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小泣き坊主を探せ!
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何かが居る。
ドアの向こう。
草間興信所のドアの外に、何か人間で無い生き物が来ている。
ドアの向こうにいる物の怪の気配を、草間は感じていた。
やがて音も無しにドアがしずしずと開き、白い着物を着た少女が顔をのぞかせる。
おどおどした様子の少女だったが、彼女が人間でない事を草間は感じ取った。
「何か相談したい事でもあるのかい?」
気の弱い物の怪らしいので、草間は優しく問い掛けた。
「ご、ごめんなさい。え、えーと、弟が迷子になっちゃいまして…
子供みたいな声で泣く男の子、見ませんでしたか?」
泣きそうな顔で、妖怪の少女が言う。
「子供みたいな声で泣く男の子なら、その辺に幾らでも転がってると思うが…」
「ああ、ごめんさい、ごめんなさい。」
少女は目に涙を浮かべる。
彼女は近所の妖怪の里に住む妖怪で、『砂かけ婆見習い』の須那美だと言う。
『子泣き爺見習い』の弟と一緒に街まで遊びに来たのだが、電車で寝ているうちにはぐれてしまったとの事だ。
それで、どうして良いかわからず草間の所に駈け込んで来たと言うのだが…
「弟はまだ小さいんで、妖力を上手くコントロール出来ないんです…」
赤子のように泣きじゃくり、体を重い石の塊に変える力を持った妖怪『子泣き爺』の子供。
放っておくと、色々まずいかもしれないと草間は思った。
地面が突然陥没したり、建物の床が抜けたりする怪事件の臨時ニュースが流れる、午後の事だった。
(依頼内容)
・子泣き爺の子供が迷子になったようです。
・本人に悪気は無いのですが、妖力が暴走して騒ぎになってるようなので、誰か助けてあげて下さい。
1.都内某所
プリベイト式の携帯電話は、レイベル・ラブのような借金女王にはありがたい物だった。
自分から電話をかけた分だけ、通話料がカードから引かれるわけだが、契約するのに身分証明がいらず、月々の契約料もいらない。
こちらから電話をかけさえしなければ、半永久的に金のかからない受信専用電話として役に立つのだ。
そんなレイベルの携帯だったが、彼女の番号を知るものは数少ない。
かかってくるのは仕事の電話だけである。
そして、今日もレイベルの携帯が鳴る。
電話の主は草間武彦だった。
「…おい、もうちょっとわかるように話さんか、草間よ。」
草間からの電話を受けたレイベル・ラブは、首を傾げた。
『子泣き爺の子供』がどうとかこうとか言っている。
おい、『子泣き爺の子供』というのは子供なのか爺なのかどっちなのだ?
日本に住んで長いとはいえ、未だに日本語は良くわからん。
文法的に考えると、先に出ている『爺』が後から出てきた『子供』という名詞を修飾している気がするのだが…
レイベルはしばらく草間を問い詰める。
「なるほど、子泣き爺になるべく修行をする妖怪の子供が、東京見物に来たら迷子になってしまって困っているとそういう事なのだな?」
ようやくレイベルは状況を理解した。
「ああ、そういう事だ。今、エマって奴が須那美ちゃんを連れて現場の東村山まで向かってる。場所は適当に指示するから合流してくれないか?」
特に仕事を断わる理由も無い。
レイベルは草間の依頼を受け、東村山まで行く事にした。
「それで、草間よ。
その子泣き爺の子供とやらの名前はなんと言うんだ?」
「炎の石と書いて、炎石(えんせき)だそうだ。」
迷子の名前を聞くレイベルに、草間は答えた。
しかし建物の床を抜けさせるとは、とんでもない重量だな。
草間からの電話を切り、レイベルは考える。
何か対策をせねば、子供を抱えた時にマントル層まで沈んでしまうぞ…
色々と思案しながら、レイベルは東村山へと向かった。
2.東村山駅周辺
「駅前は賑やかなようだな。」
東村山についたレイベルは、一人つぶやいた。
東京都多摩地区にある、東村山。
東京らしからぬ寂れた都市だと聞いていたが、駅の周辺はなかなかに賑やかだった。
レイベルは、ひとまず駅前の一番大きなデパートへと向かう。
丁度、臨時ニュースで話題になっている床が抜けたデパートなので、情報を集めに行くのついでに装備を整えようと思ったからだ。
やはり、子泣き爺の体重を支えるには周囲の地形や建物の力を総動員する必要があるとレイベルは結論付けていた。
具体的には周囲の木やら建物にロープを張ってバランスを取ってみようとレイベルは思った。
その為に使える道具で、手軽に手に入りそうなものという事で思いついたのが登山用具である。山にロープを張って体を支える為に使う道具なら、今回のような状況でも使えるはず。
レイベルは駅前のデパートへと入る。
床が抜けたのは、三階のおもちゃ売り場のフロアだった。
その辺をうろうろしていた男の子が泣き出したかと思ったら、おもちゃ売り場全体の床が崩れ出したという。
幸い、一気に崩れたわけでもなかったので、下の階の人々に被害は無かったそうだ。
売り場全体とは一体どういう重量なんだ…
レイベルは呆れながら、ひとまず登山用具を売っているフロアに行った。
ハーケンやらザイルやら、ともかく借金を増やしながら装備を買い漁るレイベル。
そんな時、彼女の携帯が再び鳴った。
草間からの連絡だ。
「レイベル、エマと須那美が東村山駅前のデパートに向かってるらしいから、合流してくれないか?」
「それなら丁度良いな。
私は今、そのデパートの中にいる。
適当に落ち合うとしよう。」
一通り準備も出来たし、そろそろ依頼主に会うべきだろうとレイベルは思った。
おそらく床抜け現場の様子を見に来るだろうから、その辺りで待つ事にするかと、レイベルはおもちゃ売り場跡地へ向かった。
しばらく待っていると、それらしき二人連れが現れる。
着物を着た幼い女の子を連れた女性だ。
「祭りでもないのに、こんな都会で着物を着て歩いている娘か。
あなたが須那美さんだな?」
レイベルは二人連れに声をかける。
「ふん、ここで待っていれば来ると思ったぞ。」
予想通り、二人はシュライン・エマと須那美だった。
「ところでお前達、何か準備はしているのか?
建物の床を抜けさせるような重量だ。支えるのはただ事では無い。
そのまま抱えでもしたら、マントル層まで沈んでしまうぞ。」
レイベルはエマと須那美に言う。
「周囲の構造物や地面の力を総動員する必要がある。
こうした登山用具でロープを張ってだな…」
デパートで仕入れたハーケンやらザイルやらといった登山用具を2人に見せるレイベル。
「そ、そこまでしなくても…」
須那美はレイベルの様子を見て呆れる。
「とりあえず泣かせないように気を付けてれば良いと思うんだけど…
まあ、備えあれば憂い無しよね。」
あまり話の通じる相手でもないと思い、エマはあまりつっこまなかった。
「ともかく行くぞ。のんびりしてる暇も無いだろう。」
というレイベルの言葉には、エマも須那美も賛成だった。
ニュースで見た情報などを元に、レイベル達は聞きこみをしながら歩いて回る。
「それにしても建物の床を抜けさせるとは、すごいな」
レイベルは床の抜けたおもちゃ売り場の事を思う。
「すいません、子泣き爺は泣くことで重力を操作するんで、暴走すると周りの物まで重くしちゃうんです…」
須那美がレイベルに答えた。
「しかし、子泣き爺とは泣く事によって体重を重くすると言うが、実際の所どれくらい重くなるんだ?」
「それは私も興味あるな。」
陥没した道路にめり込んだトラックを見て、レイベルとエマが須那美に尋ねた。
「は、はい。
あんまり正確に体重計を使って測ったりはしてないんですけども、最高で100倍位になると思います。」
相変わらずおどおどと、須那美は答えた。
「なるほど。本人だけならともかく、周りの施設の重量を100倍にしたりしたら、確かに建物の床も抜けるな…」
やはり登山用具の出番かとレイベルは思った。
「それはそうとレイベルさん、そんな荷物抱えてて重くないんですか?」
レイベルの抱える荷物を見ながら須那美が言った。
「何、私は力だけなら怪獣並みなのだよ。あまり役には立たんがね。」
そう言うとレイベルは地面にめり込むトラックに近づき、持ち上げてみせた。
確かに怪獣並みだ…
エマと須那美は目を見張る。
だが、変に動かしたせいで、トラックのガソリンがエンジンに引火してしまったらしい。
周囲に響く轟音。
爆発炎上するトラック。
爆心地に居るレイベル。
「ちょ、大丈夫なの?」
さすがにあわてるエマだったが、どうしようもない。
「し、仕方ないわね。これ以上犠牲者が出ないうちに早く炎石君を探しに行きましょう。」
そう言って須那美を連れて歩き始めた。
「わ、私の弟が原因なんですか?」
須那美はとまどうが、ひとまずエマについていった。
3.霊峰八国山
そうして騒ぎになってる場所を調査するうちに、エマは1つの事に気づいた。
「炎石君、どこかに向かってるのかしら?
なんだか、目的地にまっすぐ移動してる感じね。」
「確かにな。どうも一直線に進んでるようだな。」
レイベルがエマに相槌を打つ。
「レ、レイベルさん、平気なんですか?」
いつの間にかやってきたレイベルに須那美が驚く。
「うむ、気にするな。私は不死身だ。あまり役には立たんがな。登山用具も燃えてしまったし。」
残念そうな様子を見せるレイベル。
せっかく、借金を増やして買ったのに…
なるほど、確かにあんまり役には立たなそうだと須那美とエマは思った。
「大丈夫ですよ。例えば、ほら。」
須那美がそう言って手をかざすと、小さな砂嵐が起こった。
「私も砂かけ婆の見習いですから、こうやって砂嵐起こせますけど、役に立ちませんし…」
そよそよと舞う砂嵐の陰で須那美が言った。
「な、なるほど。
まあ、それはそうと、炎石君の心当たりでもあったら教えてくれないかね?
トラックの弁償代を請求されないうちに早くこの場を離れよう。」
レイベルが須那美に言った。
「もしかすると、八国山へ向かってるのかもしれません。
元々行く予定でしたし、霊力の強い山ですから、弟はそこに引き寄せられているのかも…」
それはあるかも。
八国山に目星をつけて向かってみるレイベル達だったが、そんな時にエマの携帯電話に連絡が入った。草間からだった。
「エマ、レイベルもそこにいるか?
武神が八国山のふもとで炎石君らしい子供を見つけたんだが、ピクニックに来ていたどこぞの幼稚園児達と一緒になったようで、どの子が炎石君だかわからなくて困っているらしい。
バイクで須那美ちゃんを迎えに行くそうだから、合流してくれ!」
ほほう、武神とやらが上手くやってるようである。
「行きましょう!」
エマはレイベルと須那美に言いながら、八国山へと向かう。
途中、スーパーカブで疾走してくる武神と会った。
「武神さん、炎石君が見つかったって?」
「ああ、多分間違い無い。八国山に居る。
俺は須那美ちゃんを連れて先に行くから、エマ達も急いでくれ!」
武神はそう言って荷台に須那美を座らせると、先に行ってしまった。
「ふむ、急ぐとするか。」
「賛成ね。」
レイベルとエマも駆け出した。
ともかく八国山へと走る二人。
駅前だけは賑やかな東村山も、駅から離れるにつれてどんどん寂れていく。
八国山のふもとに広がる雑木林へと到着した二人は、唖然とした。
「ここは、本当に東京なのか?」
「地図によると、八国山の手前までは一応東京らしいわよ…
まあ、ちょっと聞き耳立ててみるわね。」
のどかすぎる景色を眺めるレイベルの問いに、エマは答えた。
「ほう、そんな事が出来るのか。私と違って実用的だな。」
レイベルはエマに任せてみる事にした。
しばしの沈黙。
聞き耳を立てるエマの耳には、小さい子供の泣き声が複数聞こえてきた。
「確かに武神さんの言ってるみたいに、子供が大勢集まってるみたいね。
行きましょう。」
「そうだな。」
レイベルとエマは雑木林を抜けて進む。
「おい、あそこじゃないのか?」
雑木林の一角、不自然に木々が倒れている区域を見ながらレイベルが言った。
「どうも、そうみたいね。」
エマの耳が捉えたのもその辺りだった。
炎石の妖力が暴走した結果だろうか?
本人に悪気が無いとはいえ、死者でも出たらシャレじゃすまないのだが…
エマとレイベルは現場に急ぐ。
近づいてみると、その不自然さがはっきりとしてくる。
根元から幹の下側3分の1位まで地面にめり込んで傾く木々と、そうした木々の合間に見える子供達の姿。泣いてる子供も多い。
武神と須那美が、木の下敷きになった子供がいないか調べているようだった。
「地面が急に柔らかくなったのか、木が急に重くなったのか、どっちかな…」
地面にめり込んだ木々を見ながら、引きつった笑いを浮かべるエマ。
「木が急に重くなったに決まってるだろう。」
問題のいたずら坊主はどこにいるかと、レイベルは辺りを見渡す。
「おう、やっと来たか。」
レイベル達を見つけた武神が、二人に近づいてきた。
「肝心の炎石君は、どうも泣くだけ泣いて奥の雑木林に行っちまったみたいなんだ。
追っかけたいんだが、これをほっとくわけにもいかんからなぁ。」
もしも木の下敷きになってしまった子供が居るなら、大急ぎで助けなくてはならない。
「うう、すいません…」
須那美はあたふたとしている。
「悪意の無い存在同士が互いに危険な状態に置かれてしまったがゆえの悲劇か。誰にも罪は無い。
…仕方ないな。
あなた達は炎石君を探しに行くがいい。
登山用具も全部燃えてしまった事だし、私が子供達の面倒を見ておく。私はこれでも医者のはしくれだしな。」
レイベルはそう言うと、さっさと木々を撤去し始めた。
「すまん、恩にきる。」
武神の言葉に、
「別にあなたの為にやるわけではない。」
レイベルは首を振った。
エマ達は雑木林の奥へと移動を始める。
「ただの変人じゃなかったのね。」
微かに笑顔を見せるエマに、
「さっさと行くがいい。」
レイベルは憮然と言ってエマ達を見送った。
さて、私は私で仕事をするかな。
レイベルは倒れた木々を拾い上げて、その辺に投げ捨てて回る.。
どうやら直接下敷きになった子供はいないようだ。
「怪物だー」
木々を放り投げるレイベルの様子を見て、逃げ惑う子供達。
「ま、待て、私は医者だ!」
子供達を追いまわし、切り傷などを負った子供は手当てして回るレイベル。
しばらく、雑木林を駈け回った。
まったく…
エマ達は上手くやってるんだろうな?
子供達の相手をしながら、レイベルは思った。
その頃、エマと武神は雑木林の奥で炎石を探していた。
「エマ、何か聞こえるか?」
雑木林を見渡し、武神がエマに問いかける。
「今の所は泣き声らしきものは聞こえないわね。
手分けして、呼びかけてみない?
私は須那美ちゃんの声真似で探してみるから。」
声真似はエマの特技の一つである。
彼女の返事に武神は頷き、須那美を連れてエマと別れた.。
もう、炎石君は近くにいるはず。
もうちょっとだけがんばろうと、エマは須那美の声真似で炎石に呼びかけながら雑木林を歩く。
「おねえちゃん?」
小さな男の子の声が、エマの耳に入る。
「炎石君、居るの?」
エマはあわてて辺りを見渡し、炎石の姿を探す。
「おねえちゃんじゃ、ないでちゅね…」
男の子が現れた。
声はお姉ちゃんの声だけど、顔は全然違う人。
不思議そうな顔をして、エマを眺める男の子だった。赤い洋服を着ている。
炎石に間違い無い。
だが、まずい。変な対応をすると泣かれてしまいそうだ。
「声真似が出来る妖怪の人でちゅか?」
きょとんとしながら、炎石はエマを見ている。
もしかすると、私の事を妖怪と思って安心しているのかも?
なら、話を合わせよう。
「そ、そうよ。私はオウムの精。
須那美ちゃんに頼まれてね、炎石君の事探してたの。
お姉ちゃん、この近くに居るわよ。
炎石君に会ったら、寂しいだろうから食べさせてあげてってね、これもらってきたの。」
オウムの精なんて妖怪、いるのかな?
エマはわからなかったが、ともかく持ってきた飴玉を炎石君に差出した。
炎石は喜んで飛びついた。
「仮面ライダー竜鬼の声真似できまちゅか?」
特撮ヒーローの声真似を炎石にせがまれながら、どうやら大丈夫そうだとエマは安堵のため息をついた。
しばらく雑木林を歩き、エマは武神達と再び合流した。
「炎石!」
須那美が叫び声をあげる。
彼女を見つけた炎石が、エマの元を離れて近づく。
感動の再会というやつだろうか。
こういうのは嫌いではない。
泣きながら抱き合う幼い姉弟の図というのも、たまには良いだろう。
…いや、ちょっと待て。
「おねーちゃーん!」
炎石は泣きながら姉に抱きつく。
ざわざわと揺れる木々。
地面にめり込みながら傾むいていく。
エマは体が重くなる感じがした。
『泣くな!』
エマと武神と須那美の声がはもった。
「全く、しょうがないな。
悪いが、しばらく能力を封印させてもらうぞ。」
武神は炎石の重力操作の影響をもろに受けたようで、腰まで土の地面に埋まりながら、炎石に手をかざした。
そして、木々のざわめきが収まり、静かになった。
炎石の泣き声だけが辺りに響いていた。
騒ぎを聞きつけてやってきたレイベルが
「向こうの子供達は大丈夫だ。特にひどい怪我をしているものも居ない。」
と言いながら、地面に埋もれた武神を拾い上げた。
「だから言っただろう、私のように登山用具でも用意しておいたほうが良いと。」
レイベルの言葉に、エマと武神は苦笑するしかなかった。
「本当に、色々とありがとうございました。」
一段落した後、須那美がエマ達に言った。
「ありがとうでちゅ。」
炎石もぺこりとおじぎをした。
「まあ、気にするな。
それより、せっかく東京まで来たんだ。
少し東京見物でもしていくだろ?
案内してやるぞ。」
武神は特に気にしてない様子で言った。
「そうね、お金は経費ということで武彦さんにもらえるから大丈夫ね。」
私も行くと、エマは言った。
「登山用具を買うのに、また借金をしてしまったからな。
経費で遊ぶ金が出るのはありがたい。」
レイベルも行くと言う。
「はい、お願いします。
でも、森の木々も倒してしまいましたし、八国山の長老様にあいさつしてからにしますね。元々、東京に着たら長老様に顔を見せるつもりでしたし。」
「ああ、それがいいな。
長老は俺の知り合いだから、俺も一緒に行ってやるよ。」
須那美の言葉に武神が頷いた。
その後、一向は八国山の長老とやらにあいさつに行く。
長老は温厚な化け猫の妖怪で、炎石と須那美の事を特に厳しく責めたりはしなかった。
「わかりやすい所で、東京タワーから行くか。」
長老の元を離れ、陽気に言う武神の言葉に誰も異論は無い。
「草間の奴に感謝しなくてはな。」
レイベルが真顔で言う。
「重ね重ね、本当にありがとうございました!」
須那美が再度おじぎをした。
はるか遠く。
一人、不吉な予感を感じる草間だった。
また、後日トラックを爆破した事がバレ、レイベルの借金は増える事になったという。
(完)
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0086 /シュライン・エマ / 女 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0173 /武神・一樹 / 男 / 30歳 / 骨董屋『櫻月堂』店長】
【0606 /レイベル・ラブ / 女 / 395歳 / ストリートドクター】
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■ ライター通信 ■
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初めまして、MTSと申します。
今回はご参加ありがとうございました。
今回、いかにして子泣き爺の重量を支えるかという事に、
真っ向から取組んだのはレイベルだけでした。
残念な事に、登山用具は不慮の事故で途中で燃えてしまいましたが、
着眼点は良かったと思います。
また、機会があったらよろしくお願いします。
今回はおつかれさまでした。
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