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『第一話 スノーホワイト ― 人間に恋をした雪娘の物語 ― 』
しんしんと雪が降る世界の中で彼女は公園のブランコに座って一面の銀世界を見つめていました。
身も凍るような寒さの中でだけど彼女がとても小さく見えるようなのは決して寒さのせいではないのは彼女の心に咲く花を見る事ができるその人にはわかっていました。
その人の名は白。人の心に咲く花を見る事ができる樹木の医者。
「こんにちは」
突然、声をかけてきた白に彼女は怯えたような表情をしました。その怯えは突然に見知らぬ者に声をかけられた怯えではなく、何か人に言えぬ失敗などをしてしまった子どもがそれが知られてしまうのが怖くって隠れていたのだけど、しかし親に見つかってしまったかのようなそんな感じ。
そんな彼女に白は周りの世界を染める色と同じような銀色の髪の下にある顔にやさしい表情を浮かべました。
やわらかに細められた青い色の瞳に彼女は何かを感じたようで、その怯えを少しだけ和らげたのです。だけど白がした事といえば・・・
「これは?」
彼女は白から渡された花を見つめながら抑揚のない声を出しました。白はやさしく微笑んで言葉を紡ぎます。
「その花はスノードロップと言うのですよ。花言葉は【希望】。冷たい雪に優しくした花。故に雪の世界でも咲ける花。世界で一番強い想いは優しさなのだと想います。だからどうか希望を捨てないで。そう、世界の扉は開くから」
彼女は白に渡されたスノードロップを見つめながら呟きました。
「希望…やさしさ……だけど、私は………」
辛そうに口をつぐんだ彼女。そして彼女が手の中のスノードロップから顔をあげると、だけどもうそこには白はいませんでした。
もう一度彼女は「スノードロップ」と呟き、
――――そして世界に舞う雪がいよいよ激しくなり、異界の東京はより深い雪に沈んでいきます。
この銀世界でスノードロップと言えども咲く事はできるのだろうか?
この物語は12月24日の東京が始まりなのです。
しんしんと白い雪が降る夜に東京に一人の雪の精が舞い降りました。
「ああ、なんて今夜は世界が愛に溢れているのでしょう」
雪の精は東京の夜に溢れる愛にうっとりと眼を細めて楽しそうにワルツを踊りながら歌うと、戯れに雪人形を創りました。
純粋な雪の結晶を集めた雪人形を。
そうして雪の精は朝日が昇る頃、ひとつの雪人形を東京の街に残して、雪の世界に帰って行きました。
だけど雪の精は知らなかったのです。戯れに造ったその人形に命が宿っていたのを。
雪人形は朝日が昇ると同時に瞼を開きました。銀色の髪に、剃刀色の瞳。雪のように白い肌。白のワンピースドレスに白のロングコートに白のブーツ。
初めて見る世界に彼女は喜び、母親が自分を創ったように小さな雪だるまや雪うさぎを作りました。
そんな彼女の前で新聞配達をしていた男が雪に滑って転び、そしてその光景にきょとんとした彼女はくすくすと笑い、その出会いは当然のように恋へと変わりました。
「名前は?」
「………小雪。小雪です」
「小雪か」
雪のように白い君にぴったりの名前だね、と彼は優しく微笑みました。
男は新聞配達の青年で、御堂秋人と言う名前でした。
だけど季節は無常にも過ぎていきます。東京の街は冬から春に………。
「大丈夫? 最近、顔色がすごく悪い」
「あ、うん。平気だから」
平気な訳はありません。彼女は雪人形なのですから。
別れたくない。彼と別れたくない……
小雪は心の奥底からそう想い、だから東京を永遠の雪の世界にしてしまいました。永遠に彼と一緒にいられるように。
そう、ここはとある作家が書いたその物語に縛られた世界なのです。
この物語に縛られた東京に住む人々は苦しんでいます。
そして本当は彼女も…。
私、白亜は泣きながら東京に雪を降らせる彼女を救いたいと想います。
ああ、だけど深い雪に閉ざされて彼女も彼も不幸にしかならないこの物語に縛られた世界で私も、そして物語を書き換える力を持つカウナーツさんもどうする事もできません。
「だからお願いします。この物語のラストをあなたのイマジネーションと能力で書き換えてください。あなたがイマジネーションした物語をカウナーツさんが書きます。それとあなたの能力が加わればこの物語は変わるのです。どうか、この物語をハッピーエンドにしてください」
******
「くすくす。バカな娘。自分とカウナーツがこの【悪夢のように暗鬱なる世界】でどうしてあえて一欠けらの真実を渡されているのかまだわからないのだね。くすくす。さあ、おいで。そのために私は扉を用意したのだから。だけどね、これだけはお聞き。物語を書き換えようとするのならば、自分が書き換えられる事を拒む物語の修正能力に襲われる覚悟をするのだよ。覚悟ができたのなら、扉を開けてやっておいで。私の知らぬ私の物語の新たなる登場人物たち。くすくすくす」
ChapitreT 礼拝堂のオルガンと少女と扉
夜。姉さまは今日は帰りが遅くなるらしく、私はひとりの夕飯を済ませると、使った食器を洗い、姉さまがいつ帰ってきてもいいようにと用意した食事はレンジで温めればすぐに食べられるようにしておき、お風呂を先にいただいた。そしてパジャマの上にカーデガンを羽織ってバルコニーへ。
私は体が弱く、姉さまはそんな私が冷たい夜気に触れる事をすごく心配するのだけど、今夜だけは主に瞼を閉じてもらって、私はバルコニーに出た。
夜気はとても冷たいのだけど、しかしお風呂上りで火照った体には気持ちが良かった。それに夜空を見上げればそこには初春の細すぎる下弦の月。それは人差し指の先でそっと触れただけでもその指先が切れてしまいそうなほどに鋭くって、そしてだからこそそれを私はとても美しいと想った。
どこまでも空気の澄んだ夜。そこにある蒼銀色の下弦の月とその周りにある星空。それを見ているだけで心が清らかに澄みきっていくようなこの感じは嫌いじゃない。まるで世界と私の心がひとつになるような。どこか神聖なるカテドルで賛美歌を聴きながら主に祈りを捧げているような時に似ている。
「主よ、このような美しい風景に出逢わせてくれた事を、感謝いたします」
私は首筋を夜風に舞ってくすぐる髪を掻きあげながら、吐いた白い息の向こうに見える月を見上げていたのだけど、ふと誰かの視線を感じたようで、視線を夜空の細すぎる下弦の月から、眼下の桜の園に向けた。
そこにいたのは・・・
「白兄さま?」
そう、薄紅の花びらの嵐の中にいるのは確かに白兄さまだ。だけどどうしてこんな時間に? このマンションの下に広がる桜の園に患者が出たのだろうか? 白兄さまは樹木のお医者様だ。だけどいつも白兄さまと一緒にいる虫…もとい、スノードロップの妖精さんも見受けられない。それに・・・
「白兄さま・・・」
私はパジャマの胸元を右手でぎゅっと鷲掴むと、くるりとターンをして、部屋に舞い戻り、そしてそのまま玄関のドアノブを握った。
『弓弦。夜遅くに外に出たらダメよ』
それは大好きで大切な姉さまに笑顔で言われた言葉。その時の姉さまの優しい表情と声が私の心に突き刺さる。ガラスで出来た棘のように。だけど・・・
「主よ、姉の言いつけを破る事を今はお許しください」
私は主への懺悔の言葉を簡単に口にすると(後でちゃんとまた懺悔をいたします、と心の中で呟いて)、十字を切ってから玄関のドアノブを捻って外に出た。
そして外に出てバルコニーから見えた白兄さまがいた場所に立った。
「はあはあはあはあ、白兄さま・・・」
私は乱れた呼吸を半開きの口から零しながらそこに立つ。
夜の桜の園に。
その桜の園にたゆたう無限とも想える薄紅の花びらの霞みの中に。
そんな状態の私を他人が見たら、私は・・・どうしたのだろう? 何をやっているのだろう? と不思議に想うかもしれない。
それを説明なさいと言われてもおそらくは私自身にもそれを上手く説明する事は出来ないだろう。そう、それだけバルコニーから見た薄紅の華霞みの中にいた白兄さまに抱いた想いは明確な形を成してはいなかった。その想いは波打ち際の波が私の足に触れて、そして私が手の指先で触れようとした瞬間にさっと引いていってしまうように私の心にああ、白兄さまがこのまま夜の桜の園に迷い込んで消えてしまう、という不安感を抱かせたのだ。その理由を悟らせぬままに。
………なんだか幼い子どもみたい、だと私は想った。夕暮れ時、人込みの中で自分がそのままそこに置いてけぼりにされるような気がして、それで必死に母親を追いかける…そんな幼い子どもの理由の無い不安感。夜の桜の花霞みの中の白兄さまに抱いたのはそんな想い?
私はそれこそ迷子の子どものようにカーデガンの前を両手で合わせながら夜の桜の園をとぼとぼと歩いた。
私は周りの夜の桜の園を見る。
そこは静謐なる夜の空間というせいか私の知らぬ桜の世界で、そして私はなぜかそこにある桜の園を怖いと想ってしまった。
そう言えば前に白兄さまが聞かせてくれた、桜のお話。桜は心の鏡。見る者の心に桜への恐怖があれば、桜は怖く見えるし、また桜を綺麗に想えるのなら、その時は心が充実しているからだと。
「白兄さま・・・」
私は不安で寂しくって堪らない。ならば部屋に戻ればいいのに、だけどそれでいて私の中には白兄さまを見つけて、この桜の園から連れ帰るのだ、と頑なに想う私もいて。
私は汗で額に張り付く前髪を右手の人差し指で掻きあげながら周りを見回した。
「やっぱり変だ」
マンションの下の桜の園はこんなにも広くは無い。
私はもう既に不思議な世界に迷い込んでいるのだろうか? そう、時計うさぎを追いかけて不思議な世界に迷い込んでしまったアリスのように。
私はともすれば折れてしまうような心を奮い立たせて、顔を横に振る。
「あっ」
と、その時に私の視界の隅を横切った見知った銀の髪をした線の細い男の人の後ろ姿。
「天は自らを助ける者を助ける。エィメン」
姉さまの言いつけを守らない私なのに、しかし主の恩寵は私の頭上にあるらしい。私は胸元で十字をきって主にお礼を捧げると、その後ろ姿を追った。ますますアリスのようだけど、それを今の私は考えないようにした。
そうして私が行き着いた所にあるのが古びた教会だった。
「教会?」
だけど私はこんな場所に教会があるなんて知らない。それでも私がその見知らぬ夜の教会に入って行けたのは、その教会の礼拝堂から聴こえてくるミサ曲ハ短調がとても澄んだ音色だからかもしれない。おそらくはこれまで聴いてきたどのミサ曲ハ短調よりも綺麗なはず…。
「誰が弾いているのだろう?」
この曲は1781年にウィーンに移住したモーツァルトが作曲した曲だけど、しかしこれは未完の曲。だけどこの人が弾くこの曲はもう本当に見事で、とても未完の曲とは思えない。ひょっとしてやはりこの教会はこの世の物ではなく、だからこの礼拝堂でこの曲を弾いているのは今夜それを完成させたモーツァルトではないのであろうか? 私はそんな想いと一緒に礼拝堂に入ったのだけど、しかしそこにいたのは長い黒髪の少女だった。年の頃は私と同じくらい。
音色は止まる。
「誰?」
一定の冷たいトーンの声。黒髪に縁取られた白磁の美貌にも温かみのある表情は浮かんでいない。あるのは冷たい表情。まるでガラス細工のような。そうだ。夜空にある蒼銀色の細すぎる下弦の月にも似ている。
「あの、えっと、ごめんなさい」
私は目を俯かせる。
前方にいる彼女が動く気配は見受けられない。だけど・・・
「どうしてここに?」
「え、あ、あの、白兄さまを追いかけて・・・」
「白兄さま?」
「はい。銀色の髪の優しい顔をした人です」
前方で彼女が肩をすくめる気配。私は俯かせていた目をあげる。
肩にかかる髪を後ろに払いながら小首を傾げる彼女はどこか冷たい堕天使かのようにも見えるものだが、しかしその時の彼女の表情は私にはまるで聖母マリアさまかのように見えた。私ははっとする。
そして彼女は私の前に立ち、私の乱れた髪をそっと指先で梳いて、微笑んだ。歌うように言いながら。
「この世に偶然は無い。あるのは必然。世界は一つではなく、そしてあなたはその端に触れた。なら、あなたが扉をくぐるのもまた必然。そう、だってここにいるのだから」
やわらかに細められた紫暗の瞳に見据えられる私は動けない。そして私は見るのだ。彼女の後ろに現れる巨大な古めかしい扉を。その扉の前に立っているのはだぼだぼの服を着た門番の子で、そして・・・
扉は開き、
「おいで。不思議な国へ、現代のアリス。時計うさぎの代わりにあたしがあなたを導いてあげるから」
そして私は彼女に手を引かれるまま扉をくぐった。
・・・。
ChapitreU 書斎にいる人たち
扉をくぐるとそこは不思議な書斎だった。
幾つもの高い本の塔。その向こう側すら見えない程の本の塔の向こう側から聞こえてくるのはペンで何かを書き綴る音。
部屋はそんなインクと古い紙の臭いで満ちていて、どこか学校の図書館にいるような感じがした。
(主よ、なんだか私の人生が変な事になってます。エィメン)
私は胸元で十字を切った。
そんな私に黒髪の少女は肩にかかかる髪を後ろに払いながら小首を傾げる。
「クリスチャンなの?」
「あ、はい」
「ああ、そうか。その制服って、確かカトリック系の女子高のよね」
にこりと微笑んだ彼女に私は絶句して、そして自分の今の服装を見てさらに驚く。私の今の格好はパジャマにカーデガンではなく、高校の制服だった。訳がわからない。
(主よ、なんだか私の人生が先ほどよりも変な事になっています。エィメン)
胸元で十字を切った私に、彼女は軽く握った拳を口元にあててくすくすと笑った。戸惑う私はやっぱりこういう時の癖で伏し目がちに微笑んでしまう。
そしてそんな私に彼女はやっぱり聖母マリアさまのように…そしてどこか姉さまに似た微笑みを浮かべた。圧倒的に同年代の娘よりも落ち着いた表情。
「あたしは綾瀬まあや」
「あ、私は、私は高遠弓弦です」
私はぺこりと頭を下げた。
そして彼女はこくりと頷いて、突然に私の目の前に伸ばした人差し指を出しだした。私の目はその指先に吸い寄せられて、その指が動いて・・・そこにいたのは、
「ひゃぁ」
私は大声を出した口を両手で覆った。だけど本当にびっくりしたのだ。だって、知らないうちにまあやさんの指の先に見知らぬ少女がいたのだから。しかも半透明でふわふわと宙に浮いている・・・。
「驚いた?」
どこか悪戯っ子のような笑みで笑うまあやさん。私はただ条件反射かのようにこくこくと頷く。
そしてまあやさんは話して聞かせてくれた。この世界の事。その世界にあって一欠けらの真実を知るこの半透明の少女…白亜さんに、本の塔の向こうで常に物語を書き綴っているカウナーツさん、門番の冥府さんの事を。
「つまりこの世界は物語に縛られていて、それでその物語のラストを書き換えないと、私たちは元いた世界に戻れないと?」
「そう」
まあやさんはこくりと頷いた。私は制服の胸元をぎゅっと鷲掴んで俯いてしまう。
「それで今回の物語はどんな物語なのかしら?」
そんな私にはかまわずに話を先に進めるまあやさん。
そして半透明の少女…白亜さんは語った。この世界を縛る物語を。それは雪の精が戯れに作った雪人形と人間の青年の悲しい恋物語。
―――胸が詰まる・・・聞いているだけで・・・。
―――――――ああ、それはなんて哀しい結末なのだろう。
――――――――――私ならば………そんな世界は嫌だ!!!
そう、だから私は・・・
「あの・・・」
「なに?」
右手で制服の胸元をぎゅっと握り締めながら、まあやさんの前髪の奥にある切れ長な紫暗の瞳を見据えて、
「私にもその物語の結末を変えるお手伝いをさせてください」
「いいの? 物語を書き換えようとすれば、そうすればあなたは物語の修正能力に襲われるわ。それにカウナーツ氏が書き換えられるのは物語のラストだけ。そこに至るまでの物語はあなたの行動で紡がなければならないのよ?」
それはつまりは戦わなければいけないという事・・・・それが怖くないはずはない。
私は目を瞑る。
思い出すのは姉さまの顔。
そう私はできる事なら姉さまに頼らずに生きていきたいと想うのだけれど、だけど実際は箱庭の中で暮らしている。
――――それに何かを想わないわけじゃない。だけど踏み出せない一歩。
――――――その度に心に絡みついていくいばら。
だけど・・・
「かまいません。イマジネーションさせてください、私に」
『弓弦。人とはね、いつか戦わねばならない場面が必ず来る。今、前に一歩を踏み出せないのなら、それは今がその時ではないから。だったらそれまでは己を休めなさい。それはけして罪ではないのだよ。そしてその時がもしも来たのなら、その時は戦いなさい。その時・・・というのは貴女の魂が知っていますから。敬虔なる主の子羊である貴女に、主の慈愛が訪れるように。エィメン』
それは幼い時に泣いていた私に大好きだったナイトロード神父さまが優しく微笑みながら言ってくださった言葉。
そう、その時とは、今この時。私の魂がそう告げている。
「イマジネーションします。私が秋人さんと小雪さんに贈る物語のラストを」
私がイマジネーションした物語は私の前にある虚空に綴られていき、そしてそれは白亜さんの両の手の平の上に集まって蝶と変わり、カウナーツさんの方へと飛んでいく。
蝶は聖ピテリオの言葉を借りれば標の使者。その蝶が幸せへと導いてくれるのは秋人さんと小雪さんだけではなく、私も含まれているような気がした。
そう、踏み出した一歩はともすれば小さいのかもしれないけれど、それでも私の中ではそれはとても大きいのだ。私はそれを感じながら想いを紡ぐ。
「さあ、物語を紡ぎましょう」
ChapitreV 物語の修正能力
吹雪く雪。
凍り付いていく街。
―――凍り付いていくのは街?
―――――いいえ、凍り付いていくのは私の心。
―――――――街を雪で覆っていくほどに私の中にある大切なモノが凍り付いていく。
私は告げた。それが心に苦しかったから、だから私は告げた秋人に。
だけど私は私が語った真実への彼の答えを知らない。
真実を語り終えた私。その私の目から目を逸らしてしまった秋人。何かを紡ごうとして…だけど紡げずにただ喘ぐように開閉するだけの口。そして私はそんな彼を見ているのがたまらなく心に痛かったから、だからそこから消え去った。
しかしこの街にかけた季節を止める呪いを解く事はしなかった。それでも私は望むのだ。この街に…秋人がいて、秋人と出会って、秋人と話したこの街に永遠に私がとどまれる事を。たとえそれでこの心に幾つものガラスの欠片が突き刺さるような痛みを感じても、それが代価というのならば私はそれに耐えよう。誰が何と言おうともこれは純愛なんだ・・・。
秋人。私が愛する人。どうかあなたを想うこの想いだけは許してください。
どうしてあの時、俺は何も言わずにただ彼女を抱きしめてあげることができなかったのだろう?
驚いたから?
―――驚くさ、あんな事を言われれば。
怖かったから?
―――怖いよ。ものすごく怖いよ。普通じゃない。常識じゃない世界の出来事なのだから。
じゃあ、小雪の事が嫌いになった?
―――そんな訳が無い。
今でも好きだ。大好きだ。
だから俺はこの雪の街を数時間前に吹雪く雪に溶け込んで消えてしまった小雪を探して走り回っている。
幼い頃に読んで涙流した昔物語の雪女のラスト。今ならあの時の…純粋なだけであった子どもの時よりもわかる、雪女と夫…両方の想いが。
紡がれる事の無かった夫のその後の物語。彼もこんな風に消えてしまった恋しい妻を探したのだろうか? そして彼は…雪女を見つけられたのだろうか? 見つけられていたらいいと想う。願う。そう、心から溢れ出る願いと言えばそればかり。
小雪に会いたい。
小雪に会って、謝りたい。
許されたいとは想わない。
彼女を傷つけた分だけ、俺も苦しめばいい。
だけど願う。
願う。
そう、心の奥底から願う。
小雪に会いたい。会ってただ抱きしめたい。
そしてもう絶対に離さない。
我侭でもなんでもいい。どう罵られようがかまわない。
俺は小雪をけしてどこにも行かせぬように抱きしめたいんだ。
だけどそれがどれだけ俺の身勝手な想いかは嫌になるほどにわかっている。懺悔してもし足りる事の無い俺が犯してしまった罪。
俺の目には焼きついているんだ。
―――自分が雪の精が作った人形である事を訥々と…まるで懺悔するように許しを請うように語った小雪の顔が、
―――親に置いてけぼりをくらった幼い子どもかのような瞳で俺を見てきた小雪のその瞳から俺が目を逸らしてしまった瞬間の彼女の顔が、
・・・。
「うわぁ」
俺は足を滑らせて、雪が積もったアスファルトの道に前のめりに転んでしまった。
そしてそのまま動こうとしない。
動けない。
泣いていた。
目の周りが涙で温かいのか、それとも雪で冷たいのかわからない。
どんな顔をして会えばいい?
何を言えばいい?
彼女は俺を許してくれる?
―――だから俺は許されるべきじゃない。だけど・・・
頭はハツカネズミ。くるくると思考は同じ所を回る。
「馬鹿だなー、俺は・・・」
人は無くしてから初めて気づく、その大切さに。
―――小雪・・・
俺は雪の上に両手をついて上半身を起こした。顔をあげる。その俺の前に立つ女の人。長い蒼銀色の髪に、雪のように白い顔。小雪にそっくりな・・・人。
「小雪?」
彼女は笑う。とても酷薄に。
「あたしの娘はおまえなんかに渡さない」
そして胸に感じた灼熱感。見れば俺の胸には氷柱が刺さっていて・・・赤い血が滴っていた。
「小雪・・・」
そして俺はくすくすと笑う女の笑い声を聞きながら死の闇に飲み込まれていく。ただ小雪が消えゆく瞬間に見せていた、とても哀しそうな迷子の子どもかのような表情を心に見つめながら。
・・・。
******
スノードロップ。
希望と言う言葉を花言葉に持つ花。
だけど自分にはそんなモノは無い。
そう、所詮自分は雪人形。春には溶けて消えてしまう儚い存在。だからこの街を深い雪で覆った………
しかし辛くないはずがない。この街を雪で覆っていくたびに……何か大切なモノまで凍り付いていくようで………
「小雪」
自分を呼ぶ声に小雪は振り返った。そこには自分を創った雪の精。彼女は自分が作った雪人形に命が宿ったのを知り、ならばそれは自分の娘だとかわいがってくれた。なんとなくそれは何かが前とは違う気がしたのだが、しかし記憶があるのだからそうなのだろうと小雪は想う。
―――それこそが弓弦のせいで起こった物語の修正能力なのだが彼女は知らなかった。
「何ですか、母上」
「いえ、何でもないわ。そう、何でも」
雪の精は小雪を抱きしめた。とても冷たい体……前に握った秋人の手とは正反対の温度。
「小雪。母は人間界でおまえを創った罰で雪の世界を追い出された。だけどそれはね、どうでもいいの。だっておまえがいるのだから。そう、おまえが」
「母上…」
―――自分はあなたのために季節を止めてまでこの世界に存在しているのではない。自分の存在の理由は秋人のため。
しかし雪の精はそれがわかっていたかのように言った。
「そしておまえももう私だけ」
小雪の中で何かがざわめいた。
「母上、それはいったい……どういう…意味ですか?」
雪の精はにんまりと微笑んだ。
「私の大事な娘に手を出すような愚かな男は私が殺してきました」
秋人が殺された?
その瞬間、小雪の中で何かが壊れ……
そして…
「いやぁぁぁぁあああああーーーーーー」
彼女は顔に両手の爪を立てて悲鳴をあげた。
異界の東京に吹く雪はそれに呼応するかのように激しく激しく……
そう、それが修正能力が働いた物語のラスト。
娘を自分から奪おうとした秋人に嫉妬した雪の精は秋人を殺してしまい、そしてそれを知った小雪は、悲しみのあまりに壊れ…二人の思い出の街を雪の下に沈めてしまおうとする。自らも凍らせて。物語はそう修正された。
ChapitreW 想いが紡ぐ物語
―――物語に縛られた異界の東京。そこは一面の銀世界で、雪が激しく舞っていた。いや、激しく舞うというレベルじゃない。これは……
「これは明らかに私たちに敵意を持っている。これが物語の修正能力なのですか?」
「そう。これが物語の修正能力。だけどこれは本当に雪がひどすぎるわね」
ほんの少し前すら見えない。視界は最悪で、体力は寒さの前にどんどん奪われていく。
そんな私の耳朶に届いたのはあたたかくなるようなリュートの音色だった。激しく吹雪いていた雪がほんの少し緩やかになる。これなら動ける。
「まあやさん?」
私は後ろにいたはずの彼女を振り返る。果たして彼女はリュートを弾いていた。彼女はどう表現していいか自分でもわからないであろう表情を浮かべている私にだけどとても爽やかににこりと微笑んだ。
「このリュートの旋律で吹雪を緩やかにできるのはあと1時間程度。その間に物語をラストに導いて、弓弦さん」
私は彼女に何かを言おうとしてだけど言葉を紡げなくって、だから代わりに彼女に力強く頷いた。私を信頼して、この雪に覆われた異界の東京の街で少しでも動けるようにしてくれた彼女のためにも一刻も早くこの物語のラストを迎えねばならない。
そして私は言い知れぬ焦燥感にかられながら慣れぬ雪道を走った。その私の前にそのどうしようもないような哀しい光景があった。
真っ白な雪の道に描かれた歪な血の縦線。それはわだちかのような雪道に走る大きな線になぞって描かれていた。そしてその線の終着点にその人はいた。
「秋人さん」
御堂秋人さんは左胸に大きな穴を空けて、それでも前を目指し、そしてそこで力尽きてしまった。
私はそっと彼を抱き起こした。制服が彼の血で汚れることも構わずに。
彼の弱々しい呼吸音。急激に失われていく体温。だけどまだ彼は生きている。
そう、生きているんだ。
だから私は主に祈る。
「我ら、互いに愛し合えば、神、我らにいまし、その愛も全うせらる。主よ、どうかこの愛をお守りください」
十字を切り、そして両手を秋人さんの傷口にあてる。能力解放。癒しの力。
秋人さんの傷口が塞がっていく。だけどそれの代償かのように私の中から力が搾られていき、そして傷口に添えている手に裂傷が走っていく。それがこの力。
「くぅ・・・」
気を抜くと気絶しそうだ。だから私は下唇を噛み締めて、意識を集中させる。
―――秋人さんが回復するのが先か、それとも私が気絶するのが先か・・・・・。
だけどどうやら主の恩寵はやはり私の頭上にあった。私はぎりぎりで秋人さんを蘇生させる事に成功した。
彼はゆっくりと瞼を開く。
「大丈夫ですか?」
そう問う私に彼は不思議そうな顔をして、
そして私はすべてを彼に説明した。
「それで小雪さんの居場所はわかりますか?」
彼は顔を横に振る。
「わからない。思い出の場所はどこも探したんだ。だけど・・・」
私は彼の雪の上で握り締められた拳をそっと握った。だって手を握り締めるという行為は…誰かに助けを求めてその手を握って欲しいと想っている無意識のサインなんだって、姉さまが前に言っていたから。
「焦らないでください。焦らずに二人過ごした大切な時間を、交わした言葉を思い出してください」
その言葉に彼は最初は戸惑ったような表情を浮かべて、そして小さく微笑んで、瞼を閉じた。
(あっ・・・)
私は心の中で驚きの声をあげてしまう。
なぜなら私の中に秋人さんの中にある小雪さんとの記憶が流れ込んでくるから・・・。
―――これは先ほどの神の癒しの奇跡の影響がまだ残っているから?
そこは小さな部屋。
二人隣り合って座りながら仲良く会話をしている。なにげない・・・だけど交わす一言一言が大切な宝物となっていく会話。
ふと、壁にかけてあるコルクボードに貼られた写真を見る小雪さん。
『ねえ、秋人』
『ん?』
『ここはどこの写真なの?』
『ああ、ここはA区の***公園だよ。綺麗な桜だろう。俺の渾身の一枚。今度の春に一緒に見に行こう、小雪。約束』
―――胸に広がる罪悪感と後悔は秋人さんのもの。ああ、知らなかった事とはいえ、自分はなんて惨い言葉を言ったのだろう、って。
頬に一滴の涙を流した秋人さんに私は微笑む。いつも落ち込む私に姉さまがそうしてくれるように。秋人さんも私が姉さまのその優しい笑顔を見るだけで癒されるようにその落ち込んだ心が元気になってくれればいいと想いながら。
「大丈夫。大丈夫ですよ。まだあなたも小雪さんも生きているのだから。それが主が私たちに与えてくれた最大の奇跡なのですから」
そして私たちは救いの声を求める小雪さんの方へと向った。
主よ、非力な私にこの二人を救えるお力をお与えください。エィメン。
******
A区 ***公園。
「小雪」
秋人さんがショックを受けた声を出す。
それに反応したように吹雪く雪が激しくなる。
秋人さんが一年前に写した………
………………何も知らなかった秋人さんが小雪さんに今年の春に見せてあげると約束した桜の樹の下に、永久氷壁の棺かのように自らを氷づけにした小雪さんの姿があった。
そして更には・・・
「このクソ人間ども。こんな所にまで来て」
公園の上空に雪の精が現れる。
感情も露にヒステリックに怒鳴る彼女。
―――怖い。両足が震える。だけど・・・・・・
「気づきましたか、秋人さん。先ほどあなたが声をあげた瞬間に雪がひどくなったことに? つまりは今、彼女に声を届けられるのはあなただけ。だからここは私に任せてあなたは彼女の所へ行ってください」
「だけど・・・」
躊躇う彼に私は言う。
「ここはあなたが戦う場面です。引く事の出来ない。秋人さん、あなたは小雪さんが好きですか? 彼女が雪の精が作った雪人形だと知った今でも」
私のその問いに彼は瞳に真摯な光を宿して、頷いた。
「主はあなたに試練を課したのです。あなたは何を想い、そしてどうしたいですか? それがあなたの真実であり、主への答え。その想いが、行為が主の御心に添えた時に奇跡は起こるのです。そう、奇跡とは神が起こす物ではなく、人の直向な想いが起こすもの。主は自らを助ける者を、助ける。エィメン」
私は今、私の中にある想いを一生懸命に言葉にして紡いだ。この二人に幸せになってもらいたいから。そして彼は私に頷くと、雪の中を小雪さんに向けて走り出した。
しかし・・・
「このクソ女が、よくもあたしの邪魔をぉッ」
がくがくと震える膝。折れそうになる膝。だけど私は必死にそんな膝を叱咤した。
―――負けない。負けるものか。負けるものか。主よ、私にほんの一握りでいい・・・ほんの一握りでいいですから、力を下さい。
そして誰かの声を聞いたように想えた私の視界に広がる雪がしんしんと降る世界に雪と混じって空間をひらひらと舞うのは純白の羽根。
「ああ、主よ」―――それは主が高遠弓弦に与えたもうた奇跡の力。能力の更に隠された所にある能力。弓弦の背には純白の翼。その翼が出現した瞬間に彼女の手には聖者の証である【聖痕】が刻まれる。それは白き十字。彼女が心に背負う十字架が具現化したもの。神は弓弦と共にある証拠だ。―――
私は雪と共に舞う純白の羽根の向こうに氷狼と雪の精を見据えながら、神に祈りを捧げた。
「主よ、御身の御心に感謝いたします。灰は灰に。塵は塵に。エィメン」
そして私は魂が知るその能力【白き十字架】を発動させた。
その浄化の光の前に氷狼とそして雪の精は灰となって消える。
私はその雪の精ためにも祈りを捧げる。
「罪は永遠に。されど我は死者のために祈らん」
そして十字を切った私は瞳を向けた。神の試練を与えられた恋する二人に。
******
一目惚れだった、と言ったら君は笑うだろうか、小雪。
あの初めて出逢った日に俺は転んだだろう?
あの時はね、恥ずかしいんだけど、小さな雪うさぎを作っている君に目を奪われて…それで、さ。
ちらちらと舞う粉雪の中でいつも軽やかにステップを踏んでいた君を俺はいつも抱きしめたいと想っていた。
小雪と一緒ならいつもずっと外だった雪の中のデートも苦じゃなかった。
やりたい事、見せたい物、伝えたい言葉はたくさんある。
春、夏、秋…色んな季節や時を一緒に過ごしたいし、
俺の田舎の風景だって見せたい…
そして伝えたいんだ……この言葉を………
「小雪、俺は君が何だろうがかまわない。雪人形? それがなに? そんなのは関係無いよ、小雪」
俺は氷の棺の中に閉じ込められているかのような小雪に抱きついた。どんどん体温を奪われていくし、剥き出しの肌が低温火傷をしていくけど、それだって構わない。そう、小雪はずっとひとりで苦しんできたんだから。
「小雪、もう君は独りぼっちじゃないよ。俺が側にいるから。だからもう泣かないで」
―― その花はスノードロップと言うのですよ。花言葉は【希望】。冷たい雪に優しくした花。故に雪の世界でも咲ける花。世界で一番強い想いは優しさなのだと想います。だからどうか希望を捨てないで。そう、世界の扉は開くから ――
俺は氷の棺の中の小雪に厚い氷越しの口づけをした。
【ラスト】
ひらひらと夜の空間に美しい薄桃色の花びらを舞わせる桜の樹の下で抱き合いながら涙を流す小雪さんと秋人さん。その涙の理由は桜の美しさが教えてくれている。そう、桜は人の心の鏡。人の想いを栄養に咲く花。こんなにも美しい花を咲かせる桜の樹。ならばその花を咲かせた想いはその美しさに見合うほどに幸せなものなのだろう。
そう、私はイマジネーションした。二人が幸せになれる物語を。
――― もしも御堂秋人が主より与えられた試練に見事に打ち勝ち、小雪を愛し続ける覚悟と想いを示す事ができたのなら、その時にはその想いが起こす奇跡によって小雪は人となれる。―――
「想いだけではなく、言葉だけではなく、ふたつ揃えて、あなた方二人が幸せになれますように。主よ、お互いを想いあう二人にあなたの祝福を」
健やかなる時も
病める時も
喜びの時も
悲しみの時も
富める時も
貧しき時も
これを愛し
これを敬い
これを慰め
これを助け
死が二人を別つまで
共に生きることを誓いますか?
******
そして扉は閉まり、私はそこにひとりいる。夜の桜の園に。
だけど私はもうその夜の桜の園を怖いとは想わなかったし、そしてそこにあるのは私がよく見知った桜の園だった。
さぁーっと夜風がその桜の園を渡る。
ばっと舞った髪を私は押さえながら、私をまるで抱きしめてくれるように包み込んでくれる淡い薄紅の桜の花びらを見つめた。こうして無限とも想えるような桜の花びらに包み込まれていると自分が物語の登場人物になったかのようだ。
そんな夜の桜の園にいるから余計にわからなくなる。これまでの事は現実? それとも夢?
だけど私の手の中には小さなガラスの瓶。その中には【雪娘の涙】が入っていた。白亜さん自身もよく理解できていなようだったけど、しかしそれを手渡すのも彼女の役目の一つであったらしい。果たしてそれに一体何の意味があるのだろうか?
ざぁーーーー。
そして先ほどよりも強い一陣の風が吹く。
その風に舞う無限とも想える桜の花びらが夢幻の光景を作り出し、そしてその夢幻の夜の桜の園という光景の中にその人は立っていた。
「白兄さま」
そう、そこに立つのは白兄さま。
どうやら私の発した声は夜の空間にすべて吸い込まれてしまうことなく白兄さまの耳に届いたようだ。
「白兄さま?」
その人はやさしい笑みは本当にそっくりに小首を傾げた。人違い?
「あ、あの・・・」
私は伏し目がちにして笑う。戸惑う時の癖。
だけどその人は顔を横に振った。
「あなたが白兄さまと僕を呼ぶのなら、それは僕の事でしょう。世界は世界を知る者にはひとつではない。この世界にいる僕があなたが呼ぶ白兄さまなのでしょう」
―――まあやさんも確か同じような事を言っていた。
そしてその人は私に手を差し出した。その手の平の上に乗っているものは・・・
「それは・・・」
「これは虚構の世界に咲く【硝子の華】。弓弦さん。あなたがこの【硝子の華のつぼみ】を咲かせる事ができたのなら、そうしたらこの【硝子の華】の香りがあの物語に縛られた異世界の東京の街に住む人々を夢から覚まさせるのです」
私が手の平の上に置かれた【硝子の華のつぼみ】から視線をあげるとしかしもうそこにはその人はいなかった。
「・・・」
私は疑問符の海に溺れている。
そして私は自分でもよくわからないのだが、白亜さんからもらった【雪娘の涙】を【硝子の華のつぼみ】に無意識にかけていた。するとその【硝子の華のつぼみ】はほんの一瞬だけ頑なに閉じたつぼみを震わせた。
私はただしばらくの間、その【硝子の華のつぼみ】を見つめていた。明後日の晩にある老齢の桜の樹の下でやる夜桜見物の時にこの【硝子の華のつぼみ】の事を白兄さまに聞いてみようと想いながら。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0332 / 高遠・弓弦 / 女性 / 17歳 / 高校生
NPC / 綾瀬・まあや
NPC / 白
NPC / 白亜
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、高遠弓弦さま。はじめまして。
このたび担当させていただいたライターの草摩一護です。
ご依頼ありがとうございます。
本当に書かせていただけて嬉しかったです。
トリニティ・ブラッドファンの僕にとってはものすごく嬉しいキャラさまですから。^^
書いていて実に楽しかったです。ただ少々、僕のイメージを先行させすぎてしまった感じもしてまして、
今回のノベルに出てくる弓弦さんもPL様の中にいる弓弦さんのイメージにあっていれば良いのですが。^^;
ちなみに草摩には中高一貫教育の私立の女子高に行っていた人が知り合いにいまして、
その学校はやっぱり弓弦さんの通う女子高と一緒でカトリック系のお嬢様学校(地元ではここの学園祭で行われるバザーはおばさま方の楽しみのひとつなのですよ。w)なのですが、
彼女の話を聞くまでは草摩はそういう学校に受験して合格するにはテレビのお受験物ドラマのようにキリスト教の洗礼を受けなければダメなんだと想っていたのですが、
意外にも現実ではそんな事は全然無いそうで、クリスチャンなのはごく一部なのだそうですね。
これはものすごくカルチャーショックでした。^^;
それこそ弓弦さんのようにカトリック系の学校に通っているのだから、皆クリスチャンなのかと想っていましたから。
それでもクリスマス・イヴとかそういうキリスト教関係のイベントには出なければならなかったそうですが。
設定能力も弓弦さんに相応しい能力で、
それらとそして弓弦さんらしい物語のラストの綺麗さと優しさとをどう魅せればいいのかを考えるのが、すごく楽しくって、そしてやり甲斐がありました。^^
少しでも今回の小説をお気に召していただけてましたら幸いでございます。^^
また白さんと兄妹さまという事で、この世界での白さんとの不思議なやり取りも楽しかったですね。
僕はこういう描写は大好きなので。
それでは今日はこの辺で失礼させていただきますね。
本当にご依頼ありがとうございました。またよろしければ草摩に書かせてくださいね。
失礼します。
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