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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


収穫祭
0・依頼
「芋ほりを手伝ってくださいまし。」
農作業に適した格好をした男は草間にそういった。
その一言で草間の糸がぷつんと切れた。
「ここは何でも屋じゃない。おい、零。客のお帰りだ。」
「は、はい・・・。」
零がおたおたと周りを見回した。
男はそれでもなお言葉を続けた。
「草間様、収穫時期は今しかないのございます。貴方様のお力をお借りせねば、収穫されない芋たちは腐るばかり。どうかお力をお貸し賜りたいのでございます。」
丁重に男は頭を下げた。
草間は眉間にしわを寄せたまま目をつぶった。
「・・・なぜ俺じゃなければならん?」
「えぇ、他のお方では辿り着くことも出来はしないと。」
男はゆっくりと頭を上げた。嫌な予感が草間に告げた。
これはまたあっち方面の依頼なのだと。
「もちろん報酬の方は弾ませていただきます。どうでございましょう?お手伝いいただけますでしょうか?」
「・・・俺よりも適任のヤツを紹介する。それでいいか?」
「もちろんでございますとも。貴方様のお墨付きであれば十分お手伝いいただけますから。」
草間は(さて、誰に頼んだものか?)とタバコに火をつけてくゆらせた。

1・集
伍宮春華(いつみやはるか)は今日も今日とて草間興信所に遊びに行く途中であった。
いつもの和服、いつもの道、しかしいつもと違っていたのは草間興信所ビル前に1人の男が立っていたことだろうか。
男に興味を惹かれ伍宮は声をかけた。
「あんた誰だ?武彦の知り合い?」
男は伍宮の馴れ馴れしい口調にムッとしたようだった。
「なんだお前こそ。草間興信所で保護された迷子か?」
この瞬間、伍宮は男・天音神孝(あまねがみこう)を敵と認めた。
「・・・」
睨む伍宮に対し、天音神は面倒くさいと言わんばかりにビルへと入っていく。
「待ちやがれ!」
伍宮も天音神を追いビルへと入った。
草間興信所の中から丁度話し声が聞こえてきた。
天音神も伍宮もつい聞き耳を立てた。断片的に話が聞こえた。
『芋ほりを手伝ってくださいまし・・』
『他の方では辿り付く事は出来はしない・・』
『芋掘り・・?』
『ほら、こんないい助っ人がいたわ』
年食った男と若い男とシュライン・エマの声。
いよいよ話が完結しそうな時、満を持して伍宮はドアを開けた。
「面白そうだな武彦!俺も行くぞ!」
「俺も行く!!」
伍宮がドアを開けると同時に天音神も張り合ってドアを押しのけた。
伍宮が天音神を睨むと天音神も伍宮を睨みつけた。
「あら。適任が来たじゃない。決まりね?武彦さん。」
シュライン・エマがそういうと草間はがしぶしぶ頷いた。
ソファに座っている男・柚品弧月(ゆしなこげつ)は何やら考え込んでいた。
「そろそろ行きませんと、収穫が遅くなりますので・・。」
依頼人らしき男が口を挟んだ。
「せめて準備くらいはさせてもらいたいな」と、天音神が言った。
「そうね。それにまだ色々とお話も聞きたいし。」エマが目を光らせた。
「そうでございますね。準備には30分ほどあればよろしいでしょうか?」
男はそう言って時計を見た。
「わかった。即行で準備してくる」と天音神は興信所を後にした。
「俺もちょっと行ってくる」天音神の後に続くのは嫌だったが伍宮も興信所を後にした。

2・仕度
駅前マンション201号室。
先ほど暇を持余して出てきた部屋に伍宮は舞い戻った。
どうせ草間興信所の依頼にろくなものが有るわけがないと思った伍宮は、日本刀を持って行こうと帰ってきたのだ。
用事を済ませるとすぐに伍宮はマンションを後にした。
歩きながら、これから行く芋掘りに思いをはせた。
なんで武彦じゃないとダメなんだろう?よほど道がキツイとか?
ま、俺はもともと山暮らしだったし荒れ道には慣れてっから適任だよな。
・・等と考えているうちに再び草間興信所に着いた。
しかも、なぜか先ほどと同じように天音神がいた。
「お前、ホントにその格好でいくつもりか?」
伍宮を見ると天音神はそう言った。
たしかに伍宮は見た目はさっきと一緒だが・・・。
「あんたこそなんだよ。そんなんで芋掘りできるのかよ。」
天音神は先ほどとはうって変わっていた。
動きやすさ重視の服・重々しく膨らんだリュック・軍手をはめた姿はまさにサバイバー。
またしても睨み合う2人。数分睨み合った後、2人は同時に駆け出した。
「ただいま!!」
「いざ行かん!俺の芋!」
再び、バンッとお互いを牽制するように天音神と伍宮は同時に草間興信所に入った。
「・・・」
所内の視線は天音神に集まった。皆が見つめている。
「いきましょう」とエマが依頼主を促して、一同はようやく畑へと歩き出した。

3・嫉みの道
エマが道すがら伍宮と天音神に依頼の詳細を教えてくれた。
「掘るものは『サツマイモ』・『嫉み(そねみ)の道』という危険な場所を通る・『嫉みの道』は人の負の感情が集まる場所」
伍宮は面白い事になりそうだ、と頭の中が一杯だった。
そして説明が終わる頃、一同は『嫉みの道』へと辿り着いた。
いつの間にか東京の町並みが消え、辺りが霧に覆われていた。
「さて申し訳ないのですが、襲ってくる輩もおると思いますのでご用心くださいませ。」
男はそういうと一歩を踏み出した。
「・・・」
一同はその一歩に続く。
と次の瞬間、人の腐りかけの様な者が次々と溢れる様に現れた!
「なんだよこれ!」
伍宮は思わず羽を伸ばし空へ飛んだ。
天音神が光る銃で訳のわからない敵を吹っ飛ばしていく、がキリがない。
このまま天音神がやられてもいいと思った。
が、エマが巻き込まれては困る。幸いエマは柚品に守られているが圧倒的に敵が多い。
伍宮は天音神の銃を見た。あれが使えないだろうか?
伍宮はごぉっという音と共に突風を天音神をギリギリかする程度の位置に狙いを定めて押し出した。
「風に向かって打て!」
天音神は伍宮の指示を瞬時に理解し行動した。
突風にレーザーの光が拡散され、強い光の渦となって大量の敵を蹴散らした。
・・・敵が全滅すると伍宮は地上に降りた。
「お前のおかげで助かった。ありがとな。」
天音神がそう言った。伍宮はにやりと笑った。
「俺の名前、伍宮春華ってんだ。あんたこそスゲェじゃん。」
「俺の名は天音神孝だ。」
天音神と伍宮は向き合ってお互いの名前を初めて知った。
伍宮の中から天音神に対する嫌な感情はなくなっていた。
「流石、草間様のお墨付きでございます。お見事。」
拍手の後、男が一方向を指差した。
「畑はもうすぐです。襲ってくる輩も、もうおりますまい。」
一同は最初の依頼を果たすべく、畑への道を歩き始めた。

4・収穫
金色の葉、一面の畑。その一区画に緑の葉が見えた。
「サツマイモってあっちの緑色の葉じゃなかったかしら?」
エマが何やら質問していたが、伍宮はそんなことお構いなしで準備体操をしていた。
目の前のこれ全部、俺が掘ってやる!
「この金色の葉が独自のサツマイモで・・」「品種改良してメッチャ美味いとか?」
天音神がシャベルと銃を持って何やら悩んでいる。
「とても美味しいですとも」といい終わるが早いか、伍宮の準備体操が終わった。
「腕が鳴るぜ!俺に任せとけって!こういうのは山に居たから慣れてんだよ!」
いたずらっ子のように笑い、伍宮は作業を開始した。
「あ!こら!抜け駆けすんな!」と後に続いて天音神も作業を開始した。
芋は面白いように収穫できた。思ったよりも土が固くない。
伍宮は天音神と競うように芋を次々と収穫していった。
出てくる芋は金色がかった白色に見えた。全部の芋を収穫すると二つの山が出来た。
白色の芋と普通に売っている赤紫の芋の山。
「ありがとうございました。今年は無事に収穫を終えられました。貴方様方が一生懸命掘って下さったおかげでございます。」
男は深々と頭を下げた。そして言った。
「報酬は赤紫のサツマイモの山、全てをお持ち下さいませ。」
「なにー!?じゃあそっちのメッチャ美味いって芋は!?」
天音神が掴みかからん勢いで異議を申し立てた。
「申し訳ございません。既に行き先が決まっておりますゆえ。近日貴方様方の所にも届くかもしれませんが・・。」
「なんだよそれー!」伍宮は不愉快さを満面に浮かべた。エマが制止しなければもっと言っていただろう。
「どういうことでしょう?私達の所にも届くというのは。」
伍宮を制止したエマは冷静に男にそう訊いた。
「・・手伝って頂いた事ですし、お答え致します。実は私、運命管理局員でございます。これは私がサツマイモに似せて作った『幸せ』。これを人々に配る事によって様々な幸せを皆様にお届けするのです。腐らせてしまえば『不幸』になりますが。」
『運命管理局?』と頭に疑問符が浮かんだが、まぁ、俺みたいなのもいるわけだしなぁ・・と伍宮は思った。
「では、こちらの紫の芋は?」
柚品は素朴な疑問を口にした。
「そちらは趣味で育てたサツマイモ『ベニアズマ』でございます。『幸せ』を作る参考にした物でございます。」
男は微笑んで再度深く礼をすると雲散霧消した。
と同時に白い芋の山も消え、4人は草間興信所前に紫の芋の山と共に立っていた。

5・収穫祭
芋を草間興信所内に運ぶと、エマと零が調理してくれた。
芋づくしの料理がずらっとテーブルの上に並べられると伍宮はまず芋の天ぷらにかぶりついた。
天音神をチラッと見るとこちらもガツガツとかぶりついていた。
天音神には負けん!
2人の食べっぷりはいつの間にか大食い競争へと発展していった・・・。

よきライバルがいること、これもまた幸せなのでしょう。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1892 / 伍宮・春華 / 男 / 75 / 中学生】
【1990 / 天音神・孝 / 男 / 367 / フリーの運び屋・フリーター・異世界調査員】
【1582 / 柚品・弧月 / 男 / 22 / 大学生】
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■         ライター通信          ■
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伍宮春華様
初めまして、とーいと申します。
この度は曖昧な調査依頼にご協力いただきましてありがとうございます。
伍宮様は『無邪気』というイメージを受けましたので、このような形になりました。
天音神様との絡みが大変かいてて面白かったのです。
詰め込みすぎの感がありますが、少しでも幸せを感じていただけたら幸いです。
それでは、またお会いできることを夢見つつ。