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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


落ち着けモチつけ米をつけ!!

------<オープニング>--------------------------------------
新年を迎えたく様興信所に届いたある年賀状。

『新年明けましておめでとう御座います御座います。
 今年も、どうかよろしくお願い致しますね。
 新年に伴い、私の店の前で、「モチつき」を催したいと思います。
 日付は1月×日・午前10時より始める予定です。
 よろしければ、是非いらしてください。
 ―――プラントショップ『まきえ』より』

最初乗り気ではない草間だったが、零と希望の即興芝居によって上手い事連れ出され。
同じくまきえ達から年賀状を貰った面々と一緒にプラントショップ『まきえ』に赴くのだった。
まぁ、家から直行した輩もいるようだが。

●気になること。
葉書を受け取った一人である葛生・摩耶は「やっほ〜♪あけおめことヨロレイヒ〜♪」と言う挨拶と共に他の面々より一足先に到着していた。
今は聡と一緒に外にシートを引いている。
…が、摩耶には着いてからずっと思っていることがあった。
――餅つきに使用されるあれやこれやが気になるのは自分だけでしょうか、と。
結局のところ考えても疑問は晴れそうにないので、質問することに。
「あのさ…聞きたい事があるんだけど」
「はい?」
「例えば。この臼と杵は何処の木のを使ったのやらとか」
「ちょっと離れた所にある森(「走れ!駆け落ち樹木!!」参照)から貰って来て作りましたが?」
「アンコの材料になる材料は何処で調達してきたのだろうかとか」
「勿論温室の植物から頂きました」
「…此処って稲(もち米)とかも栽培してるとか云わないよね?」
「言いますよ?そうじゃなきゃこんなに沢山用意できませんし」
「……此処って、『植物専門店』よね?」
「えぇ。稲も小豆も『植物』でしょう?」
摩耶の質問に爽やかに答えきった聡に、摩耶はがっくりと肩を落とした。
「…聞くだけ無駄だったかしら…?」
「?」
不思議そうに首を傾げる聡を見て、まだまだ自分の認識が甘かったかもしれない、と思った摩耶だった。

●相変わらず変な店
午前10時ピッタリに全員が揃う。
…が、未だにまきえと臼が来ていない。杵はボブが運んできたからあるのだが。
「あの…臼は?」
不思議そうに問いかけるシュライン・エマに、聡が中を見ながら困ったような顔をする。
「…確か母さんが持ってくる筈だったんですけど…」
「…あら…皆さんもういらしていたんですか…?」
聡の言葉を遮って、まきえが現れた。
「あ、まき…」
まきえを笑顔で呼ぼうとした葛西・朝幸は、笑顔のままで固まる。
全員(聡・ボブ・希望は除く)も驚いて目を見開いたままの状態で硬直した。
―――なぜなら。
まきえは片腕に二個ずつ、合計四個の臼を軽々と抱えてやってきたからだ。
「……お母さん、そんなに一度に持つと落としますよ?」
「…そう、かしら…?」
なんだかずれた聡とまきえの会話を聞き、硬直から戻って頭を抱える者、呆然としたままの者、楽しそうに笑う者など、様々なリアクションが発生したのは、言うまでもない。

そんなこんなで、餅つき(の準備)、開始。

●…溜まってます?(何)
「ん〜…あのさぁ、私にもちょっとつかせてくれない?」
最初は普通に餅をこねる役をやっていた摩耶だったが、唐突にまきえ(普通の男よりよっぽど腕力あるのでつく役で参加中)に交代を申し出た。
「えぇ…別にかまいませんが…大丈夫、ですか?」
「まぁ、なんとかなるっしょ」
少々心配になるような台詞を言いながらまきえと位置を交代し、杵に手をかける。
そのまま力一杯振りかぶった瞬間…摩耶の顔つきが変わった。
「…○○庁の○○〜!いっつも強引に○○プレイ強要しやがってー!!」
放送禁止用語が沢山入りそうな台詞とともに、ドゴーン!と轟音を立てながら臼に杵を打ち付ける摩耶。
全員が固まっているにも関わらず、摩耶はそのまま更に杵を振り上げる。
「○○社の副社長○○ー!延長料金値切るんじゃねー!!」
ドゴーン!と再度轟音を立てながら杵を打ち付ける摩耶。
先ほどもそうだったが、どうも聞いたことがある社名やら名前やらが出てきているような…。
と、全員が遠い目をしている中。
摩耶はこの後、更に十数人分の鬱憤を叫びながら杵を振り下ろすのだった。
―――数分後。
「…ハ、すっきりした。ありがとね」
やけに清々しい顔をした摩耶と、見事につきあがった餅がその場にあるのだった。
ちなみにそれから十数分後。
「ねえ草間さん…」
「なんだ?」
「…こういう場で草餅作ろーとか言う発言って、許されるのかしら…」
「………多分、許されないんじゃないか?」
「…やっぱり?」
なんて会話が、草間と摩耶の間で交わされたそうな。

●酒盛りGOGO!(ぇ)
全部のもち米を綺麗につき終わったので、数人の希望もあり、全員で宴会を始める事に。
人間と植物が入り乱れたとんでもない宴会ではあるが、会場代わりが危険な温室の一角なので問題はない…筈。
ジュースに餅、エマが持ってきたお茶、珈琲、御節。勿論酒はまきえ大量に用意されている。
「さぁ、どうぞ。いっぱい食べてくださいね」
にっこりと笑って長机に並べた料理や酒を指差す聡に、全員が一気に飛びついた。
そこからはわいわいと騒がしい宴会タイムになった。

――――まではよかったのだが。

酒とジュースの区別がつかなかった零、桜木・愛華、朝幸がうっかり酒を飲んでしまい。
未成年の筈の希望、聡が平然と酒を飲み。
草間、まきえ、エマ、摩耶、秋月・霞波の成人済組も希望や神島・聖の手によって強制的に飲まされたりで。
あっと言う間に「宴会」は「酒の宴」に早代わりした。

「ボブを殺して愛華も死ぬ〜!」
『あ、愛華殿!やめるで御座る!拙者は殺されたくないで御座るよ〜!!!』
「嫌ァ〜!天国で一緒に幸せになるの〜!!」
などと火サス風に叫びながら、包丁を持ってボブを追い掛け回す愛華。
「あはははははは!!!」
その光景を見、指差しながら実に楽しそうに爆笑する零。
『零殿!笑ってないで助けて欲しいで御座るよ〜っ!!』
「あっはははははは!!!!」
ボブの必死の叫びに返ってくるのは笑い声。
「ボブは美味しいカボチャ餡になって愛華の血となり肉となるの〜!!」
『そ、それだけは勘弁してほしいで御座る〜っ!!!』
(ボブだけが)かなり命がけな『鬼』ごっこは、愛華が酔い潰れて眠り出すまで、数時間続いたのだった。

「……」
一方、出来るだけメンバーから離れようと宴会地帯からかなり離れたところに座り、ちゃっかりゲットしておいた御節や餅をつまみに無言で酒を飲む草間。
「…武彦さん、一緒にあっちでお酒、飲みまないの?」
草間を見つけたエマが、コップと一升瓶数本を持ってやってくる。
エマの問に騒ぎの中心を見た草間は、深々と溜息を吐いた。
「…あそこに入ると大変なことになりそうだから遠慮しておく」
とりあえず隣に腰を降ろしたエマは、草間の言葉に苦笑を零す。
「…零ちゃん、かなり酔ってるけど、いいの?」
エマが火サス状態の愛華とボブを指差して爆笑している零を見ながら言うと、草間は眉を顰めた。
「…そのうち酔いつぶれて眠るだろ」
暗にあまり関わりたくない、と言いたげな草間に、エマは思わず苦笑する。
「……まぁ、こっちはこっちで、ゆっくりしましょうか」
「あぁ」
こうして、暴走酔っ払いメンバーが全員酔いつぶれるまで、草間とエマはゆっくりと2人きりの酒盛りを楽しんだのだった。

愛華達からほんの少し離れた所で思う存分酒を煽っていた聖の所に、酔っ払った朝幸が擦り寄る。
「…聖…俺から言うのもなんだけど…」
「な、なんや…?」
ウルウルと目を潤ませながらじっと見つめてくる朝幸に、聖が怯んでやや後ずさる。
朝幸はそれを追いかけてずずいと顔を近づけ、にっこり笑いつつ手を差し出して一言。
「――お年玉、ちょうだいv」
小動物を演じつつ手を差し出した朝幸に、聖はズシャァッ!と座っている状態で器用にずっこけた。
「…あ、あのなぁ…」
「……お年玉…くれないの…?」
どこぞのチワワのように潤んだ瞳でじーっと聖を見つめる朝幸にうっと言葉を詰まらせた聖は、がくりと肩を落とし、財布を探る。
「……ったく…今回だけやで……?」
聖も少し酔っていたのだろうか、五千円のつもりが、うっかり一万円を出して渡す。
「あ…」
「わぁ、聖ありがとー!大好きーvv」
時、既に遅し。朝幸は金を懐にしまってにこにこ笑っている。
「…こうなったらヤケや!もっと酒持ってこんかーい!!!」
ヤケクソになった聖によって、1人一気酒が始まったのだった。

一方、酒豪組その1。
まきえは意外と酒に慣れているらしく、平然と酒をあおっている。
「…酒、結構飲み慣れてます?」
「えぇ、まぁ…よく、主人に付き合って飲んでいたので…」
やや驚いたような感心したような調子で言う摩耶に、まきえは苦笑気味に言葉を返した。
「ふぅん…じゃあ、息子さんも?」
「えぇ…主人が、冗談でよく飲ましていましたから…」
「…子供のうちに?」
「……そこは、聞かないで下さい…」
ふいっと顔をそらして呟くまきえに、摩耶は小さく笑う。
「…にしても、今日は楽しかったかなぁ。溜まってる鬱憤吐き出してスッキリしたしー。
 もしまたやるんだったら、今度も呼んで欲しいかなー、なんて」
「えぇ…是非、呼ばせて頂きます…」
そんな感じで、意外とほのぼのした空気の中、摩耶とまきえは酒を飲み交わすのだった。
―――周りの喧騒を、さりげなーく無視しつつ。

その頃、酒豪組その2。
「へぇ〜。霞波って結構イケる口なんだ?意外〜」
「うーん…私としては聡さんの方が意外でしたけど?」
「そ、そうですか…?僕、結構父の付き合いで飲んでたんですけど…」
ちゃっかり程よい場所を陣取った希望、霞波、聡は、呑気に酒を飲んでいた。
「…にしても…向こう、色々ととんでもない事になってますね…」
局地的に大混乱な光景を見て、困ったように隣にいる霞波と希望を見る聡。
それにとてつもなく爽やかな笑顔を返した2人からは、「気にしたら負けだから気にすんなv」オーラが発せられていて。
「……後片付け、大変そうですね」
「えぇ、ホントにv」
「俺は手伝わないけどな♪」
虚空を見つながらぽつりと呟く聡に、霞波と希望は楽しそうに言葉を返すのだった。
その後、「植物達がお酒を飲んだらどうなるのかしら?」と興味津々で酒瓶片手に植物達の集まりに入ろうとした霞波と面白がって「やれやれ〜!」と煽る希望、そして「温室が壊れるから勘弁して下さい〜!」と必死に止める聡、と言う愉快な光景が見られたのだった。

数時間に渡った宴会は、酒が無くなった事によって幕を閉じた。
結局酔いつぶれて倒れた愛華、朝幸、零、聖の四人と、酔い潰れるてはいないが思いの外酔ってしまったエマ、草間、摩耶の三人。
何故かケロリとしている山川親子、希望、霞波の四人が、七人を看病しつつ、後片付けをすることになり。
結局、なし崩しに来訪者の面々は山川家に泊まることとなるのだった。

―――次の日、目が覚めた摩耶の枕元には何故か更に乗った草餅が置いてあって。
   ちゃんと普通のヨモギを使ったのかとか、どうして解ったのかとか、当分の間悩むことになる。
   勿論、草餅は美味しく頂いたが。

終。

●●登場人物(この物語に登場した人物の一覧)●●
【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0696/秋月・霞波/女/21歳/フラワーショップ(ノワ・ルワーナ)店主】
【1294/葛西・朝幸/男/16歳/高校生】
【1295/神島・聖/男/21歳/セールスマン】
【1979/葛生・摩耶/女/20歳/泡姫】
【2155/桜木・愛華/女/17歳/高校生・ウェイトレス】

○○ライター通信○○
お待たせいたしました。異界第三弾、「落ち着けモチつけ米をつけ!!」をお届けします。
今回も「プラントショップ『まきえ』」はどうでもいい方向で元気な様子で(爆)

摩耶様:御参加、どうも有難う御座いました。
    最後の最後に草餅ネタを持ってきてみましたが、如何だったでしょうか?

色々と至らないところもあると思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
他の方にもそれぞれ個別エピソードがあるので、見てみると結構面白いかもしれません。
それでは、またお会いできることを願って。