コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


●オープニング
「皆、こんにちは。ボクは狐族の銀だよ。
久しぶりに依頼を持ってきたんだ。
今回のお仕事は厄介な人もいれば楽しい人もいるかな」
そう言うと銀は一枚の紙を手渡した。


題:子供達を預かってください。

「初めまして。私の名は高坂美空といいます。
私には幼稚園に通う『空』と『陸』と言う二人の双子の子供がいます。
夫を事故で亡くし、シングルマザーになってもう3年が経とうとしています。
その為、夫の顔を2人はしりません。
しかしながら、仕事の都合で家を一日留守にする事になってしまい
周りに預けるにしても、普段から働き三昧のせいか、交流も少なく、
親しい方もいないので・・。

この内容を読んでくださる方をいい人だと信じて・・

一日、二人のお父さん・お母さんとして面倒を見てもらえませんか?
私は忙しさのあまり、母らしい事もしてあげられなく、再婚もしていないので
2人は父親の温かさもしりません。


                         高坂 美空」

「今回は霊退治が無さそうだけどもしかすると、空君と陸君の
お父さんに会えるかもしれないね。
霊感がある人といると霊が見えるって聞いた事があるよ。

美空さんの希望なんだけど、2人を公園に連れて行ってあげてね。
公園に行くのが2人とも好きならしいよ。
ボクは今回、不参加だけど帰ったら、お話し聴かせてね」


●穏やかな風と波乱の風

「は〜い」
チャイムと鳴らすと小さな男の子の声が中から聞こえ、ドタバタと走る音と共にドアが勢いよく開いた。
「私達は今日一日、二人の世話をしにやって来ました」
秋月・霞波(あきづき・かなみ)は金髪の空らしき男の子に話しかけ、微笑みかける。
陸は霞波の顔を少し赤らめながら愛らしい笑顔で見てくる。
「空〜なにしてるんだよ!遅刻するだろ。新聞の勧誘なら間に合ってるって言えば・・」
顔をひょこっと出してきたのは綺麗な栗色髪をした、焔寿より色素の薄い髪質の陸の言葉が途中で止まる。
「みあお、お母さんとお父さん代わりに来たんだよ」
「俺はお父さん代わりだ。ミッチーパパと呼んでもいいぜ!」
海原・みあお(うなばら・みあお)が万遍な笑みで、ミッチーパパ・・じゃなくって
竜笛・光波(りゅうてき・みつは)はノリノリで言う。
「・・空、行こっっ!!」
陸はむっとした顔で、慌てる空を外へと連れて出す。
「待って!陸〜〜!!ボク、鞄・・持ってきてないよ」
「はい!空の分も出る時に持ってきた」
空に陸は荒々しく鞄を差し出し、手渡した。
唖然と5人は二人の姿を見つめていた。

「こんなんの、めげる内に入らないしぃ!あたしベビーシッター得意だもん!!」
俄然やる気が出てきたのかヴィヴィアン・マッカラン(う゛ぃう゛ぃあん・まっからん)は握り拳を作って気合を入れる。
「当然です!私、二人を幼稚園に送りに行って来ます」
白里・焔寿(しらさと・えんじゅ)が2人を追いかける。
その後ろを猫のチャームとアルシュは共に走る。チャームとアルシュは今回、赤いリボンを括りつけてもらっていた。確か、アルシュは他の依頼で黄色いリボンをつけていただろうか・・。

「時間があるしぃ、あたし達は中で待ってよ」
「そうだね!!」
ヴィヴィアンがドアを開けて中を覗く。
鍵が開いているのでそのままにしておくわけにはいかないだろう。
みあおが元気良く中へと入る。

「空君待って!!」
焔寿は1人佇んでいた、空を発見して空の手を掴んだ。
「わぁ?!!さっきのお姉さん??」
「焔寿です・・えっと陸君は??」
「陸なら先に行ったよ・・。俺がわがまま言ったから・・」
少し落ち込んでいるのか、俯きながら元気がない様子を空は見せる。
「空君・・私には両親や兄弟がいないの。だから家族という温かさを知りたくて・・それで一緒に過ごしてみたくて来たんです」
俯いていた空は焔寿の方を向いて何かを言おうとしたが躊躇し、発言を控えた。
「あっ!私、お弁当を作ってきたんです」
予め、美空に二人の好きなものを聞いていた為、二人の好物な物と栄養バランスを作って考えた自信作である。
「焔寿お姉さん、ありがとう♪陸にも渡しておくね」
空の小さくて可愛い手を繋ぎながら歩いていたら、いつの間にか幼稚園に着いてしまったらしい。
空が焔寿に手を振り園内へと元気に向かう。
「焔寿お姉さん!陸は、本当はすごく優しい子なんだよ!だから・・一緒に過ごせるといいね」
空は一度足を止めて振り返り、大声で天使の笑顔の様に微笑んだ。


●違う性格を持つ双子。
「焔寿!遅かったねっ」
勢いよくドアを開けて、ヴィヴィアンが幼稚園から帰ってきた陸と空を向かい入れる。
二人を送り届けたその後、焔寿は幼稚園にいる2人をこっそり観察していたが保母さんたちに怪しい人物だと捕まりかけ、だが事情を知った保母さん達と仲良くなりすっかり話し込んだりして、迎えの時間になってしまったらしい。
「た・・ただいま・・ヴィヴィアンさん」
「・・(びくっ!!!!!)」
空はヴィヴィアンを見て後退る。
「ピンクの髪のお姉さん?」
一方、吃驚している空に比べ、陸は落ち着いた様子でヴィヴィアンを見上げる。
焔寿は髪の色に吃驚したのではなく、勢いよくドアが開いたので吃驚しただけだ。
「(掴みはバッチリだしぃ!!)」
ヴィヴィアンの心中は、ますます気合(?)でいっぱいになる。
「お帰りなさい。3人とも」
花瓶に美しい花を生けていた霞波が振り返って言い、涙目の空を不思議そうに見て頭を撫でてあげる。
陸は表情には出さなかったが、どんな心情でヴィヴィアンを見ていたのか誰も知らない・・いや、空なら分かったかもしれない。

「お前達、まだばててないよな?折角だから公園に行かないか??」
光波が楽しそうに2人に話しかける。
「本当に?!ボク、公園大好きだよ、ミッチーパパ!」
よほど公園に連れて行ってもらえるのが嬉しいのか、空は元気に疲れた様子も見せずに無邪気な笑顔を見せる。
「俺は行かなっ・・」
「そうか、そうか、行きたいか!!」
陸の様子はそっけない。
がっ、その申し入れを聞くほど世の中はあまくない(?)
最後まで言葉を発する前に光波は陸の頭を無雑作に撫で、公園へ行く準備をする。
「だから、俺は嫌だっ・・」
「陸は本が好きなんだよね?陸に本を持ってきたんだしぃー、一緒に読もうね」
ヴィヴィアンは嬉しそうに陸に微笑む。陸はそんなヴィヴィアンを見て断れなかったのか軽く首を縦に振り、しぶしぶ公園に行く事を承諾した。


●父親の幻影。
「わぁー、広い公園〜♪」
みあおが嬉しそうにぐるりと辺りを見回した後、まるで子供のように嬉しそうにはしゃぐ。
いつも人があまり居ないのかは分からないが他に見知らぬ者の姿がない勢か余計に広く感じる。
「よーし、まずはこれから!!」
そう言いながら光波は突然、陸と空を高い高い・・と上へ放り投げる。
「わーーい」
「・・・・」
嬉しそうな空に無言の陸。
「次はそうだな・・・」
肩車をしながら考えた後、光波は腕で引っ張って宙返りをする。
「わーい」
「・・・」
やはり、空は嬉しそうで陸は無言のまま。だが、変わった事と言えば陸の顔色が少し優れないだろうか。
「気持ち悪い・・俺、向こうにいる・・」
「えっ?!陸大丈夫??」
みあおが心配そうに声をかける。
陸は意外と酔いやすいらしく、みあおに真っ青な顔で軽く頷くと、ふらふらしながら木の陰へと行って一息つくと落ち着いたのか本を読み始めた。
ヴィヴィアンも陸と一緒に木の陰に、そして陸の隣へと座る。
「陸、あたし本持ってきたんだよ。一緒に読もう?」
「・・なんの本??」
「アイルランドの妖精の話!!知らないの??結構有名だしぃ・・知ってるかなって思ったんだけど・・」
今日初めてなにかに興味を持った陸にヴィヴィアンは元気に答えた。
「アイルランドは人口388万3159人、面積7万0280km2・・まぁー北海道くらいかな。人口密度55人/km2、平均寿命77.17歳、97パーセントがケルト系アイルランド人で基本的にはカトリックが深厚されて・・」
まだまだ続きそうな今日、出会った中で最も口数の増えた陸の会話をヴィヴィアンは冷や汗を出しながら頭が混乱する前に止めにはいる。
「陸、・・もういいよ・・」
「いいの?」
恐ろしい園児である。
だが、陸は少し楽しそうな気がするが気のせいだろうか。
それに気付いていたのかヴィヴィアンは嬉しそうな顔つきで陸に少しだけ強めに抱きついた。

「陸、ヴィヴィアン、なんの本を読んでるの?」
ヴィヴィアンの元に空達と遊んでいたみあおが声をかける。
「アイルランドの妖精の話・・?」
「アイルランドの妖精か・・」
光波がなにかを思い浮かべているらしく楽しそうだ。


「空君、今からちょっとしたマジックよ」
先ほどまで楽しく遊んでいたが少々疲れている空の疲れを吹き飛ばしてあげようと、霞波は公園の真ん中にある噴水の前に立ち、掛け声と共に虹を作り出した。霞波は人と水の精霊の血が流れている為、水を操る事はたやくす、得意としている。
だが、空にとっては物珍しく興味津津だ。
「霞波お姉さんすごいね!!ボクも・・むぅーー」
水を操りたいのか、気らしきものを必死に送っているらしい空の姿を愛らしそうに霞波は見つめながら苦笑し空の手助けをしようと、こっそり水を浮かばせる。
「わぁー、霞波お姉さん見た??!!」
「うん、浮いたね。空君すごいよ!」
「あれ?皆、木の下に・・陸君達かな??行ってみる?」
「うん」

楽しそうな二人の姿をベンチに座り、遠くから眺めている少女が独り。
「チャーム、アルシュ・・見て。空君楽しそうね」
「「ニャー」」
遠くにいる焔寿に気付き、霞波と一緒にいた空が霞波に何かを伝えたと思えば、焔寿の傍に走ってかけよってきた。
「焔寿お姉さん・・楽しくないの?」
「えっ?」
「ずっと・・眺めているから・・」
焔寿は一瞬きょとん、とした後くすくすと笑い出した。
「違いますよ。私は見ているだけで楽しいんです。空君は陸君を見ていて楽しい?」
「陸を??うーん・・陸は見ていて不思議かな。ボクよりずっと大人でお兄ちゃんって感じだよ。陸が本を読む理由を知ってる?」
「えっと・・」
確か、保母さん達と話をしている時に聞いた気がする。焔寿は考えた後、閃いたように答えた。
「あっ!お父さんですよね。空君達のお父さんは本が大好きで・・」
「うん。ボク達はパパを知らないんだ。だけど写真のパパはとても優しそうで、医者で・・白衣がとても似合ってるんだよ。写真の殆どに本を持つパパの姿が写ってるんだ。陸はパパと同じ・・」
途中で空の話が止まる。
「空君?」
「でもね、陸は本当に本を読むのが好きなんだよ」
少し寂しそうにしていた空に再び笑顔が戻る。
焔寿は空に笑顔で返す。
空は大切に入れているお守り袋から父親の写真を見せてくれた。
この写真は陸も持ち歩いていると空は話してくれた。
父親という存在を空も陸も何処かで追いかけているのだろうか。
空はそれを告げると、陸の元へ走って行った。


●双子の父親。
「昔、ある1人の少女がマッチを売っていました。しかしそれはさっぱり売れません・・」
どうやら光波が語っている物語はマッチ売りの少女らしい。
そして感情が籠った話はまだまだ続く。
「少女はマッチを一本擦ると・・不思議と少女の望む物が映し出される。そしてそれが現実と
して出てくるではないか!!少女はそれを知り、みるみる世界一の億万長者になったのでした」
話を終えた光波は満足気な表情で陸と空を見る。
空の表情は明るく頷きながら物語を楽しそうに聞き、陸の方は光波の物語を顔色一つ変えずに話を聞いていた。
「・・・え〜と」
フォローが出来ないらしくヴィヴィアンが困った顔をする。
同じく霞波の方も指摘した方がいいのか迷っている。
「違うって!」
だが、みあおは尽かさず突っ込みをいれる。
「・・・」
それを見ていた陸は無言で自分の読んでいた本に再び目を落とし、少し微笑む。
陸の表情を目にした空は瞬きをして光波とみあおの方を向いて楽しそうに言う。
「・・ミッチーパパ、みあおお姉さん!陸が楽しいって」
「こらっ。誰がそんなこと言ったんだよ」
空の言葉に陸は向きになる。
無邪気な2人を見て自然と微笑しながら陸の読んでいる本に霞波が視線を落とす。
「なんの本読んでいるの?」
「これ??『世界財政の実態』」
一瞬ではあるが、周りの空気が凍りついた。
明らかに予想もしていなかった難しい本に息を飲んだのは間違いない。
「陸は経済の道に進みたいの?」
みあおが不思議そうに尋ねてみる。
「ううん、これは趣味・・。俺は医学関係に進みたいからね」
「そうだわ!陸君、今度私の温室にこない?花があるの。本ももちろんあるわ。得に医学関係はたくさんあるのよ」
霞波の恋人が医大に通っており勉強に温室を使う為いろいろな本が置いてあり、医大生だけあって医学に関しての本がずば抜けて多い。
「本当に??小遣いも制限されているし、それに医学関係の本は高いんだ。だから読みたいなー」
よほど本が好きなのか今までで一番いい顔をしているかもしれない。
「じゃ〜次は歌を歌おう!!」
「楽しそうだね!!子供達に人気なのは・・」
光波の提案にヴィヴィアンが考え込む姿を見て、光波は自分が考えていた意見を言ってみることにした。
「やっぱし、「ポケモン」や「あっという間劇場」だろ!俺のオールマイティーだし!!」
光波のテンションは最高潮だ。
「オリュ・・オールマイ・・ティー?」
「おぅ!完璧に歌えるって事だ!!空はなにが歌いたい??」
「えっと・・アドバンス・アドベンチャー」
「おぉーいい選択だ。っで陸は歌えるか??」
本を読んでいて俯いていた陸の眉間にしわがよる。
「ってか、なに?ポケモンって・・」
「陸は知らないんだよね。陸はニュースとか政治経済とか見るからね」
ある意味2人とも恐ろしい。陸がニュースや政治経済関係を見るのは悪くないが当然のように空は言う。
「じゃー、陸にも覚えてもらわないとな〜」
楽しそうに光波は歌を歌い始める。
みあおとヴィヴィアンと霞波は歌が上手な光波の歌を聞き入る。


「光波さんお上手でした」
霞波が拍手を送りながら辺りを見渡す。
「あれ?・・空君は??」
「空?あれ??」
最初に大変な事に気付いたのは霞波で、空の隣に居たヴィヴィアンに尋ねる。
「焔寿の所とかじゃないかなー?」
みあおの推理で焔寿の元へと急いで行って見る。

「えっ?空君??見てないですけど・・なにかあったんですか?!」
「うーん・・それが、空がいつの間にか居なくなって・・」
困った顔でヴィヴィアンが焔寿に伝える。
「とにかく、皆で探さないと・・暗くなったら大変・・」
霞波はキョロキョロと辺りを見渡す。
空を見上げると辺りはもうすぐ夕暮れ時を向かえそうだ。
「空〜」
「空何処だ〜??」
みあおと光波は空のいそうな所を出来るだけ大きな声を出しながら懸命に探す。
空は小さな子供。そう遠くには行っていないはずだ。公園内をくまなく探すが空の姿も、ましてや返事すら返ってこない。
「もし、公園内をでているとすれば危険ですよね・・」
焔寿が心配そうに自分の頬に手を当てる。
「焔寿、大丈夫よ!子供の足、公園から出ている確率の方が低いし空はちゃんと言葉を理解して話せるのだから、勝手に外にでたりしないよ」
ヴィヴィアンは心配そうな顔をする焔寿に答える。バイトでベビーシッターをしているだけあって、的確な判断を持ち合わせているらしくヴィヴィアンはとても落ち着いている。
「そうだね、いい方向に考えた方がいいよね」
少し不安の色がとれたみあおが再び探そうとしたその時、草むらの草が微かに動いた気がして、草むらを掻き分けて見た。
「あっ!」
みあおは一瞬、声を出したが口を手で塞いで小声で皆の事を手招きして呼び寄せた。
そこは無邪気にぐっすり眠っている空の姿が在った。遊び疲れて休もうと思い、横になりそのまま眠ってしまったようだ。
気配を感じて空が起き上がったが、寝ぼけているのかウトウトとしながら、浮かない顔で皆を見渡す。
「空〜良かった・・」
すっかり光波は緊張の糸が解け力が抜けたて、しゃがみ込み安心した。
「空、勝手に何処かへ行ったりしたら駄目だよ。皆、とても心配したんだよ」
「みあおお姉さん?・・ごめんなさい」
みあおは優しく空を包み込む。空は自分が勝手に何処かへ行ったりした事が原因だと察知したのか落ち込んだ様子で謝った。
「空・・」
「陸?」
本を持って、誰よりも冷静を保っていた陸が空の傍による。
陸は空の頬を手のひらで叩くと空の目からは涙が落ちる。
「っ・・ふぇ・・陸?」
「空・・皆に迷惑かけるなってあれほど・・なにか遭ったらどうすんだよ!!」
今まで、ずっと大人っぽく振舞っていた陸はどこか糸が切れた様に空の事を叱ると頭を撫でた。
陸の子供らしい一面とお兄ちゃんらしさがが、また一つ現れたような気がする。
「でも、見つかって本当によかったわ」
霞波はほっと一息つく。
「陸君、空君・・2人ともお父さんに会ってみたい?」
「パパに??」
「うん、お父さんに」
聞き返す空に霞波がもう一度復唱して答える。
「お父さんならとっくの昔に亡くなったけど?」
「大丈夫!!一発芸が出来るし・・」
みあおの言う一発芸とは、即ち幸運で呼び出すという事である。
強ち嘘ではないかもしれない。
霞波は先ほど遊んでいた噴水の前に立ち、水の中を覗くと軽く目を閉じ意識を集中させて水の精霊に呼びかけ、双子の父親がこの世に存在しているかどうか、存在しているならば居場所は何処か尋ねる。
霞波にしか聴こえない会話な為、皆は邪魔をしない様にと静かに霞波の返答を待つばかりである。

「「いるよ・・すぐ傍に・・。守護霊は片時も離れない・・」」

精霊の1人が霞波にすぐに答える。
霞波は陸と空の周りを見つめ何かを感じ取ったのか微笑む。
そして、空が眠っていた木の下を指す。
霞波の指さす方向に目をやるとそこには若い美男子の霊の姿がある。陸と空によく似ているだろうか。美しい栗色の髪の毛をしており、白衣を着用しており片手には一冊の本を握っていた。
霊感の強い者達が何故見えなかったかというと、たぶん双子の父親は姿を消して、一日両親代わりを努めてくれる者達を見守っていたかったのだろう。それは即ち、どれだけ陸と空が心を開いてくれるかと言う意味合いも含んでいる。
だが、あえてそれを聞かない事にした。
「陸、空・・2人とも見えるか?」
光波はしゃがんで陸と空の頭に手をのせて木の近くをよく見るようにと告げる。
元々霊感のない2人には見えないはずだが、銀の言うとおり【霊感がある人といると霊が見える】という言葉が本当ならば、後は奇跡とみあおの一発芸である幸運を信じるだけだ。
「お父さん?!」
「パパ?!」
陸と空が突然その名を呼ぶ。その姿は2人の持つ写真の人物と一致したらしく陸と空は同時にその名を呼ぶ。
でも、微かに見えたその姿は一瞬の内に、霊感の薄い2人から見えなくなる。
「空・・見えたな」
「うん。ボクすごく嬉しいよ・・お父さん優しそうな笑顔だったよ」
霊感の影響を受けたお陰で微かであるが見えた2人だがもう、その姿は見えない。
だが、とても幸せそうな2人にホッと胸を撫で下ろした。

辺りはすっかり夕暮れ、真っ赤に染まる空が一面に広がっていた。


●もう一人の子供。
ヴィヴィアンの提案の元、全員でスコーンを作り、ティータイムを庭でする事にした。
よくよく考えてみればスコーンはスコットランドのお菓子だがヴィヴィアンはそれを全然気にしていない様子だ。むしろ気付いてないのかも・・。
「すっげー美味そうだな」
光波は我ながら上手に出来たスコーンを口に運ぶ。美味しいらしく機嫌はよいようだ。
「ミッチーおいしい??」
突然みあおが光波をミッチーと呼んでみた。恐らく空と遊んで居るときに空が【ミッチーパパ】と連呼していた勢だろう。
「俺をミッチーと呼ぶな〜」
突然光波は不意をつかれたらしく、頭を「「ごんっ」」という鈍い音と共にテーブルにぶつけた。
光波は綺麗な女性に『ミッチー』呼ばれるのが苦手ならしくパニクっている。
「でも、本当に美味しい・・」
陸のある意味話題を変えるナイスフォローに落ち着きを取り戻しつつ、スコーンを再び食べだす。
「本当に今日は楽しかったですね」
「ええ、またこうして皆で会えるいいわね」
後からやってきた焔寿と霞波が紅茶を持ってきて、それを並べながらいう。
「夕焼けきれいだしぃ・・いい一日だったね。陸、今度はアイルランドの妖精の物語聞いてね。面白いしぃー」
「うーん・・まぁー、童話はあんまり読まないけど時々はいいかも・・。それに光波さんに正しい童話教えないといけないし・・」
結局、なんだかんだでアイルランドの妖精の物語を語れなかったヴィヴィアンが陸に少しだけふて腐れながら言うと陸は少しばかり苦笑しながら答える。
確か空が光波の話を陸が面白いと言っていたが空の言うとおり本当に面白かったようだ。
今一、陸の反応は分かりにくいが空に分かると言うのがまた、双子らしい感じがする。
所で陸は光波の童話が出たら目だと知っていたようだ。
だが、光波は陸とまた話せるという想いからか嬉しくなった。
「あれっ?!みあおさんは??」
先ほどまで焔寿の隣で上機嫌で食べていたみあおの姿がない。
そう言えば空は後から行くと返事してから庭に来ていないがなにをしているのだろうか。
「ま・・まさか、また空が迷子とかないよな?・・みあおさんまで・・」
光波はそうで遭って欲しくない為か声が少し小さくなる。
取りあえず、部屋の中をゆっくりと覗いて見る。
「あれ・・」
「まぁー」
ヴィヴィアンが人の気配に気付き庭から向かって右側の部屋を焔寿と一緒に覗きこむ。
2人が目にした光景は空と少女が仲良く眠っていた。
「だ・・誰?!」
陸が慌てて空を見知らぬ少女から離そうとしたが起こさぬ様にと焔寿が止めに入る。
「心配しなくともみあおさんですよ」
「えっ?!俺のみあおさん・・って!みるかぎり20歳くらいじゃなかった??空と変わんない気がするんだけど・・」
焔寿の言葉が信じられないのか少々半信半疑だがどうにか信じてくれた様だ。
霞波は薄手の掛け布団をみあおと空に起こさぬ様に優しくかけた。


●何処からか届いた手紙。
翌日、一通の手紙がみあおの元に届いた。
その封筒の中身は『成績・通知表』と書かれた物が入っていた。
『成績・通知表  海原・みあお殿』


陸の満足度:4
空の満足度:5
総合評価 :4

【追加】
お母さん度:3
なじみ度:5 
子供に対して必要不可欠な明るさ:5
【追伸】空より一言→みあおお姉さんと遊んでいて楽しかったよ。今度はもっと色々な遊びしようね。

※5段階評価。5が一番良し。





□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1415/海原・みあお(うなばら・みあお)/女/13/小学生
1402/ヴィヴィアン・マッカラン(う゛ぃう゛ぃあん・まっからん)
/女/120/留学生
0696/秋月・霞波(あきづき・かなみ)/女/21/自営業
1305/白里・焔寿(しらさと・えんじゅ)/女/17/天翼の神子
1623/竜笛・光波(りゅうてき・みつは)/男/20/大学生


                      申込み順。

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
相変わらずお久しぶりになってしまう葵桜です。
今年は殆ど窓を開けない中で(元々遅いというのもありますが)
発注をしてくださいありがとうございます_(._.)_。
霞波さんと焔寿さんにはお依頼を受けていただいたことがあり
とても嬉しく思っています。
みあおさん、ヴィヴィアンさん、光波さんは初めましてですね。
葵桜の担当する依頼はどうでしたか??
今回は全面的には成功依頼・・かなっと。
お気に召していただけると光栄です。

ちなみに、評価はそれぞれに目指したところが「5」ならば
それを満足度して評価してくださいね。

【みあおさんへ】
お目目パッチリです♪(突然)
みあおさんには姉妹がいるんですよね。みなもさんには以前
私の担当する依頼を受けていただいたことがあり、姉妹(?)と
知った時はとても嬉しく感じました。
青い鳥娘になれるんですよね。今度、見せていただけると光栄です。
なんと言っても『幸運を運ぶ青い鳥』って言いますよね♪♪
見ただけでホレボレしちゃいますよね。



【ヴィヴィアンさんへ】
初めまして。性格も設定を見た所とっても個性が出て可愛らしいな〜
という印象を受けました。
設定から語尾を「しぃ」にさせて頂きました。
基本的にそれぞれがもつキャラは設定に現れるので満足してもらえるよう、
自己設定は読ませてもらい取り入れたりするタイプなので・・(私)

【霞波さんへ】
霞波さんとは2度目ですね。
霞波さんの名前を見た時に「あっ〜」と、以前お会いした方だ〜と
すぐに気がつきました。
まだ未熟だった初め頃(今も全然未熟ですが・・(滝汗))、BUを
拝見した時にとても可愛らしい方だな〜っという印象がとても強く残って
いて、とても嬉しく思いました。

【焔寿さんへ】
お久しぶりです。あっ!新しい猫ですね。チャームとお会いした事あります
けどもうアルシュは初めてお会いしました。
焔寿さんらしい可愛らしいお名前をつけられて・・。
今回もプレイングを拝見していて、焔寿さんのプレイングは焔寿さんらしい
考えだな〜っていつも感じます。
また相変わらず可愛らしいプレイングですね。とっても好きです♪

【光波さんへ】
初めまして。
光波さんのプレイングはとても楽しく読ませていただきました。
出来る限りその人のプレイングを取り入れたり、設定に基づいた個性をだしたり
と沢山練ってがんばっているのですが気に入っていただけると嬉しいです。
そういえば私は小さい頃友達にクルクルと回されて吹っ飛びました。
結構痛かったです・・(;口;)
・・・・Σ・・・もしや初依頼ですか??!!(遅/汗)
楽しんでいただけましたか??