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小泣き坊主を探せ！
------＜オープニング＞--------------------------------------
何かが居る。
ドアの向こう。
草間興信所のドアの外に、何か人間で無い生き物が来ている。
ドアの向こうにいる物の怪の気配を、草間は感じていた。
やがて音も無しにドアがしずしずと開き、白い着物を着た少女が顔をのぞかせる。
おどおどした様子の少女だったが、彼女が人間でない事を草間は感じ取った。
｢何か相談したい事でもあるのかい？｣
気の弱い物の怪らしいので、草間は優しく問い掛けた。
｢ご、ごめんなさい。え、えーと、弟が迷子になっちゃいまして…
子供みたいな声で泣く男の子、見ませんでしたか？｣
泣きそうな顔で、妖怪の少女が言う。
｢子供みたいな声で泣く男の子なら、その辺に幾らでも転がってると思うが…｣
｢ああ、ごめんさい、ごめんなさい。｣
少女は目に涙を浮かべる。
彼女は近所の妖怪の里に住む妖怪で、『砂かけ婆見習い』の須那美だと言う。
『子泣き爺見習い』の弟と一緒に街まで遊びに来たのだが、電車で寝ているうちにはぐれてしまったとの事だ。
それで、どうして良いかわからず草間の所に駈け込んで来たと言うのだが…
｢弟はまだ小さいんで、妖力を上手くコントロール出来ないんです…｣
赤子のように泣きじゃくり、体を重い石の塊に変える力を持った妖怪『子泣き爺』の子供。
放っておくと、色々まずいかもしれないと草間は思った。
地面が突然陥没したり、建物の床が抜けたりする怪事件の臨時ニュースが流れる、午後の事だった。
(依頼内容)
・子泣き爺の子供が迷子になったようです。
・本人に悪気は無いのですが、妖力が暴走して騒ぎになってるようなので、誰か助けてあげて下さい。
１． 草間興信所
須那美の話を一通り聞き終えた草間武彦。
とりあえず、俺一人の手には負えないと思った。
｢ちょっと待っててね、須那美ちゃん。助けを呼ぶから。｣
彼は須那美に声をかけた後、助けを呼ぶべくめぼしい人間達に電話で連絡を取ってみる。
なかなか忙しい人間が多いようで、思うように助っ人が集まらずに草間はあせる。
そんな中、ようやく一人の人間に連絡が取れた。
武神・一樹。
骨董屋『櫻月堂』の店長を務める男だった。
｢なるほど、妙なニュースをやっていると思ったらそういう事だったか。
妖力の暴走が原因の事件なら、どうやら俺の出番らしいな。
任せておけ、とりあえず興信所まで行くから待ってろ！｣
骨董品の山に埋もれるように佇む武神は、草間からの電話を聞くなり『櫻月堂』を駆け出した。
他愛も無い事件と言えばそうなのだが、放っておくわけにもいくまい。
愛車のスーパーカブににエンジンをかけ、武神は草間興信所めがけて走り始めた。
一方、草間興信所の者達は臨時ニュースを眺めながら武神の到着を待っていた。
｢現場は東村山ね？｣
口を開いた女性はシュライン・エマ。
武神と同様、今回の騒動の解決を草間から依頼された者である。
彼女は草間や須那美達とニュースを見ていたのだが、どうもニュースを見る限り、地面の陥没やら何やらの現場は、東京都多摩地区の某都市という事に気づいたのである。
｢はい、東村山の北にある八国山っていう山には周辺の妖怪の長老をやってる化け猫様が居るんで、東京に行ったらまずは顔を出すように言われてたんです。
だから電車で東村山駅まで行ってたんですけれど、気づいたら私寝過ごしちゃいまして…｣
｢まあ、仕方ないわよ。｣
泣きそうな顔になる須那美をなぐさめながら、エマは武神を待つ。
３０分位後、ようやく武神がやってきた。
｢おお、エマか。よろしく頼むぞ。｣
見知った顔を見て、武神は声をかけた。
｢ええ、今回もよろしくね。一樹さん。｣
エマは武神に微笑み返した。
｢そちらの子が、砂かけ娘の須那美か。まあ、よろしく頼む。｣
次に武神は須那美の方を見て言った。
｢砂かけ娘じゃなくて、砂かけ婆です…｣
須那美は少し不機嫌そうだった。
ナイスジョークのつもりだったのだが、三十路男のセンスは若者には通じないか…
武神は少し寂しかった。
｢そ、そうか、すまんな。
ともかく、事情をもう少し聞きたい。
弟の名前をまずは教えてくれないか？｣
彼は骨董品屋から持ってきた日本茶を入れながら、須那美に問い掛けた。
｢はい、さっきエマさんにはお話したんですけども、もう一度話しますね。｣
須那美は日本茶をすすりながら、話し始めた。大分落ちついたようである。
｢弟の名前は炎石（えんせき）と言います。茶色っぽい地味な洋服を着ています。｣
須那美は炎石の特徴などについて武神に話した。
炎石は見た目には５歳児位の人間の男の子と区別が付かないそうだ。まあ、須那美も見た目には着物を着た幼い女の子にしか見えないわけだから、それもそうだろう。
｢で、問題は暴走する妖力よね。｣
エマが言う。
｢ごめんなさい…｣
須那美が泣きそうになる。
｢わ、ちょっと泣かないで。｣
エマがあわてて須那美をなだめた。
｢さっき須那美から聞いた話によるとだな…｣
代わって話し始めたのは草間だった。
草間は子泣き爺の妖力について語る。
子泣き爺は正確に言うと、泣く事で自分の体を重くするわけでなく、重力を操り、それで自分の体が重くなったように相手に感じさせる妖怪だと草間は言う。そして、暴走すると周りの生き物や物体にも重力操作の影響を与えるのだそうだ。
｢それは確かに厄介だな…｣
自分が重くなるだけでなく、周りの物体も重くするとは…
やはり、早急に解決しなくてはと武神は思った。
｢炎石君、東村山市の周辺にいるみたいよ。｣
エマが言う。
｢確かに、ニュースで話題になってるのは東村山のようだしな。｣
武神も頷く。
東村山は武神も何度か行った事があった。
東村山の北部に広がる狭山丘陵、特に八国山という霊峰には妖怪が多数住んでおり、近所の妖怪の長老である化け猫も住んでいたからだ。
｢まあ、大体の事情はわかった。
八国山の長老妖怪なら俺も知ってるからな。俺はそっち方面で調べてみる。
ともかく、現場の東村山まで行かなくちゃ話にならんな。
俺はスーパーカブで現場まで行くから、適当に落ち合おうぜ。｣
｢そうね、東村山だったら私は電車で行くわ。
須那美ちゃんも一緒に来る？｣
｢はい、お願いします！｣
ひとまず、須那美はエマと一緒に行くことにした。
｢行ってくるわね、武彦さん。｣
エマは草間に声をかけつつ、エマ達は草間興信所を後にする。
｢何か新しい情報が入ったら連絡する。｣
草間は出ていく四人を見送った。
２．東村山へ
エマ達と別れ、武神は東村山へと向かう。
東京都内とはいえ、都市部を遠く離れた場所である。燃費の良いスーパーカブでもガソリンを補給し直さなくてはならなかった。
｢妖の事は妖に聞くのが一番だよな。｣
しかも大体現場が特定出来てる上に、その現場近くには長老と呼ばれる妖怪が住んでいるのだ。普通に考えればすぐに解決しそうな気もするのだが…
｢あの化け猫長老、大丈夫なんだろうな、ほんとに…｣
武神は少し不安だった。
ともかくスーパーカブを飛ばして東村山市内に入った武神は、さらに市内北部、長老が住む八国山へと向かった。
景色はどんどん寂れていく。
中心部は一応東京らしくも見える東村山だったが、ひとたび駅前を離れれば正体を現した。
少なくなる民家。
広がる畑。
八国山の周辺は、正に妖怪の長老が住むにふさわしい景色だった。
｢東京見物で、まず東村山とわな。｣
武神は思わず苦笑しながらスーパーカブを降りた。
もう、バイクでは入れない雑木林だったからだ。
事件が解決したら、一般的な東京見物を二人にさせてやりたいと彼は思った。
雑木林をくぐり、彼は長老妖怪の所まで行く。
｢おい、化け猫よ、居るか？｣
長老の住処まで行った彼は、大声で呼んだ。
途端にざわざわとした妖気を武神は感じる。
｢わしの住処を荒らすのは誰にゃ？｣
雑木林の陰から、人間並みの体をした、でっぷりと太った猫が姿を現した。
長老の化け猫だ。
｢俺だ、武神だよ、藤羅(トーラ)。｣
武神は化け猫に答える。
｢…誰にゃったっけ？｣
武神の声を聞いた化け猫は、困ったように首を傾げる。
相変わらずボケてやがるな…
だから武神は心配だった。
以前、本気で戦いになったこともあった。
｢わしの真の名を知ってるみたいにゃし、
わしの親友のはずなんじゃろうけどにゃー…｣
考える化け猫、トーラ。
｢おお、思い出したにゃ。
お前は武神だにゃ！｣
｢だから、そう言ってるだろうが…｣
ともかく、今回は武神の事を思い出してくれたようである。
武神は事情を話して、この辺に炎石が来なかったかを尋ねてみた。
｢子泣き爺の子供かにゃ？
それならさっきから気配を感じるにゃ。
多分、この森の中におるにゃ。｣
トーラは髭を立てながら言った。
彼の髭は、森の中の出来事を全て知る事が出来ると武神は聞いた事があった。
だが、問題は出来事を知っても、トーラ自身が覚えていられるかは別問題と言う事だったが…
｢よし、早く場所を教えろ！｣
武神はトーラに詰め寄る。
｢あ、あんまりあわてるにゃ。｣
あっちの方にいるんだにゃ、と、トーラは髭を立てて武神に示した。
｢助かったぞ、長老。
今度は最高級のマタタビでも持ってくるからな！｣
そう言って、武神はトーラと別れて八国山の中を走った。
数分後。
｢今、何かあったかにゃ？｣
トーラは何事も無かったかのように森の奥に消えて行った。
３．霊峰八国山
八国山のふもと。
｢どうしろと言うんだ、俺に…｣
長老が子泣き爺の気配を感じたと言う場所までやってきた武神は、唖然としながらつぶやいた。
５歳児位の男の子が居た。
数十人。
幼稚園のピクニックだった。
八国山までやってきた炎石は幼稚園のピクニックに紛れこんでしまったようである。
｢うう、すいません…
どの子も同じに見えちゃって、よその子がどの子かと聞かれても…｣
幼稚園の保母さんは、謝る。
あんたそれでも保母かと武神は怒ってみたが、わからないものはわからなかった。
対象が誰だかわからなくては、能力封じも使いようがない。
仕方ない、ひとまず須那美を迎えに行くか。
彼女なら、どの子供が炎石だかわかるはずだ。
武神はひとまず草間に連絡して現在の状況を伝え、須那美と合流する手はずを整えるように頼んだ。
｢わかった。須那美はエマともう一人の助っ人、レイベルっていう女と一緒に東村山駅の周辺を探ってる。すぐ、八国山に向かうように伝える。｣
なら、俺はスーパーカブで須那美を迎えに行くぜと武神は言って電話を切った。
駅から八国山へ向かう道は、途中からほぼ一本道である。カブで走れば途中で合流出来ると武神は思った。
正解である。
武神はエマ達三人と会う事が出来た。
｢あなたが武神か。
私はストリートドクターのレイベルだ。よろしく頼む。｣
レイベルと名乗る女性はぶっきらぼうに武神に言った。
｢ああ、こちらこそな。レイベル。
エマ、須那美ちゃんを借りてくぜ！｣
武神は急ブレーキをかけながら言う。
｢見た所、あなたも準備不足のようだな。
一体子泣き爺の重さをどうやって支えるつもりだ？
ロープでも辺りに縛り付けておかないと支え切れないぞ。
もっとも、私の用意してきた登山用具一式は燃えてしまったがな…｣
レイベルはとにかくぶっきらぼうに武神に言う。こういうしゃべり方しか出来ない女のようだ。
｢う、うむ、そういう準備は確かに考えてなかったな。｣
普通は考えんだろうと武神は思った。
｢武神さん、炎石君が見つかったって？｣
｢ああ、多分間違い無い。八国山に居る。
俺は須那美ちゃんを連れて先に行くから、エマ達も急いでくれ！｣
武神はそう言って荷台に須那美を座らせると、問答無用で八国山へと走った。
｢ふむ、急ぐとするか。｣
｢賛成ね。｣
レイベルとエマ、二人の女性の声を遠くに聞きながら武神は走った。
｢あ、あの、原動機付き自転車って、二人乗りしちゃいけないんじゃないですか？｣
８０kの速度で疾走するスーパーカブで、武神にしがみつきながら須那美が言った。
｢いちいち気にするな。｣
武神は全速力で走った。
すぐに元の場所、幼稚園児達がピクニックをしていた場所まで戻る事が出来た武神だったのだが…
｢ち、遅かったか！｣
｢うう、ごめんなさい…｣
苦々しげに言う武神と、涙ぐむ須那美。
不自然な光景だった。
根元から幹の下側３分の１位まで地面にめり込んで傾く木々。
そうした木々の合間に見える子供達の姿。泣いてる子供も多い。
ぱっと見渡した感じ、炎石はいないようだと須那美は言った。
｢炎石、泣いちゃったみたいですね…｣
おそらく、周りの雑木林の木々を重くしてしまったのであろう。
そしてバランスを崩した木々が倒れ…
｢とにかく、怪我した子供がいないか調べましょう！｣
意外にも先に行動し始めたのは須那美だった。
とりあえず炎石の行方を追うのは後回しである。
武神と須那美は木々を片付けて回った。
｢あまり、お前が気にする必要は無いんだぞ。
炎石に悪気があるわけではない。ましてやお前が心配しすぎる事では無いぞ。｣
責任を感じている様子の須那美を気遣う武神だった。
その頃、エマとレイベルも現場にたどりつく。
｢地面が急に柔らかくなったのか、木が急に重くなったのか、どっちかな…｣
地面にめり込んだ木々を見ながら、引きつった笑いを浮かべるエマ。
｢木が急に重くなったに決まってるだろう。｣
問題のいたずら坊主はどこにいるかと、レイベルは辺りを見渡す。
｢おう、やっと来たか。｣
エマ達を見つけた武神が、二人に近づいてきた。
｢肝心の炎石君は、どうも泣くだけ泣いて奥の雑木林に行っちまったみたいなんだ。
追っかけたいんだが、これをほっとくわけにもいかんからなぁ。｣
｢うう、すいません…｣
須那美はあたふたとしている。
｢悪意の無い存在同士が互いに危険な状態に置かれてしまったがゆえの悲劇か。誰にも罪は無い。
…仕方ないな。
あなた達は炎石君を探しに行くがいい。
登山用具も全部燃えてしまった事だし、私が子供達の面倒を見ておく。私はこれでも医者のはしくれだしな。｣
レイベルはそう言うと、さっさと木々を撤去し始めた。
｢すまん、恩にきる。｣
武神の言葉に、
｢別にあなたの為にやるわけではない。｣
レイベルは首を振った。
エマ達は雑木林の奥へと移動を始める。
｢ただの変人じゃなかったのね。｣
微かに笑顔を見せるエマに、
｢さっさと行くがいい。｣
レイベルは憮然と言った.。
そして、エマ達は雑木林の奥に入る。
｢エマ、何か聞こえるか？｣
雑木林を見渡し、武神がエマに問いかける。
｢今の所は泣き声らしきものは聞こえないわね。
手分けして、呼びかけてみない？
私は須那美ちゃんの声真似で探してみるから。｣
エマの返事に武神は頷き、須那美を連れてエマと別れた.。
炎石に呼びかけながら雑木林を歩く武神。
だが、炎石の姿は見つからなかった。
あせりをつのらせる武神。
一方、エマも炎石の声真似をして雑木林を歩いていた。
ある時、
｢おねえちゃん？｣
小さな男の子の声が、エマの耳に入る。
｢炎石君、居るの？｣
エマはあわてて辺りを見渡し、炎石の姿を探す。
｢おねえちゃんじゃ、ないでちゅね…｣
男の子が現れた。
声はお姉ちゃんの声だけど、顔は全然違う人。
男の子は不思議そうな顔をして、エマを眺める。
炎石に間違い無い。
だが、まずい。変な対応をすると泣かれてしまいそうだ。
｢声真似が出来る妖怪の人でちゅか？｣
きょとんとしながら、炎石はエマを見ている。
もしかすると、私の事を妖怪と思って安心しているのかも？
なら、話を合わせよう。
｢そ、そうよ。私はオウムの精。
須那美ちゃんに頼まれてね、炎石君の事探してたの。
お姉ちゃん、この近くに居るわよ。
炎石君に会ったら、寂しいだろうから食べさせてあげてってね、これもらってきたの。｣
オウムの精なんて妖怪、いるのかな？
エマはわからなかったが、ともかく持ってきた飴玉を炎石君に差出した。
炎石は喜んで飛びついた。
｢仮面ライダー竜鬼の声真似できまちゅか？｣
特撮ヒーローの声真似を炎石にせがまれながら、どうやら大丈夫そうだとエマは安堵のため息をついた。
しばらく雑木林を歩き、エマは武神達と再び合流した。
｢炎石！｣
須那美が叫び声をあげる。
彼女を見つけた炎石が、エマの元を離れて近づく。
感動の再会だな、と武神は口笛でも吹こうとしたが…
おい、ちょっと待て。
｢おねーちゃーん！｣
炎石は泣きながら姉に抱きつく。
ざわざわと揺れる木々。
地面にめり込みながら傾むいていく。
エマは体が重くなる感じがした。
『泣くな！』
エマと武神と須那美の声がはもった。
｢全く、しょうがないな。
悪いが、しばらく能力を封印させてもらうぞ。｣
武神は炎石の重力操作の影響をもろに受けたようで、腰まで土の地面に埋まりながら、炎石に手をかざした。
そして、木々のざわめきが収まり、静かになった。
炎石の泣き声だけが辺りに響いていた。
騒ぎを聞きつけてやってきたレイベルが
｢向こうの子供達は大丈夫だ。特にひどい怪我をしているものも居ない。｣
と言いながら、地面に埋もれた武神を拾い上げた。
｢だから言っただろう、私のように登山用具でも用意しておいたほうが良いと。｣
レイベルの言葉に、エマと武神は苦笑するしかなかった。
｢本当に、色々とありがとうございました。｣
一段落した後、須那美がエマ達に言った。
｢ありがとうでちゅ。｣
炎石もぺこりとおじぎをした。
｢まあ、気にするな。
それより、せっかく東京まで来たんだ。
少し東京見物でもしていくだろ？
案内してやるぞ。｣
武神は特に気にしてない様子で言った。
｢そうね、お金は経費ということで武彦さんにもらえるから大丈夫ね。｣
私も行くと、エマは言った。
｢登山用具を買うのに、また借金をしてしまったからな。
経費で遊ぶ金が出るのはありがたい。｣
レイベルも行くと言う。
｢はい、お願いします。
でも、森の木々も倒してしまいましたし、八国山の長老様にあいさつしてからにしますね。元々、東京に着たら長老様に顔を見せるつもりでしたし。｣
｢ああ、それがいいな。
俺も一緒に行ってやるよ。｣
須那美の言葉に武神が頷いた。
その後、一向は八国山の長老にあいさつに行く。
長老は、炎石と須那美の事を特に厳しく責めたりはしなかった。
｢わかりやすい所で、東京タワーから行くか。｣
長老の元を離れ、陽気に言う武神の言葉に誰も異論は無い。
｢草間の奴に感謝しなくてはな。｣
レイベルが真顔で言う。
｢重ね重ね、本当にありがとうございました！｣
須那美が再度おじぎをした。
はるか遠く。
一人、不吉な予感を感じる草間だった。
後日、武神は須那美と炎石を近所の妖怪の里まで送り届け、炎石の妖力の封印を解いた。
｢これからも精進しろよ。｣
須那美と炎石を励ます武神。
『はい！』
二人の幼い見習い妖怪は、元気に返事をした。
こういう平和な妖怪ばかりだと良いのだがなーと思う武神だった。
(完)
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【0086 ／ シュライン・エマ ／ 女 ／ ２６歳 ／ 翻訳家＆幽霊作家＋時々草間興信所でバイト】
【0173 ／ 武神・一樹 ／ 男 ／ ３０歳 ／ 骨董屋『櫻月堂』店長】
【0606 ／ レイベル・ラブ ／ 女 ／ ３９５歳 ／ ストリートドクター】
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■ ライター通信 ■
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初めまして、ＭＴＳと申します。
今回はご参加ありがとうございました。
スーパーカブに乗った３０男って言うと、
どうしても松田優作の『探偵物語』を思い出してしまうライターなんですが、
今回の話はいかかでしたでしょうか？
また、機会があったらよろしくお願いします。
今回はおつかれさまでした。
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