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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


NINE LIVES
0・依頼
「9度目の家出なんです。今日で3日帰っていないんです!今度こそ無事に保護しないと大変なんです!腹もすかせているだろうし・・・あぁ。何とかしてください!」
初老の男は草間興信所でそう力説した。
「・・・で。誰が家出したんですか?」
草間はそういうとはぁっと溜息をついた。
どうも焦っている人間というのは自分の言いたい事を言うわりに肝心の部分を飛ばして話すのが常らしい。
「あ。あぁ、私の息子です。大体20歳くらいなんですけど・・・。」
大体?なぜ子供の年齢を言うのに推測で言う必要があるのだろうか?
草間は、男の話の中でさらに引っかかる点があった。
『今度こそ無事に保護しないといけない』という件。
では今までの8回の家出は無事に保護できなかったのであろうか?
そんな思考を巡らしていた草間に男はさらに強い語調で言った。
「とにかく、お願いです!息子を、息子を見つけてください!行きそうな場所をメモしてきました。わしでは年を取りすぎて身動きが思うようになりません。」
「あー・・・わかりました。では、優秀な部下たちに探させます。」
実際には部下ではないのだが、少しの見栄を持って草間はそう言った。
さて、誰に頼もうか・・・。

1・バイト
父親と喧嘩し家を出て数日。金になる話を見つけねば・・と悠桐竜磨(ゆうどうかずま)は思っていた。
そこで思い出したのが草間興信所の噂だった。
人手が足りなくて臨時を雇っているのだと。なら、俺は適任じゃねぇか?と思った。
が、噂程度にしか聞いていない興信所はなかなか見つからない。
参ったねぇこりゃ・・。と思っていたら1人の少女を見つけた。
悠桐は背に腹は変えられないと迷わず声をかけた。
「ここらに草間興信所ってのがあると思ったんだけど、知らねぇ?」
少女は色白な青い髪の少女だった。
「はい、ありますよ。あたし、今から行くところですからご案内しますね」と爽やかにそう言った。
何となくバツが悪くなって「じゃあ頼むわ」と素気なく言った。
少し歩くとビルが見え、その中へと少女と悠桐は入った。
「こんにちわー、草間さん。なにかお手伝いできる依頼ありませんかー?」
草間興信所に少女が入る。それに続くと何やら接客中だった。
「悠桐竜磨って言いますが、何か仕事ありませんか?」
とりあえず、初対面は慎重に・・と悠桐は頭を下げた。
草間武彦らしき人物と客、さらにもう1人男がいた。
「柚品(ゆしな)さん!お久しぶりです!」少女が駆け寄っていく。
「丁度いいとこに来たな。依頼内容はこの人の息子の捜索。詳細はそこの紙にメモっといた。・・ということで頑張ってくれ、我が部下たちよ。」
草間が立ち上がり軽く右手を上げると、悠桐たちが今入ってきたドアからささっと出て行った。
柚品と少女が何やら呟いている間に悠桐は草間の座っていた場所に座り、依頼人らしき男から事情を聞くことにした。
ドサクサに紛れて勝手に雇われてやる。
「おっさん。息子の写真とかあんの?えー?ないの。特徴は?名前は?」
もごもごとドモリながら男は口を動かす。
「ちゃ、茶色い毛・・いや、茶髪で。目は鋭く魚を・・いえ、誰にでもガンたれで。耳に引っかかれた・・う、生まれつき傷が。な、名前は茶太郎と・・。」
茶色い毛?魚?と一同の心に同様の疑問符が浮かんだ。
悠桐は先ほど草間が置いて行ったメモをすばやく読み、柚品、少女へと渡した。
さらさらっと読むとまたも一同の心により強く思い描かれるは『猫』。
「まぁ、おっさん。努力するからさ。そんなに気ぃ落とすなよ?」
ぽんと依頼人の肩を叩き悠桐は立った。
「改めて。俺は悠桐竜磨。よろしく頼むぜ」と悠桐は柚品と少女へ自己紹介を求めた。
「柚品弧月(こげつ)です。よろしく」男が言った。
「海原(うなばら)みなもです。よろしくお願いしますね」少女が何やら依頼人に視線を配らせつつ言った。
この瞬間から悠桐は草間興信所の正式な臨時職員となった。

2・捜索隊
依頼人を事務所に残し、三人は息子の捜索を始めた。
「猫ですよね・・」とみなもが言うと「猫だな」と悠桐がいい「猫でしょうね」と柚品も同意した。
とりあえず、三人の意見は一致した。
依頼人から渡された息子のいそうな場所『下町の魚屋』『線路近くのマンション建設用地』『マンション前の公園』いずれから行くべきかと相談したところ、以下の順番で回る事に決まった。
『マンション建設用地』−『公園』−『魚屋』
マンション建設用地へ来るとマンション建設が既に始まっているらしく砂埃を立てブルドーザーやらミキサー車が走り回っていた。
「俺ちょっと聞き込んでくるわ。」
悠桐はそういうと人間が通るには狭い道へと足早に向かった。
これも仕事だしな。さて、猫、いなけりゃ犬でもいい。
この辺に詳しいヤツは・・?と辺りを見回すと、丁度丸くなって寝ている猫を発見した。
『おい。そこの猫』と悠桐は話しかけた。
『なんだよ。・・って何で人間が俺と会話できるんだよ!』猫が飛び起きた。
『んなことより、3日前くらいから耳に傷がある茶色い猫を見なかったか?』猫の質問を無視して悠桐は自分の質問をした。
『・・そういや、それ位からいつも来るヤツがいるなぁ。夕方くらいに来るからよくわかんねぇけど。』
『サンキュ。引き続き寝てくれ』と悠桐は素気なく言った。
『何でお前話せるんだよ!』と聞きたがっている猫を無視した。
2人と合流しようと思い、最初の場所に戻ると柚品がいた。
「どうだよ?そっちは」と聞くと柚品はにこりと笑った。
悠桐に遅れ、みなもが走ってきた。
「見つかった?海原さん」と柚品が言った。
「・・手ぶらか。とりあえず情報交換でもすっか。」
と、悠桐が切り出すと、みなもと柚品は頷いた。
悠桐は猫に聞いた事を誰から聞いたかを省き報告した。
「誰に聞いてきたんですか?あんな狭い道で」みなもが至極当然の質問をした。
「・・まぁ、気にすんな。世の中には知らないほうがいい事ってのもあんだからよ」と悠桐は言葉を濁した。
みなもがそれ以上追求しなかったのが救いだった。
「では、俺の方も報告しようかな。壁沿いに歩いていったら猫の抜け穴があったんだ。そこを調べてみたら、茶太郎はここに来ているようだよ。」
柚品の言葉に今度は悠桐が疑問を口にした。
「どうやって調べればそんなことがわかるんだよ?」
「・・まぁ、人生には知らなくてもいいことが多々あるということですよ」と柚品がにこりと笑った。
「お話を総合しますと、夕方ごろに猫さんは猫の道を通ってくる・・つまり。」
みなもが言葉を切った。
「ここに茶太郎がもうすぐ来る。」

3・救出
夕暮れが町を赤く染めていた。
三人は工事現場、猫の道前に茶太郎を待ち受けた。
「・・・」
神妙に待ち受ける三人。だが・・。
「来ませんねぇ・・。」
「どう調べたか知らねぇけどよ、間違ってたんじゃねぇの?」
「も、もうちょっと待ちましょうよ。」
小声でボソボソと喋る三人。
と、突然鋭いブレーキ音が聞こえ、ダミ声の叫びが聞こえた。
「引いちまえ!そんな猫!」
弾けるように、三人はその声の方向に向かった。嫌な予感がした。
数人の現場作業員がブルドーザーを囲むように立っていた。
ブレーキを踏んだらしいブルドーザーの前には耳に傷を持つ茶色の若い猫が・・。
「あれが茶太郎です!」柚品が叫んだ。
「おら!さっさとアクセル踏まねぇか!」「で、でも・・」
ダミ声の男は現場作業長のようでブルドーザーの運転手に凄んでいる。
「踏め!!」
アクセルが踏まれた。ブルドーザーはまっすぐに茶太郎へと突進する!
「海原さん、ブルドーザーを阻止して!悠桐さんは茶太郎を捕らえたら右!」
まだみなもと悠桐が動き出す前に柚品がそう叫んだ。
迷っている暇はない。悠桐は地を蹴った。
茶太郎との距離・約10メートルを一瞬で走る!
茶太郎を腕に抱き右に飛ぶ。左を見ると、ブルドーザーが水の壁らしきものを突破する様が見えた。
スタッと着地し柚品達の方へ近づくとみなもが何故か顔を覆っていた。
「なんだ?」と柚品に訊くと「茶太郎を助けられなかった思ってる様です」と返ってきた。
「目を開けてください。海原さん」柚品が優しくみなもに囁いた。
「茶太郎は無事だぜ。しっかり見ろよ」悠桐はなるべく優しげにそう呟いた。
みなもが顔を上げ、悠桐の腕に抱かれた茶色の猫が見るとポロポロと泣き出した。
「よかったぁ・・。」
悠桐はどう言葉をかけていいのか分からずにオロオロした。

4・終結
興信所に戻ると依頼人はいなかった。
その代わり、年老いた猫が一匹ソファで休んでいた。
「・・・」
悠桐はなんだこの猫は?と思ったが合点はいった。息子が猫なら親も猫ということか。
「ほら、家に帰んな」悠桐は茶太郎を下ろした。
年老いた猫がピクッと耳を動かし起き上がるとソファから降り、興信所から出て行った。
それに続き茶太郎も興信所を後にした。
興信所の外からどちらの声ともつかぬたった一声、それが無事依頼の終了したことを告げた。
「それじゃ、柚品さん。悠桐さん。また!」
みなもが元気に手を振って興信所を後にした。
「悠桐さんもお疲れ様でした。」と柚品が言った。
少し考えた後、にやりと悠桐は笑いこう言った。
「面白かった。ここ、ヤミツキになりそうだな。」
柚品がにこりと笑ったのが悠桐の印象に残った。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1252 / 海原・みなも / 女 / 13 / 中学生】
【1582 / 柚品・弧月 / 男 / 22 / 大学生】
【2133 / 悠桐・竜磨 / 男 / 20 / 大学生・ホスト】

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■         ライター通信          ■
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悠桐竜磨様
初めまして、とーいと申します。
この度は猫救出ありがとうございます。
熱いのにクールを装う、まだ大人になりきれない少年といったイメージで書かせて頂きました。
今回が初の調査のようでしたので上手く表現できたか分かりませんが、お気に召して頂ければ幸いです。
それでは、またお会いできることを夢見つつ。