コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


座敷わらしさがして下さい

1. このメンバーで大丈夫なのか?(草間談)
「依頼人のところまで出かけてくる。留守は頼むぞ、零」
「はい、行ってらっしゃいませ」
草間が仔猫の世話をしている【妹】にそう言ってから出て行くが…頭にあいつが座っている。
「いきなり頭の上に居るんじゃない、こんこん」
「だって、良い感じだもん。草間おっちゃんの頭」
「はぁ」
「なのでタバコは控えてね〜」
「イヤだ」
「だーめ、タバコがハードボイルドの証にはならないんだよ〜」
「どういう意味だ」
「せいかくな意味は…え〜と」
こんこんは、まえに「ハードボイルド」の意味を覚えたはずなのだが、すっかり忘れてしまったらしい。
「そんなことより、もう1人、助っ人を両国まで迎えに行くぞ」
「どうして?」
「おまえかそれ以上役に立つ助っ人だ」
マルボロを取り出しライターで火をつける。
「ひどいな〜、けほけほ」
(しかし、あいつで良いのだろうか不安だが…)
煙でむせるこんこんを無視して、両国までその「助っ人」を迎えに行くことにした。

両国国技館前〜
現代の服装から見ると違和感のある服装〜直毛の濡れ黒髪をおかっぱ、赤い着物姿の裸足に草履ばき〜の少女が、公衆電話に上って電話機の受話器で遊んでいた、いや正確には電話をしようとしているのだ。
「くーちゃんに《れんらく》〜♪」
しかし、この電話機はICテレホンカード専用だったため繋がるわけがない。最も彼女・駒子が今の時代にお金がいるという考えを持つことはほとんど無いだろう。
「みぃちゃんは《れんらく》できるのにおかしいぃ〜、この《からくり》のばかぁ!」
「おいおい、公衆電話ぐらいの使い方早く覚えろ」
駒子の前に仔狐を頭に乗せているいかにも奇妙で怪しい男が現れた。
「あ!くーちゃん。おはよ〜。こんちゃんもおはよ〜」
「駒子ちゃんげんき〜?」
草間は頭痛を起こしそうになる。精神年齢がかなり問題の助っ人達。依頼と言うより子供達のおもりをさせられている気分になった。

2. 依頼の概略
「確かに、座敷わらしは家に居座る(憑く)のが普通だが家出するというのは不自然だな」
頭にこんこん、周りで浮遊してついてくる駒子に依頼書からわかる事のあらましと自分なりの感想を述べた。
「じゃあ、依頼主にあうんだね」
「あたしはいかない」
こんこんは草間についていくことにしたが、駒子は反対した。
「どうしてだ?」
「すでにみぃちゃんの《いえ》に《ついている》もん。それに…」
「それに?」
「くーちゃん、《たけしさん》に《うる》かもしれないからやだ〜。ぜったい《うっちゃう》!」
「誰が売るかぁ!」
駒子の理由に大きく反論する草間だが
「ふーん《てんねんきねんぶつ》とおもっている、くーちゃんしんようできないなぁ」
「う゛…」
この言葉に負けてしまった。
「わかった、危険なことはないだろうから、おまえ1人で目星つけてくれ、駒子」
「は〜い」
草間はどうしようもない敗北感を感じ、駒子に指示した。
「たぶん《とおく》にはいってないよ〜」
駒子は元気に依頼主周辺を探りに行く。草履の足音が彼女の気持ちを表していた。楽しそうだ。
「おっちゃん、駒子ちゃんを天然記念物って…じゃあ、こんこんも天然記念物??」
「…言ってない」
「でもひどいよう」
こんこんは頭の上で「こーん」と『泣き出した』。
「悪かった〜俺がわるかった〜」
災難続きの草間である。

3a.浅羽 武さんとお人形なのだ(こんこん談)
古い伝統のある木造の館、依頼人の浅羽武が住まう家だ。元々武家屋敷らしい。浅羽家は有る程度身分の高い武家だったらしい。戦後の混乱後財を再び築き上げ、古美術商を営んでいるそうだ。
「おおきー。おっちゃんのところより数倍おおきー」
「一言多いぞ」
感心しているこんこんの言葉に少しいらだちを覚える草間。
「おとなしくしてろよ」
「は〜い(うそだけど)」
「おいまて!」
こんこんがインターホンを鳴らし、しばらく待つ。
[どちら様ですか]
「…草間探偵事務所の草間と申す者ですが」
[…少々お待ち下さい]
すると、1分も待たずして壮年の男性が出迎えてくれた。
「あなたが、草間さんかね?」
「はい、草間武彦です。貴方が浅羽武さんですか?」
「そうじゃが。此処では寒いでしょう中で…」

「ようこそ来て下さった。多忙な方と聞いている故不安だったんじゃ」
応接間に案内される間、様々な芸術品や骨董品が丁寧に並べている。こんこんは相変わらず草間の頭の上でそれらを見物している。
「座敷わらしが家出したと聞いたもので、よほどの事情があるのかと」
「それなんじゃが…」
応接間で、茶菓子と茶でもてなされながら浅羽の口から詳しい事情を聞くことになった。こんこんは話が長引きそうなので、周りの古美術品で遊ぶことにする。傷は付けないように。
「数ヶ月前に、倉の大掃除をしたのじゃよ。すると古ぼけた人形を見つけて…そのまま燃やしてしまったんじゃ。家に住んでくれていた座敷わらしの「薫」の宝物だと知ったのは、その直後…あの子は…泣いて出て行った。儂が気をつけなかったばかりに…酷いことをしたと。儂にとって掛け替えのない孫と思っていたんじゃ」
遊びながら、話を聞いたこんこんは不慮の事故なんだなと思った。この人は悪くないなと。せめて孫と思う「薫」に一言相談すれば良かったのにと考えたが。
「ねー、おじいちゃん」
「こら、いきなり失礼だぞ」
こんこんが、浅羽に尋ねた。其れを見て
「いや良いんじゃよ、草間さん。なんだね?坊や」
「その燃やしてしまったお人形さんあるかな?」
「ああ、急いで取り出したから…しかし損傷が酷くてな」
彼は桐の箱を持ち出してそっとふたを開けた。お人形ごっこに使われる木と布製の人形だ。
しかし人形の着物が燃えてしまって体の一部も焼けこげている。
わずかに「薫」の匂いがした。残留霊力とも言うべきか。
「こんこん、分かりそうか?」
「大丈夫とおもうよ。見つけ出せる。たぶん駒子ちゃんも突き止めていると思う」
「そうか、しかしどうやって説得に向かう」
「妖同士腹を割ってお話しするとたぶん大丈夫」
「多分…か」
草間は少し心配だった。
こんこんは、箱の中に縫い目が悪いながらも心のこもった服と、修理道具が入っていることに気づく
「あれ?これは新しい服だけど?」
「悪いことをしたからな、直してあげているんじゃ。せめてもの罪償いで」
こんこんは彼の哀しい目を見てこういった。
「おじいちゃんいい人です。このおっちゃん以上のいい人です」
「だから一言多い…」
偏頭痛をおこしている草間によじ登りまた頭に乗っかるこんこん。
「おっちゃん、れっつごーなのだ」
「もう検討ついたのか?」
「なので急ぐのだ〜」
「たのみますよ、こんこんくん」
「は〜い。おじいちゃんもちゃんと直してあげると良いことが起こるです」
といって、草間を足代わりに浅羽邸を出て行くのであった。

3b.《はぶり》の《いい》いえはないかな?(駒子談)
浅羽邸は高級住宅街の一角にあると聞いている。ならばこの周辺で何か幸運が訪れた羽振りの良い家があるはずだと駒子は思った
「でも〜みんな《おかねもち》〜わかんな〜い」
とぼとぼと歩いて霊気を探る。座敷わらしがいた痕跡を捜してみるが見つからない。
「《うられる》のはいやだから、ひとりできちゃったけど…」
独りぼっちになった駒子は半泣き状態だった。
「さみしいよう…」
もう誰もいない、空き屋になった豪邸の玄関で座って呆然としてしまう。
「いっしょに、ついていったほうがよかったかなぁ…えーん。」
少し後悔する駒子。おもわず泣き出してしまう。
「だれ?」
ドアを通して女の子の声が聞こえた。霊力の質からして…同じ座敷わらしだ。
「あ、《なかま》だぁ♪」
「え?」
向こうは驚きを隠せないようだ。しかし、声を出すまで霊気を発散させない…かなりの年期のはいった座敷わらしと、駒子は思った。
「ねーねー、あたしは《こまこ》っていうの。あなたの《なまえ》おしえてほしいなぁ」
「あたしは、薫…」
「《かおる》ちゃんかぁ。どうしたの?ここはだれもいないよ?」
「うん。おじいちゃんがあたしのだいじな宝物もやしちゃったの。かなしかった。」
「で、《いえで》したの?ひょっとして《あさば》というひとの《おうち》に《ついていた》、《ざしきわらし》かな?」
「!?、なぜわかったの?」
「このふきんで、ざしきわらしがいるのは、そこのひとの《おうち》しかないもん。《あさば》ってひと、こまってるから、くーちゃんにたのみにきたんだって」
「さがしている?」
「うん、そっちいっていいかな?」
駒子は、ドアをすり抜け薫と初対面した。
薫の背は駒子と似ているが、おひな様のように綺麗な服を着ている。女の子なのだが、腰に二本差しをしている。女剣客の風貌だった。
「すごーい」
「でも少し変でしょ?」
「ううん。《かわいい》し《かっこいい》」
駒子の感想に照れる薫。
しばらく、いろいろ座敷わらしの専門的会話で一時を楽しんだ。
「あ、《おともだち》を《しょうかい》するからまっててね、《かおる》ちゃん」
「うん、待ってる」
駒子は、草間から渡されたチョークを薫に渡して、探偵を迎えに行った。

4.おじいちゃんはないているです。(こんこんと駒子談)
駒子とこんこん、草間が合流するのはそんなに時間がかからなかった。
薫の発する霊気は、かなりのものだったらしく、こんこんの霊視ですんなり見つけることが出来たのだ。
「すごい〜駒子ちゃん」
「《ぐっどたいみんぐ》という《ことば》かな?」
「そうみたいだな」
情報交換をしてしばらく作戦を練る。やり方はもう決まっている。
「じゃー駒子ちゃんと、こんこんで説得にむかうね。草間のおっちゃんは…警察に怪しまれないように〜」
「どうしてだ?」
「だって…、人さらいしそうな顔してるから」
「この〜!口悪い狐め!」
探偵が怒って手を挙げる前にこんこんと駒子は、豪邸の中に入っていった。
「は〜〜〜」
と、彼はため息をついた。

2人の妖怪達は、薫を説得するのではなく、薫を加えて思いっきり豪邸内で遊んだ。隠れんぼ、チョークでの落書き、幻影のみせあいっこ、にらめっこ等々。疲れ果てるまで…。
「たのしかった〜」
「思いっきり遊んだです」
「ひさしぶりに気持ちが良い〜」
リビングで大の字になって横たわる3人
「薫ちゃん…。おじいちゃんが謝ってたよ」
いきなりこんこんが薫に言った。
「うそ!」
「ほんとうだよ。事故だったです」
「お人形燃やしたからもう私要らないと…すごく悲しい」
「でも、これ見て」
こんこんが幻術を使い、浅羽氏が不器用な手で新しい着物を縫い、焦げた人形の部分を補修している姿を映し出した。
「おじいちゃん…うっうっ」
薫は泣いた。駒子が頭をなでる。
「おじいちゃん、《わるぎ》なかったの。だから《おうち》に《かおるちゃん》がいないからおじいちゃんも《ないている》って、こんこんちゃんがおしえてくれた」
「薫ちゃんかえろう。おじいちゃん心配してるよ」
「うん」
薫は泣きながら頷いた
ドアをすり抜け、タバコを吹かし待ちくたびれている草間に向かっていった。

5.子供のおもりは大変だ。(草間談)
薫と浅羽は泣きながら再会を果たし一件落着した。
かなりの依頼料ももらいホクホクな草間、遊び疲れて寝ているこんこんと駒子。
今回の仕事は、楽だったのかもしれない。
しかし、
「「ごほーびー」」
と二人が起き出すとたんに草間に詰め寄った。
「わかった、何がいいんだ?」
「油揚げ、ちょーだい」
「おにんぎょうがほしい」
二人とも納得のいくご褒美をもらいご機嫌である。
「また薫ちゃんところに遊びに行くです」
「さんせー」
「そのときは、草間のおっちゃんに運んでもらうです」
「それもいいかんがえ!こんちゃんえらい〜!」
その会話で、思いっきり椅子からずれ落ちる草間。
「勘弁してくれ…」
泣きたくなる草間だった。

浅羽は薫と仲良く暮らして居るとのことである。
めでたし、めでたし

End

□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【0102 / こんこん・− / 男 / 1 / 妖弧の幼生】
【0291 / 寒河江・駒子 / 女 / 218  / 座敷童子】


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
滝照直樹と言う者です。参加して頂きありがとうございます。
内容をみて、こんこんさんと駒子さんの個性豊かな行動と発言は、私を大いに笑わせてそして執筆作業が楽しかったです。ありがとうございます。

では機会があれば、宜しくお願いします。

滝照直樹拝
20030221