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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


CHANGE MYSELF!〜出現、スーパー暴走族!〜


 金曜日の夜……仕事という名の戦いから解放されたサラリーマンやOL、勉強が仕事と言われる身分である学生たちがストレス発散のために繁華街へと足を運ぶ。彼らを分け隔てなく受け入れる街に時の流れは関係ない。いつもこの界隈は不夜城と呼ばれている。イケメンホスト集団がかわいい娘を狙って歩き回る姿も、名もなき画家がその成果を路上で発表する姿も……すべてがここにあってしかるべきものばかりだ。ここには何があっても構わない。
 しかし、この世界には『音』というものが存在する。人間は決して繁華街の風景ではない。この街の中で音なくして生きられない。肩が触れただのと些細なケンカでいい年をした親父が周囲に怒号を響かせる時もあれば、彼女に振られたショックで痛飲し路上で嗚咽する若者もいる。さすがの繁華街もすべての面において心地よい空間ではない。そして今日もすさまじい威力を持った音を振りかざし、道路を跋扈する集団が来る……


 彼らはこの界隈を縄張りにしている、自称『最強の暴走族軍団ムスタング』である。東京の中では最大規模の集団で、暴力団が後ろ盾になっていることで有名だった。返り血と荒馬のシルエットをチームカラーにしているのか、誰もが血の飛び散ったような跡のある特攻服に袖を通している。それが本当の血かどうかはわからない。
 そして今日も荒馬のペイントを施したバイクが群れをなしてやってくる……彼らは爆音で周囲の人間を振り向かせたらまず満足なのだろう。道路工事も驚きの騒音で人々を自分たちに振り向かせるのだ。だが、彼らが振り向いてみたところでメンバーが特にいい表情を見せてくれるわけでもない。その代わりに、酔っ払ったお父さんにもわかりやすい罵声を浴びせるだけだ。彼らにしてみれば、その行為自体が振り向いてくれたことへのお礼と感謝の気持ちなのかもしれないが……

 世の中には物好きというものが存在する。この『ムスタング』は社会からレッテルを貼られた不良少年の集まりだったが、なぜか女子高生たちに人気があった。それは携帯メールを通して広まった『ムスタング』のリーダーに関する伝説が原因だった。列のど真ん中を悠然と走っている丸坊主の男がリーダーの谷だ。

 元々『ムスタング』は歴史の浅い暴走集団で構成人数も少なかった。その頃、この地域には多くの暴走族集団が乱立し、この地の覇権を握るために日々お互いのメンツを賭けて血みどろの抗争を続けていた。谷はしばらくそれを静観していたが、自分にも火の粉が降りかかるのは時間の問題だった。メンバーも彼自身も複数の人間から標的にされ、ただでさえ少ないメンバーがどんどん病院送りになっていった……
 ある日、谷が純白の特攻服に身を包んで金属バット片手にたったひとりで他の縄張りに斬りこんだ。リーダーの決死の思いが綴られた下手な字の置き手紙読んだメンバーは慌てて彼の後を追いかけた。だが、彼らはその先で信じられないものを目にする。なんと谷はすでに暴力で敵を屈服させていたのだ。バットは血に染まり、彼自身もおびただしい量の返り血を浴びて真っ赤だった。
 メンバーの推測から谷の強さは超人的と表現されたのをきっかけに、彼の名はどんどん他の勢力にも広まっていった。そんな評判もどこ吹く風といった感じで、それを機に谷は狂ったように暴れまくり、彼らにさらなる恐怖を植え付けていく。鬼のような男を目の当たりにして尻ごみした連中は「病院行くか、谷に従うか」と仲間たちや敵だったはずの男たちと相談し始める始末。結果的に、谷はこの界隈を治める親分として半ば周囲の力で頂点へと押し上げられたのだ。こうして『ムスタング』が大勢力になった時、その組織力に目をつけたある暴力団の組長が谷と取り引きをしたのだ。

 だが、女子高生たちには『谷がこの地を統一するまで着用していた特攻服はたくさんの血を吸い、ついには真紅に染まった』という部分だけが広まり、それが武勇伝として語り継がれていた。そんな彼に黄色い声援を送る路上の女子高生たち。それに鼻の下を伸ばして答えるリーダーたちはご機嫌な様子だった。


 彼女たちに広まった部分的な『伝説』はある意味で的を射ていた。しかし、誰もそれに気づかない……
 リーダーの谷が着る血染めの特攻服は緩やかにその模様を変え、さらに小さなうめき声をあげているのだ。だが彼を見てもバイクで移動するわ爆音を鳴らすわしているのでそれに気づくものはいない。この界隈でのアピールに飽きたのか、谷は近くにいた幹部に号令を出し、群れを首都高に向かわせることにした……騒音を撒き散らし、周囲の不安を煽りながら鋼鉄の暴れ馬たちは前へと進む。

 しかし、そんな無法が世の中で認められるはずがない。市民の生活を守る警察官はこの動きを常に監視していた。この日は偶然にも、ムスタング掃討作戦が実行されることになっていた。彼らの動向をキャッチした司令官役の警部は高速機動隊に連絡し、首都高の封鎖と集団の一斉検挙のためのバリケード作りを指示した。己の存在を誇示するムスタングは、常に低速で走っている。それを逆手に取り、十分な用意をするのが彼らの目的だった。


 そんな市民の目には見えない静かな戦いが繰り広げられる中、ひとりの青年が街路樹の側で通信機に見入っていた。それには目の前を通り過ぎた暴走族『ムスタング』に関する情報が映し出されていた……彼が右手の親指でダイヤルを押すと、関連情報が次々と画面を彩る。その画面に新たなウインドウが開き、『警察無線を傍受しますか?』という問いが出る。青年は少しもためらわずに『はい』を押すと、スピーカーから声が聞こえてきた。それは近くを走っている警察車両の通信で、今からムスタング掃討のために首都高へと向かうことを話していた。青年は口元を緩ませる。


 「大部隊を繰り出す警察に立ち向かい、それなりの成果を挙げるのなら……確かに最強かもしれないな。面白い、追いかける価値はある。」


 その端正な顔立ちからは想像もできないようなことを平気で言い放った青年はパッドを操作し、その通信の一部始終を録音しながら歩き出した。彼は自分専用に開発されたバイクを取りに勤め先であるテクニカルインターフェイス・ジャパンへと戻っていく。そう、彼もまた暴走族を狙う男のひとりだった……



 ムスタングが現れるであろう首都高は静まり返っていた。急な閉鎖にも関わらず、通行車両は実に素直にその指示に従った。いつもは東京の大動脈としての機能を果たすここも、今はパトカーや白バイがバリケードを作る即席の要塞と化していた……赤色灯が無数に回り、機動隊員の持つ透明な盾や金属の警棒すべてを真っ赤に照らす。それは彼らがチームカラーにしているあの血の色を想像させる。絶対に逮捕するという気合いもあってか、その場を物々しい雰囲気が包み込む。決戦の時はまもなくだった。

 まっすぐに伸びる道路の果てしなく向こうに、無数のヘッドライトが揺らめく……爆音とともにやってきたのは、間違いなくムスタングだ。一斉に身構える機動隊……彼らからもきっとこちらの光景は見えているだろう。その影はだんだんと大きくなり、次第にその姿が明らかになってくる。先陣を切っているのは、なんとリーダーの谷だった。手にはあの金属バットを持ち、真紅の特攻服を風で揺らしながら取り巻きたちの士気を上げている。バイクのいななき、メンバーの雄叫びが高架を響かせる中、なぜか地の底から聞こえてきそうな奇妙なうめき声がかすかに混じって聞こえる……


 衝突の時はやってきた。バリケードを近くに来てもマシンのスピードを緩めないムスタングの行動を見た隊員たちは、勇猛果敢にも谷を止めるために警棒を振りかざす。それをバイク上から見た谷が不敵に笑う……そして声高に叫んだ。


 「不死鳥と呼ばれたこの谷の前に立つなんて、お前ら命知らずだぜぇ! この真っ赤に燃える特攻服、伊達じゃねぇことを思い知らせてやるぜぇぇ!」


 谷はひとりの隊員めがけてバットを振りかぶった! 隊員はその一撃を盾で受け流そうと構える……しかし次の瞬間、信じられない出来事が彼を襲う!


 「うおぉぉぉりあぁぁっ! 吹っ飛んじまえっ!」

 「なっ、なんだこの威力……おうわあぁああぁぁっ!!」


 金属バットが盾と接触すると、隊員の身体に恐ろしいまでの衝撃が伝わる! その威力は隊員の身を浮かし、近くに停車していたパトカーまで吹き飛ばした! かろうじて高架からの落下を逃れた隊員だったが、生身で車にぶつかって無事なわけがない。彼はそのまま力なく崩れ落ちる……他の隊員たちが思わずそれを視線で追ってしまった。その隙を谷が見逃すはずがない。バットを横に出し、直線上にいる隊員たちを次々と狙う!


 「俺たちムスタングのぉぉ、行く手を遮るんじゃねぇ!!」


 真っ赤に染まった牙が隊員たちを容赦なくなぎ倒していく……後ろからは親衛隊が同じように迫ってきた。人間離れした力を発揮するムスタング軍団とは対照的に、機動隊は大混乱に陥った。メンバーは谷ほどの力を発揮するわけではなかったが、それでも訓練された隊員を凌駕する力を備えており、不恰好に武器を振るっても力押しで勝ってしまうことがさらに状況を悪化させた。リーダー以下、メンバーの血は妖しい光を放っている。

 谷は金属バットでパトカーの後部を殴りつけると、車はスピンしながらビリヤードの白球のように飛んでいく。それを見た機動隊員たちは悲鳴を上げながら逃げ惑うばかり。これ以上ない混乱に陥る機動隊を尻目に、谷はバリケードの先を悠然と走り去ってしまう。それを見たメンバーも隊員との戦闘もそこそこにエンジンを吹かしてそこを離れてしまった……今の機動隊に彼らを追うだけの元気はない。自分たちの後ろで惜別するかのように、空しく輝く赤い光を見てムスタングは勝ち誇る。


 「サツがなんだ! 何にもできねぇじゃねぇか!!」

 「谷さんがいりゃあ、俺たちぁなんでもできるぜぇぇ!!」


 メンバーがバイクの上で獲物を天に振りかざす。恐ろしいスピードと力を機動隊に見せつけ、彼らは勇ましく無人の野で名乗りを上げる。その時ムスタングは『自分たちに挑戦するバカはもういない』と勝手に信じこんでいた。ウイニングランを飾るべくメンバーたちがスピードを上げようとしたその時、しんがりを守る幹部が後ろから同じように爆走するバイクを見つける。幹部は何か思うところがあるのか、慌ててすぐ前を走るリーゼントのメンバーを併走させて事の次第を聞く。


 「おいおい、誰だよあれ。まさかサツの特殊車両じゃねぇだろうな?」

 「えっ……確か最新鋭の機能を搭載した特殊白バイは、つい最近リーダーがバットでスクラップにじゃないですか。試作機だったらしいですし、あれ一台しかないんでしょ?」


 もっともな意見を不思議そうに説明するリーゼントの男。幹部は納得して大きく頷き、そのバイクのチェックをするために再び後ろを向いた。そのバイクは徐々に加速しているのか、その姿はどんどん大きくなっていく。そのバイクには特殊車両のナンバープレートでもなければ無線を配した様子もない。再び幹部は隣にいるリーゼントに話しかけた。


 「どこのバイクかわかんねぇ。ちょっと谷さんに報告しておこうかな……」

 「ちょ、ちょっと! あのバイク、なんかどんどんスピード上げてるし……ってなんだぁ!?」

 「何言ってんだ、てめぇ……って、うおぉあぁぁ! なんなんだ、このバイクはぁぁぁっ!!」


 リーゼントが突然驚きの声を上げる……幹部は呆れた顔をして再び後ろを向くと、そこにはさっき遠くにいたはずのバイクが目の前まで迫っていた! そのバイクは猛烈な勢いで彼らに迫る! そしてバイクに乗っているノーヘルの青年は髪をなびかせながら幹部の首根っこをつかみ、人間とは思えない力で担ぎ上げると、そのまま路上に投げ出してしまうではないか!!


 「ひーーーっ、ひーーーっ、ややや、やめて、やめてぇぇ……うひゃーー………」

 「あ、あ、兄貴ぃ〜〜〜〜〜!」

 「……心配するな、キミも同じ運命だ。消えろ。」


 リーゼントは主のいなくなったバイクが速度を落としてコマのように転がっていくのを目撃し放心状態になりながらも、必死にアクセルを吹かして隊列を乱しながら逃げようとする……その結果、後方集団はみんな青年が乗る超絶バイクの存在に気づく。しかし彼らは幹部が飛んでいったシーンを見ていない。命知らずでバカな男を畳んじまおうと、爆音による威嚇を始めてしまうのだった。それを前方で聞いた谷たちはご機嫌になってしまい、猛スピードでウイニングランを始める……ムスタングは勝手に半分ずつに分断してしまった。


 その統率力のない姿を見て青年はほくそ笑む。そして約束通り、リーゼントを幹部と同じようにつかむとそのまま路上へ捨ててしまった!


 「やめっやめっ、やめてぇぇぇーーー……」

 「て、てててっ、てめぇ、何もんだ!?」

 「高千穂 忍だ。満足したか? 満足したら、俺の遊び道具になるんだな。」


 そうつぶやくと高千穂は特殊バイク『ウインドスラッシャー』の速度をどんどん上げる……! その加速力は尋常ではなく、暴走族のマシンなど比にならない。時速800キロまで加速できるマシンのパワーを十二分に活かすテクニックで、高千穂は戦いという名のゲームを楽しみ始めた! 瞬時に縦列で走っているバイクの間に入りこみ、まずはすぐ後方にあるバイクの前輪をウインドスラッシャーの後輪でスピンさせる!


 「う、うおあぁぁっ!」

 「ば、バカ、邪魔だ邪魔……うわぁぁぁっ!!」


 高千穂はただ一台のバイクを狙ってスピンさせたわけではなかった。自分の後ろにいる群を一度にどれだけ壊せるかを楽しむためにしっかりと計算しタイミングを図って実行したのだ! 一台のバイクの転倒はその被害を拡大しながら後ろに飛んでいく……悲鳴の数はそれ以上だった。その余韻に浸ることなく、今度はバイクをウイリーさせて前輪を大きく持ち上げ、思いっきりアクセルを操作する! すると宙に浮いた前輪は凶暴な武器として前にいるメンバーに襲いかかる!


 「ひーっ、ひーっ……むぎゅえあっ!」


 強烈な風圧を全身に感じたメンバーはそのままバイクを捨てて、決死のダイブを敢行する。高千穂は主のいなくなったバイクの上に前輪を落とす……するとマシンは無残にも粉々になってしまった! さすがに他のメンバーもこれには声も出せない。全身を襲う恐怖から逃れるために、彼らは必死にマシンを走らせる。


 そんな彼らをぶっちぎりのスピードで追い抜かす高千穂! 体験したことのないスピードで側を駆け抜けるウインドスラッシャーはすさまじい衝撃を渦巻かせながら半数になってしまっている暴走族の前に踊り出た。不幸にも彼が通った場所にいたメンバー数人はその衝撃であらぬ方向へ飛んでいった……高千穂はのろまなスピードで追いついたメンバーに問い質す。


 「キミたちは、最強なんだってな。」

 「おお……おお! 俺たちゃ最強の暴走族軍団『ムスタング』だぁあ!」


 彼らの自尊心を軽くくすぐるような言葉で挑発する高千穂の表情は少しも変わらない……しかし、穏やかな顔の奥には彼にしかわからない感情が未だに蠢いている。暴走族が強がりで『最強だ』と答えたのを聞き、彼はまた不敵に笑った後、返事をしたメンバーに鋭い視線を向ける。


 「なら、この俺をもっと楽しませろ……変身!」


 その言葉と同時に、高千穂の身体はバッタを連想させる姿へと変貌を遂げる……! ザ・グラスホッパーという名の戦士になった彼はウインドスラッシャーから飛び降り、今度は自ら戦い始めた! 彼の姿を見てたじろくメンバーたち。しかし彼はそんな感情などお構いなしに襲いかかる!


 「どうした……キミたちは最強なんだろう? 戦わなければ、それを証明することができないぞ?」


 そう言いながら、目の前に現れた勇気あるメンバーの腹に強烈なパンチを見舞うグラスホッパー! 彼は自分の身長ほど跳ねると、そのまま地面に叩きつけられる……


 『ウオォォォ……ォォォォ……』「ぶげっ……」


 「なんだ、今の声は……彼の悲鳴とは違う……」


 ふと疑問に思うことがあり、高千穂はうつぶせに倒れたメンバーの身体を足でひっくり返す……すると、特攻服についていた血の痕から邪悪な色が消え去ろうとしていた。そこからはわずかに残った霊気が煙のように立ち昇った。暴走族が最強を名乗る理由を知ってしまい、つまらなさそうに鼻で笑うグラスホッパー。


 『霊気を操っても……この程度か。楽しめそうにもないな。』


 分析することに必死になっていたグラスホッパーが顔を上げると、敵が徐々に自分を囲んでいることを知った。今度は幹部の号令でさまざまな武器で狙われることになったグラスホッパー。だが、彼の闘争本能はすでに消えかかっていた……そう、彼らの力の本質を知り、自分との明らかな力の差に気づいてしまったからだ。

 その時、彼の右手に一台のバイクがやってくる……そのバイクにはひとりの青年がまたがっていた。年は暴走族と大して変わらないように見えるが、とてもメンバーの一員とは思えない。彼が近くにバイクを止めると、鳴神を取り囲む連中に大声で名乗りを上げる。


 「人の安眠を邪魔しやがって……おいお前ら、この大神 蛍が相手だ! いくぜ、魔狼覚醒っ!」


 両腕に力を込めたままクロスさせ、それをゆっくりと腰に引く……その間にズボン以外の衣類が弾け、露出した肌からは銀色の毛が生えてくる! そして彼の顔も狼の姿になった!


 「て、てめぇも俺たちにケンカを売ろうってのか!」

 「だからそうだって言ってるじゃないか! やらないのなら、さっさとそこにいる人を解放しろ!」


 「やかましい! 偉そうな口を利くんじゃね」

 「う、うわぁーーーっ、今度は車が突っ込んで……」

 「なな、なんだ、今日はい、いったい……うぎゃあぁぁっ!!」


 今度は鳴神の左手を白い乗用車が通り抜けて行く……もちろんその際にたくさんの暴走族を突き飛ばしている。乗用車がフェンスにぶつかり大炎上したのを確かめながら、ひとつの影が戦いの輪に入ってくる。


 「たまや〜〜〜ってね、まったく……元気余ってるんじゃねーか。そういうパワーは明日の日本のために使いなさい。まぁ、そう言っても使えないだろうから、今日は藍原 和馬さんがお仕置きしてあげる。」


 なんとその影もさっきの青年と同じ姿をしていた……そう、彼もまた狼の獣人だったのだ! グラスホッパーは彼らの登場を確認すると、ひとりの暴走族の顔を殴り、苛立ちを隠さずに言い放つ。


 「もういい。お前たちじゃ退屈なだけだ。あとは彼らに遊んでもらえ。それが分相応というものだ。」


 グラスホッパーはそのままジャンプし、首都高の近くに建っている背の高いビルへと姿を消した……主人を失ったウインドスラッシャーはなんとそのまま自走して走り去ってしまった。そこにいた全員がその様子を静かに伺っていたが、獣人同士がお互いの顔をつき合わせると、静寂を打ち破るには十分な声で驚き、お互いを指差しあう。


 「おっ、俺と……同じ力! あなた、もしかして!」

 「あらら、お友達じゃないのさ。念のため聞くけど、君はこいつらのお友達?」


 大いに驚く大神とは対照的に、極めて軽く話す藍原。そんな彼の態度がさらに大神を戸惑わせる。


 「友達なわけないでしょ……俺はあいつらの敵ですよ……」

 「なら、俺の味方?」

 「あなたがあいつらの敵になるなら、そうなるでしょうね……」

 「決まり、じゃ君は今から俺の味方ね。足止めはできたから、ザコは適当にやりましょうかー。」


 「うるせぇ、さっきからごちゃごちゃと……俺のマシンを地に這わせた罪は重いぜぇぇぇ! うりゃあああ!」


 ふたりののんきな会話に腹を立てたのか、バイクを失ったメンバーたちが血のついた武器をかざしてそれぞれに襲いかかってきた! 藍原はそんな彼らの腹に目にも止まらぬ早さで重いパンチを連続で繰り出す!


 「ぐげっ……!」

 「おごあっ……!」


 「……まぁ、こんな風にやっていきましょ。大神くん。」


 強烈なパンチで気を失い、その身体を藍原に向かって傾ける……藍原はそれを嫌がり、もう一発パンチを食らわせて男を地面に叩きつけた。それを合図に大規模な戦闘が始まった。約半数のメンバーがふたりに向かって一斉に攻撃を仕掛ける。藍原は向かってくる相手を適当に殴り、大神はトリッキーな動きで敵を翻弄しながら鋭い爪で背中を切り裂いていく……同じ狼の姿を取る彼らにとって、敵の動きは止まっているも同然だった。メンバーは怒りに任せてただ闇雲に武器を振るうだけになってしまっていた。



 そんな軍団の劣勢を立て直すため、前を走っていたリーダーの谷が残りのメンバーを引き連れて戦いの場に引き返していた。まだかなり距離がある状態だったが、谷はそのままバイクでふたりを轢き殺そうと、藍原が突っ込ませた車のような猛スピードでマシンを走らせる!


 「踏み潰してやるぜぇぇええっっ!!」


 周囲のザコに気を取られている大神と藍原を狙って、鋼鉄の荒馬が鋭いいななきを響かせる! だが、その目の前にまたもひとりの男性が現れる……そのシーンからメンバーが嫌な雰囲気を感じ取るには十分だった。銀髪の青年が静かに構えると、高千穂と同じような特殊なスーツを身にまとった戦士がそこに現れた!


 「……だいたい徒党を組んで、しかも後ろ盾をもって我が物顔というところが震えがくるほど気に食わん。人に迷惑をかける者にはそれなりの罰を与えなければならんな。今日はこの鳴神 時雨がその役目を買って出よう。」


 鳴神と名乗る青年はひとりそうつぶやくと、金属鞭を備えた『スクレイパー』というアタッチメントアームをセットし、それを自在に操る! 目に見えない早さで繰り出されるそれが狙った場所はバイクのタイヤだった! 大神たちを轢くためにある程度のスピードを出していたバイクは豪快なパンク音とともに大暴れし、乗っている者を豪快に振り落とす。それは幹部も谷も例外ではなかった!


 「あ、ああっ、リーダーああぁっ!!」

 「う、うわあぁあぁっ!」


 結局、戦いの輪の中に引きずり込まれるだけの結果となったメンバーはそれぞれに武器を取り、異形の戦士たちに戦いを挑むことになってしまった。ひとり残らずバイクから振り落とされた暴走族はもはやただのケンカ集団と化していた。彼らがいくら常人よりも強くとも、鳴神たちに勝てるはずはない。冷たいアスファルトに無数のバイクとボコボコにされたメンバーたちが次々と放り出されていく……



 「あの力……鳴神とやら、俺と同じような力を持った男……ふふふ、これは楽しくなりそうだ。」


 すでに戦いから離脱したグラスホッパーこと高千穂だったが、今度は大神たちに興味を引かれ、そのままビルの屋上で超感覚を使って戦いの行く末を見守っていた。その表情を窺い知ることはできないが、少なくともその声は弾んでいた。そう、彼は再びゲームを意識し始めていた……無意識のうちに……



 一方、首都高では戦いが進展していた。幹部もひとり残らずやられ、リーダーの谷だけが路上に立っていた。狼の姿をした大神と藍原、そして特殊スーツを着た鳴神が『ブレイカー』と呼ばれるブレードを備えたアタッチメントアームをつけながら彼と対峙した。周囲から暴走も奇声もなくなった今、谷の力の正体がはっきりと見えた。


 「ん〜〜〜、あの特攻服に秘密があるわけね。呪術の部類に属する能力だとは思うけど……まぁ、一般市民が粋がるには十分過ぎるパワーはあるわな、大神くん。」

 「ええ……藍原さん。でも裏を返せば、あの特攻服を破ればすべてが終わるってことなんじゃないですか?」

 「ま、そう考えるのが正解だろうな。俺もそれを考えてた。さて……確か鳴神 時雨って名乗ってたっけ、たしか。ちょっとこっちの手伝いをしてくれな」


 「暴走族の頭に容赦する必要はないだろう……ということで、俺は能力を存分に行使させてもらおう。とぅわっ!」


 「って人の話、ぜんぜん聞かねぇんだから、まったく……大神、適当に合わせてくれ。あのおっさん、たぶん無茶苦茶するぞ。」

 「合わせろって、いったい何をですか……」

 「谷にとどめを刺せるくらいにお願いするわ。」


 藍原が谷の前に立つと、特攻服から無数の霊を放ち、自らの防御力を高め始める……不敵な笑みを見せる谷に対して、藍原は静かに口を開いた。


 「なるほど、軍団を大きくしたのは最初からお前の力じゃなかったんだ。そんな谷くんは追いはぎの刑ね〜。」

 「ふざけ、うごあっ……あがあぁ……あ、あ、足がぁ、足がぁああっ!!」


 前に進もうとした谷は自分の足が動かないことに気づく……パニックに陥った彼はうつろな目で別の方向を見る。するとそこには魔狼フェンリルの力を発揮した後の大神が立っていた。藍原が谷を挑発した直後、彼は地を走る猛烈な冷気を打ち出していたのだ! 大神は谷の視線を受けながら、両手を突き出したポーズを崩し、胸の前で腕を重ね、敵にとどめを刺すべく自分のもうひとつの力を覚醒させる!


 「鬼神、覚醒っ! うおぉおおぉぉっ!!」


 大神はその身を赤く燃える鬼の姿へと変化した……額にはそれを象徴するふたつの角が生え、魔狼とは違った雰囲気を醸し出す。鬼神は静かに腕を上げ、その力を発揮するために大声で叫ぶ!


 「こいつでトドメだ! 燃えろぉぉ!」

 「ぐ、ぐあわぁ、勝手に、勝手に俺の大事な特攻服に火が! こ、これが燃えたら……あぎゃああぁぁっ!!」


 谷は思わず肌に強烈な熱さを感じて悲鳴をあげる。その炎の強さは足元にある氷を溶かすほどだった。力の元である特攻服が灰になっていく様を見て、さすがに意識を取り戻して慌てる谷。四散する霊を力で押さえつけようにも、寄り代になっている特攻服が焼けているのではどうしようもない。そんな彼に追い討ちをかける男が長く伸びた爪を煌かせて待っていた。


 「それじゃ、宣言通りに追い剥ぎの刑を実行だね〜。いい悲鳴、上げてくれよ……うおぉぉぉぉあらぁぁぁーーーーーっ!」

 「い、い、い、ひひひいひぃぃ〜〜〜!!」


 高速で谷の周囲を舞い、その特攻服を粉みじんにしていく藍原! 一方の谷は情けない声を上げながらその攻撃を受ける……ますます自分を守る霊が消えていき、そろそろ力の限界が見えてきたその時、藍原が叫んだ!


 「おっさん、今だあぁぁっ!!」

 「とぅわああぁーーーーーーーーーっ!!」


 鳴神が高くジャンプし、谷に向けて右足を突き出す。そこから鳴神が着地点となる谷の背後まで重力制御を行い、彼を釘付けにした! 恐ろしい重圧が谷の体を襲う……しかし赤い特攻服は怨念の叫びを今まで以上にあらわにし、ついにはそこから邪霊が吹き出し、最後の抵抗とばかりに谷の周囲を渦巻き始めた!!


 『オオオオオオオオ! オオオオオオオオオ……………オォォ!!』

 「おっ、おごっ……こ、こんな重力なんかに負けはしねぇ! 俺はヘッドだ、選ばれた人間だぁぁっ! なめんじゃねぇぇぇ!」


 しかし、鳴神が発した重力は谷を足止めするだけではなく、自らのキックの威力を倍増させるための武器でもあったのだ! 鳴神は雄叫びをあげながら、谷に渾身の一撃を放つ!!


 「食らえぇぇぇーーーーーーーーーーーーっ、でりゃああぁぁぁっ!」


 「ま、守れぇ、無念の魂たちよぉぉ!!」


 鳴神の一撃は周囲の邪霊を巻きこみ、すべての霊を四散させてしまった……それと同時に特攻服も灰となってしまう。強烈なキックを受けた谷はかろうじて生きてはいたがその威力に勝つことはできず、ついに地面に崩れ落ちたのだった……



 ある意味無人となった首都高上では、3人がメンバーたちの衣服などを見ていた。鳴神が谷にとどめを刺した時点で周囲に転がるメンバーの装備やバイクからも霊が去ったようで、それぞれについている血の跡に邪な力の存在は見られなかった。一件落着とばかりに藍原が大きくため息をつく……そして思い出したかのように鳴神の仮面を睨みつける。


 「大神ぃ〜、こっちはオッケーだわ。一応これで終わりかな……って、そういやこのおっさん、いきなりやっちまうんだもんな。フォローする方の身になってほしいね。これだから無粋な男ってのは……ぶつぶつ。」

 「そういう貴様も、自分でとどめを刺す気でいたのではないか。その顔がそれを如実に語っていたぞ。」

 「……まぁ、そういう問題はもうちょっとデリケートに扱ってほしいな、鳴神クン。あんまりせっかちだと女の子に嫌われるぞ?」

 「心配するな、まだ貴様の活躍の機会はありそうだ……誰だ、貴様?」


 鳴神が仮面の青い瞳をあらぬところに向ける。その男は3人の中心に降り立っていた。そして不敵な笑みとともに言葉を紡いだ。


 「俺は……ザ・グラスホッパー。キミたちとゲームを楽しみたいと思ってね。最強を名乗る暴走族が大した力を持っていなくて、非常に不快な思いをした。だが、キミたちなら大丈夫だ。俺の期待に応えてくれるだろう……」

 「あ、あなたの目的はいったい……いったい何ですか!?」


 大神が突如現れたグラスホッパーなる戦士に向けて、場違いともとれる言葉を発する。しかし高千穂はそれに軽く返答する。


 「戦うことに決まってるだろう。まさかキミは、この俺の殺気を感じていないわけではあるまい……?」


 その言葉の正しさは藍原と鳴神の姿が物語っていた。長く伸びた爪とブレイカーがオレンジ色の光を浴びて煌く……ふたりはすでに戦いを覚悟していた。大神はそれを見て半ば諦めたように赤く染まった腕を胸のあたりで構える。

 
 「貴様は暴走族と戯れていただけだというのか?」

 「俺は別に正義を気取るつもりはない。俺も正義を振りかざすつもりはない。ここに集うものが、必ずしも正義の使者である必要はない。違うかな?」


 「すばらしい……さすがはテクニカルインターフェイス・ジャパンのエース、高千穂忍さま。その発想がすばらしい。」


 高千穂の言葉に拍手と最大級の賛辞を贈り、ひとりの男が歩み寄ってきた。長く青い髪は腰まで伸び、わずかな動作でそれは優雅に揺れる。黒いタキシード姿に白い蝶ネクタイをした男は静かに気が張り詰める輪の中に入ってくる。その姿や動作から英国の執事を思わせる。その穏やかな表情からはわずかな微笑みが混じる……そして彼は、ただ静かに周囲を見据えた。


 「貴様、いつの間に……」

 「ちっ……無粋な奴がまたひとり増えやがった……」


 気配すら感じさせずに現れたタキシードの男に不快感を示すふたり。そんな彼らにうやうやしく礼をする男は相手に断って自己紹介を始める。


 「お忙しいところ、失礼します。私、『アカデミー』の主任をしております、風宮 紫苑と申します。このたびは我が『アカデミー』の生徒がお世話になりまして……」

 「キミは……ふふふ、てっきりうちの社員かと思ったよ。そんなすぐにばれる方法で活動してるのなら、すぐに消さなくてはならないからな。」

 「ご心配なく、高千穂さま。彼は異能の力に目覚め、それを世間にアピールするためにこのような行為をしたまでです。『アカデミー』ではその行為は容認する方向でいますので、特に警告などはいたしませんでした。世間の皆様にはご迷惑をおかけしたことは確かです。しかし、それは私ども『アカデミー』にとりましては重要な活動の一部と認識しておりますので……」

 「おい、風宮とやらよ……ちょっとその辺を詳しく話せよ。おっさん、しばらくの辛抱だ。話を聞いたら好きにすればいい。」

 「貴様に言われずとも、そのつもりだ。」


 変身を解くことなく、そのままの姿で主任と名乗る風宮の話を聞く戦士たち。戦いに飢えていた高千穂も思うところがあってか、力のこもった拳をゆっくりと下ろす。しかし、そんな状況でも風宮の緊張は解けなかった。


 「ありがとうございます、藍原さま。私ども『アカデミー』はこの世界に埋もれている異能力者たちを覚醒させることに全力を注いでおります。彼らは有能な力を持ちながら、それを眠らせたままで現代社会を生きている……それは世界的損失ともいえるでしょう。そんな皆様の才能を開花させ、広く世間にアピールすることが、我が『アカデミー』の最大の喜びです。日本においても古代から平安、鎌倉の時代、我々のような存在は時の権力者たちにその才能を認められ、その多くは要職に就くことができた。そう、我々の価値が正当に評価されていた時代です。現代の社会でもこれを取り入れれば、非常に完成された世界が構築できる……我々は常にそう考えております。」


 「だから貴様はあのような無法者に血の怨念の力を与えたのか。」

 「それは違います、鳴神さま。あの力は彼が生まれ持っていた才能です。それを私が指導して目覚めさせ、その使い方を教授しただけです。皆様に倒されるまで、彼は立派な『アカデミー』の生徒でした。きっと彼は社会復帰してもその力を発揮してくれるでしょう。」

 「世の中を混沌とさせることに生きがいを感じているだけではないか。それを大義にするとは……つまらない。」

 「犯罪者であれ正義の人であれ、その存在が増えていけば社会は我々を見過ごせなくなる。その時に我々『アカデミー』は社会に貢献できる……世界は異能と呼ばれる力を持つ異端者が主役になることができるのです。今は憤っておいでの高千穂さまも、とても過ごしやすい世の中にな」


 「世界征服の過程を楽しもうとしている俺の邪魔をすることは……許さん。」


 高千穂は静かに腕を上げ、今から起こるであろう戦いに備える。その言葉に呼応するかのように、他の3人も下ろした腕を構え直す。


 「結局は……結局はこの世界を混乱させてるだけじゃないですか! そんなの許されるはずがないっ!!」

 「カッコ悪いね〜、自分を立派に見せようとするなんて。悪は悪らしくいなさいな。」

 「右に同じだ。俺が平和な時を過ごしているうちに、こんな組織が幅を利かせていたとはな。これはこれで気に食わん。」


 「皆様ならわかっていただけると思っていたのですが……少し残念です。でもご心配なく。皆様が後からでも我々に心を開いて頂けるのなら、いつでもお待ちしております。その時にまた伺いましょう……」


 3人の姿を見て戸惑いの表情を見せる風宮。だが高千穂は一回だけゆっくりと首を回すと、彼に一声かける。


 「ところでキミは……そこにいる彼らよりも強いな。この俺を楽しませてくれそうだな。」

 「いえいえ、同じ理想の元に集う仲間たちの中において、力など何の価値もありません……」

 「俺と遊ばないか……命を賭けたゲームをしよう。とぅわあっ!!」


 突然小さくジャンプして、ショートレンジで強烈なキックを放つグラスホッパー! そんな彼を呆然と見上げる風宮……その蹴りはあっけなく命中するかのように見えた。藍原たちも攻撃を仕掛けるために猛然と間合いを詰める。しかし、高千穂の足が風宮を粉砕しようとした瞬間、彼は残像となって煙のように消えてしまう! とっさに着地する高千穂は目で標的を追う。藍原も急ブレーキをかけ、周囲を見渡した。


 「なんだ……と?」

 「消えた……そこか!」


 「実に……皆さんはすばらしい身体能力の持ち主だ……」


 藍原の視線の先は高架を囲うフェンスの上だった。そこには確かに強風に髪をなびかせる風宮の姿があった……!


 「高千穂さま、即座にショートレンジキックに移行する身体能力は実にすばらしい。それは天性のものです。ぜひ『アカデミー』に活かして頂きたいものです……」

 「俺を満足させる人間がいても、俺を満足に扱う人間が『アカデミー』にいるとは思えない……諦めろ。」

 「人間の心は変わりやすいものです。また会う時には、いい返事をお待ちしております。それでは……いずれまた。」


 また風宮がうやうやしく礼をすると、残像とともにその場から消えてしまった……好敵手に逃げられた高千穂はゆっくりと身を起こし、静かにつぶやく。



 「何かが……動き出したようだな。ふふふ、これはこれで面白くなってきた。楽しい、ゲームの、始まりだ……」



 彼が言う『楽しいゲーム』の意味は、大神や藍原、そして鳴神にも容易に理解できた。それは果てしない戦いの始まりを意味している……藍原の心の中にさまざまな思いが浮かんでは消えていく。



 彼らがその場に立ち尽くしていると、ようやく体勢を立て直した高速機動隊が暴走族の追跡を開始したらしく、遥か彼方からサイレンを鳴らしてこちらに向かっていた。その音は戦士たちの別離を意味していた。高千穂は誰にも声をかけず、再び大きく跳躍し夜の闇へと消えていく。


 「すべての事象と戦うのも……ふふふ、悪くはない。」


 高千穂はこの戦いで何かをつかんだようだった。闇に消えるグラスホッパーを、首都高にいる3人はそれぞれの気持ちのこもった視線で見送った……


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2078/大神・蛍   /男性/  17歳/高校生(退魔師見習い)
1533/藍原・和馬  /男性/ 920歳/フリーター(何でも屋)
1323/鳴神・時雨  /男性/  32歳/あやかし荘無償補修員(野良改造人間)
2138/高千穂・忍  /男性/  26歳/大学生


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■         ライター通信          ■
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皆さんこんばんわ、市川 智彦です。今回は『特撮ヒーロー系異界』の記念すべき第1話です。
冒頭はこの異界らしからぬ始まり方でしたが、後半はバリバリ特撮です。
シナリオは参加してくれたキャラクターが所狭しと動き回ってます。ぜひ楽しんで下さい!


すでに他のお三方と、そして『アカデミー』とも立場が違う高千穂さんは物語を盛り上げてくれました!
この物語では『一匹狼』というイメージを前面に出して表現しました。でも、他の皆さんとの絡みもあります。
とても魅力的なキャラだったので、書いててとても楽しかったです。次回こそキックを命中させたいですね!(笑)



なお、今回は他の皆さんとの描写が決定的に違います。特撮ヒーロー系異界ですから!(笑)
どこがどう変わっているのかを楽しんで頂けたら幸いです。物語の数だけ楽しめるようがんばります。
今回は本当にありがとうございました。また別の作品や通常の依頼でもお会いしましょう!