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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


声失いし星(スター)・<解決編>

☆ オープニング

 声を失ったスター、平賀真理。
彼女の所属する、プロダクションの社長、平川静穂から依頼があったのは朝。
 草間興信所へとやってきて、彼女の持ってきた依頼は。
『真理が声を失った理由、それを調べて欲しいのです』

 草間武彦は、シュライン・エマとプリンキア・アルフヘイムの二人に調査を依頼。
幽霊の司・幽屍も人知れず、彼女が声を失った原因の調査を開始した。

 そして、夕方。武彦の元へと電話が鳴る。
「原因が分かったわ。どうも昔歌手だったトモミと言う霊が、真理さんの霊感の強さに引かれたのが原因でしょう」
 プリンキアの残した精霊が持ってきた情報、昔ここでトモミという歌手が、上から落ちて着たステージバトンの下敷きになって死んだ事。
 そして、現在の真理の声と、トモミの声が似ていた事。
 全ての状況が、トモミが原因というのを結びつけるのに十分な状態を帯びている。
「今から、スタジオに行って、真理と霊を話し合わせてみる。でも二人じゃ不安だから、誰かに手伝って欲しい」
 そう言うと、電話が切れた。

☆ 呪いの意味

 司は、女子寮の上空で、先程の言葉を思い出す。
「この歌は、私のだ……ですか。 それに、あの方達の言う、トモミという方の死亡により販売中止になったCD……ですか」
 司の言う、あの方達というのは、もちろん今、真理の部屋に居るシュライン達の事である。
(不運にも、この世を去ったトモミさんが歌うはずだった歌を、同じプロダクションであり、声が似ている彼女が歌うことを知って恨み、そしてトモミは彼女を呪った……なるほど、つじつまが合いますね)
 司が状況を整理し、出た結論は一つ。それは……。
(……真理さんを締め付けている呪いは、トモミさんの呪い。 そしてあの場所で死んだ彼女の霊はあのスタジオに縛り付けられたままなのでしょうね。隣に居た真理さんに影響が及ばなかったのは、彼女の霊がスタジオに縛り付けられているから、手を出したくとも出せなかった、と)
 司は、気を引き締める。土地に根付いた霊は、基本的に執着心が強く、強力な力を持つことが多い。
 女子寮から、シュライン達が裏口から出ていく。彼女達もスタジオへと向かうようだ。
「……あの方達、二人だけで行く気ですか……危険すぎます!」
 司は思った。土着霊の恐ろしさ、彼女達は分かっているのだろうか、と。
 彼女達は、タクシーを捕まえ、走り去っていく。
「先行するしかありませんね……間に合えばいいのですが……!」
 と、司は全速力でスタジオへと向かった。

★ Studio・0〜土着霊の宿りし場所

「間に合い、ましたね……ふぅ……」
 司は、全速力でスタジオへと飛んだおかげで、シュライン達がスタジオへと到着する前に無事に到着した。
「……あの方達が来る前に、スタジオの霊を視察しておきますか……土着霊ならば、自分の居るべき所より外には出れないはずですし」
 と言って、司はトモミの死んだスタジオへと向かう。

 司がスタジオ近くへと差し掛かる。とても強い霊波動が、司に向けて襲い掛かる。
 突然放たれたその強い霊波動を受け、咄嗟に司は受けの体制を取る。
「くっ……強い……霊の力……!」
 司が真理に宿る呪いを除霊しようとした為に、司が来ることをトモミの霊は察知していたのだろう。
 強い力の霊波動を出すことで、彼女は威嚇しているようだ。
「……一度、引くしかないようですね……ここまで、恨みの力が強いとは、予想外です……」
 後ろに下がる司、そしてスタジオより離れていった。

★ Studio・1〜射す影

 司は来るであろう二人を待つ。
 先程の霊波動で僅かにダメージを受けたが、まだ怪我の内に入らない程度。
「こんな傷で、参っているようでは、除霊など出来ませんね……ん」
 司の耳に、足音が聞こえてくる。だんだんと近づく足音。そして……。
「貴方は誰! 姿を現しなさい!」
 刹那、無言の状況になる。そう、相手はシュラインと、真理の二人だ。
 司は、努めて優しい口調で話しかける。自分は敵で無いと。
「私は、貴方の敵ではありません。 私は除霊師、真理さんの声を取り戻す為に貴方達を影から見ていた者です。是非、協力をさせてもらえませんか?」
 しかし、和服の出で立ちの司に対して、シュラインは警戒を解かない。
「……真理さんは、ここで昔死んだ、トモミという霊に呪われています。先程、私が除霊をしました。部屋に呪符が落ちていませんでしたか?」
 トモミという名前。シュライン達はその名を聞くと態度が変わった。
「どうして……トモミという名前を知っているの?」
 現在、トモミと真理が関連があると知るのは、今の所武彦と、プリンキアしか居ないはずだ。しかし、その事をしっている。
 司はシュライン達が入る前の、彼女に起こった状態を全て包み隠さず話した。
 勿論真理は、そんな事が自分に起こったのか、と怖がるが、司はフォローを入れる。
「全て、貴方に宿った霊がもたらした事。貴方は操られていただけです。でも、もう大丈夫。 私が必ず、真理さんを助けて見せます。
 と、司は全てを話す。そして話し終わったところで、シュラインが言葉を紡ぐ。
「……分かったわ、一緒にスタジオに行きましょう。 今は一人でも、手伝ってくれる人が必要だしね」
 と言い、トモミの眠るスタジオへと歩を進めた。

★ Studio・2〜霊波動

 スタジオ。
 彼等が来ると共に、再び司達を強い力が吹きすさぶ。先程の力と全く同じだ
 風ではない、何かの力がその場に居る者達を包む。霊が作り出す、霊波動だろう。司ははっきりと感じた。
 強い力に、シュラインと真理は吹き飛ばされそうになる。咄嗟に司は二人の前に立ち塞がる。
「く、っ……皆、私の、後ろに下がって!」
 司は大声で叫んだ。
 霊波動は長時間続いた、が、次第にその力は弱まり始めていく。
「……今しかありません、早くスタジオへ入りましょう!」
 司たちは、急いでスタジオへとながれ込む。
 スタジオには、ステージ衣装を着た、寂しげな少女がぽつりと立っていた。

「トモミさん、ですか?」
 司がその少女に話しかける。その刹那。
 司に向けて、鋭い空気の刃が彼の頬を掠める。彼の頬に一筋の傷痕が出来る。
「落ち着いて……私達は、貴方を殺しに着たのではありません……っ!」
 二度、三度と、鋭い空気の刃が司の服を裂き。次々と空気の刃が真理を狙う。
「危ない、っ!!」
 シュラインが、真理を後ろにして抱きしめる。首から掛けた眼鏡が、空気の刃によって落ちる。
 次々と放たれる空気の刃には、二人ただ防御をするしかなかった。
『……や……め……て……』
 誰が、予測しただろうか。
『お願い……お願いだから、止めてっ!!』
 スタジオに、真理の声が大きく響いた。

★ Studio・3〜説得

 突如響いた、真理の声。
 その場に居る誰もが、動きを止める。声を失っているはずの真理が、声を出したのだから。
『トモミ先輩……先輩、もう、もう……止めて……私、私……先輩に憧れて、この世界に入ったのに……なのに……こんな先輩、私が大好きな先輩じゃ…無いよぉ……』
 声を出して、真理はその場に泣き崩れる。トモミの攻撃は止んでいた。
 シュラインがトモミの霊に対して語りかける。
「トモミさん……良く聞いて。 真理さんは、貴方との思い出を私に教えてくれる時、本当に嬉しそうだったわ。きっと貴方の事、大好きなのよ。そして、彼女は貴方が死んだと言う事を、信じたくなくて……貴方に言いたい事があって、ここに来ることを選んだのよ」
 トモミの霊は、黙ったままだった。続けて司が。
「……貴方は、この世の中に、心残りの事があるのでしょう? 心残りが拭えないから、このスタジオから離れられない。強く願えば願う程、更に離れられないのですから」
「トモミさん、何が心残りなの? ……私達に出来る事なら、実現に向けて努力するわよ?」
 二人の言葉。トモミは、静かに語りかける。
『……私ノ、歌……死ンダカラ……誰ニモ……キイテモラエナイ……ソンナノ、嫌……』
(……やっぱり、発売中止になったトモミさんのCDだったのね……)
『……アノ、歌……イッパイ……伝エタカッタ……ナノニ……死ンダカラッテ……』
 その後も、ぽろぽろとトモミから話される、発売中止になった歌についての思い。
 彼女が歌に込めた思い。それが、どれほど大きいものであったか、を示していた。
 そして、話し終わると共に。シュラインが口を開く。
「……伝えたかった事があるのね……貴方の、発売中止になった歌に。 でも……トモミさん、真理の声を奪えば、彼女だって、貴方と同じような事になってしまうのよ? 貴方は、それを望んだの?」
 トモミは答えない。いや、答えられなかった。
 彼女だって、真理が自分のことを慕っているのは気付いていた。そんな自分を慕ってくれた彼女を、自分自身が苦しめたのだと気付いて。
「……トモミさん。 貴方が望むなら、真理さんの歌と共に、貴方の歌を入れて貰えるように、静穂さんに頼んであげる。 貴方の声は、CDとなって、ずっと残るわ。真理さんと一緒に、ね」
『……ホン……トウニ?』
 トモミの言葉に、真理は頷く。
『絶対に……先輩の歌を、入れるようにお願いしますから……だって……先輩は、私の心の中でずっとずっと生きていますから……」
 真理が言うのを聞き。トモミは今までの声と違う声で。
『……分かった、わ……真理が言うのなら……信じる。 貴方……嘘はつけなかったものね。付いても、すぐ眼に出る……今は、それが出てないから……本気なのね』
 くすりと笑ったような気がする。そして……。
『……真理への、呪いは止める。 ……彼女の事、私は遠くから、ずっと見守っているから……。真理、私は、いつも貴方と一緒よ』
 そう言い残し、トモミの霊はその場より消え去った。

★ 終章・トモミの歌を……!

 次の日、シュライン達は真理と共に平川の元へ向かった。
 もちろん、目的はただ一つ。 昨夜のトモミとの霊との約束。
【トモミが出すはずだった歌を、真理の歌と共に出してもらう事】
 それだけだった。
 それで、彼女は浮かばれるのだから。それで、彼女は満足するのだから。

『私の先輩、トモミ先輩の歌のマスターテープ、持っているのでしょう? それを私の歌と共に、CDにして発売してほしいの……静穂社長、お願い……それで、どんな事になっても、私は構わないから! だから、だから……お願い」
 真理は、静穂に向けて真摯に訴える。彼女にとって、これを実現する事は、大好きだった先輩への、たった唯一の恩返しと信じて。
「私からもお願いするわ。トモミさんは、歌った歌に自分の気持ちを全て込めて歌った。だけどそれが、お蔵入りになったものだから、怒って真理さんの声を奪ったのよ。彼女は、聞いてほしかったのよ、歌を、大好きなファンの皆に。そして、、きっと……真理さんの為にも、ね」
「トモミさんは、心優しい方です。決して誰かを巻き込もうなんて考えていない……歌を出すことで、他の人が呪われたりすることは絶対にありません。私が保証します」
 真理、シュライン、司の言葉を聞き、最初は渋っていた静穂。
 暫く考えた後……。
『……分かったわ。 マスターテープも残っているから、彼女の声そのままをCDに入れるわ。トモミ……いや、柳・朋見の、最後のシングルとしてね」

 そして、後日。
 真理のCDに、トモミの歌がカップリングになって販売された。
 トモミの最後の曲が入った、そのCDの売れ行きは上々。初めて彼女達のシングルはトップになった。

 真理は二人と別れる際に、こう言った。
『本当に、ありがとうございました。 私……私の中に、トモミさんも一緒に居ると思って、これから頑張ります。 なんだか、そんな気がするんです……先輩の暖かさ、そして先輩の優しさが、私の中で息づいていると……』


 テレビの歌番組。
『では、続いての歌は、CDランキング1位になった、MARIAさんの【Become a dreamer】です、どうぞっ!』
 テレビの中で、生き生きとしていた真理の姿がそこにはあった。

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  ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【 0086 / シュライン・エマ / 女 /26歳 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト 】
【 0790 / 司・幽屍 / 男 / 50歳 / 幽霊 】


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■   ライター通信          ■
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どうも、今回で最後、新人ライターの燕です。
お待たせいたしました、声失いし星(スター)完結編をお届けいたします。
結果は、成功ですね、純粋に攻撃するだけ、という方が居たら失敗に終わらせる事も考えていましたが、
参加していただいた両名共に、その方向では無かったので私も助かりました。(汗)
主軸の題材は1つ、トリビュートソングでした。最近そういう歌が増えてきていると思いましたので、題材に、と。
真理の今後については、誰も居ない街のシナリオに登場する予定です。
(もしかしたら、草間興信所で再び出てくるかもしれませんが……)
尚、このシナリオに参加した方は、私の執筆するリプレイにおいては真理とすぐ連絡をつけることが出来る事とします。


今回、少し悲しめの話でしたが、皆様の目にはどう映りましたでしょうか?
ご感想等、聞かせてくれると幸いと思います。

では、またいつか、どこかでお逢いしましょう……。

>司様
 
 続けて参加していただき、どうもありがとうございます。
 今回、トモミの霊は、その土地に縛られている、土着霊でした。
 結果論的には、除霊したというより、相手が成仏してしまいましたが……。
 予測に関して、たまたまではなく、似た声の真理を、静穂がスカウトしたという理由があります。
 静穂には、MARIAとTOMOMIの二人でユニットを組ませるという構想がありましたので。
 (裏の設定になりますが (汗))
 今回は、シュライン様に姿を見せているので、心置きなくお姿を書かせていただきました(^^;