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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


武家屋敷探索〜無限回廊〜

<オープニング>

「編集長〜!特ダネですよ〜」
月刊アトラス社員にして、実質編集長碇麗香の使い走り三下は編集室に駆け込んできた。
「特ダネ?ほんとなの?」
三下に疑いの眼差しを向ける碇。
「ほんとですってば〜。東京は目黒にある武家屋敷で無限回廊というものができたそうです」
「無限回廊〜!?なにそれ」
「なんでも古びた武家屋敷の中で一番奥の主の間まで行こうとすると廊下が無限に続いてしまって到着できなくなっちゃうそうです」
「ふ〜ん」
碇は半信半疑のようだ。確かに話を聞くだけではガセネタくさい。
「他の部屋は行けるわけ?」
「ええ、他の部屋は問題ないんですが、奥の寝室だけはだめみたいです。帰るのは簡単らしいんですけど」
「他に入り口はないわけ?」
「まったく。窓も障子もないそうですから外から入るのは無理そうですね。今若者に人気の不思議スポットになってますよ」
三下の言葉に碇は腕を組んで考え込んだ。確かに話どおりなら面白い。ついでにその理由まで突き止めて大々的に書けば売上もあがる。碇の眼鏡の奥にある目が光った。
「よし、三下君取材に行ってきなさい」
「あ、有難うございます編集長」
三下は編集室を駆け出して言った。そして派手に階段を転がり落ちる音ともに三下の悲鳴が聞こえた。
「やっぱり・・・。まぁ、いいわ。三下君の後を引き継いで調査に行ってくれる人は誰かいないかしら?生きているなら三下君、こき使っていいわよ」

(ライターより)
目黒にある武家屋敷の調査となりますが、中で何がまっているのかは謎です。ギャグありシリアスありなんでもありの自由度の高い依頼となります。碇の言葉どおり階段から転がり落ちた三下君を自由に使って頂いてもかまいません。無限回廊と聞いて自分が想像したものなどを書いていただけると嬉しいです。特に他シリーズと関係はありませんのでお気軽に参加ください。
では皆様のご参加お待ち申し上げます。

<それぞれの理由>

ということで、今回の依頼は武家屋敷の調査なんですけど・・・」
黒髪の青年がファイルの内容を読み上げ、依頼を受けるか否かを尋ねた。
「どうします?」
「う〜ん・・・。別に受けてもいいよ。暇だし」
アームチェアにだらしない格好で座っていた女性が、欠伸をしながら答えた。
「この頃よく依頼を受けられるようになりましたね。少しはやる気がでるようになりましたか?」
青年の言葉に、格好同様だらしなく着こなしたスーツの女性が少々ムッとした表情で返した。
「よく言うよ。物質(ものじち)とってるくせに・・・」
彼女の言う物質とはこの部屋に置かれた夥しい書物のことである。ここは鷲見探偵事務所。やる気のない探偵で有名な事務所である。こじんまりとした事務所で従業員は主である鷲見千白と相棒にして秘書兼事務員の各務高柄の二人しかいない。あまりにやる気のない鷲見を一念発起させるため、各務は依頼を受けないと事務所の書物を全て売り払うと脅している。
「何をおっしゃっているのやら・・・。まぁ、今の依頼は危険度は高くなさそうですからね。それほど心配することはないでしょう」
「よく言うよ、まったく・・・」
ため息をつきつつも立ち上がる鷲見。なんやかんやいいながら年下にどうしても甘くなってしまう。こればかりは性分のようで変わらない。
「それにね。あのボウヤがうけたみたいだからさ。少しは楽しめると思うんだ」
生意気そうな、元気いっぱいの少年の顔を浮かべて鷲見はニヤリと笑うのだった。

「うっ!?」
ゾクッとした悪寒にその少年は体を震わせた。学ランにマフラー、それにピーコート。幾ら寒い冬とは言え今の寒さは明らかに寒さの次元が違った・・・。服装の問題ではあるまい。
「な、なんだよ、今の悪寒・・・」
素敵なおねいさまの野望が動いているとは露ほども気が付いていない。
黒に近い紺色の髪をした少年の名は直弘榎真。現役受験生である。だが、暇を見つけては草間興信所やアトラスの依頼を受けている。
「な〜んか今回の依頼、嫌な予感がするんだよな・・・」
依頼内容が書かれたファイルを読みながらぼやく直弘。
「無限回廊ってのもよくわかんないし・・・。ま、いいか。いけば分かるし」
あっさりそう決めると彼は目黒駅に向かった。

「ふ〜ん、こいつ連れてくのね」
階段の下で目を回して気絶している三下を、冷ややかな目で見つめながら碇は隣にたつ女性に声をかけた。
「そや。少しは役にたつやろ」
関西弁で答えた彼女は三下の襟首を掴んで答える。
真っ赤に染められた髪は燃え盛る紅蓮の炎のよう。瞳は黄金色に輝き非常に特徴的な風貌である。一度見たら恐らく当分は忘れられまい。背は高く、どちらかというと華奢な体の作りで男性が着るようなスーツを着ているので、見た目は男性のようにも見える。国立大学の薬学部で学ぶ学生獅王一葉である。
「これが役に立つわけ?」
ヒールで小突きながらきついことを言う碇。
「意外と使えるで。罠が無いか先行させて突っ込ませたり、調査させるなんていうのには適役や」
「なるほど・・・」
さらに酷いことをいう獅王にあっさりと頷く碇。未だ気を失っている三下はそんな会話がなされているなど夢にも思わないだろう。多分。
「いいわ。持ってちゃって好きにして頂戴」
「まかしとき〜。うちが特ダネスクープしたるさかい安心して待っててや〜」
三下をずるずると引っ張りながら獅王は碇に手を振りアトラスから出て行くのだった。

調査対象である武家屋敷はひっそりと建てられていた。敷地は約300坪。かなり広大で庭も広いが手入れを行う者もなく荒れ放題の状態である。百数十年の風雨に耐えてきた外壁も、今はいたるところに亀裂がはいり今にも崩れてきそう。
そんな屋敷の前で、一人の少女が腕組みをして立っていた。栗毛色の髪はスポーティに短く刈られ、肌の色は冬だというのに健康的な小麦色。体つきも小柄で引き締まっている。明るく元気ということを見事に体現したその少女の名は榊杜夏生という。彼女は高校で所属しているミステリー同好会の恒例行事「心霊スポット合宿」の下見を兼ねて依頼を受けていたのだ。
「ここって合宿するのにいい場所とは・・・言えないよね」
思春期を迎えた乙女には、こういう場所はちょっと泊まりたくはないだろう。どんな虫が出てくるか分かったものではないし。かび臭そうでもある。
「まぁ、いいか。ホントにここに無限回廊とかいうのがあるなら大スクープだし、皆に自慢できるもんね」
心霊現象など非科学的な事は自分の目で確かめないと納得できない彼女はとにかく現物を見てみないことは始まらないと屋敷の門をくぐる。
「人生行け行けゴーゴー!」
座右の銘の言葉とともに右手を突き上げて屋敷に入ろうとする彼女。その肩にポンと手が置かれる。
「まぁ、待ちぃや。まずはこいつに行ってもらお」
振り返った先にいるのは獅王であった。彼女の右手は未だに三下の襟首が掴まれている。未だに気絶しているのかアンタ。
「ああ〜!このひょろひょろした人知ってる〜。碇さんの付き人だよね」
「そや。ほら兄ちゃん現場着いたで。はよ起きぃ!」
獅王が三下の尻に蹴りを入れると、ひぃという情けない声を上げて起き上がった。
「ど、どこですか、ここ!?」
「アンタが取材したがっとった武家屋敷や。さぁ、特ダネが待ってるで。しっかり気張って行ってき!」
「は、はい〜!!!」
女王様的な女性に弱いのか、三下は慌てて武家屋敷の中へ突っ込んでいった。
そして・・・・
「ひぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁ」
案の条悲鳴が響き渡る。
「む、むごい・・・」
同じ男性として気持ちがわかるのか、鷲見と合流してこちらに到着していた直弘は哀れみと同情のこもった視線で、三下の消えた入り口を見つめた。その彼の肩を鷲見がガシッと捕まえる。
「さて、次は君の番だね」
「はいぃぃぃぃぃ!?」
「何変な声を上げてるんだい?はは〜ん、さては女性陣のお供ができて嬉しがってるね」
「んなわけねぇだろ!どうして俺が三下さんの後に続かなきゃいけねぇんだよ!」
「何を言ってるかねぇ。か弱い女性が3人。元気いっぱいの男子高校生が一人。どっちが先陣をつとめるべきだい?決まってるだろう」
直弘の抗議をあっさりと受け流す鷲見。他の二人もコクコク頷く。
「な、なにがか弱いだよ!嘘つくんじゃねぇ!!!」
「元気のいい坊主やな。よしよし次はアンタや」
「勝手に決めるな〜!!!」
直弘がさらに抗議するが三人はまったく聞く耳もたない。ずるずると渋る直弘を引きずっていく。
「嫌だぁ〜!俺は帰る。帰るって言ってんだろうが!!!離せ〜!!!」
直弘の抗議は数の暴力の前には無力だった。

<夢幻回廊>

屋敷に入った4人は、玄関でピクピクしている三下を発見した。
「なんだ生きてたのか・・・」
「流石は碇ハンのお墨付きやね」
鷲見と獅王は床で伸びている三下をたたき起こして先行させる。その光景を見て直弘はホッと胸を撫で下ろした。
「命拾いしたぜ・・・」
「よかったね。でもさ、どこが無限回廊なんだろう?この廊下かな」
榊杜の言葉どうり、屋敷の中はひたすら長い一本の廊下と複数の襖があるだけだ。二人の女性に脅された三下がビクビクその襖を開けると、そこは腐りかけた畳が敷かれている部屋ばかりだった。回廊というほどなのだから、恐らくこの廊下が無限回廊なのだろう。
「あたし無限回廊ってからくり屋敷みたいなものだと思っているのよね。たとえば床の板が回転したり」
「あ〜れ〜」
三下の足元の床が回転して、彼も同じようにぐるぐる回る。
「金ダライが落っこってきたりとか?」
ゴン!
痛そうな音を立てて三下の頭に金ダライが直撃する。
「そうそう、実は壁が隠し扉だったりして・・・」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
バランスを崩して三下が手をついた壁がクルリと回転する。
「そこには隠し階段がある」
「あ、こんなとこに隠し階段が!」
ドダドダと駆け上がっていく音が聞こえ・・・。
「でも大きな鉄球が転がってくるんだよな〜」
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
物凄い悲鳴と共に隠し扉から慌てて飛び出す三下。その後を人の背丈ほどの高さと3倍の横幅があろうかと思われる鉄球が壁をぶち破って現われる。
「ひぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!おたすけ〜!!!」
廊下を奥の方へと猛ダッシュで逃げる三下。それを追う鉄球。榊杜と直弘が話す内容どおりのシチュエーションに鷲見と獅王は呆然と見つめるばかり。
「・・・なんや、あれ・・・」
「・・・ノーコメント・・・」
三下の悲鳴と鉄球の音は徐々に遠ざかり聞こえなくなっていた。確かに無限回廊というだけあって、廊下の長さは相当のものがあるらしい。
「さて、じゃ次は君の番だね♪」
「ふ、ふざけんな!絶対やだぞ俺は!」
鷲見と直弘がぎゃあぎゃあ騒ぎ出す。
すると。
廊下の奥からかすかにだが、足音が聞こえてくる。静かな、だがだんだんと大きくなっていくその足音に、4人は緊張して身構えた。何かがくる。
その何かはゆっくりと歩いてきた。薄暗い屋敷の中、物陰に隠れてしまいほとんど判別できないが、人間、それも随分と小柄なもののようだ。なにかはぴたりと足を止めた。
「いかがでしたか?夢幻回廊は?」
女にしては声が低くかといって男にしては高い中性的な不思議な声。彼(あるいは彼女)はそう言ってペコリと頭を下げた。
「無限回廊?まだ私たちは体験していないけど」
「いえいえ、既にお客様は体験なさっておりますよ。ここが夢幻回廊。夢と幻の空間。お客様の空想どおりのことが起きる場所」
歌うように答える何か。榊杜がえ?といった顔つきになって尋ねる。
「ここが無限回廊?永遠に続くような廊下とかじゃないの?」
「お客様が思えばそうなりまする」
「ウチらが思えば?まさか無間の字って夢と幻なんか!?」
「さようで」
獅王が驚きの声を上げた。そう、三下の情報でてっきり無間だと思っていたこの回廊は夢と幻の回廊だたのである。
「じゃあ、俺たちが言っていたことが現実になったのも・・・」
「そう、この場所のお陰でございます」
「なんだ〜。それならそうと早く言ってよね」
「てっきりお気づきなものかと・・・」
「三下君。ほんとに使えないねぇ」
鷲見は深々とため息をついた。無間と夢幻を取り違えるとは・・・。恐らく廊下を見て延々と続くことをイメージして迷ってしまった人の情報を鵜呑みにしたのだろう。他の情報も見ずにスクープだと騒いだのかもしれない。
「さて、今回の夢幻回廊はそろそろ終わりでございます」
「え、ち、ちょっと待ってよ。これで終わりなの!?」
「はい。この夢幻回廊は人の一生のうちにほんの一時だけ触れることができる不思議空間。夢幻回廊の名前すら知らずにこの世を去る人がほとんど」
何かはまたもやペコリと頭を下げた。
「ですが、もしこのような商品にご興味がおありでしたら『久遠堂』にお越しくださいませ。 様様な不思議がお客様をお待ちしておりまする」
「久遠堂?そこはどこにあるんや」
「はてさて、どこにありますやら。或いは遥か北の彼方。また或いは南の彼方。もしかしたら貴方様のお住まいのすぐ近くのあるからもしれませぬ」
「とぼけてんじゃねぇよ!どこにあるか教えろ!」
曖昧で何を言っているのか分からない言葉に業を煮やした直弘は、黒い人影に掴みかかろうとする。だが、急に屋敷が歪み始め、人影の消えかかる。
「不思議をお求めの場合は久遠堂へ」
チリリィィンと鈴の音が聞こえたと思うと、4人の意識は遠のいていった。

やがて4人が目を覚ますと、そこは草が生い茂る空き地だった。辺りには屋敷の痕跡すら残っておらず夢幻回廊の手がかりはなくなってしまった。だがあの人影が言っていた一言。
「不思議をお求めの場合は久遠堂へ」
という言葉が4人の頭について離れなかった。久遠堂とは一体どのような場所なのであろうか。

追伸

三下君は近くの原っぱで発見され完全に気を失っていた。今回の特集は獅王が全てまとめてしまったので三下は何も書くことはできなかった。
「あれだけ大見得きって記事の一つも書けないなんて・・・。問題外ね」
「編集中〜〜〜〜」
ああ、三下君に幸あらんことを。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0229/鷲見・千白/女/28/(やる気のない)陰陽師
0017/榊杜・夏生/女/16/高校生
0231/直弘・榎真/男/18/日本古来からの天狗
0115/獅王・一葉/女/20/大学生

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■         ライター通信          ■
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お待たせしました。
武家屋敷探索〜無間回廊〜はいかがだったでしょうか?
今回は割合に軽めのストーリーとなりました。三下君は見事に皆様のいいように扱われました。
このようなタイプのストーリーは初めてだったのですがお楽しみいただけたでしょうか?
ご意見、ご感想、ご要望などございましたら遠慮なく私信にてご連絡ください。
次回のストーリに反映させていただきたいと思います。
今回でた久遠堂ですが、ひょっとしたらまた依頼ででてくるかもしれません。
興味をお持ちになられましたらまたご参加いただければ幸いです。

直弘様

今回はおねいさま軍団にいいようにこきつかわれてしまいました(笑)。女性が苦手ということでしたのでこうなりましたがいかがだったでしょうか?