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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


落ち着けモチつけ米をつけ!!

------<オープニング>--------------------------------------
新年を迎えたく様興信所に届いたある年賀状。

『新年明けましておめでとう御座います御座います。
 今年も、どうかよろしくお願い致しますね。
 新年に伴い、私の店の前で、「モチつき」を催したいと思います。
 日付は1月×日・午前10時より始める予定です。
 よろしければ、是非いらしてください。
 ―――プラントショップ『まきえ』より』

最初乗り気ではない草間だったが、零と希望の即興芝居によって上手い事連れ出され。
同じくまきえ達から年賀状を貰った面々と一緒にプラントショップ『まきえ』に赴くのだった。
まぁ、家から直行した輩もいるようだが。

●寝正月、成らず。
「うぅ〜…風の子でも寒いよ〜…」
新年早々、コタツで丸くなっている葛西・朝幸。
コタツにすっぽり入って頭だけ出した姿はカタツムリの仲間に見えなくもない。コタツ虫と言うのがいたらきっとこんな感じなのだろう、と錯覚さえする。
「…あのな…人ん家でだらだらしといてその台詞吐くんかお前は…」
コタツを思い切り占領されて代わりに布団に包まって呟く神島・聖。彼の額に青筋が見えるのも無理もないだろう。
「でもさぁ…。…そうだ!」
そんな聖に不満そうに言い返していた朝幸は、ふと思い立ったように顔を上げもぞもぞとコタツから抜け出す。
「ぁあ?どないしたん?」
「なぁ聖!『まきえ』に行こうよ!!」
布団に包まったまま不機嫌そうに返す聖に、朝幸が元気よく叫び返す。
「はぁ!?」
唐突な申し出に、聖は間抜けな声を挙げながら目を見開いた。
「いいじゃん、特に予定も無いんだしさー。ねぇ、いいでしょー?」
顔がありありと『行きたくない』と物語っている聖に、朝幸が必死に頼み込む。

…その後。十数分に及ぶ朝幸の必死の説得によって、結局聖が折れ。
意気揚揚と歩いていく朝幸と、不満そうながらもきちんと後をついていく紋付袴姿の聖の2人組の姿が見られ。
更にその後、店に着いてから餅つきの話を聞き、「モチー!?」と異様にテンションが上がった朝幸によって、聖も餅つきに強制参加させられるのだった。

●相変わらず変な店
午前10時ピッタリに全員が揃う。
…が、未だにまきえと臼が来ていない。杵はボブが運んできたからあるのだが。
「あの…臼は?」
不思議そうに問いかけるシュライン・エマに、聡が中を見ながら困ったような顔をする。
「…確か母さんが持ってくる筈だったんですけど…」
「…あら…皆さんもういらしていたんですか…?」
聡の言葉を遮って、まきえが現れた。
「あ、まき…」
まきえを笑顔で呼ぼうとした朝幸は、笑顔のままで固まる。
全員(聡・ボブ・希望は除く)も驚いて目を見開いたままの状態で硬直した。
―――なぜなら。
まきえは片腕に二個ずつ、合計四個の臼を軽々と抱えてやってきたからだ。
「……お母さん、そんなに一度に持つと落としますよ?」
「…そう、かしら…?」
なんだかずれた聡とまきえの会話を聞き、硬直から戻って頭を抱える者、呆然としたままの者、楽しそうに笑う者など、様々なリアクションが発生したのは、言うまでもない。

そんなこんなで、餅つき(の準備)、開始。

●ぎっくりごきり(何)
「さーて。とっととつきはじめるか!」
紋付袴の裾を捲り上げ、気合満々にそう叫ぶ聖。
最初は「年始早々出歩いて喜ぶなんて年玉目当てのガキぐらいや」とか「餅つきなんて重労働させなや」とか文句ばかりだったクセに、着物姿の桜木・愛華を見て機嫌を直し。更に生来の賑やか好きなのもあってか、結局は1番はしゃいでたりする。
「…やっぱ餅つきの相方は可愛ぇ子がええよな…ってなワケで、一緒にやらへんか?」
と振り向き様に一箇所をビシッと指差す聖。
その指先にいるのは愛華…の、筈だった。
『…拙者でござるか?』
「……へ?」
聞こえてきた声に首をかしげて振り向くと、指先には…ボブの姿。
愛華は既に奥に引っ込んでいていない。
「…ちゃ、ちゃう、お前やないんや!!」
とか必死に言ってはみたものの、ボブは既に餅つきの準備万端。…聞いちゃいねぇ。
切ない気持ちになりつつもこうなったらその頭かち割ってやろかと言わんばかりの勢いで杵を持ち上げた瞬間。
―――ぐきっ。
聖の腰辺りから、何だかいやーな音が聞こえた。
全員が何事かと振り返れば…腰を抑えて悶える聖。
「…いい年して張り切るから…」
朝幸がぽつりと言った言葉は…真実とはズレていたが、結構キツイコメントだった。

その後、朝幸の手(風圧)によって木陰に安置された聖は、花に出された茶を飲んで噴出してみたり、勝手に付きあがった餅を食べてて朝幸に顔面モチ直撃の刑を食らったりと、結構散々な目にあってしまったようだ。

●酒盛りGOGO!(ぇ)
全部のもち米を綺麗につき終わったので、数人の希望もあり、全員で宴会を始める事に。
人間と植物が入り乱れたとんでもない宴会ではあるが、会場代わりが危険な温室の一角なので問題はない…筈。
ジュースに餅、エマが持ってきたお茶、珈琲、御節。勿論酒はまきえ大量に用意されている。
「さぁ、どうぞ。いっぱい食べてくださいね」
にっこりと笑って長机に並べた料理や酒を指差す聡に、全員が一気に飛びついた。
そこからはわいわいと騒がしい宴会タイムになった。

――――まではよかったのだが。

酒とジュースの区別がつかなかった零、桜木・愛華、朝幸がうっかり酒を飲んでしまい。
未成年の筈の希望、聡が平然と酒を飲み。
草間、まきえ、エマ、葛生・摩耶、秋月・霞波の成人済組も希望や聖の手によって強制的に飲まされたりで。
あっと言う間に「宴会」は「酒の宴」に早代わりした。

「ボブを殺して愛華も死ぬ〜!」
『あ、愛華殿!やめるで御座る!拙者は殺されたくないで御座るよ〜!!!』
「嫌ァ〜!天国で一緒に幸せになるの〜!!」
などと火サス風に叫びながら、包丁を持ってボブを追い掛け回す愛華。
「あはははははは!!!」
その光景を見、指差しながら実に楽しそうに爆笑する零。
『零殿!笑ってないで助けて欲しいで御座るよ〜っ!!』
「あっはははははは!!!!」
ボブの必死の叫びに返ってくるのは笑い声。
「ボブは美味しいカボチャ餡になって愛華の血となり肉となるの〜!!」
『そ、それだけは勘弁してほしいで御座る〜っ!!!』
(ボブだけが)かなり命がけな『鬼』ごっこは、愛華が酔い潰れて眠り出すまで、数時間続いたのだった。

「……」
一方、出来るだけメンバーから離れようと宴会地帯からかなり離れたところに座り、ちゃっかりゲットしておいた御節や餅をつまみに無言で酒を飲む草間。
「…武彦さん、一緒にあっちでお酒、飲みまないの?」
草間を見つけたエマが、コップと一升瓶数本を持ってやってくる。
エマの問に騒ぎの中心を見た草間は、深々と溜息を吐いた。
「…あそこに入ると大変なことになりそうだから遠慮しておく」
とりあえず隣に腰を降ろしたエマは、草間の言葉に苦笑を零す。
「…零ちゃん、かなり酔ってるけど、いいの?」
エマが火サス状態の愛華とボブを指差して爆笑している零を見ながら言うと、草間は眉を顰めた。
「…そのうち酔いつぶれて眠るだろ」
暗にあまり関わりたくない、と言いたげな草間に、エマは思わず苦笑する。
「……まぁ、こっちはこっちで、ゆっくりしましょうか」
「あぁ」
こうして、暴走酔っ払いメンバーが全員酔いつぶれるまで、草間とエマはゆっくりと2人きりの酒盛りを楽しんだのだった。

愛華達からほんの少し離れた所で思う存分酒を煽っていた聖の所に、酔っ払った朝幸が擦り寄る。
「…聖…俺から言うのもなんだけど…」
「な、なんや…?」
ウルウルと目を潤ませながらじっと見つめてくる朝幸に、聖が怯んでやや後ずさる。
朝幸はそれを追いかけてずずいと顔を近づけ、にっこり笑いつつ手を差し出して一言。
「――お年玉、ちょうだいv」
小動物を演じつつ手を差し出した朝幸に、聖はズシャァッ!と座っている状態で器用にずっこけた。
「…あ、あのなぁ…」
「……お年玉…くれないの…?」
どこぞのチワワのように潤んだ瞳でじーっと聖を見つめる朝幸にうっと言葉を詰まらせた聖は、がくりと肩を落とし、財布を探る。
「……ったく…今回だけやで……?」
聖も少し酔っていたのだろうか、五千円のつもりが、うっかり一万円を出して渡す。
「あ…」
「わぁ、聖ありがとー!大好きーvv」
時、既に遅し。朝幸は金を懐にしまってにこにこ笑っている。
「…こうなったらヤケや!もっと酒持ってこんかーい!!!」
ヤケクソになった聖によって、1人一気酒が始まったのだった。

一方、酒豪組その1。
まきえは意外と酒に慣れているらしく、平然と酒をあおっている。
「…酒、結構飲み慣れてます?」
「えぇ、まぁ…よく、主人に付き合って飲んでいたので…」
やや驚いたような感心したような調子で言う摩耶に、まきえは苦笑気味に言葉を返した。
「ふぅん…じゃあ、息子さんも?」
「えぇ…主人が、冗談でよく飲ましていましたから…」
「…子供のうちに?」
「……そこは、聞かないで下さい…」
ふいっと顔をそらして呟くまきえに、摩耶は小さく笑う。
「…にしても、今日は楽しかったかなぁ。溜まってる鬱憤吐き出してスッキリしたしー。
 もしまたやるんだったら、今度も呼んで欲しいかなー、なんて」
「えぇ…是非、呼ばせて頂きます…」
そんな感じで、意外とほのぼのした空気の中、摩耶とまきえは酒を飲み交わすのだった。
―――周りの喧騒を、さりげなーく無視しつつ。

その頃、酒豪組その2。
「へぇ〜。霞波って結構イケる口なんだ?意外〜」
「うーん…私としては聡さんの方が意外でしたけど?」
「そ、そうですか…?僕、結構父の付き合いで飲んでたんですけど…」
ちゃっかり程よい場所を陣取った希望、霞波、聡は、呑気に酒を飲んでいた。
「…にしても…向こう、色々ととんでもない事になってますね…」
局地的に大混乱な光景を見て、困ったように隣にいる霞波と希望を見る聡。
それにとてつもなく爽やかな笑顔を返した2人からは、「気にしたら負けだから気にすんなv」オーラが発せられていて。
「……後片付け、大変そうですね」
「えぇ、ホントにv」
「俺は手伝わないけどな♪」
虚空を見つながらぽつりと呟く聡に、霞波と希望は楽しそうに言葉を返すのだった。
その後、「植物達がお酒を飲んだらどうなるのかしら?」と興味津々で酒瓶片手に植物達の集まりに入ろうとした霞波と面白がって「やれやれ〜!」と煽る希望、そして「温室が壊れるから勘弁して下さい〜!」と必死に止める聡、と言う愉快な光景が見られたのだった。

数時間に渡った宴会は、酒が無くなった事によって幕を閉じた。
結局酔いつぶれて倒れた愛華、朝幸、零、聖の四人と、酔い潰れるてはいないが思いの外酔ってしまったエマ、草間、摩耶の三人。
何故かケロリとしている山川親子、希望、霞波の四人が、七人を看病しつつ、後片付けをすることになり。
結局、なし崩しに来訪者の面々は山川家に泊まることとなるのだった。

―――次の日、目が覚めた聖は酔っ払っている時の記憶はほとんど無く。
   財布から無くなった一万円の行方に、暫くの間首を傾げる事となる。

終。

●●登場人物(この物語に登場した人物の一覧)●●
【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0696/秋月・霞波/女/21歳/フラワーショップ(ノワ・ルワーナ)店主】
【1294/葛西・朝幸/男/16歳/高校生】
【1295/神島・聖/男/21歳/セールスマン】
【1979/葛生・摩耶/女/20歳/泡姫】
【2155/桜木・愛華/女/17歳/高校生・ウェイトレス】

○○ライター通信○○
お待たせいたしました。異界第三弾、「落ち着けモチつけ米をつけ!!」をお届けします。
今回も「プラントショップ『まきえ』」はどうでもいい方向で元気な様子で(爆)

聖様:御参加、どうも有難う御座いました。
   今回も朝幸さんと沢山絡まさせて頂きましたが、如何だったでしょうか?

色々と至らないところもあると思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
他の方にもそれぞれ個別エピソードがあるので、見てみると結構面白いかもしれません。
それでは、またお会いできることを願って。