コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ポケットの中には・・・

1.発端
♪ポケットの中にはビスケットがひとつ〜
 ポケットを叩くとビスケットはふたつ〜♪

「・・・割れただけだろうが・・・」
零が口ずさむ童謡に、草間武彦は大人視点で突っ込みを入れた。
「・・兄さん、それではあまりにも夢がありません・・・」
水を差された零は困った顔をして溜息をついた。
と、突然大音量のブザーが鳴った。
「はいはーい!」
零はバタバタと扉を開けにいった。
「小包です。受け取りの判子を」
「ご苦労様です」
零が手際よく配達員とやり取りをし、小包は草間の前へと運ばれた。
「『全国草間武彦ファンの会』からか・・・」
「また怪しげなものなんでしょうか・・・?」
ごそごそと草間は小包を開けた。
中からはなにやら大きな布が出てきた。
その布からひらりと紙が落ちた。零はそれを拾い読んでみた。
「兄さん・・先ほどの歌に出てきた様な不思議なポケットらしいですよ?これ。中に物を入れて叩くと2つになるって書いて・・・あぁ!?」
ざっと目を通し、草間に目を向けた零は驚いた。
「兄さん!得体の知れないポケットの中に入っちゃだめじゃないですか!!」
「出られん・・」

「・・・えぇ!?」


2.ミニ
「おーす草間、なんかいいネタねーかー・・・」
たまたま現れた佐久間啓(さくまけい)はそれ以上のことを口にできなかった。
「うぅ。佐久間さーん・・・」
泣き顔の零と功刀渉(くぬぎあゆむ)、本郷源(ほんごうみなと)の姿。そして・・・。
「ちくしょー!」「おまえたち、なんてことしやがる!」「腹減ったぞー!」
口々に何やら喚きたてるチビ草間武彦の群れ。
「まぁ」「どうしましょう?」「困りました・・・」
こちらも口々に何やら呟く海原(うなばら)みそのの姿・・・。
「ぎゃはははは!チビだっ!チビ草間だ!なんじゃこりゃ!」
佐久間は噴き出した。
『笑うな!』
チビ草間が一斉に佐久間に向かって吼え特攻していく。
佐久間はチビ草間軍団に頭をよじ登られたり、顔をつねられたり、噛み付かれたりしながらも笑うことをやめなかった。
「これは・・・何と言うか予想外でしたね。これじゃ1人持ち帰ったとしても味見もできない・・」
「あ・・味見??」
功刀の独り言に零が汗をかいた。
「いや、冗談です。にしても、小さくなっても草間探偵の性格自体は変わっていないようですね」
「そうじゃのう。そちらのみその殿も特に小さくなった以外は変わっておられぬようだし」
「でも、やはりこのように小さく多人数になったままでは少々支障がでます・・・」
口々に事態収拾に向けての話し合いが進もうとしている後ろでは、佐久間はチビ草間とじゃれていた。

生意気にもそのチビな体でタバコを吸おうとした草間から佐久間はタバコを取り上げた。
すると草間は「おのれー!」と飛び蹴りを食らわす。
が、さすがにチビ草間の力ではせいぜい蚊が刺す程度の痛みである。
「まぁまぁまぁ、落ち着けや、草間。俺がお前のストレスの元を聞いてやろうじゃないか」
佐久間がそう言うとチビ草間は「おまえが俺のタバコ盗ったからだろー!」と突っ込みを入れた・・・。
「わーたわーた。じゃあよ、これ食え。おまえサイズのビスケット。いいなぁ。よかったなぁ」
みそのが一緒に持って入って草間同様に小さくなったビスケットを見つけ、佐久間はチビ草間にそれを渡した。
「・・・なんで俺が・・・」
「いいから食え食え。甘いもんはストレスにいいんだぜ?いい子いい子」
佐久間がナデナデとチビ草間の頭をなでる。
「俺の頭をなでるなーーー!!」
チビ草間は再び佐久間に特攻して行った・・・。

と、そんな状況の佐久間を無視し、草間を元に戻すべく話は進む。
「僕にはそういった能力がないですから、せめて論理的にポケットを裏返して入れて叩いてみるというのはどうでしょう?」
「また叩くのか?今日はほんに面白い日じゃのう」
「では小さくなった草間様をとりあえず2人ほど入れて試してみましょう」
そういうと源と零がチビ草間軍団を取り押さえに掛かった。


3.元通り?
裏返されたポケットにチビ草間が2人ほど放りこまれた。
「さて、やるかのう。これも草間殿のためじゃ」
にやりと源の目が笑った。
「微力ながら協力します」
功刀があたかも興味のなさそうにしつつ腕まくりをした。
「俺も協力するぜ〜」
佐久間が指をぽきぽきと鳴らす。
「あの・・あの・・手加減してくださいね・・・?」
零がオロオロと手を祈りの形にして懇願した。
「わかっておる」「できる限り」「努力はするけどな」
三人の言葉が零にはどうにも空々しく聞こえる。
「ではやるぞ!」
ぺしぺしぺし!ばしばしばし!!がすがすがすっ!!!
「ああ・・・」零は目を覆った。
「さて、見てみましょうか」
功刀がポケットをめくった。
中には文字通り袋叩きに遭いノックアウトされ伸びきったチビ草間が2人・・。
「失敗みてぇだな・・・」
「やはり無理でしたか・・・」
「むむむ・・そうすると・・・」
伸びたチビ草間を取り囲み、3人が顔を見合わせる。
「本当に困りましたね・・」
三人の後ろからみそのの声が聞こえた。
先ほどのみそのの声とは違い妙に響くな・・と佐久間は後ろを見た。
すると、そこには一番最初に見たあの黒のビキニの等身大みそのが1人立っていた。
「・・・」
「・・・」
「最近の子は大胆だねぇ・・・」
1人ずれた発言をした者もいたが問題はそこではなく、みそのがどうやって元の姿に戻ったかである。
「どうやって元に戻ったんですか!?」
零がみそのにキラキラと希望の光を向けた。


4.大団円?
「時間の流れを少し元に戻しました」とみそのは言った。
つまりそれを使えば草間も元に戻るわけである。
「お願いします、みそのさん!」
零がキラキラとした瞳をみそのに向け哀願した。
「他ならぬ零様の頼みですから。ですが、草間様を全部集めていただかないことには・・・」
みそのがそう言うと源と佐久間の目が光った。
「よぉし!どんな手を使ってもひっとらえるのじゃ!」
「おっしゃ!!」
逃げ惑うチビ草間軍団は意外にすばしっこく逃げ回る。
机の下、ソファの中、果ては書類の中にまで入り込む。
まるでゴキブリ並だ。
だが、源と佐久間の連係プレイによって捕獲してはポケットへと放り込んでいった。
「ぜ、全部捕まえたぞ・・・」
「チョロチョロとしよって・・少々息が切れたわ」
佐久間と源がぜぃぜぃと息をついてそう言った。
「ご苦労様です。では、草間様の時間の流れを少し元に戻します」
みそのが目を瞑り精神を集中させた。
ポケットに詰められたチビ草間軍団が何やら騒いでいたが、次第にその頭数が減っていき最後にはひとつになった。
「・・戻ったのでしょうか?」
零が息を呑んだ。
功刀がポケットをめくった。
「大丈夫、気を失ってはいますが元に戻っていますよ」
「すごいのぅ、みその殿は」
源が心底感心したようにみそのを見た。
「大したことはしておりません」
みそのは特に謙遜した風でもなく、さらりと言った。
「さーて、草間が目覚めないうちに俺はとっとと退散するか」
佐久間がそう言うと功刀と源が後に続くように立ち上がった。
「僕もそろそろ引き上げましょう。僕のするべきことはもうないでしょうし」
「わしもそろそろおでん屋を開かねばならんのでな。おいとまさせていただこうかの」
草間が目覚めたとき、袋叩きの目にあわせたことをどう問い詰められるかを考えるよりも逃げたほうが早い。
が、当分は草間を苛める格好の材料とするのは既に心に決めていた。
言うたびに草間にヘッドロックされたり攻撃されたりしそうだが、まぁそれはその時・・ということだ。
佐久間は功刀と源に別れを告げると帰路に着いた。
結局、草間興信所に行った当初の目的は忘却の果てとなっていたことに佐久間は気がついていなかった・・・。

かくして、草間興信所で起こった草間武彦分裂事件は解決した。
だが、実は問題を起こしたポケットはまだ草間興信所に存在している・・・。


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2346  / 功刀・渉  / 男 / 29 / 建築家:交渉屋

1108 / 本郷・源 / 女 / 6 / オーナー 小学生 獣人

1643 / 佐久間・啓 / 男 / 32 / スポーツ新聞記者

1388 / 海原・みその / 女 / 13 / 深淵の巫女

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

佐久間啓様

初めまして、とーいと申します。
この度は『ポケットの中には・・・』へのご参加ありがとうございました。
今回ご参加いただいた皆様全員が遊び倒すことをご所望しておられ、こちらとしても大変楽しく書かせていただきました。
ほのぼの系・・というかコメディ!?といった感じになりました。
佐久間様の「チビ草間」を採用させていただきました。
プレイングを読んだ瞬間、『これだ!』と思いました。(笑)
他の方より少々短めのお話となっております。
もしお時間が許すようであれば他の方の分を読んでいただければ佐久間様が興信所に来る前に何があったのかがわかると思います。
それでは、またお会いできる日を夢見て。