コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


恵局長の彼をプロデュース

 四角卓。奥にホワイトボード。各席の手元には水が満たされたペットボトル。
 以下の素材を一室に置けば、構成されるは会議室。そして、目に見えない物、つまりは目的、議題があり、人は集まった。
 ざわつきが飛び交う中、眼鏡をかけた男が、ボードのある方、その、中心に座っている。「歳末忙しい中、集まって頂きありがたい」
 まずはそう切り出して、尚加藤君の深夜番組が来年四月よりゴールデンに昇格する事を報告しておく、とも言って、「本来ならこの事を討議しあうつもりだったが、それよりも先に、我々は対策すべき事がある」
 全員が息を飲む。多数は疑問を心に浮かべる。一部はさてはと予感する。
 眼鏡の男はおもむろに立ち上がり、マジックを持ち、ボードに文字を連ね始めた。
「我がゴーストTVが抱える問題、それは」
 力を込めて記し切る、現われた問題は、

【恵局長の暴走抑止について】

「すんません山田さん、俺大晦日のカウントダウン番組で」「ああ行っちゃ駄目だよ佐藤君!?」
 半ば泣きつく眼鏡の山田さん、「いや、君たち全員帰るな!そりゃ俺だって無茶だと思ってるよ、でもここらでバシっとやっておかないとさぁ!」
 ほとんど悲痛な叫び、だが、
「あのう、でも」ADの人、「恵局長それなりにやってますよ?番組考えてくれるし、出演もしてくれたり」
「君は入ったばかりだから解らないだろうがなぁ、あの局長はやりすぎなんだよ!」
 そう言って山田さんはボードに今までの事を連ねていった。
 1.番組に筋肉の人達でゲリラライブ
 2.野球の副音声でテレホンショッピング
 3.クイズ番組の答えをノリで決める
 4.クリスマスにワイドショーで離婚特集
 5.アフロンジャー事変、etc…
「………まぁちょっと」「異常ですよねぇ」「てかなんで筋肉なのかしら局長さん」「筋肉がこれからのスタンダードだって」「無茶だなぁ」
「という訳だ」
 眼鏡の人が眼鏡をクイっとあげる。「局長が頑張ってるのは解るし、彼女がこの局を私物化してる、という訳でもないのは皆承知の通り。だが、抑止力は必要なのだよ」
 抑止力ったってなぁ。と皆が首を傾げる。
「首輪繋いだり、洗脳したりとかするんですか?」
 投げやり気味に広報部がそう言うと、「まぁそれに近いな」と。
 そこで眼鏡の人は眼鏡を光らせた。「こんな恵局長だが、彼女にも一つ弱点がある、それは」
「ああ!」女性スタッフが声をあげた。「カワイイモノズキッ!」
 ………いや、でもそれをどうやって抑止力に、
「来年初頭の番組、ドッキリ的企画として」
 、
「恵局長の行動に意見が出来るカワイイモノな彼をプロデュースする」
 例:恵局長が無茶を言う→それを「だ、駄目ですよそんなの」とうるうる瞳の可愛い彼→止まり硬直する「……って、そ、そないな顔するなぁっ!」「でも……」「わーった、わーったちゅうにこのドアホッ!」→筋肉無しで万々歳→ついでに彼女の八つ当たりやハリセンアタックもその彼に押しつけ
 なんて無茶な企画だ、全員そう思った。

 一方その頃恵局長は、
「か、かわええ。……あ、あかん!可愛さに惑わされて借金地獄はあかんっ!」
 ぷるぷる震えるチワワに未成年でありながらローンをしそうになっていた。
(ハハハ☆一万円の借金が百万円に増えるパターンもあるぞ☆)大空に浮かぶ、兄の爽やかな笑顔。


◇◆◇


 むかーしむかし、ていうか異界の住人が新年モードに入りデパートで購入した出来合いのおせちをつっついてる時なので、数日前の事じゃった。
 通常の世界から離れ小島のように存在するバラエテ異界、しかし、この異界へ入る方法は、アフロを被る以外に余り明かされていない。普段から世界から世界へ行き来する者にとってはなんて事無いが、その能力を持たない、つまり普通の一般人にとっては、まだまだ未知の世界である。ただし、ゴーストTVという電波が、異界外へ情報を、妨害電波やら電波ジャック等で漏洩してるので、唯の人以外では結構公然の事実らしく。
 という訳で、己自身が起こす現象じゃないとしても、不可思議な能力を肩にかける彼も、このふざけた世界に放り込まれる事になるのである。
 あ、昨今に置き余剰気味のタクシーが。
 ニュース番組でも度々取り上げられる、不況を象徴する一つの形。別に何一つ珍しい事は無い、ただしそれが、
 某イギリス魔法使いの物語が如く、空を飛ぶなら別。黄色の車体は、今年から数えて四度目の日の出が彩って間もない空にマッチして。
 その様子、でかい買い物屋《HIP》の象徴でもある、屋上にそびえ立つ真っ赤な観覧車からも見受けられて、関西野次馬根性の声と視線と携帯カメラのファインダーを向けられて。やがてのろのろとタクシーは、アンケートという名目で個人情報を聞き出そうとする若いねーちゃんも掻き分けて、本来走るべき地上へと停車した。ざわつきは収まらない。ロールスロイスから降りるのは、サッカーのスターと予想出来るが、空飛ぶタクシーの客の見当は全く付かない。口々するのはその予想、魔法使いか機械の身体を求める少年か―――
 現実は、拍子抜けする。
「……え、えっと」
 降車した人物は、困った。困って、とりあえず微笑んだ。あどけなく幼い顔は、一瞬硬直しかけた周囲を柔らかくほぐしたが、……いずれにせよ興味の対象にはほど遠く、一番の怪異であるタクシーが空へと消えていったと同時、異界の住人達は再び人の流れを作り出した。文字通り取り残される彼、溜息を一つ吐いてから辺りを見回す。ばらえて異界。
(思わず言葉に出しちゃったけど、)突然現われた運転手に、(本当に来ちゃったな)
 冗談みたいな異界の噂を聞いた時、確かにここに来る事を、彼は《見学》という形で僅かながらも望んだのだけど、
(あんなのが鞄から出てくるなんて)
 そう思いながら童顔を冬の澄み切った空に向ける、鞄から質量保存の法則を無視して飛び出したタクシーはもう見えない。
(………もう随分慣れたつもりだったけど)
 まさか空飛ぶタクシーすら出てくるとは……。肩に下げたレトロ調の、《有り得ない何かが飛び出す》鞄を一撫でして、祖母の顔を思い浮かべながら感慨に耽る。だけど何時までもそうもしてられないから彼は――内場邦彦は人の流れに加わりながら、コート一着の相場が五万六万の《HIP》を通り過ぎていって、何処をどう見よう、そう考えた。
(そういえば、僕と同じ名字の芸人さんが居るんだっけ)
 大学で地方から来てる人から聞いた話。『自分とのギャップに困るわ』と笑いながら言ってた事を浮かべて、20歳の年齢と天秤が釣り合わない、幼くあどけない童顔を苦笑させた。まぁ一応言っておくとここはバラエテ異界であって大阪では無いんですが。
 ともかく邦彦は鞄の不思議に渡りに車して、この異界に足を踏み入れた訳で。
「何処から見て回ろうかな」
 気分はすっかり観光客、背筋をうんと伸ばしながら、始めに買う物はお土産よりもガイドブックかなと算段を付けた頃に、

 不思議な鞄がもたらすのは常に利益だけでなく。
 時にはとんでもない厄介ごとを押しつける場合が有り。

 ゆえに鞄の口はしっかりと閉じておかなければならないのだが、さっき出てきた物の大きさが過ぎた所為か、ほんの少し開いてた訳で、そのほつれから、電車に揺られたり、人にあたったりする振動の衝撃が散り積もったら――
 たこ焼きを食べて、「美味しい」とほんわかして、(漫才とか見ていこうかな)と思惑を巡らせて、「っと」関西おばちゃんの突進を辛うじてかわした、時くらいに、
 鞄はうっかりと開口する。だがしかし、
 邦彦がそれに気付いたのは、開いてから結構経ってからだった。少なくともたこ焼きはとうに食べ終えて、お好み焼きあたりに思いを馳せてた頃で。
 だが、開きっぱなしの口から覗く闇に気付いた時は、全てを忘れて硬直した。
 だけど、「………あ、あれ?」直ぐに疑問が彼を再び動かす。
「……なんで何も出てこないんだろ?」もしかして既に零れてしまったのだろうか。どちらにしろ、さっさと閉じた方が、と、
 バチコォッ!「ったぁ!?」
 覗き込んでた顔の鼻っぱしらに何かがクリーンヒットッ。「っい、いつぅ」可愛い顔の赤くなった鼻を手で押さえる邦彦。それでも祖母の形見の鞄は離さずに。
 こういう事があるから、鞄の取り扱いは注意しなければならないのだ。改めてその事を鼻と供に痛感しながら、ジッパーを閉じ終えた時、(そう言えば)疑問二回目、
「何が飛び出し」「なぁにーたん」
 それはころころした声で。
 地べたに足を崩しての女の子座り、その体制から見上げて魅せる、邦彦よりもさらに小悪魔で強力な、
「ここ何処なん?」
 無垢で無邪気な無敵の子供。


◇◆◇


 一方その頃恵局長は、
「さぁ今年も残す所364日になりましてって言うた奴にお前の人生はここで終わりやけどなと引き金を」
 漫談をしていた。


◇◆◇


 折角の観光というのに、全国何処にでもあるファミレスに足を踏み入れたのは、邦彦の本意では勿論無い。
 だが子供にせがまれて断れる程、邦彦の心は強くなかったのである。という訳で、新年あけて数日経過したとは言え、おせちの良さをほっぽりだしてカレーを食べるこの子はなんだろうか。年中混み合うレストランの一角で、邦彦の頭の容量はバラエテ異界よりもそれにあてられていた。
「ねぇ、庄二君」
 名前は神楽庄二、それがまず聞き出した情報、だが、
「君は、何処から来たの」「わからへーん」
 そこより先は全くである。鞄から飛び出してきたこの子にいくら問いただしても、首をかしげるばかりである。生き物が飛び出した経験は何度あったか、人間というのは流石に初めてだ。
「ねーおにーたん、チョコレートパフェ食べていい?」
「う、うん」
 ……もう一つはっきりしてる情報は、この子がとびきり可愛い事だ。童顔である邦彦ですら、そのキュートさには負ける程。「年齢は?」「じゅうにー」それよりも数歳くらい若い容姿。つば無しの真っ白な柔らかい帽子がよく似合い、手足を伸ばしてもその小柄さに参ってしまいそうで。柔らかそうな黒髪も、思わず撫でつけたくなって、
 おかげでついついお願いを聞いてしまう。まぁそれは、望んだ訳じゃないとしても、この子を召還したのは己という責任もあるが。しかし、これからどうしよう、
「あんなぁ、おねーたん」ん?「だっこさせて」
 ………にんまりスマイルで仕事中である彼女ですら自分のお願いを叶えさせる所から見て新情報二つ、かなりの年上キラーで、彼はかなりマセている。
「庄二君、困っているから、ね?」
 保護者じゃないのだが、そう言って庄二を引き離す邦彦。ぷーっと頬をふくらます所もいちいちノックアウトされそうでやばい。
「庄二君」
 面持ちを直して、「本当に何処から来たとか、というか、記憶とか無いの?」
「んな事言われても……あ!にーたんにーたんッ!あっちの席のおねーたんめっちゃかわいいでッ」「え、え?」「なぁ誘いに行こうなぁ、にーたん顔ジャニ系やから絶対いけるて!」
 新情報、確定。自分の身の上より目先のねーちゃんっておい。邦彦が異界の住人だったらハリセン片手につっこんでいただろうが、至って普通の大学生なので冷や汗かく程度だった。髪をくしゃくしゃとする。これからどうしたものかと、途方に暮れ始めた時、
「……グッドタイミングなのかな」
 それはファミレスのメニューの隅っこにあった、ゴーストTVが出した小さな広告。
【可愛いショタっ子大募集中】
「けど、しょたってなんだろ?」「ショウジ・タクティクスの略やねんッ!」
 一応どういう意味って聞いた所、
「なんか強そー☆」
 意味は解ってないみたいです。


◇◆◇


 一方その頃恵局長は、
「はーいなんと、耳たぶがでっかくなってもーたぁっ!」
 隠し芸をやっていた。


◇◆◇


「名前と年齢以外素性は不明ねぇ」
「……やっぱり駄目でしょうか?」
「とんでもないっ!」正面の人は立ち上がる、「うってつけの人材だよっ!容姿は可憐で無邪気で素直、あの局長を落とすには最高だ。本人の意思次第だが、身寄りが無いって事はここに終身させる事も出来る」
「は、はぁ」
 局長を落とすってなんだろう、と邦彦が顔を歪ませる場所は、ゴーストTVのとある一室である。前情報でこの放送局こそ、バラエテ異界の象徴である事は知っていた。見学の予定にも含めていたのだが、ここまで自分を自分で巻き込ませるとは。本当、この鞄を手にしてからの邦彦の日常は一変している。
「ともかく、これでやっと次の段階に進める事が出来る」
「次の段階……、あの、そういえばあの子を使って何する気なんですか?」
「そうだなぁ、その説明はあの子にも説明、って、あの子はどうした?」
「あれ?さっきまで居たのに」
 今は影も形も――
 がちゃり、と、
 背後の方からドア開く音、表れたのは、「ええ湯やったー」
 湯上がで肌がポカポカしてる、その様子が見受けられる。だがそれで邦彦と正面の男の目が点になってる訳では無い。沈黙していても埒が明かないので、邦彦は、聞いた。
「あの、庄二君?」「ん、何にーたん?」
 いやね、あのね、なんで君、
「女の子の服、着てるのかなって」
 苦笑しながら聞けば、「ねーたんが着せてくれたんっ!」と青色のゴスロリ衣装をふわりとくるり。その姿はどうやっても、性別を間違えたようにしか思えず。正面の人が密かにガッツポーズしたのは別の話である。
 ちなみに、庄二君が風呂に入ったのは、お姉さんの裸の為だったとかどうとか。


◇◆◇


 一方その頃恵局長は、
「やってられっかぁっ!」
 文句叫んでいた。「ていうかディレクター、ディレクターッ!うちを何時までこんなしょうもない番組に使う気や!」「きょ、局長落ち着いてっ!カメラ回ってますからッ!」
 しかし最早怒髪天を突く彼女はさっさとフレームアウト、その場に用意されていたパイプ椅子に座り、ミックスジューズを持ってくるようにADに罵倒して。
「ったく、正月やからておざなりな番組大すぎやろ、もっとこうオリジナリティな企画は考えつかんかったい」
 厳密にはそれだけが、彼女が不機嫌な理由では無かった。
 ―――だからそれを餌にする
「あの、局長その事なんですが」「あん?」
 ヤクザも逃げ出すきっつい視線を送られて、ビビるADだったが、勇気をもって、
「次の収録、恵さんの企画した全世界筋肉ショーです」
 その途端、
「ほんまかぁっ!?」「ほ、ほんまです」「よっしゃあついにマッスルの時代やぁ!」
 狂喜乱舞した彼女は再びフレームインして、うってかわった態度で仕事に臨んだそうな。


◇◆◇


 では、その間に恵の考えた世界の筋肉にこんにちはについて説明しよう。
 これは世界各国の筋肉自慢を呼んで、カーテンの向こうに配置し、順番に紹介していく番組である。恵曰くフランスの筋肉はパリッぽいに違いないとかどうとか。普通ならそんな企画は深夜の番組にしか通りそうにないのだが、


◇◆◇


「やってまいりましたこの企画ぅっ!」
 と叫んだのはバリバリゴールデンである。新年早々ぶちかました暴挙、だが彼女は全身全霊だ。筋肉番組、なんと素敵な四字熟語であろうか。局長をやっておいて良かったと彼女は涙を流して歓喜する。目薬だが。
「ちゅう訳で一発目は、自国よりからこんにちはッ」
 カンペに書かれた文字を朗読、「ニッポン代表神楽庄二ぃぃっ!」
 パカァ、っと、カーテンが開かれた。いざ対面、躍動する大腿筋ッ!
「……え」
 だが、そこにあったのは、
 恵局長に日ごろの感謝をという垂れ幕と、
「あぁっ!」とっても可愛い、「恵おねーたんッ!」
 女装をしたうきゅうな男の子「うえぇぇぇぇっ!?」
 少年の姿、それを目視した刹那、恵は思いっきり後ずさりした。「な、な、な、筋肉ちゃうぅ!?」取り乱してる。
「………あの、大丈夫なんですかあの娘?」
 容姿的にはあちらが年上に見えるけれど、実年齢から言えばこっちが年下なので、邦彦がそう心配すると、「ああ、局長何時もあんな感じだから」と。
 確かに説明された通り弱点ではあるっぽい。なんだか今も顔を真っ赤にして手信号をバタバタしてるは人という字を三回以上飲んでるわ、「え、え、え、」
 そう、とうとう硬直した彼女に、庄二君は駆け足で近寄って、
「ねぇ、おねーたんどうしたん?急に逃げて」「だ、誰やお前ッ!?」会話成立せず。「てかディレクターッ、全然筋肉ちゃうやないか、ってなんやそのしたりやったり顔!?い、陰謀か、うちを貶める為の陰謀かッ!?」
 今すぐにでも飛びかかりそうな彼女、のスカートの裾を引っ張って、「ねーたん、怒ったらあかんねん。折角の綺麗な顔が台無しやん」
「き、綺麗……」
 年端もいかないガキの文句に顔面トマトになる恵、やばい、負ける。
 恵がそう思った時、庄二は勝った、と思った。自分が何者であるかは今だ思い出せないが、己の持つ性分については充分把握していた。そう言えばなんかこんな風に、数多の女性を毒牙にか、じゃなく、甘えていたような。
(ええとー、次はー)見た目にふさわしくないよこしまな頭を回転させて、
 彼は狙いを定めた、「だっこー☆」「え、え、ちょと待っ」
 それが子供の無邪気な行いでない事を、数時間とはいえ、一番長い付き合いの邦彦は解る。庄二君が求めてるのは、(胸だよね)
 きっと、多分、恵の胸に顔をうずめる気なのだ。はぁっと溜息をつく。自分の鞄にあんなマセた子が潜んでいたとは。……いや入っていたのか、これを中継したのか、あるいは最初からこの鞄がもたらした物じゃないのか。考えれば考えるほど謎が深まる鞄である。とりあえず成り行きを見守って、
 その時、邦彦の目に、
 新たなミステリーが映った。え、
「………」「………」
 庄二が黙り、恵が黙る、意味。

 恵の胸が、へこんだ。

 時が、止まる。押しつけた顔が、彼女のそれなりにあった胸部を、変形させていた。
 流石にこの謎はすぐに解けたが、
「パット?」
 誰かが呟やいた呼んだのは冷酷な静寂。その中で、
 神楽庄二は厳かに抱きついてた恵から降りて、ちょっと脇見ながら、
「僕、」
 、
「胸が大きい方がええ」
 彼女が臨界点を突破するのに時は除外される―――
「狂乱した金剛石ぃっ!」「ええ、幽波紋ッ!?」十二歳なのに古い漫画を読んでたっぽい事が判明、「あ、あんな恵ねーたん、僕スタンド使いちゃうから見えてへんだけかもしれへんけど、それって唯の素拳」
 右ストレートの風圧が彼の頬を歪ませた。やばい、本気だ。「に、にーたん」
 溜まらずそのプリティスマイルを、さっきまでのより所に顔向けたが、「ええと、特殊な能力とかは無いみたいだけど」ディレクターと対話、
「お姉さんの膝枕の為なら、どこまでも不死身になるみたいだから使ってやってください♪」
「にーたぁんっ!?」
 叫びも聞かずに邦彦は、緊迫するスタジオから立ち去り始めて、
(紹介料ももらったし、折角ここまで来たんだから、何か美味しい物食べて行こっと。……大阪ってたこ焼き以外に何かあったかな)
「い、いやちょっと待って、ね、誰か」
「膝枕の為やったらなんでもかー」
 後ろからゆっくりとした、だけど殺意の込めた音程、ギギギっと振り返って、庄二、ブリっこポーズを取りながら目をきゅらりんと輝かせて―――
「おねーたん大好」
「おんどりゃおんどりゃおんどりゃおんどりゃおんどりゃおんどりゃあぁぁっ!」
 ちなみに、《元に戻す能力》は無いみたいです。


◇◆◇


 数日後、ゴーストTV企画室。
「め、恵ねーたん、昼食持ってきた」
「ん、ご苦労」
 そう目を合わせずに労った後、局長は庄二の、首にかけられたラジオ体操のカードのような物を手にとり、マス目にハンコをポンッ。
「へー結構溜まったなぁ、もうこれで十二個やん」「……せやけど千個溜まらなあかんて」「つべこべ言わんとさっさと仕事やってこんかぁいッ!次は食後のミックスジュースやっ」
 恵に怒鳴られて、白いつば無し帽子の中央に、ワンピントでゴーストTVのロゴをあしらった彼は、半分涙ぐみながら走り出した。名目は、膝枕の為である。はんこ千個で十分間のその時―――勿論彼がこの不平等条約に納得してる訳では無いが。
 という訳で、恵局長の暴走を止めるはずだった今回の企画は、彼女に哀れな下僕を一人つかわせただけであったとかどうとか。山田さんはうなだれた。
 とにもかくにもこの日から、内場邦彦が呼び出した名前と年齢、そしてその卓越たる可憐さと巧妙なマセてさ以外一才不明の謎の少年は、何処かの小学校に通いつつもGTVの一員になった訳である。
「そんでな、そんでな、恵ねーたん酷いねんで。僕の事モノ扱いし、チチナシの癖に……いやでもほんまはごっつ優しくてけして今恵ねーたんが後ろで木刀片手に忍び寄ってるさかい慌てて言い訳してるんやなくて」
 そんな悲鳴が轟く頃、内場邦彦はバラエテ異界土産を大阪の物と偽って、家族に渡していたそうな。





◇◆ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ◆◇
 0264/内場・邦彦/男/20/大学生

◇◆ ライター通信 ◇◆
 挨拶の前に、ノベルデーターにお見落としがあった事をご報告させて頂きます。
 ご親戚、兄弟などはお控え下さるよう文言したのですが、プレイングにそれに見受けられる箇所がありましたので、修正させて頂きました。
 細部とはいえ、発注文をしっかり踏まえないと、上手くライター側と接続できない、最悪の場合世界と断絶される時がありますので(今回はカイヤ夫婦の問題くらい大した事あらへんでしたが)以後よろしくば。……唯、他の方に聞いたところ依頼内容がよくわからなかったという意見もあったので、こちらの過失かもしれないです。申し訳ありません:
 いやでもね、純情を募集ゆうたのにっ!来たのマセガキ!全然違うやないかぁい!
 ただしこれはおもろかったので非常に結果オーライで(をーい
 という訳で文もたけなわな時にやっと挨拶あけおめことよろ(適当ですか)毎度ご贔屓してくださっておおきにです。……てかまさかこの依頼に人が来るとは思わんかったのでびっくらです。(えー
 ただ、元々WT1のキャラっちゅう事やったみたいでっけど、そちらのデーターは検索せずに書きました;最初にあった通りあくまで怪談における話やのでぇ。名前を弄ったのもそんな感じです。移植、という事になると、PL様から完全に奪う事になるので……。彼は、そちらの意志の手元に居る方が良いでしょうから。これより以降、何かのゲームに登録する機会も無きにしもあらずですし。
 という訳で《もらった》のでなく《作った》庄二君は現在マセガキですが、後で検索したそちらと違い純情シルブプレになる可能性もありです(えー)無理っぽいが(ええー
 という訳でNPCを考えてもらって頂きおおきにでした。……なんやか普通の人間なのもおもろないんで、後日彼の好物やらの設定を決める依頼でも募集しようかと思います。(をい)あ、でもいろいろな人で構成してもらいたいんで、そちらの参加は見送って頂くとありがたいです。下僕たるライターが主人に色々言ってすいません;
 あ、あと恵にチチナシという設定も(それはどうでもええ
 んでは長々と失礼致しました。またよかったらよろしゅうお願いします。ほな。