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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


人魚姫は海にいる?
■オープニング

「人魚って海にいるから人魚よねえ…」
と、麗香は呟く。
周りの社員を含めバイトの面々は「あたりまえじゃないか!」と言うような
顔を一斉にした。
…にっ、と麗香は器用に唇だけで笑い、辺りを見回す。
「と、言う訳で取材よ。ちょっとばかり海から上がってきて暴れている
人魚がいるという噂♪真相を確かめて出来れば写真、撮ってきてねっ。
合成ナシの人魚!これは売れるわよ〜!!」
社員もバイトもその言葉に凍りつき、立っていた物はぐったりと
書類を持っていたものは勢い良く、その書類を床にぶちまけた。

…誰だって、暴れる人魚相手に取材はしたくないのである。


*ちょこちょこと、お久しぶりですの秋月です。
今回のは形式的にゴーストネットOFFで書いた「歪んだ御伽噺」の夏バージョンと言う形に
なりますが…今回は仮装ナシでOKです、はい。
参加希望の方は、プレイングに色々やってみたいことなど書いてくだされば♪
では、皆様の参加を心よりお待ち申しております。


■起・誰が行くのかと言うと

「…あら、高遠さん今回も行ってくれるの?」
こくり、と頷くのはフリーのカメラマンである高遠・紗弓。
長い黒髪と、黒いシャツを着ている姿は編集部では一種浮いている…と言うより
カメラマンだといわれても信じられないかもしれない。
「ええ、面白そうですし合成ナシなら良いですもんね♪」
「そーよねっ、でそちらの子も一緒に行くと」
「はい、行ってみたいという物ですから」
麗香の言葉に頭を下げるのは榊・遠夜。
無愛想とは違う凍りついたような表情でこちらを真っ直ぐに見ている。
にこり、と麗香が微笑むと少しだけ表情を柔らがさせた。
「それから岬・鏡花さんね?情報収集をさせて欲しいと言う事で伺っているけれど?」
「はい、このような怪物が現れるのなら是非調査をさせて欲しいと思いまして」
にっこりと鏡花は笑う。
身体にフィットした黒のライダースーツは胸元が大きく開けられており
小麦色の健康そうな肌と豊かな胸がのぞいている。
外見とは違う気さくさが何とも良くて、麗香は口元の笑みを深くした。
「で、最後の一名が影崎・雅さん」
長身の男がにっと笑いながら皆の方へ向かって会釈した。
全体のイメージが長身なのに、何処か和ませるようなイメージを持っている。
「俺としちゃあ、暴れる人魚が面白そうだからってそれだけなんだけどな?」
「あ、それから影崎さん、例の台詞は高遠さんの前で言っちゃ駄目よ?」
「へ? ああ、写真なんかどーでもいいやって奴?」
ぴきっ、と紗弓の表情が引き攣った。
麗香が止める台詞を言おうとしたその瞬間、紗弓が雅をポラロイドカメラで映した。
一枚の写真が浮かび上がる。
「…なんだよ、これ。俺の顔写って無いじゃん」
「その様に言われたのでお望み通り姿を歪ませました、どうですか?
これでもどーでも良いって言います?」
「…はあ、こりゃ…妙なこともあるもんだ」
「この子はねえ、妙な物を写せたりするから注意が必要よ? 色々な霊やモノが写る場合も
あるんだから…その人に問題がなくっても。ま、とにかく仲良く行ってきてね♪喧嘩はご法度よ?」

麗香は楽しげにそう言うと人魚が現れる場所を纏めたファイル等を
人数分渡して、デスクワークへと戻った。


■承・一体本当は

「…なあ、そーいや人魚って女なのか?」
「私は魚人のイメージがあるのだけれど…違うの?」
「……ファイルによると女性の人魚のようです、それも結構目に毒な
身体の持ち主みたいで」
「…遠夜もう読んでたのか?早いなあ……」

海岸。
指定されたファイルの場所に思い思いの方法で移動した4人は
人魚が出没すると言う海岸にて4名はただ打ち寄せる波を見ていた。
暴れるという噂の人魚はここから出てくるのだ。
…しかも、ファイルによるとどういうわけか物凄い大声を張り上げて出てくるという。
見た人物からは「日本語の様な気がするが早口で聞き取れない」と言う声や
「声が低すぎて聞き取れない」と言う二つの意見が上がっていた。

「…紗弓さん、カメラは?」
荷物が妙に少ない紗弓を遠夜は訝しげに見た。
人魚を撮る!というのなら、それ相応の荷物があるはずだ。
なのに、それが無い。
紗弓は「なんだ」と言うような顔をすると少々古いタイプのカメラを取り出した。
「コレだけど?」
「暗闇で撮れるの?それ……」
「フラッシュは強力だから安心の筈……」
「さて、では私は愛車に乗って近辺の情報収集してきますねっ。
何かまた違うことが解るかもしれないし……」
「そうだな、俺は…ここで待ってるか。いつ出てくるか解らないんだろ?」
「ええ、このファイルには時間は書いてませんね」
「じゃあ、また暗くなったらここに戻ってきますので。高遠さん、榊クン、影崎さん
こちらの方は宜しくお願いしますね♪」
「任せとけって! …人魚、美人だといいが♪おっと、下心は別に無いからな? 
見るならやっぱ、美人が良いだろ? なっ、アンタだってそう思うよなあ?」
雅は近くにいる遠夜の肩に腕を乗せるとそう、呟いた。
瞬間的に遠夜の顔が赤くなる。
「…ぼ、僕は別にそういう事にはッ」
「まーた、またぁ♪」
「ま、美人かどうかはさて置き私たちは、ここらを通りかかる人に話を聞くことにしよう。
…多分判で押したような返答しか返って来ないだろうが…いざとなれば名刺もあるし」
「成る程、高遠はカメラマンだけに名刺持ちだったなっ、んじゃ後でな岬」
「はい、では……」

愛車にまたがり、鏡花はエンジンを強くふかした。
長い髪が見事に風にたなびくのを3人は見送りながらゆっくりと海辺を歩いた。


■転・情報収集及び人魚の悲鳴

「あの……私、ここらに出ると言う人魚について調べているんですが……」
鏡花は、こう言いながら情報収集を始めた。
気さくな雰囲気をもつ鏡花は、すぐに付近の人たちの厚意を得て色々な話を
相槌を打ちつつ聞き……少しだけ、首をかしげた。

ファイルには無く得られた情報は人魚の出現した期間やその他諸々なのだが……。
出現については梅雨入りと同時に出現したように思う、という意見が殆どだったので
これは信用していい情報だろう……。

だが、これはなんなのだろう?
興味本位で思わずとってみたのだけれど、と言う人魚の声は正しく人間のそれで。
しかも…何と言うか……。

(…身につまされるなあ……)

そのテープに入っている声を聞きながら鏡花は溜息を、ついた。
…じきに夕刻。
そろそろ、海岸の方へ戻らないとと思いながら鏡花は住人へお礼を言うと愛車を
海岸へと走らせた。

その頃、海岸の方では……。
3人は、ただぼんやりと人魚の出現を待っていた。
と、言うのも「暴れる人魚」の噂の所為なのか人っ子一人海岸には訪れないからだ。
余程凶暴な人魚だったのだろうか…と遠夜がぼそりと呟くと雅や紗弓は
いいや、違うだろうと首を横にふった。

「つーより誰もそういうのに巻き込まれたくないだろ。
自分に関係ないところで暴れてる分には関係ないわけだし」
「私もそう思うな…まあ最初はどうにかしようと付近の人たちは何かやっていたに
違いないだろうけど」

ゆらゆらと波が、揺れる。
薄い夕闇の中でゆっくり、ゆっくりと。
何かが泳いでるようにゆらりゆらりと消えては現れていき……、紗弓は瞬間的にカメラを構えた。
かなり強力なフラッシュがライトの様に光る。

「え?人魚、もう出てきた?」
「…って言うか、あの姿は……人魚以外には…見えないが…なんちゅーか、その…」

遠夜と雅は唖然としつつ、その姿を見る。
長いウェーブがかった金の髪。
上半身は人の形の美しい尾びれをもつ、それは、まるで御伽噺に出てきた人魚姫のようだった。
が、見惚れる間も話し掛ける間もなく、人魚は叫んだ。

「やってられっか―――!!」と。


■結・どうなったかと言いますと

「は、はい?」
叫び声に目を丸めた3人の元に鏡花が漸く帰ってきた。
愛車を乗り捨て3人の元へと走る。
「あ、出てきちゃってたんですね…人魚」
「まあ、そうなんだが…岬、アレは一体なんなんだ?調べてきたんなら解るだろッ?」
「ええっとですね。ストレスと言うか…何と言いますか…」
「ストレスなら話を聞いてこよう、行くぞ遠夜!」
「う、うんっ」
「おい、ちょっと待て二人とも!」

遠夜と紗弓はダッシュで人魚の近くへと寄っていった。
少々と言うより、かなり怒っているようだし暴れたりないようでもあるから
怖くはあるのだが……その後を追うように鏡花と雅が追ってくる。

近くで見るとより一層人魚は人魚らしく見えた。
人魚に対して「らしい」と言うのもどうだろうかと面々は思うが
本当にそうとしか思えないのだ。

海から出てきたのに綺麗に波打つ金の髪に、蒼い海をそのまま写し取ったような瞳。
下半身さえ魚でなければ美人の女性として通るであろう程に。
だが、今はこんなことを話している場合ではない。
とりあえず怒っている理由を聞かなければ。
紗弓は少々、ぶっきらぼうになりがちな口調を改め、人魚に問い掛けた。

「あ、あのう…何をそんなに怒っているんでしょう?」
「だから!もうやってらんないのよっ、折角遊びに出てきてもこの梅雨特有のじめじめした
天候だし、どーして海や海の中にゴミを捨ててく人が多いのよ!
しかも、そいつら殴ろうとしたら叫んで逃げるのよ?ねえ、これってどーなのよッ」
「ど、どうと言われても…ねえ?」
「あ、ああ。つうか、そんな理由でこんな美人の人魚が怒ってるとは
想像もしなかったぜ…マジな話」
「けれど、やはり暴れるのにも理由があるんですね…戦わなくちゃいけないかと
思っていたので…」
鏡花はそう言うと人魚へ笑いかけ問い掛ける。
「つまり、海が綺麗になれば問題ないんですね?」
「ええ、そうね。後は時折、こうやって出てくるわけだけど叫んだりしないで
一緒に遊んでくれる人が居れば」
「ああ、ならそれ俺が立候補してやるよ、美人な人魚の知り合いが
出来るなんてそう、ざらにないもんな♪」
「あら、ハンサムなお兄さんが友達になってくれるのなら私も嬉しいわ♪
「じゃあ、話は決定ね♪高遠さん、人魚さんを写真に撮ってからでいいですから掃除を一緒にしましょう♪
榊クンもご一緒に…といっても付近の掃除しか出来ないんですけど」
「そうですね、僕らは海に潜れる格好はしてきてないわけですし」
「あら、そうだったわね…でも、いいわ、それでも」
「じゃあ、後でこちらの方に写真撮らせてあげて下さいね♪」
「ええ」

そうして、人魚、いや「暴れる人魚」は紗弓へ写真を撮らせて、のちに。
雅と色々な話をした。
今あるモノや決して人魚が見れることなどない海より外の世界の話を。
鏡花や遠夜、紗弓たちは海付近の掃除で大変そうだったけれど。

こうして、「人魚」の話は幕を閉じた。
夏、この海岸付近の白浜は不思議なことに今も綺麗なままだという。





-End-


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0187 / 高遠・紗弓 / 女 / 19 / カメラマン】
【0642 / 榊・遠夜 / 男 / 16 / 高校生(陰陽師)】
【0843 / 影崎・雅 / 男 / 27 / トラブル清掃業+時々住職】
【0852 / 岬・鏡花 / 女 / 22 / 特殊機関員】
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■         ライター通信          ■
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初めまして!ライターの秋月と申します。
今回はこちらの依頼に参加してくださり有難うございました♪
御伽噺バージョンの筈でしたが皆様のプレイングにより
このような結果になりました。
高遠さん以外をのぞいて皆様初参加でしたけれど
楽しんでいただけたのなら幸いです。(^^)
岬さん、初めまして。興味深いプレイングありがとうございました!
戦闘にも行かせてみたかったくらい楽しいプレイングでした。
影崎さんも、初めての参加でしたがカッコいいお兄さんと言うか……。
こちらのプレイングにも惚れ惚れとしました♪
榊さんは高遠さんとご一緒の参加と言うことでこのような形でしたが…
中々楽しんで書かせていただきました。
また、機会がありましたら次もどうか宜しくお願い致します。
高遠さんはカメラマン参加でしたのでこんな感じに。
皆様本当に、今回は有難うございました!
それでは、この辺で。
また何処かで会えることを願いつつ。