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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


人魚の傷跡

オープニング


不老不死と聞いたら、まず何を想像しますか?
色々な薬草?怪しげな儀式?
多分、みんなが思いつくのは『人魚』じゃないかしら?
人魚の血、人魚の肉は万能の薬としても知られているわよね。
女性だったら永遠に若く、美しくありたいと願うのは当然だと思うわ。
男性でも今の時代、女性に負けないほどの美しさを持つ人がいるわよね?
そして、今は『不老不死』が夢で終わる時代ではなくなったわ。
私の店には人魚の妙薬があって、必要な人にお売りしております。
どう?あなたの美しさを永遠なものにしてみない?



これが今朝の朝刊に挟んであったちらし。
ちらしには妖艶な情勢が写っており、その女性が店長だという。
その容姿は時男性だけでなく女性すらも魅せられるほどの美しさだった。
人魚の妙薬の効果なのだろうか?
「綺麗な方ですね、だけど…何か怖いとすら感じます」
零がちらしを見ながら呟いた。
確かに、と草間も小さく呟く。
何もかもが整いすぎて恐怖すら感じるのだ。


視点⇒榊船・亜真知

「こんにちは」
 今日も亜真知は遊び場の一つである草間興信所に遊びに来ていた。その時、草間武彦と零がなにやら熱心に見ているのに気づき、亜真知は近くまで寄る。
「どうかされたんですか?」
「あぁ、亜真知君か。これを見てくれ」
 そう言って草間武彦が亜真知に手渡したのは一枚の広告だった。
「…人魚の妙薬…ですか?」
 人魚といえば亜真知は少しだけ懐かしさを噛み締める。長く生きる亜真知は過去に数回人魚とであった事があるからだ。
「…草間さん、パソコンをお借りしてもよろしいでしょうか?」
 突然の亜真知の要求に草間は少し驚く。
「この店を調べるのか?」
「はい、人魚の妙薬といわれている以上、言い伝え通りの効能ならば不幸の元にもなりかねませんから」
 草間武彦は『そうか…』といってパソコンのある部屋に亜真知を行かせる。
「あ、そうだ…。調べた後でいいから近くの喫茶店にも行ってみるといい。アルバイトの子が買ったといっていたから話を聞けるかもしれない」
「分かりました、後で行ってみます」
 そう言って亜真知はパソコンに向かう。そして、調べていくうちには色々な事が分かった。『人魚の妙薬』が本物である可能性が高いという事。これは行方不明の人魚が何人もいるからだ。そして店の店長である女性は人間でない可能性が高いという事。ネットで不老不死の事で検索をかけてみたら、今回の女性が今と同じ姿で30年前にも現れている。
「…30年前も今と同じ事をしていますわね」
 亜真知は半ば呆れるように呟く。
「草間さんが教えてくださった喫茶店に向かってみましょうか…」
 不老不死など安易に手を出すものではない。後からやってくるしっぺ返しが酷いからだ。薬を飲んだ後で後悔しても遅い。後悔したときはもう人間ではないのだから。
「一時の欲望で惑わされるからこそ人間なのでしょうね」
 亜真知は興信所を出て、空を見上げながら一人呟く。


「あの、私に用だと聞いたのですが」
 あれから亜真知は草間から聞いた喫茶店に来て問題の『人魚の妙薬』を買ったというバイトの子を呼んでもらった。
「あ、わざわざすみません」
 亜真知の前の椅子にその子が座る。
「あの人魚の妙薬の事でお聞きしたいのですが…」
「あぁ、あれがどうかしたんですか?」
 キョトンとした顔で、その子は聞いてくる。
「いえ、飲まれたのでしょうか?」
「まだですけど…買った後でやっぱり胡散臭いなぁと思って飲まずに捨てたんです」
 その言葉に亜真知はホット胸をなでおろした。
「飲まなくて正解だと思います。調べた結果、あれは身体に合わない人が飲むとしにいたる場合もありますから」
 亜真知の言葉を聞いてその子の顔がみるみる青ざめていくのが分かった。『飲まなくて良かった』と胸の辺りに手を置いて小さく呟いている。
「不老不死になるということは人間でなくなるということ、今の気持ちを大事にしてあげてください」
 それではお時間を取らせてすみません、と軽く一礼してから喫茶店を後にする。
 恐らくもう何人も人魚の妙薬を飲んで不老不死になっているだろう。もしかしたら死に至った人もいるかもしれない。

 そして、問題の店『フォーチュン』の前に亜真知は来ていた。

「…これから少しでも多くの人が飲まないようにできるといいのですけれど…」
 よし、と意を決して店の中に入る
 カラン、とベルの心地よい音が鳴り響く。時刻は夕方、閉店時間が近いためか客は一人もいない。
「あら、いらっしゃいませ」
 亜真知を迎えたのは広告に載っていた女性店長だった。広告と一緒で亜真知も素直に『綺麗』と思う事ができた。
「あなたも人魚の妙薬が欲しいのかしら?」
「いえ、何のために人魚の妙薬をお売りになってるのかお聞きしたくて参りました」
 亜真知の言葉に女性店長はクスクスと笑い出す。亜真知は少しムッとした表情で女性店長を見る。
「何か可笑しい事を言ってしまいましたか?」
「えぇ、言ったわ。何のためにするかなんて決まってるでしょう?お金のためよ。あなたはこれがボランティアに見えるの?」
「…お金のために人魚を犠牲にしてるのですか?」
「そうよ、悪い?使えるものを使って何が悪いの?」
「…あなたは…」
 亜真知は怒りに肩を震わせている。
「このお店は閉めていただきます」
「できるのかしら?」
「……わたくしを見くびらないでください。わたくしの力量が分からないほど馬鹿という事もないでしょう」
 亜真知は女性店長が亜真知の力がどれほどもものなのかを知っているはずだ、と告げる。亜真知の言葉は嘘ではなかった。一見女性店長は偉ぶっているように見えるが、肩がわずかに震えている。寒さの震えではなく、怯えの震えを…。
「もし…あなたが素直にこの街から去って今後このようなことをなさらないと約束してくださるのでしたら、わたくしはこのまま帰ります」
「…甘いのね。もしかしたら約束を破るかもしれないのよ?」
「…その時は全力であなたを懲らしめます」
「…ふぅん、まぁ…いいわ。あたしも命は惜しいもの。では、またいずれ会いましょう」
 そう言って女性店長は亜真知の前から姿を消した。
「次にお見かけした時は…許しませんわ」
 ポツリと呟いた亜真知の言葉を聞くものはいなかった。



 そして…その後フォーチュンを見たものはいない。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

1593/榊船・亜真知/女性/999歳/超高位次元知的生命体・・・神さま!?

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■         ライター通信          ■
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榊船・亜真知様>

いつもお世話になっております、瀬皇緋澄です^^
今回は『人魚の傷跡』に発注をかけてくださいましてありがとうございます!
『人魚の傷跡』はいかがだったでしょうか?
少しでも面白かったと思っていただてたら幸いです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^


       −瀬皇緋澄