵士が立っており、物々しさを感じずにはいられない。
 フィリオが最初に向った先は――衣料品店であった。
 質素なフリーサイズの服を買う。幸い、手持ちの通貨が使えるようであった。
 路地裏へと身を潜ませ、着替えを済ませると、白銀で作られた天使像型の聖獣装具を取り出す。
 手に持ち、念じ、フィリオは姿を女天使へと変えた。
 裏路地から大通りへ出ると、真直ぐに王城へ向い走り出す。
 近くに見えるのだが、なかなかたどり着けない。
「急用です。月の騎士団本部はどこですか!?」
 道行く兵士に話しかけては、場所を確認し、走る。
 ……目的の場所には、昼前に着いた。
 建物はさほど大きくはない。規模の小さな騎士団なのだろうか。
 しかし、連なる建物全て、軍関係の建物なのだろう。
 一刻を争うため、躊躇している時間はない。
「大変です! ザリス様の、実験体が、狙われています!」
 フィリオは本部の建物に入り込むなり、叫んだ。
 すぐに、警備兵が現れ、フィリオに剣を向けながら、説明を求めてくる。
「カンザエラの研究所に、エルザードの手が伸びました。ザリス様ご自身は、側近と共に、こちらに向かっていますが、研究所の実験体は全て奪われてしまいました。こちらにも、兵士に紛れ既に潜入している模様とのことです。我等の戦力を殺ぐため、解放ではなく、抹殺を目論んでいるようです! 早く確認を!!」
 フィリオの言葉を受け、数人の兵士が駆けていく。
「責任者はどちらですか、直接報告を!」
「来い」
 警備兵に腕をつかまれ、フィリオは廊下を奥へと歩かされる。さすがに自由には歩き回れないか。
 兵は右と左に一人ずつ――。
「あっ」
 躓いて、フィリオが体制を崩す。
 警備兵の姿勢が崩れた隙に、フィリオは風の刃を乱舞させた。
「ぐあっ」
 警備兵を振り切り、実験体の確認に向った兵の元へと駆けた。
 そこに、キャトルがいるはずだ――。
 しかし、本部の警備は研究所より数倍厳しく、一人一人が通常時のフィリオと同程度の力を有していた。
 風でスピードを上げ、翼で飛びながら、兵の間を潜り抜けてゆく。
 目的の部屋の寸前、通路を塞ぐ兵士の多さに、フィリオは諦めざるを得なかった。
 行き止まりの小窓に近付き、風で叩き割ると、身を躍らせる。
 翼を広げて飛びながら、目的の一角へと近付く。
 放たれる矢を避け、鉄格子のかけられた部屋を覗き込み――見つけた。
 髪を解いた金髪の少女を。
 解れた時とは違う服を着ている。
 薄手の白い服だ。検査服のようだ。
 パン
 フィリオが風で窓を叩き割った。
 その音に、少女――キャトルが振り向く。
「フィ、リオ?」
 信じられないというように、目を見開き、次の瞬間に少女が駆けてきた。
 フィリオは矢や魔法の攻撃を避けながら、部屋へと近付く。
 鉄格子の中から、キャトルが手を伸ばした。
 その手を掴み、互いの温もりを感じた時だった。
 フィリオの体が突如、動かなくなる。
 強大な圧力を感じ、フィリオは必死に首を曲げ、下を見た。
 黒い髪、黒い瞳の魔術師が、自分を見上げている。
 緋色の口紅――レザル・ガレアラだ。
 認識した直後に、フィリオの翼は射抜かれていた。
 激しい痛みと、襲い掛かる光の刃。
「フィリオ!」
 そして、胸に刺さる少女の叫び。
 いくつもの衝撃を受けて、フィリオの意識は暗転した。

**********

 王都に入ってからも、ザリスは健一の腕を放さなかった。
 馬車を降り、本部へと向う最中、本部よりやってきた使者から報告を受ける。
“侵入者を捕らえた”と。
 健一が僅かに目を細める。
 ザリスは「ありがと」と答えただけであった。
 本部は黒く、細長い建物であった。
「とりあえず、あなたは魔法封印の結界が張られた部屋に入ってもらおうかしら」
 体術の心得もあるが、健一が得意とするのは主に魔法である。封じられてしまっては、“あの仕掛け”も使えない。
 ザリスに連れられて、建物の中に入る。前には二人の兵士。後ろには、ディラ。ザリスと離れさえすれば、振り切れない人数ではない。
 側のドアが開き、女性が姿を現す。長い髪の華奢な女だ。
「早かったのね、ザリス」 
 兵士達が道を開け、その女性はザリスに近付いた。
 健一のことは、一瞥しただけであった。
「ちょうどいいわ、体診てもらいたいと思ってたの。さっき、初めて動いたのよ」
 言って、その女は自分の腹に触れた。どうやら妊娠しているらしい。
「うふふ、楽しみですわ。でも、少しお待ちください、アルメリア様」
 その女、アルメリアが出てきた部屋から、もう一人女性が姿を現す。
 姿を見ずとも、健一には流れてくる波動で分かっていた。
 黒い髪、黒い瞳――緋色の口紅、レザル・ガレアラだった。
「あっ、レザル、お土産よ、お土産ー!!」
 ザリスが健一の腕を引っ張りながら、手を振る。
 レザルの鋭い目が、健一に向けられた。健一もまた、鋭い目をレザルに向ける。
「どうずる? 私がもらっていい? それとも、あなたもほしい?」
 笑いながら言い、ザリスが健一の手を離した途端、健一は一つの腕を掴んでいた。
 瞬きするほどの僅かな時間に、健一は予め準備を整えてあった魔法を発動する。
「瞬間移動か!」
 レザルが叫んだ時には、健一とアルメリアの姿は消えていた。
「あ、はははは、やられちゃった。普通障害物を越えての移動は出来ないはずなのに。……建物内だから油断したわ」
 軽く舌を出して笑うザリス。しかし、その目は笑ってはいなかった。
「天駆術ではない、おそらく空間移動だ」
 レザルが舌打ちする。
「さて、どうしようかしら。アルメリア……を放置するわけにはいかないわよねぇ」
「魔力を辿り、追う」
 考え込むザリスとは対照的に、レザルは瞬時に呪文を唱え始める。
「ちょっと!」
 ザリスが止める間もなく、レザルの体が消えてゆく。
「聖殿はどうするの!? 魔法陣の制御と空間調整、同時に出来るのは、あなただけでしょう!?」
「お前とザデッドに任せる」
 言い終えた時には、レザルの体は完全に消えていた。
「ああーっ」
 ザリスが両手で顔を覆った。
 数秒後、大きく吐息をつき、手を下ろした彼女は、普段と同じように笑みを浮かべていた。但し、目だけ鋭く光らせて。
「ディルダ様、先ほどあの少女が目を覚ましまして、酷く暴れています。恐らく、侵入者と接触した為と思われます」
 兵士が頃合を見計らい、ザリスに報告をする。
「そう。それは好都合だわ」
 ザリスはその場を離れ、キャトル・ヴァン・ディズヌフの元へ向った。

「初めてここに来た時に、お願いしたわよね。今度はいい返事を貰えるかしら?」
 ザリス・ディルダは、手足を縛られベッドに座っているキャトルに、穏やかな口調で話しかけていた。
「協力はしない。フィリオはどこ?」
 キャトルはザリスを睨みながら、そう答えた。
 ザリスは、笑いながら、控えている兵士から箱を受け取り、中身を振りまいた。
 白く、美しい羽が舞った。
「拾ってきてもらったの。綺麗でしょ?」
 キャトルは唇をかみ締めながら、ザリスを睨み続けていた。
「そうね、あなたの代りに、彼女に行ってもらおうかしら。天使だもの、結界くらい破れそうよね。失敗したら、跡形も無く消滅してしまうでしょうけれど。それとも、あなたの家族を探し出し、やってもらおうかしら」
「あたし、が」
 ザリスの言葉に、強い怒りを込めて、キャトルが言葉を発する。
「今、生きているのは、友達がいるから。あたしに生きていてほしいって言ってくれる人がいるからなんだ。そうじゃなきゃ、逃げる手段がないと知った時点で自害してる。あたしを使いたいんなら、あたしの友達に手を出すな。あたしは、いつでも死ぬ覚悟は出来ている」
 キャトルが犬歯で舌を噛む。
 流れ落ちた血が、唇から顎へと落ちてゆく。
「強情な子ね、可愛くないわ」
 ため息をつきながら、ザリスがキャトルに近付く。
「だけれど、嫌いじゃない。強い子は好きよ。そういう子を思うがままに操るのってとても楽しいもの」
 言って、ザリスはキャトルの頭に手を置いた。
「あなたの意思で、協力してくれなくてもいいわ。あなたを操ることにするから。私の力を受け入れなさい。あなたは私達の希望よ。こんなことで殺したくわないの。だから、受け入れなさい。受け入れてくれたら、あなたの“大切な人”には手を出さない。側にいさせてあげる。あなたの好きにしていいわ。約束よ。私が約束を破ったら、あなたは自害すればいい」
 最初に、それも言われた。
 キャトルの体は魔術を受け付けない。
 だから、キャトルを操るには、体に直接魔力を注ぎ込む必要があるのだと。
 その力は、拒絶すれば死に至る。自分の力として受け入れなければダメなのだと。
“いやだ!”
 だけれど。
 床に散らばった羽が、目に入る。
 手を握り締めた。
 一瞬だけ、触れ合った手を。
 もっと、長く繋いでいたかった――。
 手を握り締めたまま、キャトルはそっと、目を閉じた。

**********

 不自然に黒く塗られた聖殿であった。
 リルドは、聖殿を見上げながら、浅い笑みを浮かべていた。
「行くぞ」
「ああ」
 ヒデルの後に従い、聖殿に向う。
 完全に信用されていはいないのだろう。後ろから、剣を抜いた兵士が2名ついてくる。
 名前を名乗り、カードを見せて、ヒデルが聖殿へと足を踏み入れる。
 慌しく走り回る兵士の姿が目に付く。何かあったのだろうか。
 そんな中、リルドが連れられていった先にいた男は、豪華な椅子にゆったりと腰かけていた。
 リルドの体に緊張が走る。続いて、駆け巡る高揚感。飛びかかりたくなる感情を抑えるのに必死だった。
「ご無沙汰しております」
 ヒデルが頭を下げる。
「ああ、無事に戻ったか。よくやった」
 労いの言葉をかけた後、その男――隊長グラン・ザテッドは、リルドに目を移す。
「よう」
 リルドはにやりと笑ってみせた。
「……ドラゴンの小僧か」
 グランは口元に笑みを浮かべた。
 ヒデルが入団希望者を連れて訪れると、既に報告を受けていたようである。
「あの時は些か驚いた。貴様の中に、竜が居るとはな。まだ成竜ではないようだが、貴様と共に成長するのか?」
「さあな」
「喰われはせんだろうな。まあ、その時は……俺が殺してやるが」
 言葉と共に、流れてくる威圧感。
 リルドは臆することなく、強い瞳で応じた。
 力の差を感じる。しかし、この高揚は恐怖ではない。
 流れてくる気迫に闘争心が掻き立てられる。
「貴様は、相変わらずいい目をしている。歓迎しよう。たが、少々立て込んでいてな。皆への紹介や、正式な配属は少し先になるが……それまでの間に、実力を見せてもらおうか」
 グランは視線をヒデルに戻す。
「侵入を目論んでいる者がいるようだ。お前達は西側の警備に就け」
「はっ」
 短く返事をすると、ヒデルはその場を後にする。
 リルドは一瞬、鋭い目を隊長に向けた後、ヒデルの後を追った。

 警備に就いたヒデルとリルドは、グランの側近から短刀を手渡された。
 柄には紋章が刻まれている。
 鮮やかな月の紋章が――。

    *   *   *   *   *

●目論見―リルド・ラーケン―

 侵入者のうち、騎士団が捕らえた者は女性だという。残りは、逃してしまったらしい。
 リルドには、心当たりがあった。
 ヒデルの呼びかけに応じずとも、この聖殿を目指す者がいるであろうことを。
 単身、外へ出て、周囲を探す。
 しかし、人影はない。いずれ、捕らえられた者達を助けに来るとは思うが――。
(上手く連携できりゃやり易い)
 リルドは更に山の方へと進む。
「おい、持ち場を離れるな」
 ヒデルの声に、仕方なく戻ることにする。
「なあ、捕らえられた奴らってどこにいるんだ? 仲間の数とか吐かせたのか?」
「それは、これから尋問するそうだ」
 リルドの問いに、兵士が答える。
「聖殿の奥へ進む為に、志願者や罪人を使った実験が繰り返されている。尋問後はその者達も実験に使われるだろう」
 そういったのはヒデルであった。
 更に、兵士とヒデルが騎士団の目的とこのフェニックスの聖殿に関してリルドに説明を始める。
 月の騎士団の目的は、聖殿の奥に安置されたフェニックスの卵だということだ。
 続く道は、聖獣フェニックスが施した結界により、一切の動物は立ち入ることができない。
 強い圧力により、体は押しつぶされ、焼き尽くされるのだという。
 実験を繰り返しながら、騎士団は3つの手段を同時に試みることと決めた。
 一つは、聖殿周辺を魔法陣で覆い、結界の安定性を失わせること。
 もう一つは、結界に優れた術師が直接力を注ぎこむことで、結果の効力を弱めること。
 最後に、結果術の影響を受けにくい人物を投入し、卵を獲得する。
「騎士団の主力はそちらに力を注ぐことになるからな。それまでの間に、侵入者は一掃せねばならん」
 ……逆に、その時はリルドにとって好機になるだろう。
 顔を背け、リルドは一人口元に笑みを浮かべた。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【3544 / リルド・ラーケン / 男性 / 19歳 / 冒険者】
状態:軟禁

【0929 / 山本建一 / 男性 / 19歳 / アトランティス帰り(天界、芸能)】
状態:臨戦態勢

【3510 / フィリオ・ラフスハウシェ / 両性 / 22歳 / 異界職】
状態:監禁、拘束/負傷

【NPC】
ザリス・ディルダ
状態:普通

ヒデル・ガゼット
状態:普通

ディラ・ビラジス
状態:普通

キャトル・ヴァン・ディズヌフ
状態:衰弱

アルメリア・ザテッド
状態:拘束

レザル・ガレアラ
状態:臨戦態勢

グラン・ザテッド
状態:普通

※PCの年齢は外見年齢です。

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■         ライター通信          ■
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ライターの川岸です。
月の紋章―第二話―にご参加いただき、ありがとうございます。
皆かなり危険な状況下にあります。
副題の違うノベルや、他の方の個別もご確認いただければ幸いです。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。