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夢写真
------＜オープニング＞--------------------------------------
大きな木の幹に作られた『夢紡樹』に今日も夢に悩む人物がやってきた。
げっそりと痩せこけた頬。死んだような瞳。
その青年は手に持った写真を貘に渡し叫ぶように言う。
「助けてくださいっ！オレは久良木（クラキ）と言います。オレはもうここ数日寝ていません。怖くて寝られないんです！」
その店の店長でもある貘がとりあえず落ち着くように言って、エドガーの持ってきたミルクティーを勧める。
しかし久良木はなかなかミルクティーを口に運ぼうとしない。
貘は写真をぱらぱらとめくっていくが、目はいつもと同じように黒い布で覆われている。
しかしまるで見えているかのようにそれを二つの山に判別していく貘。
暫くその光景を見ていた久良木はやっとミルクティーに口を付けた。
するとそれを待っていたかのように貘が口を開く。
「眠れない・・・それはこの写真のせいですか？」
その言葉に久良木は頷く。
「オレが夢を見るたびに・・・その写真は増えていくんです。目が覚めると枕元にソレが・・・」
「そして貴方が見た夢に登場した人物が写真に描かれて居るんですね」
「はい。それだけならまだいい。でもそうじゃなかった。現実社会からその写真の中の人物は消えてしまっているんです・・・誰もその人物を知らない。写真を見せても分からないって言うんです。そいつの彼女に聞いても知らないって。覚えているのはオレだけでまるで皆オレを狂っているかのように・・・」
がっくりと項垂れる青年。
「・・・写真、二通りありますね」
その言葉にはっとしたように顔をあげる久良木。
「二通り・・・？」
えぇ、と頷いて貘は二つの山を久良木に指し示す。
「いいですか？右の山は被害者が一人きりで映っている写真。そしてもう一つは貴方と一緒に映っている写真。どうしてなんでしょう・・・」
さぁ、と首を傾げる久良木。心当たりはないらしい。
「多分それにも意味があるんだと思いますよ」
貘は久良木と写真を眺め、一刻を争う事態であることを予測する。
しかし自分は他の仕事で手一杯ですぐには動けそうもなかった。
「私の信頼できる方を呼びますので、少しお待ち下さいね」
チリン、と机の上のベルを鳴らすと可愛らしいメイド服を着たリリィが現れ、貘に尋ねる。喫茶店の方から走ってきたらしい。軽く首を傾げるとピンクのツインテールが揺れる。
「なぁに、マスター？」
「多分喫茶店の方に助けてくださる方がいらしてると思うので、こちらに呼んできてください。お願いしますね」
「はぁい。任せて、マスター」
ニッコリと笑みを浮かべたリリィは再び喫茶店へ足を向けた。
------＜捕獲＞--------------------------------------
雪がちらちらと風に吹かれ踊るように舞っている。
それを見上げて天樹・昴は、ほぅ、と白い息を吐いた。
今日はバレンタインデー。ホワイトクリスマスならぬホワイトバレンタインデー。
舞い踊る粉雪がその日に小さな彩りを添え、恋人達、そして未来の恋人達の気分を盛り上げるに違いない。
その中の一組に昴は名前を連ねていた。
今日はずっと前から予定を空け、一日恋人に付き合うという約束をしていたのだった。
そして昴は今、彼女に会う前にあるものを引き取りにいく為、足早に歩いていた。
「こんにちは」
昴は、カランと『夢紡樹』の扉を開けて中に入る。
すると柔らかな笑顔でカウンターに立つエドガーが昴を出迎えた。
「こんにちは。いらっしゃいませ。・・・あ、ルビーの受け取りに？」
「はい。貘さんは？」
「申し訳ありません。ただ今来客中で・・・」
本当に申し訳なさそうにエドガーが奥を見つめながら言う。
「あぁ、そうですか。それじゃ、受け取ってから頂こうと思ってたんですけど先に珈琲お願いします」
かしこまりました、とエドガーは軽く一礼して慣れた手つきで準備を始めた。
職業柄、といっても昴の場合本業は学生だったが、他人の淹れる珈琲には興味があった。
カウンターに腰掛けて昴はその様子を窺う。
コーヒーミルを取り出して、エドガーが豆を碾き始めた。良い香りが店内に漂う。これだけでも満足した気になるのは何故だろう。
エドガーは珈琲を頼まれる度、いちいち豆を碾く。前に一度昴が尋ねると面倒でもその方がやはり美味しさが引き立つからだという。
手際よく用意するその姿を見て、出てくる珈琲の味を考える。
「でもさすが貘さんですね。こんなに早くルビー見つけて貰えると思いませんでした」
「あぁ、貘はそういうの探すの得意なんですよ。持ち主を守護する力の篭もったルビーでしたよね。プレゼントですか？」
えぇ、と頷く昴。
その昴の少し照れくさそうな、それでいて嬉しそうな表情を見つめてエドガーは言う。
「きっと大切にしてくれますよ。守護する力だけでなく、昴さんの心の篭もった石になるでしょうから」
「そうだと・・・いいですけど」
ニッコリと二人が微笑み合った時、奥の扉が勢いよく開かれた。
「はーい、一名様ご案内ーっ！」
出てきたのはピンクのツインテールを揺らしたリリィだった。
「リリィ？一名様ご案内って・・・」
「あのねマスターが仕事が出来たから呼んで来てって」
「誰をですか？」
エドガーがリリィに尋ねると、リリィはゆっくりと昴を見つめる。続いてエドガーも。
「え？ちょっ・・ちょっと待って下さい。仕事って？俺は頼んでたルビーの引き取りに・・・」
「んー、マスターが言ってたの多分昴のことだと思うの。ちょっとね、マスター手一杯で大変みたい。だからね・・・」
「いや、今日は俺先約が・・・行かないと大変なことに・・・！」
そう言いながらじりじりと迫ってくるリリィに逃げ腰の昴。
昴がついに立ち上がってその場を後にしようと後ろを向いた瞬間、リリィがしっかりと昴の腕を掴んだ。
「捕獲成功ー！」
「えぇっ！捕獲って・・・」
「・・・珈琲、後でまた淹れ直しますね」
エドガーの苦笑混じりの言葉に項垂れながら、昴はリリィに引きずられるように奥へと歩いていった。
「マスター、昴連れてきたよ」
その言葉に扉に背を向けていた貘が振り返り言う。
「リリィ、ご苦労様。・・・すみません、昴さん。突然仕事なんて言ったりして」
「あの・・・俺、今から用事があってですね・・・」
昴が申し訳なさそうに辞退を申し出ようとすると、貘は昴にガラスの小瓶に入った赤い石を見せる。
真珠よりも少し大きめの、見た目よくカッティングされたルビーが数個入っている。昴が頼んだ個数あるようだ。
「こちらが昴さんから頼まれていた特殊なルビーです。交換条件というものはあまり好きではありませんが・・・どうか仕事を頼まれてくれませんか？仕事をして頂ければ、料金はもちろん要りませんし、またこういったものを探すのも手伝いますよ。あぁ、そうそう。銀細工へのルビーの嵌め込みは手先の器用なエドガーがやってくれるはずです。早く仕事が終わればそれを持って彼女の所へ行けると思いますよ。本当に申し訳ないですけど・・・お願いできますか？」
にっこりと貘の口元が笑う。目は相変わらず黒い布で覆われており表情は掴めない。
昴は引きつる顔をなんとか元に戻すと大きな溜息と共に承諾の言葉を発した。せっかくの探し求めていたルビーが目の前にあるのだ。本当に仕事をしなければ貘はルビーを渡さないに違いない。ここは大人しく取引に応じるしかない。
「・・・分かりました。電話・・・かけさせて下さい」
目に浮かぶのは怒りに震える恋人の姿。それが分かっていてもかけないでいるよりはマシだろう。かけなければ更に酷いことになるに違いない。
勇気を振り絞り昴は携帯に手を伸ばすと、見慣れた番号へ電話をかけた。
ワンコールで電話を取る恋人。どれだけ昴からの電話を心待ちにしていたから分かる行動。
弾む恋人の声に罪悪感を感じながら昴は緊急の仕事が入ってしまったことを話した。途端に黙り込む電話の向こうにいる相手。しばしの沈黙の後、ものすごい勢いで電話を切られる。激しい音が耳に響いた。
がっくりと肩を落とし、この世の終わりかと思われるような溜息を吐いた昴はその場に崩れ落ちる。
しかし、そんな昴をリリィが慰めようと近づいた瞬間、すっくと立ち上がった昴がリリィの肩をがっちりと掴み告げた。
「絶対に今日中に帰りましょう」
落ち込んでいる時間はない。そんなことで時間を潰すより仕事を終わらせて会いに行く方が良いに決まっている。
昴の迫力にリリィはこくこくと頷き、貘へ視線を向ける。
貘は昴とリリィを呼ぶと既に眠っている依頼人を紹介した。
「こちらが依頼人の久良木さんです。彼が眠りにつく度に写真が一枚増えていくのだそうです。そしてその写真に写っている人物はこの世界から消えてしまっているそうです」
「その謎を解けば良いんですね」
昴は身動き一つせずに規則正しい寝息を立てている人物を見つめ呟く。
こくり、と頷いた貘は昴に言った。
「本当に依頼引き受けて下さってありがとうございます。あぁ、銀細工のブローチお預かりしてもよろしいですか？ルビーの嵌め込みをしておきますので」
「今日中には必ず戻ってきますから・・・よろしくお願いします」
「責任もってお預かりを」
昴から渡されたブローチをゆったりとした速度で赤のビロードの張られた宝石箱の中に横たえる。パタンと蓋を閉じると昴に微笑む貘。
「昴さんに夢の中での祝福を」
そう告げると、それでは私はエドガーの所に、と貘が部屋を後にした。
「さてと。それじゃリリィさん、俺を夢の中へ」
「はーい。えっとリリィは此処で昴が帰ってこれるように待ってるからね」
「お願いします」
すっ、と伸ばされたリリィの手が昴の額に当てられる。
意識だけを引き抜くと、昴の精神を久良木の上に重ねた。
------＜写真の意味＞--------------------------------------
昴が目を開くと、そこは見たことのない公園だった。
子供達が鳩を追いかけ、犬を連れた初老の女性が周りの木々の芽吹きに目を細めながら歩いていく。
そこにあるのは普通２月に見られる景色ではない。
きょろきょろと辺りを見渡していた昴はベンチに座った一人の男に目を留めた。
そこに居たのは先ほど貘に見せられた写真の男だった。
昴はその男に近づき、そっと声をかける。
「あの・・・こんにちは」
人の良さそうな笑みを浮かべた昴に男は小さな笑みを添えて、こんにちは、と返してくる。
そして男は昴に、どうぞ、と自分の隣を勧めてきた。昴はその勧めに応じ、男の隣に腰を下ろす。
「不躾で申し訳ありませんが、久良木さんという方をご存じですか？」
「えぇ、知ってますとも。・・・私の双子の兄ですが何か？」
首を傾げた男の言葉に昴は声をあげる。
「双子？あなたのお兄さん？・・・あのですね・・・」
昴は現在の状況をその人物に話した。
話したからといって何かが変わるとは思えない。これは夢に過ぎず、現実とは違うもの。
しかし今回のように現実世界で夢の中での出来事が反映されることがあるならば、現実社会の出来事が夢の中で反映されてもおかしくはない。
昴の話を聞いた男は暫く考え込んでいたが、目の前に集まった鳩が子供たちの足音で飛び立った時、それが合図であるかのように口を開いた。
「ここは兄の夢。兄は兄と同じ世界に私が存在している現実を夢見てるんです。夢の中の私を見て、私が兄と同じ世界にいると思いこんでいる。私は幼い頃に事故で死んでるんですよ。兄の知ってる私の姿は、本当は少年時代の私だけ。この姿は兄の夢。でも夢の中にいる私は本物です。兄が事故で私を失ったことを後悔している気持ちが強すぎて兄の夢に捕らわれてしまったんです」
ここで私たち兄弟はとても幸せな暮らしを送っています、と男は笑う。しかしそれはとても淋しい笑みだった。
男の淋しげな笑みに昴は表情を曇らせる。
「でも、夢は夢。どんなに居心地が良くても、それは所詮夢でしかない。兄の現実はここの世界には一欠片もないんです。それに気づいて欲しくて、私は自分の心を削って毎日兄にメッセージを送り続けたんです。夢は覚めたら消えてしまいますから。・・・だから消えない写真という形で」
「消えない形・・・」
「はい。でもその写真を送ろうと思った本当のきっかけは他にあります。私と兄はこの世界で一つ約束を交わしました。この世界で私の彼女である人物を私が消えてしまった時には兄に護って欲しいと言ったんです。そしたら兄は『そんなことがあるわけがない』と反発していましたが、最後には頷いてくれました。兄は本当はその彼女のことが好きなんですよ」
そこで初めて嬉しそうな笑みを浮かべる男。
「私は兄に幸せになって欲しいんです。だけど、兄は私に負い目を感じているのかこの世界でいつも自分は二番目で良いと。だから彼女を好きなクセに私が幸せならそれで良いと。おかしいでしょう？」
自嘲気味に笑う男に昴は首を左右に振りながら告げる。
「おかしくはないと思います。俺も姉妹兄弟が居ますからなんとなく分かります。お互いに幸せで居て欲しいと願うことは兄弟の間では普通のことだと思いますよ。・・・本当に仲の良い兄弟なんですね」
「アナタは優しい・・・。過去形で私を扱わないんですね」
その言葉に昴は屈託無く笑う。
「だって此処の世界であなたは生きているじゃないですか。こんなにもしっかりと。俺の目の前で幸せそうに笑うあなたを俺はしっかりと見ましたから」
そんな昴の笑顔につられて男も微笑む。
「ありがとうございます。そういう風に言って貰えると私も思い残すことなく消えることが出来る」
昴はその言葉に固まった。
「もしかして心を削ってということは・・・」
「はい。あと数回写真を送り続ければ私は消滅します」
「いけないっ。そんなことは・・・」
昴は思わず立ち上がり叫ぶ。
「俺がここへ来たのは写真の謎を解くためでした。でもその理由が分かった今、あなたが写真を送る必要はありません。俺が久良木さんに話しますから・・・」
「一度すでに死んだ私がもう一度消滅したところで・・・」
「それでは・・・久良木さんは二度も弟さんを失わなくてはいけないんですか？」
男は昴の言葉にはっとしたように顔を上げる。
「以前は事故であなたを失って、今度は自分のせいであなたを失う。より悲しみが深まってしまうとは思いませんか？」
「・・・そうかもしれませんね」
「あなたはここで久良木さんを見守ってあげて下さい。あなたの思いをちゃんと俺から伝えますから」
他人を安心させる笑みをうかべる昴。無意識のうちに他人を優しく包み込むような場を作り出す。
「よろしくおねがいします・・・」
「わかりました。任せて下さい」
それじゃ早く伝えなきゃ、と昴は男にお辞儀をする。
そして男に背を向け歩き出した昴は、ふと何かを思いついたのか急に立ち止まり男を振り返った。
「あ、最後に一つよろしいですか？二通りの写真がありましたよね。一人で映っているもの、そして二人で映っているもの。あれには意味があったんですか？」
その昴の問いに男は恥ずかしそうに笑う。
「あれは・・・二人で映っている方は私の夢です。兄と一緒に二人でこの歳になるまで笑っていたかったという。二人で映っているものが多かったのはそのせいです」
その言葉に昴は嬉しそうに微笑む。良かった、と小さく呟くと今度こそ男に背を向けリリィへ声をかけた。
------＜夢のスパイス＞--------------------------------------
自分の身体に戻るとすぐさま昴はリリィに尋ねる。
「今、何時ですか？？？」
「おかえりなさーい！って、時間？・・・まだお昼になってないよ、１０時半だよ」
その答えを聞いて昴は安堵の溜息を吐く。約束の時間は過ぎてしまっていたが昼食には間に合うはずだ。
「良かった・・・さぁ、早く久良木さんを起こして下さい。もう写真は出てこないでしょうから」
「本当？それじゃリリィが起こしてあげる」
久良木の耳元でリリィが何事か呟くとゆっくりと久良木は瞼を開いた。
そこへにっこりと微笑んだ昴が声をかける。
「お目覚めは如何ですか？」
「・・・幸せな夢を見ていた気がする」
そんな久良木の頬を一滴の涙が流れていく。
「写真の謎が解けました。優しい弟さんですね」
「・・・え？」
昴は夢の中で話したことを全て久良木へと話した。
久良木は呆然とした表情でその話を聞いていた。
「それじゃ・・・あの写真はアイツが・・・」
「そうです。久良木さんに幸せになって欲しいとそう言っていました」
「そう・・・ですか。でも・・・彼女にオレはどんな表情をして会えば・・・」
久良木は混乱した頭を整理しようとしているのか、頭を小さく振りながら言う。
しかし昴は、問題ない、と言うような晴れ晴れとした笑顔で久良木に告げた。
「あなたの想いを打ち明ければ良いと思いますよ。どう彼女を思っているのか。弟さんと約束したんでしょう？護ると。心を削ってあなたにメッセージを送っていた弟さんとの約束」
「・・・はい。約束しました、確かに。オレは・・・」
痩せこけた頬は相変わらずだったが、その瞳には生気が宿っている。
それだけで今朝方『夢紡樹』に来た時とは別人のようだった。
「頑張ってきて下さいね」
昴の言葉に背中を押されるように、男は夢紡樹を出て行った。
「お疲れ様でした」
男を見送っていた昴に背後から声がかかる。
先刻、貘が銀細工のブローチを入れた宝石箱を持ってエドガーが立っていた。
「ブローチの方ですが無事に仕上がりました。ご確認下さい」
差し出されるがままに昴はその宝石箱を受け取る。
開くと中には自分が想像していた通りの配置でルビーが埋め込まれていた。
「ありがとうございます！」
「気に入って頂けて良かった。さぁ、早くこちらを」
貘からこれを、とエドガーは昴に貘から預かっていたものを手渡す。
どこからどう見てもただの綿のように見える。しかし重さはなくそして触れている感触もなかった。
どうしたものかと昴が自分の手の上を見つめているとリリィがそれを横から取り上げ、昴の持つ宝石箱の中に軽く息を吹きかけ詰め込んだ。
「これでよし」
「え？これは・・・」
「そうですね・・・しいて言えば夢の塊。貘からの御礼ですよ、きっと」
「そう。これはね、夢のスパイス。箱を開けた瞬間、それは消えてしまうけど開けた人の心を少しだけ和らげるの。素敵な夢を見た時みたいにね」
「へぇ、そんな効果が。これで少し怒りが収まれば良いんですけどね、貰ってくれるかなぁ・・・」
苦笑しながら昴はその宝石箱を見つめる。
しかし次のエドガーの言葉に昴は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ。言ったでしょう？昴さんの心の篭もった石なんですから」
「ありがとうございます」
それじゃぁ、と歩き出した昴にエドガーが言う。
「珈琲今度ご馳走しますから、またどうぞいらしてください」
「はい」
にこやかな笑みを浮かべた昴の心は、すでに怒って家で膨れているであろう恋人の元にある。
家に入れてもらえないかもしれない。
それでも一緒に居たいという気持ちは捨てられない。
ずっと笑って側にいることが夢。
その気持ちを打ち明けようと。
大切な思いの篭もったブローチと共に。
昴は粉雪の舞う中、更に速度を速め、足早に彼女の元へと向かったのだった。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号／ＰＣ名／性別／年齢／職業】
●2093／天樹・昴/男性／21歳／大学生＆喫茶店店長
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、夕凪沙久夜です。
今回もご参加頂きありがとうございましたｖ
毎回毎回訪れる先で巻き込まれてしまうのは昴さんの運命なのでしょうか。（笑）
そんな昴さんが大好きですｖ
そしてうちの貘が大変失礼しました。（礼）
本当にせっかくのバレンタインなのに！
他人を和らげるような雰囲気の昴さんをしっかりと出したいと思いつつも、なんだか微妙な表現になってしまっているような気がしてなりません。
今回、大技などは使用しておりませんが昴さんの内面重視で話を書かせて頂きました。
そして今回も素敵なプレイングありがとうございました。毎回楽しみにさせて頂いてます。
またどうぞよろしくお願いいたしますｖ
ありがとうございました！
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