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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


土曜の夜に遊びましょう。


SCENE[0] 君が呉れた物語の始まり


「痛……ッ」
 書棚に手を伸ばしかけ、草間武彦は思わず呻き声を上げた。棚脇に据えたデスクの脚に、臑をしたたか打ちつけたのだ。
 間を措かず、彼の背後で、ドサドサッと紙束の落下する音が響いた。デスク上に乱雑に積み上げた書類が、草間が臑をぶつけた衝撃で一気に雪崩れ落ちた音だった。
 応接机を拭いていた零は、床が一面紙で埋まっていくのを眺め、
「ファイリング、した方がいいですよ」
 冷静にアドバイスした。
「あ……ああ、そうだな」
 草間は臑を押さえつつ適当に返辞をし、落ちた書類を掻き集めようとして、ふと。

 ――――有るのか無いのか分からん遊園地の件。

 自らそう走り書きしたメモが、視界に入った。
「……遊園地……」
 草間は頸を傾げ、それからポンと一つ手を拍った。
 ああ、そうだ。
 一週間ほど前に受けた依頼の話だ。
 クライアントが言うには、その「有るのか無いのか分からん遊園地」が今度姿を現すとしたら土曜の夜だろうから、その日に調査に向かってほしいとのことだった。だから、この件に関しては土曜まですることはないなと、後回しにしたのだ。
「後回しにしたはいいが、忘れるところだったな」
 実際、忘れるところどころか、すっかり忘れていたのだが。
 草間が臑をぶつけたという直接的原因と、クライアントを介して遊園地と結び合った何らかの縁という間接的条件、それらによって今案件を想起するという結果を引き起こした。これぞ因果の為せる業。
 草間は妙に納得し乍ら、カレンダーに顔を向けた。
「今度の土曜は、と……」
「今日、土曜日ですよ」
 書類を一緒になって拾い上げていた零が言った。
「……何?」
 草間は、慌ててデスク上の置き時計を見た。午前三時二十一分。どう考えても電池が切れている。続けて、腕時計に眼を遣った。午后四時四十分。のんびり調査員を募っている時間は無い。かと言って、この後別件で外出しなくてはならない草間自身が遊園地に向かうこともできない。
「参ったな」
 ともかく、すぐに身動きの取れる誰かに、この件の調査を頼まなくてはならない。まさかクライアントに「土曜日に調査するのを忘れたので、もう一週間待ってください」とは言えない。これは、草間興信所の信用問題だ。多少高めの報酬を支払ってでも、調査員を確保するしかないだろう。
 零の言うとおり、ファイリングはそれなりにした方がいいな、と呟き、草間はクライアントに逢った時のことを思い返した。

 クライアントの名は、月島つかさと言った。三十五歳の、大学助教授。童顔のせいか、小柄な体型のせいか、助教授だと言われてもどうにも実感が湧かなかったが、確かに頭の回転の速そうな女性ではあった。
 月島は、草間興信所を訪れるなり、
「遊園地の調査をお願いしたいのですが」
 と言った。
「どこの遊園地ですか?」
 訊ね返した草間に、月島は「私の住むマンション裏の遊園地です」と応えた。
「最近越してきたマンションなんですけど。そのマンションの裏に、一ヶ月後から工事の始まる、新しいマンション建設予定地が在るんです。そこに、なぜか土曜の夜になると小さな遊園地が出現して……」
「期間限定となると、移動遊園地か何かですか」
 訊いてしまってから、草間は、工事間近のマンション建設予定地に移動遊園地もないだろう、と自分の勘の鈍さを嗤った。
 月島が言うには、遊園地に有る遊具はたった三つ。メリーゴーラウンド、ジェットコースター、それから観覧車。定番といえば定番である。
「オレンジ色のライトで照らされていて、部屋からの眺めとしては悪くなかったんですけど。マンションの住人の間で少しも話題にならないのが気になって、隣室の方に訊いてみたら……そんな遊園地は知らない、と」
「知らない?」
「ええ。見たことがないって言うんです。それで、私、余計に気になって、この前の土曜、遊園地に行ってみたんです。そうしたら、遊園地のスタッフらしき人影も無くて……何気なくメリーゴーラウンドの馬の上に腰掛けた途端」
 月島はそこで一度言葉を切り、ごくりと唾を嚥下した。
「……途端、遊具が動き出したんです。それも、逆回りに。私、慌てて飛び降りたんですけど、メリーゴーラウンドは回り続けて……馬がみんな、後ろ向きに駆けているように見えました」
 草間は、オレンジにライトアップされたメリーゴーラウンドが、逆回りに回っている光景を想像した。成る程、回転の向きが逆だというただそれだけなのに、何か感覚的に受け容れがたい異様さがある。
「でも、もっと不思議だったのは」
 月島が、じっと草間の眸をみつめ乍ら言った。
「ぐるぐる回るメリーゴーラウンドをみつめているうち、ある馬の上に少女の姿を見たんです。どうも見覚えがある顔だったので、誰だろうと思って見ていたら」
 その女の子、小学生の頃の、私だったんです――――。
 そう言って、月島は重い溜息を吐いたのだった。


SCENE[1] サインはV


「この前、遊園地に行きたいって言ってただろう」
 草間が、窓から顔を覗かせて外の気温を確かめ、薄手のジャケットを肩に引っ掛け乍ら言った。
「それはそうだけど」
 イヴ・ソマリアは、草間興信所応接間のソファに深く腰かけ、外したサングラスを机の上に置いた。肩先でふわり、柔らかな水色の髪が揺れ、甘い薫りがこぼれた。
「だからって、今や人気絶頂のアイドルを捕まえて、『一時間以内に来てくれないか』はないでしょ」
「はは……、ま、まあ、そうだよな、普通」
 草間はぽりぽりと頭を掻いて苦笑った。
「でも、ちょうど暇だったんだろう? 念願の遊園地にも行けるし、よかったじゃないか」
 自分の都合でイヴを呼び出しておいて、「暇だったんだろう」とは随分な言い分である。ちょうどよかったのは、イヴよりも寧ろ草間の方ではないのか。
 イヴは小さく溜息を吐き、上眼遣いに草間を見た。
「……ねえ、今日私に声をかけたのって、本当にそれだけの理由?」
「ん?」
「確かに、遊園地には行きたいと思ってたし、それを憶えててくれたのは嬉しいけど。何か……臭うのよね」
「あ、悪い、さっきちょっと煙草の火でソファ焦がしたんだ」
「もう、はぐらかさないで」
 そう言ってかたちの佳い唇を尖らせ、サングラスを爪の先で弾いたイヴの眼前に、草間はおもむろに正方形の束を差し出した。
「……何、これ」
「色紙」
「そんなの見れば分かるわ」
「サイン」
「サイン? 私の? ……って、九、十、十一……十六枚分も、どうするのよ」
「頼まれもの」
 色紙、サイン、頼まれもの。
 草間は見事に一語ずつの単語で応じた。
「ふゥん。ファンから、色紙にイヴ・ソマリアのサインをもらって来てほしいって頼まれたんだ。で、遊園地の調査依頼もあることだし、『ちょうどよかった』から私に電話してきたのね」
 イヴは机上でトントンと色紙の端を揃え、話をまとめた。草間とイヴが知り合いだということを、誰がどういう経路で知ったのかは分からないが、その方面のネットワークというのはいつも予想を超えて複雑かつ巧緻なものである。
 草間は、頸を二度、縦に振った。
「ご名答」
「……つ、ま、り。報酬、弾んでくれるってお話よね」
「えっ? あ、いや、それは」
 急に動揺した草間に向かって、イヴはにっこり微笑んだ。
「出掛けるんでしょ? いいわ、サイン、書いておくから。遊園地にも行って来ます。えぇと、確か他にも、同行者がいるのよね?」
 と、
 その時。

 ばあんッ

 部屋のドアが勢いよく押し開かれ、舞い起こった風で本棚の上の埃が飛び散った。
「草間っ、お待たせっ!」
 驚きに眼を見開いたイヴと草間の視線の先――――赤いリュックを背負った少女が、右手で作ったVサインを突き出し、大きな銀の眸をきらきら輝かせて立っていた。


SCENE[2] 「からくだもの」はおやつに入りますか。


「んーと、オレンジジュース、チョコレート、ビスケット、マシュマロに……ラムネ。ポテトチップスもあるよ! それから、懐中電灯と……あ、今日友達にもらった飴も入ってたっ」
 海原みあおが、リュックサックの中身を机の上に拡げ乍ら一つ一つ説明した。
「お菓子の中に懐中電灯が埋もれてるわね」
 イヴはみあおの髪と同じ色で塗られたその懐中電灯をひょいと手に取り、スイッチを入れてみた。
 点かない。
「……電池、入ってないみたい。武彦さん、乾電池、ある?」
「使い切ったのならある」
 草間は即答した。
 道理でデスク上の置き時計も真夜中に置き去りにされてるのね――――と呟き、イヴはオレンジジュースの隣に懐中電灯を戻した。
「それじゃあ」
 草間が鞄を小脇に抱え、腕時計に眼を遣ってドアノブに手を掛けた。
「悪いが、俺はこれから別件で出掛けるから、有るのか無いのか分からん遊園地の件、くれぐれも頼んだぞ」
「はーい! みあおに任せといてっ」
 遊園地と聞いただけですっかり遊楽気分のみあおに少々不安を覚えつつ、草間がドアを開けようとした、瞬間。

 ばあんッ

「よお、武彦、遊びに来たぞ〜!」
 再び勢いよく外側から開かれたドアに、草間は思いきり顔面を撲ち叩かれた。
「……っっ」
 思わず、鞄を取り落とし、両手で顔を蔽って蹲った。
「あれは痛そうね」
「うわー、草間、無事?」
 イヴとみあおが同情を含んだ声音を送った。
 ドアで草間の横っ面を殴りつけた当人、制服姿の少年は、まだ状況がよく呑み込めていないようで、
「あ? 何だ?」
 きょろきょろと部屋の中を眺め回し、ようやく足許に草間の姿を発見した。
「お! 武彦! ……って、何やってんだ、こんなとこで」
「……伍宮……か」
 草間が、赤く熱を持った頬をさすりさすり、顔を上げた。
「おわ。顔、真っ赤っか。どーしたんだよ、それ」
「……どうしたもこうしたも。お前のせいだ、お前の。部屋に入る時には、ノックくらいしろ!」
「へ? 俺? ……あ……、もしかして、これ開けた時に」
 ドアを指さした少年に、草間が深く肯いた。
「悪い、攻撃するつもりはなかったんだけどさ」
「当たり前だ、ドアを武器にされても困る。ただでさえ最近うまく閉まらなくなってきてるんだ、頼むから壊すなよ」
「いや、物の心配より、武彦の心配のが先だろ? あー、ますます赤くなってきた」
 そう言い、少年は少し肩を落とした。
「……ごめん」
 その様子を見、草間がふっと口許を緩めた。
「何、萎れてる。分かればいい。……あ、そうだな、あと、今日の調査に協力してくれればそれでいい。万事問題ない」
「何だよ、今日の調査って?」
 訊き返した少年には直接に応えず、草間はイヴとみあおの方を見た。
「こいつとは初対面だったか? 伍宮春華だ。中学二年生。仲良くしてやってくれ。遊園地の件も、説明頼んだぞ」
「仲良くしてやってくれっていうより、仲良く調査して来てくれって感じね」
 イヴが的を射た発言をした。
「……なんかよく分かんねーけど、面白いことなら歓迎」
 春華が、お菓子の山を挟んで向かい合わせに坐っている先客達をみつめた。

 草間が遠離っていく跫音を背後に聞き乍ら、春華は何気なくみあおの隣に坐りかけ、
「あれ。あんた」
 無遠慮に、イヴの顔に人差し指を向けた。
 イヴは翠眼を一度、ゆっくり瞬き、少し身を乗り出した。
「何?」
「確か、昨日の夜、箱の中で観た」
「は……箱の中?」
「いろんなものが動く箱。その中で、唄ってた。すげえ佳い声で」
「箱って、……テレビのこと?」
 イヴが訝しげに眉根を寄せた。
 テレビなら、テレビと言えばいいではないか。
 何もよりによって、いろんなものが動く箱だなど、大昔の人間がいきなり文明開化に突き当たったような言い方をしなくても。
「そうそう、テレビ。憶えた筈なんだけど、まだ時々ど忘れするんだよなあ。一気にいろんなもん、頭に詰め込んだから」
 春華が顳を指で押さえ、テレビ、テレビ、と繰り返した。
「……伍宮って、どこのひと? テレビがない、遠いところから来たの? 山奥とか、海の底とか」
 みあおが飴の包み紙を剥き、苺色のそれを、ぽん、と口の中に放り込んで訊いた。
「あー、山奥が正解、かも」
 春華があっさり応えた。
 イヴは髪をくるくると指に巻き付け、脚を組んだ。
「山奥……ね。まぁ、ここに集うのはみんな何かしら曰く付きの人が多いから、気にしないけど。私、イヴ・ソマリア。伍宮さんが観たとおり、この世界の箱の中で歌ってるわ」
「春華でいーよ。俺もイヴって呼ばせてもらうから」
「んんっ、みはおね、海原みはおって言ふの! よろひく!」
 大きな飴玉を頬張っているせいで巧く発音できず、みあおがどうしたものかと意味もなく視線を彷徨わせた。
「海原みはお、ね」
「ち、違……、みあお――――んぐっ」
 途中で言葉を止め、みあおが眼を白黒させた。
「えっ? 飴、喉に詰まらせた?」
 イヴが慌ててソファから立ち上がった。
「お、おい、えーと、みあお!」
 名前を呼んで、春華がどんっとみあおの背を叩いた。途端、みあおの口から人工的な苺の香り漂う飴玉が飛び出た。
「ぷはぁっ! た、助かったっ。伍宮、ありがとぉ」
「ったく、嚇かすなよな〜」
 そう言い乍ら、細い喉をさすっているみあおを見、春華はぷっと吹き出した。
 何だかよく分からないが、面白い。
 箱の中で唄う女と面と向かって話すのも。
 自己紹介しかけて飴を喉に詰まらせる少女に礼を言われるのも。
 初めて逢った相手なのに、奇妙に波長が合っている気がする。
 程よい違和感と、それなりの同調性。
 (ちょっと熱めの風呂に入ってるみてえ)
 春華はそんなことを思い、机の上に並べられた菓子の袋に手を伸ばした。
「なあ、何だよ、これ」
「何って、お菓子だよ。それは、ポテトチップス」
 みあおが応じた。
「菓子は分かるけど……ぽてとちっぷす? あ、それも何回か聞いたことあるな。薄く切った芋を、からくだものみたいに揚げたヤツだって」
「からくだもの?」
 イヴが鸚鵡返しに訊いた。
 春華は軽く頸を傾げ、額にかかる黒髪を掻き上げた。
「あー……っと、桂心とか、梅枝とか。米や豆の粉を練って、油で揚げたよーな唐菓子。前、俺がいた世界じゃあ、高貴で偉そうな爺様達がよく食ってたんだけど。……でも、これはそれより旨そうだよな」
 みあおが、「コンソメ味だよ、食べる?」と、ポテトチップスの袋をばりっと開けた。
「ちょっと待って、ここでのんびりパーティしてる暇はないのよ。遊園地に行かなくちゃ」
 春華の言う「前にいた世界」に多少興味を惹かれつつ、イヴがみあおを諫止した。
「あ、そうだったっ! 遊園地!」
「遊園地?」
 春華がみあおとイヴを交互に見た。
「さっき武彦さんが言ってた、調査の件。これから私達三人、遊園地に遊びに行くことになってるの」
 イヴが春華にウィンクしてみせた。


SCENE[3] 黒電話の向こう側


「だからねっ、月島が、草間に調査を依頼した理由が知りたいの」
 みあおが、草間のデスクに置かれた黒電話の受話器に向かって、声を張り上げていた。
 電話の相手は、月島つかさ。今回の一件の依頼人である。遊園地に向かう前に、もう少し詳しい事情を聞いておいた方がいいとみあおが提案し、興信所の電話を拝借して月島にコンタクトした。
『理由って……、だから、メリーゴーラウンドに乗っていた小学生の頃の私のことが気になって。それに、私以外の誰にも見えない、逆回転する遊具を擁した遊園地なんて、放っておけるわけがないでしょう』
 月島がさも当然そうに言った。
「むぅ」
 みあおは言葉に詰まり、頬を膨らませた。
 言われてみれば、まあ、そうかな、という気にはなる。
 なるのだが――――何かしっくりこないものがある。
 自分の理解の範囲を超えた事象に出遇った時に、人はそれを抱え込むか、誰かに救いを求めるかするものだ。
 だが、その相談の鉾先が興信所、というのは。
 草間興信所が心霊怪奇関係の、幻と現実の狭間に足を突っ込んで抜くに抜けなくなっているという現状を詳しく知っている者でなければ、思いつかないのではないか。
 今時、個人経営の小さな興信所に持ち込まれる依頼と言えば、浮気の裏取り、素行調査、ストーカー撃退、人捜し、迷子のペット探索。その程度。
 メリーゴーラウンドの馬上に昔の自分が見えたからと、それを興信所に吐露しに来るだろうか。決して安くはない調査費用を携えて。仮にも大学助教授が。
 無論、みあおはそこまで思い及んだわけではないが、ただ何となく、腑に落ちないものを感じていた。
「……でも、ここって、こーしんじょだよっ? 何かいろいろ、たとえば人捜しとか、誰かの秘密を調べたりとか、そーゆーことするところだよ」
『分かってます』
「あ、じゃあ、月島、その小学生の自分のこと捜してるんだっ?」
 これはいいことを思いついた、と、みあおが明るい声を上げた。
『別に、捜してるわけじゃ』
 月島は困惑したような声で応え、受話器から少し口を離して溜息を吐いたようだった。
『……もし、あなたが言うように、捜しているんだとしたら。それは今の私がじゃなくて……小学生の私が何かを捜しているんじゃないかしら。だから、あんな風に私の前に姿を現したりしたんじゃないかな、と……思うのだけど』
「そう……なのかな」
『詳しいことは、調査してもらえれば。そのためにそちらに伺ったんですから』
「それもそうだね」
 みあおの語尾に重なるように、電話の向こうでドアの開く音が響き、続いて「月島先生」と呼ぶ声が聞こえた。
『あ……、じゃ、そういうことで、お願いします』
 月島はみあおに言い、受話器を置こうとして、何を思い直したか「あの」と言葉を継いだ。
『こんな用件で、私がそちらの興信所に伺う気になった理由は、多分……泣いていたから』
「泣いてた? 誰が?」
『メリーゴーラウンドに乗っていた私が。私、憶えている限りでは、あんな風に泣いたりしない気丈な子供だった筈なのに。だから、どうして小さな私が泣いているのか知りたくなって。一時の幻だと笑って済ませられなくなって。ほら、興信所って、物事の真相を審らかにしてくれるところでしょう? だから、何かそれらしい真実を掴んでくれるんじゃないかと思ったの。……それに……』
 あの場処にこのまま予定どおりマンションが建ってしまったら、あの子はどうなってしまうのだろうと、不安に駆られて――――。
 月島はそう言って、今度こそ受話器を置いた。


SCENE[4] オレンジ色の憧憬


 闇の中に、ぼうと浮かび上がる情景。
 現実感を喪わせるようなオレンジ色のライトに照らし出されたその一角、月島の言っていたとおり、たった三つだけの遊具がそこに蹲っていた。
 ジェットコースター、観覧車、そしてメリーゴーラウンド。
 そのどれもがまだ時を止めたまま、身動ぎもせず三人を待っているようだった。
「本当に、他にお客さん、いないね!」
「お客さんどころか、遊園地のスタッフらしき人影もないわね」
 みあおとイヴが、オレンジの中を歩き乍ら言った。
 春華は何度も眼を屡叩かせ、二人の後を蹤いて歩いた。
 (やっぱ、夜が明るいのはどーも苦手……。あ〜、眼がチカチカする)
 そんな春華の心中を見透かしたかのように、イヴが突然くるりと振り返った。
「春華? 眼が痛いの?」
「ん、ちょっと。明るいの、苦手」
「明るいって言っても、そんなに眩しい光じゃないわよ」
 そう、イヴが日々浴びているステージの照明に較べたら、この程度は明るいうちにも入らない。加えて、ステージライトというのはどうしてああも熱いのか。あれはもうライトというより熱光線の部類だろう。
 春華は、そうかもしれないけど、と口の端を歪ませた。
「人間にはそーでも、俺には充分眩しいの。夜は冥いもんだって相場が決まってたし、眼が闇に慣れてるからな」
 夜風に黒髪を揺らし、柘榴染めの眸を手指で擦っている男子中学生。
 土曜だというのに制服を着ているのは、補習でもあったか、それとも部活動の帰りか。
 その表情にどこかあどけなさを滲ませた少年は、興信所で出逢った時から変わらず、どこか軸のずれたことを言い続けている。
 (この子って――――)
 イヴは、一瞬訊くのを躊躇ったが、結局好奇心の方が勝った。
「ねえ、春華。あなたって」
「イヴー! こっち見てっ」
 いきなり、みあおがイヴと春華の間に割って入って来た。
 その手に構えたデジタルカメラのレンズが、イヴの顔を捉えている。
「びっくりしたァ」
「えへへっ、みあおねっ、今日はこのデジカメで、きろくえいぞう、激写するんだ!」
「げ、激写……?」
「うんっ! ムービーも撮れるし、それに、みあお特製霊羽付きだからね! 霊でも何でも、きれいに撮れちゃうんだよっ」
 そう言って、みあおは、今度は春華の方にレンズを向けた。
「ほーら、伍宮の顔もバッチリあざやか……」
 得意げに言いかけて、みあおは元気に飛び跳ねていた体をぴたりと止めた。
「あ……あれっ?」
 カメラの背面、レンズに映じた画像を確認できるモニター部分。
 そこに、伍宮春華の姿がない。
 レンズは確かに、彼の方を向いているのに。
「あぁ? 何?」
 春華が、指先でちょんとデジカメを突いた。
「……あ! カメラな! 悪い悪い、俺、気付くの遅ぇよな」
 ぱっと笑って、春華はレンズに向かってぐいと親指を立てて見せた。
 その瞬間。
 無から有が生まれ出るように、オレンジ光と遊具しか写っていなかったモニターに、春華の姿が浮かび上がった。
「うわお」
「手品みたいで素敵ね」
 横からモニターを覗き込んだイヴが微笑んだ。
「おっかしいなぁ……なんでさっき、写んなかったんだろー?」
「それ、多分、カメラのせいじゃなくて、春華の方が問題なんだと思うな」
 イヴがみあおの肩に手を添え、春華を見遣った。
「ね、春華。せっかく仲良くなれそうなんだし、隠すこともないでしょ? あなた、誰?」
「誰って……」
 春華は、暫し逡巡の後、急に照れくさそうに顔を背け、
「天狗。生まれは京の北山。その後、あちこち転々としたけど」
 そう応えて、夜空を見上げた。
 天狗。
 天狗というと。
 山の異怪、神霊。
 人にて人ならず。
 鳥にて鳥ならず。
 翼を有し、神通力を持ち、自在に飛び回り、悪戯を好む。
 あの、天狗か。
「京の北山って……、もしかして、平安京?」
 イヴの問いに、春華は「うん」と肯いた。
 成る程、それでテレビを知らずに育ち、菓子のことを「からくだもの」などと言ったりするのか。
「そう、天狗。知らなかった、天狗って可愛いのね」
「か、可愛いって言うことないだろ! 仕方ねーの、俺はまだ天狗としては若すぎるくらい若いんだからさ」
 春華が眼許を赧くして反撥した。
「でも、伍宮が天狗なのと、みあおのデジカメに写らないのと、どーいう関係があるの? これじゃ、せっかくの霊羽が役に立ってないじゃんっ」
 みあおが不服そうにカメラを揺らした。
「そうねェ、異界から来た者は写らないってことはないわよね、だって私はしっかり写るんだし。それに、霊羽、だっけ、それがあれば人間以外も撮れるのよね?」
 イヴの言葉に、春華がぴくんと反応した。
「なあ、イヴ。それ、どういう意味?」
「え?」
「イヴがカメラに写るのは当然じゃねぇの? それに、みあおの霊羽がどーとかこーとか。……二人とも、俺に何か隠してるだろ」
 イヴとみあおが顔を見合わせた。
「別に、隠してなんかないわよ、訊かれなかったから言わなかっただけ」
「みあおも、隠してないよ! んー、ちょっと説明しにくいんだけどね、みあおは……青い鳥、かなっ。霊羽はね、だからみあおの羽なんだよ!」
「私は、異世界……いわゆる魔界から来たの。この世界のことをいろいろと知るためにね。それがどういうわけか、今じゃアイドルなんてやってるけど。日本の知識はそれなりに得たから、春華が棲んでたっていう一千年の昔、京の都のことも分かるわよ」
 青い鳥娘に、
 魔界の女、
 加えて京の若天狗。
 春華がそれと意識しなければみあおの霊羽を添えたカメラに写らないのは、千年という時の流れを越えて来た旧き存在、それも独特の神力を有した天狗だからかもしれない。
「……月島つかさが昔の自分を見たっていうこの遊園地で、こんな俺らが遊んだら、何かすっげー面白い光景が見えそうだよな」
 春華が、肩を揺すり乍ら愉しげに笑った。
「じゃ、そろそろ遊具に乗ってみる?」
 イヴの提案に、みあおが諸手を挙げた。
「はいはいっ! みあお、絶対、ジェットコースターに乗るっ」
 言うが早いか、みあおは他の二人の反応も確かめず、ジェットコースターに駆け寄っていってしまった。オレンジのライトの裡、菓子を詰め込んだ赤いリュックが次第に小さくなり、やがて見えなくなった。
「……身長制限、ひっかからないかな」
 呟いたイヴだったが、スタッフの一人もいないこの遊園地で身長制限も何もないものだと思い直し、春華を見た。
「春華は? どうする?」
「あー、俺は、ジェットコースターはちょっと苦手だから。けど……メリーゴーラウンドもあんまし興味ないし。観覧車に乗るか」
「あら、奇遇ね。私も観覧車に乗ろうかと思ってたの」
「そっか、じゃあ一緒に乗るか?」
「んー、きっと、一人ずつ乗った方がいいわよ、こういう場合。見えるものもそれぞれ違うだろうしね」
「そうだな。んじゃ、えーっと、れで……れでー・ふぁうすとってことで、先にどーぞ」
「レディ・ファーストね。分かったわ、ありがとう」
 イヴはくすくす笑うと、春華の先に立ち、観覧車に向かって歩き出した。


SCENE[5] それぞれの心―SIDE:MIAO―


「えっと……とりあえず、荷物は置いておいた方がいいのかな」
 みあおは、誰もいないジェットコースター搭乗口で、用意されていた籠の中にリュックを入れた。勿論、お菓子は置いても、デジタルカメラだけは持って乗る。後でイヴや春華、それから草間と月島に見せて、驚かせなくてはいけない。
 デジカメ片手に、みあおはコースターの先頭坐席にぴょんと飛び乗った。
「このバーを下げて……とととっ」
 頭上に上がっていた安全バーをお腹の位置まで下げようと力を入れた途端、ガクン、とコースターが揺れた。長い車両が、敷かれたレールの上をゆっくりと、後ろへ向かって動き出す。
「わっ! ま、待ってっ、まだ、バーがちゃんと下りてないよっ!」
 みあおは慌ててバーを持つ手に全体重を掛けると、ぐんっと勢いよくそれを引き下げた。今度は腹部に食い込むほど深くバーが下がってしまったが、已むを得ない、ジェットコースターはもう発車してしまっているのだ。
「み……身動き、とれない、かも」
 みあおは右手にカメラを握りしめ、苦しげに息を吐き乍ら無理矢理頸を捩って斜め後方を見遣った。
「……ジェットコースターが逆に動くってことはー……」
 普通、ジェットコースターは、先ず高く登ってから、一気に滑り落ちる。そうして、幾度か上がったり下がったり回転したりを繰り返した後、また少し登って元の位置に戻る。
 その逆、というと。
 少し落ちて、多少の蛇行の後いきなり回転し、それから急激に登って、ラストで一気に背後へ向かって落ちるのか。
「それは……こ、恐いっ」
 みあおは、イヴか春華に一緒に乗ってもらえばよかったと後悔した。
 だが。
 それも一瞬だった。
 大した勢いもつかぬまま、コースターはぐるぐるとスクリュー回転をし始めた。
 さして遠心力が働かない状態でコースターが回るというのは、恐怖である。
「う……うわあああああぁ!」
 速いから恐いのではない。
 遅いから恐いのだ。
 回るたびに安全バーがみあおの体をコースターに繋ぎとめてはくれるものの、気を緩めたら落ちそうな気がする。
 小鳥に変身して脱出するという方法もあるが、こうしっかりと体を拘束されていてはそれも難しい。羽に傷を作ってしまいそうだ。
「たっ、助け――――」
 思わず、助けを呼ぼうとした時。
『……大丈夫だよ』
 声が、聞こえた。
「えっ……?」
『一緒だから、大丈夫』
 優しい声。
 身に馴染む響き。
 自分であり、自分でない誰か。
 決して境界線を引くことのできない、融合の中に在る囁き。
「……みあお……?」
『そう。みあお。みあおの中の、みあお』
 言われて、みあおの心を不意に白さが過ぎった。
 白い天井。
 四角い部屋。
 同じリズムを刻み続ける機械音。
 消毒液の匂い。
 繋がれた体。
 冷たい床。
 そして――――あたたかい、心。
 みあおの心。
 脈動の裡に融け合った、みあおの人格。
 かつて十三年という歳月を生きた真実の自分。
 その自分を支えるために生まれ来た「みあお」達。
 みあおが生きるために。
 毀れてしまわないために。
 そのために皆が一つに融合することを決断し、今のみあおが生まれた。
 今ではもう、皆の声は聞こえない。
 聞こえない筈だ。
 一つになったのだから。
 六歳の、小学生の、みあおになったのだから。
 けれど。
『大丈夫、しっかり掴まって。落ちたりなんかしないから』
『大丈夫』
『ほら、これに乗るのを愉しみにしてたんだから、笑って』
『夜空がきれい』
 声に導かれるように、みあおは空を仰いだ。
 ジェットコースターはすでに回転から解放され、後ろに向かってレールを登り始めていた。カン、カン、カン、カン、とコースターを引き上げる金属質な音が鳴っている。
「ほんとだ……きれい」
 みあおは、空にカメラのレンズを向けた。
 オレンジ色のヴェールを纏った闇が、星々を孕んで遠く拡がっている。
「……みあお達、一緒に見てるんだよね、この空」
『うん。一緒だよ』
『でも、そろそろ――――』
『そうだね』
『元気でね、みあお。しあわせに、なってね』
「あ……」
 みあおが、もう一言何か言おうとした瞬間、頂点まで登り詰めたジェットコースターは勢いよく直滑降を始めた。
「わあああああああぁぁあっ!?」
 みあおの叫び声が、夜の底に呑まれていった。


SCENE[6] いまひとときの遊園地


 三人ともがそれぞれ遊具から帰還し、その後は遊園地のベンチにお菓子を拡げてのミニパーティとなった。
「はい、伍宮、ポテトチップス」
 そう言って菓子袋を差し出すみあおの顔は、心なしか蒼醒めていた。
「何だよ、ジェットコースター、恐かったのか?」
 春華がポテトチップスを受け取り乍ら、みあおの顔を覗き込んだ。
「ぎ……逆回転って、スリル満点なんだもんっ」
「そうね、ジェットコースターはそうかも。その点、観覧車は大したことなかったけど」
「そーだな。……でも、面白いもんは、見られた」
 イヴは春華の言に肯き、
「……さすが、観覧車、っていうだけはあるわよね。あんな情景を見せてくれるために回るなんて」
 観覧車に視線を投げた。
 イヴに続いて春華を降ろした観覧車は――――尤も彼は空中で飛び降りたのだったが――――今はその動きを止めてひたすらに沈黙していた。
「そっか、伍宮とイヴは、何か、見たんだね。みあおは、見たっていうより、聞いた……って言った方が正しいかなぁ」
 みあおはビスケットを頬張りつつ、呟いた。
「聞いた? じゃあ、そのカメラは役に立たなかったの?」
 イヴに言われて、みあおはカメラを手に取った。
「んー、夜空はね、撮ってみたんだけど。……撮れてる、かな?」
 電源を入れ、ディスプレイモードを再生にセットする。
 と。
 モニターに写し出されたのは。
「おー。きれーなお姉さん。……ってか、誰? これ」
「……中学生くらいの女の子もいるわね。何か、みあおちゃんに肖てるけど……」
 モニターいっぱい、夜空に舞う青い羽。
 輪郭ははっきりしないけれど、朧に重なり合うように写っている笑顔。笑顔。笑顔。
 みあおに肖た、青い羽に愛された笑顔達。
「誰って……みあおだよ」
 みあおはモニターに向かって笑いかけ、それから急に両手で拳を作ると、
「うしっ! なんか元気出てきたっ!」
 カメラを脇に置き、空に向かって小さな拳を振り上げた。
「何だ〜? 急に元気いっぱいだな」
 春華がぱりっとチップスを囓り、笑った。
「……まあ、いろいろあるよな。要するにみあおは、逢いたい人に逢えたってことだろ? よかったな、記録映像、残ってて」
「うんっ。……あ、伍宮やイヴは? みあおみたいに、逢いたい人に逢えたのっ?」
「私は」
 イヴはオレンジジュースの缶を開け、一口、喉に流し込んだ。
「今更逢いたいなんて願ってたつもりはなかったんだけど。でも、結果的に逢えちゃったし……私があの人を呼んだんだって、言われちゃったしね」
「俺は、観覧車の外に、前にいた世界の町並みが見えたんだけどさ。……なんだろ、やっぱ俺がもう一度見たいって、思ってたのかな。そんなこと、今まであんまし意識してなかったけど」
 春華が大きく伸びをし、頭の後ろで手を組んだ。

 逆行する遊具の中でそれぞれが見たものは、
 きっと、
 今の自分が無意識に抱え込んで、見ない振りをしていた記憶。
 見ない振りをしたそのことさえも、忘れていた蟠り。
 懐かしくて、
 苦しくて、
 少し優しくて。
 それを通り過ぎて成長したのだと思っていた何か。
 遊園地の刹那の遊びのその中でしか、出逢えない想い。
 現実からほんの少し遊離した、一時の幻――――。

「月島、さあ」
 みあおが言った。
「小学生の頃の自分が泣いてたって、言ってたよね。泣かない子供だった筈の自分が泣いてて驚いたって。……でも本当は、昔の月島、泣きたかったんじゃないかなぁ。泣いてもいいよって、誰かに言ってほしかったんじゃないのかな」
「そう言ってほしくて……そういう自分を受けとめてほしくて、幼い彼女がここに姿を現したってこと?」
 イヴが風に乱れた髪を手で束ね、頸を傾げた。
「っていうより、月島自身が無意識のうちに昔の自分を呼んだんじゃないか? 俺らだって、そうだったんだし。多分、月島、今も誰かの前で泣いたりできないんだ。そういうとこ、今も昔も変わんないんだろ。だから……自分の中に押し込めてきた気持ちが、こんなかたちで具現化したんじゃないかな、って、さ。俺は思う」
「おっ! 伍宮、いーこと言う!」
 みあおが、ばんっと春華の背を叩いた。
「いってぇな! あー、もー、お前はっ」
 春華がみあおを捕まえて、その頬をぐにっと引っ張った。
「ひ、ひたひよっ、ひつみや〜」
「もう、何じゃれ合ってるのよ」
 イヴが苦笑交じりに言い、ジュースをもう一口飲んだ。
 ――――結局。
 月島つかさは、遊園地が在るから、ここへ来たのではないのだ。
 他ならぬ彼女の心が、遊園地をこの場処に作った。
 一時の遊びと割り切って、その中でしかさらけ出せない自分に出逢うために。
 日々に疲れた彼女の眼に映ったのは、闇に優しく滲むオレンジの光。
 懐かしくて、切ない光。
 (お礼、言うべきかもしれないわね。遊園地に。あなたにも。……愉しかったわ。ありがとう――――)
 イヴの心裡を、やわらかな風が滑り落ちていった。
 眼を上げると、皎い月に淡い暈がかかっていた。
 明日は、天気が崩れるのかもしれない。
 雨の中でも、遊園地はオレンジに濡れ輝いているのだろうか。
「……この遊園地、彼女がもう一度訪れて、少女の頃の自分と一緒に泣いたら、きっと消えるわね」
 イヴの声に、春華はみあおの頬を放し、二人は顔を見合わせて頸を縦に振った。
「よーしっ、じゃあさっ、消えちゃう前に、記念撮影しよう!」
 みあおがイヴと春華の手を左右に引き、腕を組んで、カメラを構えた。
「えっと……レンズをこっち側に向けて、っと……」
 レンズをくるんと自分の方に反転させると、モニターに、顔を寄せ合った三人の姿が映じた。
 みあおはシャッターボタンに指を掛け、音頭を取った。
「んじゃ、いくよっ! 笑って笑って! はいっ、チーズ!」
「……ちーずって?」
 春華の疑問符に、シャッター音が重なった。


土曜の夜に遊びましょう / 了


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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+ PC名 [整理番号|性別|年齢|職業]

+ 海原・みあお
 [1415|女|13歳|小学生]
+ イヴ・ソマリア
 [1548|女|502歳|アイドル兼異世界調査員]
+ 伍宮・春華
 [1892|男|75歳|中学生]

※ 上記、受注順に掲載いたしました。

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、杳野です。
みなさま、お忙しい中、しかも土曜の夜という素敵な時間帯に、急な依頼にご参加くださいましてありがとうございました。
さすがに納品は土曜夜というわけにはいかず、少々残念です(笑)
今回は三名様の募集で執筆させていただきましたが、私としてはこれくらいの少人数の方が、参加PC様同士の関わりを濃密に書けて嬉しかったり。
では、またの機会がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

――海原みあおさま。
こんにちは、またのご参加ありがとうございました!
調査依頼三作続けてお逢いできて光栄です^^
今回は、ストーリーテーマに沿って、少しみあおさんの心の中に光をあててみました。
デジカメご持参くださったおかげで、イヴさん、春華さんとの素敵な記念写真も撮影でき、お三方のよい思い出になればと思います。
逆行ジェットコースター、お疲れ様でした(笑)