<聖獣界ソーン・PCゲームノベル>


赤い手紙は君を見た「二人、風」



 晴天。雲ひとつ無い青い空が広がる下で、湖泉・遼介(こいずみ・りょうすけ)はのんびりと芝生の上を歩いていた。学園からそう遠くないこの草原は、息抜きに訪れるには丁度良い場所だ。両手を上げて、全身を使って伸びをし、その次に脱力、大きく息を吐いた。草の香り。今日一日の始まりを告げる鐘の音が、遠くから響いてくる。
 ふと、上空を大きな影が横切った。影の形からすると、小さめのドラゴンだろうか、それとも大型の鳥だろうか。それは翼を広げて、湖泉の頭上をすいと掠めていった。不思議と羽音はせず、残していったものはちょっとした風だけだった。
 ―――否。

「……何だ、これ」

湖泉の足元に、一枚のカードが小さな音を立てて落ちてきた。血のように鮮やかな赤をしたそれは、草の緑に溶けることなくその存在を主張している。先ほどの影が落としていったものだろうか。顔を上げてあたりを見回してみても、もうその姿は無い。
 カードを拾い上げようとした湖泉の手に、もう一つ触れるものがあった。朝露に濡れた草達の間に、これも影が落としたものなのであろう、赤い薔薇。ざらりとした感触のカードとは違い、棘にさえ触れなければ柔らかな茎と花弁を持つ植物。両方を右手で掬う様に拾い上げ、再度一度辺りを見回す。人影は無い。完全に湖泉へと宛てられたものなのだろう。カードを裏返し、金色の枠に縁取られたメッセイジへと目を向ける。

『親愛なる被害者様へ。明日の晩、あなたを殺しにゆきます。心して待つように。 あなたの友、ブラッディ・レッドローズ』

白いインクで刻まれた文字は、その一行のみであった。いまいち状況が飲み込めないのか、湖泉は目を瞬かせると、左手の人差し指を眉間の辺りに押し当て、口を結んで考え込んだ。一度深呼吸をし、もう一度文章へと目を通す。朝の鐘が鳴り止む前に届けられたと言うことは、今日の晩にはこのレッドローズなるものが現れるのだろう。

「手合わせや普通の決闘なら大歓迎なのに、親愛なる被害者様って言われると、なんかやな感じがするなぁ……」

心に浮かんだ言葉をそのままに、独りごちる。狙われる理由も解らないまま被害者と呼ばれる事に違和感を覚えないものはそうそう居ないだろう。眉間から話した左手で後頭部をがしがしと掻き、どうしたものか、と溜息をつく。

「悪戯……にしては、手が込んでる様な気もするし。ここいらの事情に詳しい人に聞けば、レッドローズって奴のことも解るかな」

差出人の様子が少しでも知れれば状況もはっきりしてくるだろうし、何よりもしもこれが悪戯でなかったとしたら、自分の身が危ないだろう。情報があるに越したことは無い。
 そう決断をした湖泉の脳裏に浮かんだ人物は、黒山羊亭の踊り子、エスメラルダの存在であった。少々危険な仕事の依頼を持ちかけられることも少なくない彼女なら、差出人の情報を少なからず知っているのではないだろうか。
 何もしないで居るよりは、何か行動した方が良いだろう。朝日がその姿の殆どを空へと浮かばせた頃、湖泉はベルファ通りへと歩みを進めていた。カードはポケットへと仕舞い、薔薇は草原へそっと寝かせて。

 それを、ずっと遠くの塔の上から見つめている人物が居た。赤い髪と茶色い瞳を持った青年だ。背には茶色が混じった大きな翼を生やし、手には小型のナイフを握っている。彼の表情は、何故か深い悲哀を湛えていた。凝らされた目は草原を歩く少年を捉えていたが、視線はやがて青空へと向けられる。足場を軽く蹴り、彼は宙に舞った。胸には薔薇のコサージュ。風を切る音さえ残さず、彼は聖都を後にした。





「で、こう……このくらいのカードと薔薇を残して、その日の晩に誰かを殺しに来る殺人鬼のこと、知りませんか? 名前は確か、ブラッディ・レッドローズ……とか言ったと思うんですけど」

 カウンター越しに、エスメラルダへ問い掛ける湖泉。日中の黒山羊亭は夜よりも煙気が無く、客も疎らである。

「ええ、それなら知っているわよ」
エスメラルダがカウンターに置いていた肘を離し、姿勢を正す。
「ブラッディ・レッドローズ。ほぼ無差別に殺人を繰り返す殺人鬼よ。赤い髪とスーツ姿で、薔薇のコサージュを胸に着けているのが外見的な特徴。出現した当初は本当に無差別に人々を殺していたわね。勿論、赤い手紙と薔薇は欠かさずに置いていたわ」

一言一句も聞き逃すまいと、湖泉は少しだけ身を乗り出す。
「でも、しばらくしてから、この町の悪人も手にかけるようになりはじめたわね。そのあたりから、本当は義賊なんじゃないか、っていう噂も流れたんだけれど……。それでも、罪も無い人々の命も変わらず奪っていた。私の耳に入った情報からだと、成功率は十割。事件の目撃者は居ないわ」
「うーん」
腕を組み、エスメラルダの言葉を頭の中で整理する。
「それだったら、何故彼の名や姿は知られているんですか? 噂にもなったみたいですし。成功率が十割だし目撃者も居ないなら、姿なんて誰も知らないはずじゃないですか」

その言葉に、エスメラルダは僅かに頷くような仕草を見せた。両肘をカウンターに乗せ、両手を静かに組む。
「本人が、居るのよ」
「本人が?」
「そう。聖都からほんの少し離れた場所にある喫茶店に、本人が住んでいるの。店員には『自分が殺人鬼だ』と公言しているし、たまに訪れる客から自分のことを問われると、必ず答えるのよ。信憑性は微妙な所だけれど、事件の被害者の死体から見つかった髪は本人のものと同じ色と質感をしているし、傷口は彼の持っているナイフによるもので間違いないみたいで。勿論、決定的な証拠が無いから、賞金首として狙われているわけではない。あくまで、殺人鬼として追われているのは、彼ではなくて『ブラッディ・レッドローズ』だから」

 殺人鬼であるかもしれない人間が、別の場所でのうのうと生きているのか。湖泉は指を顎に当て、自分宛てに届いたカードのことを話してみようかと思い立った。エスメラルダでなくとも、他の力ある者が助けてくれるかもしれないし、その自分で殺人を公言している人物の情報も聞けるかも知れない、と思ったからだ。

「それにしても、どうしたの? わざわざここまで来て、急にそんなことを聞くなんて」
「あ、いえ、なんでも無いです!」

しかし、今回の手紙はあくまでも自分宛てに来たものだ。出来ることならば、自分で解決しよう。エスメラルダの問いに慌てて手と首を振って、礼と共に黒山羊亭を後にする。
 誰かを巻き込むことは、性に合わない。それに、自分には仲間―――ヴィジョンが居るのだ。敵が自分を選んだのなら、自分も正々堂々と迎え撃とう。街道を横切り、傾き始めた太陽を視線の端に捉える。明日の朝日も、今日と同じように迎えよう。そう心の中で呟いて、湖泉はポケットの上から手紙に触れた。そう簡単に負けはしない。不意に自分の意志の強さを問われているような感覚に陥り、無意識の内に拳を硬く握り締めた。
 人々の合間を縫うように、一陣の突風が街道を駆け抜ける。前髪が自分の額を擦る感触。夜はゆっくりと、しかし確実に迫ってきていた。





「多分ここなら、誰も来ないだろうな」
 夜。湖泉がレッドローズとの決闘に選んだ場所は、他ならぬヴィジョン使い養成学園の校庭である。深夜になれば利用する者は皆無であり、何より自分の勝手知ったる地形であることは、僅かながらも彼に心の余裕を抱かせた。
 殺人鬼は、一体どこから現れるだろうか。殺気も気配も、まだ何も感じない。月はぼんやりと夜空に浮かび、薄い雲の向こうで淡い光を零している。校庭は辺りに灯された光に包まれ、土くれや疎らに生えた細い雑草の影を作り出している。視界を遮るものは何も無い。強いて言えば、学園そのものと、校庭を囲むように作られた壁くらいだ。
 遠くから、ホウという梟の声が聞こえた。手に汗が滲むのが解る。空を覆う雲はだんだんと厚さを増していき、月からの光は殆ど感じられなくなった。



 ふと、校庭を照らす灯りが一つ、消える。湖泉は反射的にそちらを振り返った。先ほどまで煌々と地面を照らしていたランプの火が、煙となって天へ伸びていた。それを確認している間にも、一つ、また一つと、火の消える音がする。
 魔力によるものなのか? 何かが居る気配はすれど、辺りに響く生き物の音は何一つ無い。次に消えるだろう炎へと、目を凝らす。ほんの一瞬だけ、大きな鳥の翼のようなものが見えた。それが羽ばたきその所有者を浮かせ舞わせるのと同時に、ランプの灯りは拭きだまる風のような音を立てて消えた。かなりの大きさの翼が動いただろうと言うのに、羽音は全く聞こえない。
 だが、これだけは言える。間違いなく、レッドローズがやってきた。湖泉は地面へと付けていた剣の切っ先を浮かせ、自分の目の前へ構えた。

 視界を照らすものは何も無い。雲の合間から時々顔を出す月が、気まぐれに剣の刃を光らせる。冷や汗が額を伝うのが解る。
 ひゅう、と、何かが上空を通り過ぎた。痙攣するようにびくりと腕が震えた。背筋に走る悪寒。大きな両翼を広げたその人影は、湖泉から僅かに離れた場所で浮き上がると、そのままゆっくりと地面へ両足をつけた。ばさり、巨大な翼がはためく音。

「こんばんは、親愛なるキミ。面白い場所を選んだね?」
二度ほど、靴の底で校庭の地面を蹴る音。まるで、地形の品定めをするかの様に。

「あんたが、ブラッディ・レッドローズか」
「そうだよ」
「俺を殺しに来た、ってことで間違いないな」
「ああ、間違いない。わざわざ確認ありがとう、自分から言うのは格好がつかないからね」

月明かりは、彼―――レッドローズの輪郭だけを浮かび上がらせた。細かい表情までは見て取れないが、その顔は微笑を湛えているようだ。殺気はまだ感じないが、これから始まる戦いに悦びを隠せないのか、声からは嬉々とした感情が感じ取れる。髪は話に聞いたように赤色をしており、うっすら見えるシルエットから見てスーツを着ているに違いない。
 彼は、鞘つきのナイフを取り出した。鞘はそのままポケットへ仕舞い、ナイフを片手で軽く放り投げて受け止める。

 戦闘の合図など無い。張り詰めた空気に背を押されるように、湖泉は地面を蹴った。土埃の舞う音。剣を振るう直前、湖泉は彼の顔を見た。大人びた顔つきには似合わない無邪気に近い笑顔。細められた目は輝いており、口の端は吊り上げられていた。刃が空を斬る音、上空へ飛び上がる羽の音。振った剣の遠心力を利用し、湖泉は再び斬撃を繰り出した。大振りのそれはレッドローズへ届くことは無く、彼の翼の先すれすれの所を通り過ぎていった。

「何で俺を狙った? 何故俺を殺そうとするんだ!」
レッドローズが、地面へと着地する。直後に繰り出されたナイフの突きを剣で受け止め、湖泉は半ば叫ぶようにして彼へ尋ねた。
「強いて言うなら恨みだね。そう、恨みだ」
斜めによぎる刃の光。金属音が一つ。

「俺が何をしたんだ」
「いや、キミへの恨みではない」
「なら、何で俺を選ぶ必要があったんだ!」
「そこに理由などないよ。そうだな、くじ引きで当たった、とでも言っておこうか。怒るかい?」

 剣を構え、レッドローズへ突進する。

「ああ、怒るね!!」

そんな理由で人を殺していいものか。心の中で爆ぜる炎を吐き出すかのように、湖泉は叫んだ。振り下ろされた剣はまたもや空振り、地面を擦った。レッドローズは笑い声を上げながら宙を舞い、宙返りをして地面へと降りる。その声は、湖泉の正義感と怒りを高揚させた。歯を食いしばり、剣へと気を集中させる。思い切りよく振られた刃から、かまいたちが放たれた。だが、それもかわされる。
 湖泉がカードに触れるのと、レッドローズが地面へ舞い降りたのは、同じ一瞬の出来事だ。ヴィジョンとして現れた少年―――水貴が槍を構え、湖泉の隣へと現れる。瞬間、湖泉が目にも留まらぬ速さで移動した。土煙が上がるか上がらないかの内に、レッドローズへ一気に接近する。拳と剣での連続攻撃は、ナイフによって防がれた。鈍い音が夜闇に広がり、消える。

「おっと、二対一になるのか」
三度目の刃による攻撃、全体重が乗せられたそれを横っ飛びで避けた後、レッドローズが呟いた。地面へ刃が突き刺さる音と共に、甲高い音、水流弾が打ち出される音が響く。湖泉に負けず劣らずの素早さでその場を離れ、レッドローズは上空へ飛び上がった。すかさず、湖泉のかまいたちが彼を追う。空気を切る音が、二つ。レッドローズの羽音がその一つだ。僅かな数の羽が散り、かまいたちが彼の翼を掠ったことを知らせていた。

「今までの人間も、そんな理由で殺してきたのか」
湖泉の言葉。レッドローズの笑い声は肯定を表していた。上空高くから響くその声の元へ、再びかまいたちが飛ぶ。
「ミズキ、もう手加減は必要ねぇ!全力で行くぞ!!」
水貴の返答、レッドローズが低空を駆ける気配。
 空間を捻じ曲げる、なんとも形容しがたい音が響き渡る。同時に、幻覚を見せる能力を発動する。レッドローズの動きが僅かに鈍った。その隙を逃さず、気配を頼りに斬りつける。響いた音はやはり金属音で、軽い衝撃が腕を伝った。
 不意に、腕に熱い痛みが走った。鮮血がぱっと散る。一瞬顔をゆがめるが、動揺は無い。傷はそう深くないだろう。敵はまだ近くに居る、その勘を頼りにもう一度剣を振る。なぎ払うように放たれた斬撃は、僅かに相手を捕らえたようだった。振り切った刃には、少量の血。

「なんだか、とても面白い世界が広がっているよ!!」
 狂喜、もしくは狂気に取れなくも無い感情の見え隠れした声。
「ああ、この世の天国でも見ているようだ。ははっ、こんな場所がこの世にある筈無いのに!」
 幻覚に酔いしれる殺人鬼の気配は、あちらこちらへと移動する。それを追うように水貴の水流弾が放たれるが、踊り狂うような彼を打ち抜くことは出来ない。

「あんた、自分が天国に昇れるとでも思ってるのか」
 気配を追って、剣を振るう。僅かに感じる風圧から、夜闇に溶けるレッドローズを捕らえることは不可能では無いだろう。
「命の重みを知らないあんたが行く先は決まってる! 永遠の地獄と闇の世界だ!!」

 鈍い音が響き、剣がナイフに防がれた事に気付いた。力押しでナイフを押しのけ、距離を取る。相手が着地する寸前を狙って、かまいたちを放った。上空へと舞う羽音を頼りに、水貴へ相手を追うように促す。
 水貴は湖泉の声と共に跳び、壁から宙へと跳び上がった。槍を突き出すが、レッドローズは身体を捻り、ものの見事にそれを避けた。次に、上から下へと叩き付けるような打撃。レッドローズがナイフでそれを弾き返した後、縦に伸びるかまいたちが空気を切り裂いた。

「永遠の地獄と闇か」
 ぽつり、どこからか呟きが聞こえる。声質は間違いなくレッドローズのものだ。
 レッドローズは急降下し、そのまま湖泉から少し離れた場所で停止した。現れたときと同じように、僅かに宙に浮いてから地面へと降り立つ。
「うん……。そうしたら、全ての人間の行き着く先はそこだね」
 彼の言葉が終わるか終わらないかの内に、湖泉はその強靭な足をバネにして勢い良く駆け出した。水貴も宙で槍を構えなおし、落下と共に攻撃を繰り出す。構えられた剣、捻れた空間、風を切る音。一瞬だけ、月が雲の間から顔を出した。

 凄まじい金属音、鉱物同士がぶつかりあう音。何重にも聞こえるような錯覚さえ覚えるそれが響き、空へと吸い込まれる。
 湖泉の表情が、険しいものから驚愕のそれへと変わっていった。翼を消したレッドローズは、右手のナイフで剣を防ぎ、何も持っていない左腕の肘あたりを槍に貫かれた状態で、湖泉と水貴の刃を互いの武器へと向けていた。ナイフによって斜めを向かされた剣は、左腕に突き刺さった血だらけの槍の矛にぶつかっている。血の滴り落ちる音が、静寂の中に一つだけ存在している様だった。

 目を大きく見開いた湖泉の目の前で、レッドローズは剣を弾き、槍を腕から抜かないまま、ナイフを水貴の腕に向かって突き出した。短い悲鳴、槍を支えていた腕が離れる。左腕を大きく振り回し、彼は二人を自分の武器ではないそれで吹き飛ばした。それぞれ受身を取る二人の少年を横目に、レッドローズは槍を静かに抜いた。地面に落ちる槍が、乾いた音を立てる。左腕に開いている赤い穴は、思ったよりも小さかった。彼はそれをみてふふと笑うと、再び翼をその背に生やす。



「太陽が落ちるのと同じで、月も落ちるんだね」
 空間の捻れが解けてゆく。レッドローズは、体勢を立て直す少年達を見てはいない。
「朝が来る。残念ながら、俺はこれ以上キミ達と戦うことは出来ない」
笑いを堪えているような声だった。

「逃げるのか」
「まあ、そう言うことにしておいてくれて構わないよ」
剣を構え、先ほどの驚愕の表情を消し去った湖泉を見て、レッドローズは口元に指をあてがった。
「月は沈んでまた昇る。だろう?」
湖泉が剣を振り上げたのと、レッドローズが翼を大きく広げたのに、時間差は無かった。放たれた斬撃は茶色い羽を何枚か落としただけで、その主を切り裂くことは出来なかった。

「さようなら、親愛なる被害者様。もしも期待にそぐわない腕だったなら申し訳ない」
月が沈み、日が昇る。そろそろ、小鳥達が顔を上げる時間だ。

「また会おう」

それだけ残して、彼は去っていった。大きな翼はそれに相応しい羽音を残し、影は遠く、西へ消えていく。それは一瞬の出来事で、二人の攻撃が彼に追いつくことは無かった。
 太陽が高く上るまで、湖泉はそこに居た。安堵の為か、それとも緊張の為か。







 彼が黒山羊亭にたどり着いたのは、それから随分の時間が経ってからであった。

「成功率十割は破ってみせましたけど」
それまでの疲労を吐き出すように、大きく深呼吸をする。
「なんだか、骨折り損のなんとやら、って感じですよ」
その言葉に、エスメラルダは微笑んだ。生きて帰ってこれただけ良かったんじゃないの、と、付け足して。
 鳥の鳴き声がこだまする。カウンターに突っ伏した湖泉は、エスメラルダがふいと目を離した隙に居眠りをし始めてしまった。目覚めた彼の目の前に、お腹を一杯にするには十分すぎるほどの料理が並んでいたのは言うまでもない。







おしまい





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登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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PC/湖泉・遼介/男性/15歳
NPC/ブラッディ・レッドローズ/男性/27歳
NPC/エスメラルダ/女性/28歳

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ライター通信
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湖泉さん、こんにちは。初めまして、北嶋と申す者です。
この度は当ゲーノベにご参加いただき、誠にありがとうございました。
口調・行動など、PC様のイメージを崩していなければ良いのですが……。
少しでもお気に召していただけた所があれば幸いで御座います。
では、発注ありがとうございました。赤い手紙を選んでくれたこと、光栄に思います。
また会える日があれば嬉しいです。