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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ポケットの中には・・・

1.発端
♪ポケットの中にはビスケットがひとつ〜
 ポケットを叩くとビスケットはふたつ〜♪

「・・・割れただけだろうが・・・」
零が口ずさむ童謡に、草間武彦は大人視点で突っ込みを入れた。
「・・兄さん、それではあまりにも夢がありません・・・」
水を差された零は困った顔をして溜息をついた。
と、突然大音量のブザーが鳴った。
「はいはーい!」
零はバタバタと扉を開けにいった。
「小包です。受け取りの判子を」
「ご苦労様です」
零が手際よく配達員とやり取りをし、小包は草間の前へと運ばれた。
「『全国草間武彦ファンの会』からか・・・」
「また怪しげなものなんでしょうか・・・?」
ごそごそと草間は小包を開けた。
中からはなにやら大きな布が出てきた。
その布からひらりと紙が落ちた。零はそれを拾い読んでみた。
「兄さん・・先ほどの歌に出てきた様な不思議なポケットらしいですよ?これ。中に物を入れて叩くと2つになるって書いて・・・あぁ!?」
ざっと目を通し、草間に目を向けた零は驚いた。
「兄さん!得体の知れないポケットの中に入っちゃだめじゃないですか!!」
「出られん・・」

「・・・えぇ!?」


2.叩く
久しぶりに草間興信所に顔を出そうと、海原(うなばら)みそのは黒い毛皮のコートを羽織り階段を上った。
上りきり、ドアを開ける前に中が騒がしいことに気がついた。
また何か事件が起こっているのかもしれない・・・。
みそのは少々の期待を込めてドアを開けた。
「お邪魔いたします」
扉を開けると、見慣れた零の姿のほかに男・功刀渉(くぬぎ・あゆむ)と小さな少女・本郷源(ほんごう・みなと)が何やら大きな布(中身が入ってるような・・?)を取り囲んでいた。
「まぁ、何をしておられるのですか?」
みそのが近づくと零がうろたえオロオロと言った。
「じ、じ・・実は・・」
「草間探偵が『叩くと増える不思議なポケット』なるものに入って出られないと零さんはおっしゃっておられます」
功刀が動揺の隠しきれない零に変わり、みそのにそう説明した。
みそのはしばし考えると「ずるいです」と一言つぶやいた。
草間様が『ぽけっと』に入って楽しんでらっしゃるなんて・・・なぜわたくしを呼んでくださらないのでしょう?
「零様、これお土産の海草の盛り合わせです」
「あ、ありがとうございます」
「では、失礼して・・・」
と、みそのは着ていた黒いコートを脱いだ。
「ほぅ」「これはこれは」「きゃあ!」
みそののコートの下は黒のビキニ水着だけだった。
「わたくしもポケットの中に入らせていただきます」
「あ、ちょっと・・」
功刀が引きとめた。
「ついでにこのチケットを持って行ってくれないかな?」
「面白そうじゃのう。零殿。ビスケットはあるか?ついでに持って入ってもらおうではないか」
「えええぇぇぇ〜・・・」
みそのはチケットとビスケットを持ち、中へと入った。
中に入ると微妙に小さくなった草間が2人いた。
「・・まぁ」
「なんでここにいる?」
「草間様がポケットで遊んでいらっしゃるとお聞きしましたので」
「誰が遊んでるって?」
「で、どうして出られませんの?わたくしが入る分には何ともありませんでしたが・・」
「わからん」
2人の草間から交互に返事をもらい、みそのは少し混乱し始めた。
と、外から突然雨のようにペシペシとこぶしが降ってきた。
みそのは思わず目を瞑った。


3.ミニ
「おーす草間、なんかいいネタねーかー・・・」
たまたま現れた佐久間啓(さくまけい)はそれ以上のことを口にできなかった。
「うぅ。佐久間さーん・・・」
泣き顔の零と功刀渉、本郷源の姿。そして・・・。
「ちくしょー!」「おまえたち、なんてことしやがる!」「腹減ったぞー!」
口々に何やら喚きたてるチビ草間武彦の群れ。
「まぁ」「どうしましょう?」「困りました・・・」
こちらも口々に何やら呟くみそのの姿・・・。
「ぎゃはははは!チビだっ!チビ草間だ!なんじゃこりゃ!」
佐久間は噴き出した。
『笑うな!』
チビ草間が一斉に佐久間に向かって吼え特攻していく。
佐久間はチビ草間軍団に頭をよじ登られたり、顔をつねられたり、噛み付かれたりしながらも笑うことをやめなかった。
「これは・・・何と言うか予想外でしたね。これじゃ1人持ち帰ったとしても味見もできない・・」
「あ・・味見??」
功刀の独り言に零が汗をかいた。
「いや、冗談です。にしても、小さくなっても草間探偵の性格自体は変わっていないようですね」
「そうじゃのう。そちらのみその殿も特に小さくなった以外は変わっておられぬようだし」
「でも、やはりこのように小さく多人数になったままでは少々支障がでます・・・」
みそのは自分の体が小さくなってしまったことを気にしていた。
これではいくら土産話が面白くてもお方に会うには魅力が半減以下である。
口々に事態収拾に向けての話し合いが進もうとしている後ろでは、佐久間がチビ草間が吸おうとしていたタバコを奪い小競り合いを起こしていた。
「僕にはそういった能力がないですから、せめて論理的にポケットを裏返して入れて叩いてみるというのはどうでしょう?」
「また叩くのか?今日はほんに面白い日じゃのう」
「では小さくなった草間様をとりあえず2人ほど入れて試してみましょう」
そういうと源と零がチビ草間軍団を取り押さえに掛かった。
あえて自分とは言わず、まずは確実に元に戻る方法を見つけよう、とみそのは思った。
そんな中、佐久間は先ほどみそのが持って入ったビスケットを密かに草間軍団に餌付けしていた・・・。


4.元通り?
裏返されたポケットにチビ草間が2人ほど放りこまれた。
「さて、やるかのう。これも草間殿のためじゃ」
「微力ながら協力します」
「俺も協力するぜ〜」
「あの・・あの・・手加減してくださいね・・・?」
零がオロオロと手を祈りの形にして懇願した。
「わかっておる」「できる限り」「努力はするけどな」
三人の言葉が零にはどうにも空々しく聞こえる。

− そんな姿を横目に見つつ、みなもはふと思った。
  もしかしたら、わたくしの力でこの事態は収拾できるかもしれない。
  「わたくし、全員集まってください」
  わらわらとチビみその軍団がみそのの周りに集まった。
  チビみその軍団は心を1つに精神を集中し始めた・・・。  −

「ではやるぞ!」
ぺしぺしぺし!ばしばしばし!!がすがすがすっ!!!
「ああ・・・」零は目を覆った。
「さて、見てみましょうか」
功刀がポケットをめくった。
中には文字通り袋叩きに遭いノックアウトされ伸びきったチビ草間が2人・・。
「失敗みてぇだな・・・」
「やはり無理でしたか・・・」
「むむむ・・そうすると・・・」
伸びたチビ草間を取り囲み、3人が顔を見合わせる。
「本当に困りましたね・・」
三人の後ろからみそのは声をかけた。
功刀、源、佐久間、零が違和感を覚え後ろを一斉に振り向く。
すると、そこには一番最初に見たあの黒のビキニの等身大みそのが1人立っていた。
「・・・」
「・・・」
「最近の子は大胆だねぇ・・・」
1人ずれた発言をした者もいたが問題はそこではなく、みそのがどうやって元の姿に戻ったかである。
「どうやって元に戻ったんですか!?」
零がみそのにキラキラと希望の光を向けた。


5.大団円
「時間の流れを少し元に戻しました」とみそのは言った。
つまりそれを使えば草間も元に戻るわけである。
「お願いします、みそのさん!」
零がキラキラとした瞳をみそのに向け哀願した。
「他ならぬ零様の頼みですから。ですが、草間様を全部集めていただかないことには・・・」
みそのがそう言うと源と佐久間の目が光った。
「よぉし!どんな手を使ってもひっとらえるのじゃ!」
「おっしゃ!!」
どうやらこの2人に任せておけばチビ草間の捕縛にさほど時間は掛からないだろう。
「ぜ、全部捕まえたぞ・・・」
「チョロチョロとしよって・・少々息が切れたわ」
佐久間と源がぜぃぜぃと息をついてそう言った。
「ご苦労様です。では、草間様の時間の流れを少し元に戻します」
みそのが目を瞑り精神を集中させた。
ポケットに詰められたチビ草間軍団が何やら騒いでいたが、次第にその頭数が減っていき最後にはひとつになった。
「・・戻ったのでしょうか?」
零が息を呑んだ。
功刀がポケットをめくった。
「大丈夫、気を失ってはいますが元に戻っていますよ」
「すごいのぅ、みその殿は」
源が心底感心したようにみそのを見た。
「大したことはしておりません」
みそのは特に謙遜した風でもなく、さらりと言った。
「さーて、草間が目覚めないうちに俺はとっとと退散するか」
佐久間がそう言うと功刀と源が後に続くように立ち上がった。
「僕もそろそろ引き上げましょう。僕のするべきことはもうないでしょうし」
「わしもそろそろおでん屋を開かねばならんのでな。おいとまさせていただこうかの」
草間が目覚めたとき、袋叩きの目にあわせたことをどう問い詰められるかを考えるよりも逃げたほうが早い。
という考えが頭の中をよぎったのであろう。
「みそのさんは、帰らないのですか?」
零がそう聞いた。
「草間様が起きられるまで居てもよろしいですか?」
「じゃあお茶入れますね」
みそのは草間から事のすべてを聞きだそうと零とお茶を飲むことにした。

かくして、草間興信所で起こった草間武彦分裂事件は解決した。
だが、実は問題を起こしたポケットはまだ草間興信所に存在している・・・。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2346  / 功刀・渉  / 男 / 29 / 建築家:交渉屋

1108 / 本郷・源 / 女 / 6 / オーナー 小学生 獣人

1643 / 佐久間・啓 / 男 / 32 / スポーツ新聞記者

1388 / 海原・みその / 女 / 13 / 深淵の巫女

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■         ライター通信          ■
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海原みその様

またお会いできて光栄です。
この度は『ポケットの中には・・・』へのご参加ありがとうございました。
今回ご参加いただいた皆様全員が遊び倒すことをご所望しておられ、こちらとしても大変楽しく書かせていただきました。
ほのぼの系・・というかコメディ!?といった感じになりました。
みその様がポケットに入られたことで少々びっくりしました。
ですが、みその様らしくてとても楽しくかけました。
最初に書きましたが、今回皆様が遊び倒す傾向で草間氏を元通りにすることを誰も書いておられず(協力はするけど具体的方法がない状態でした)ので、みその様にその役を担っていただきました。
ありがとうございました。
それでは、またお会いできる日を夢見て。
とーいでした。