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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


まったりしましょうよ。


 笑也と時間を示し合わせて露天風呂を出た巳影だったが、どうも彼女が先に出てきてしまったらしい。時間きっかりに出てきたにも関わらず、彼はまだ出てこない……彼女は休憩所の窓際にある長椅子で出てくるのを待つことにした。しばらくすると笑也が男湯から出てくる……しかし、彼は壁に手をついてふらふらになりながら歩いているではないか。この光景を見て巳影は慌てて立ち上がる。

 「笑也さん、大変……湯あたりかしら。大丈夫ですか、ほら肩をこちらに回してゆっくりと歩いてくださいね。」

 巳影は肩を貸し、彼を自分が座っていた長椅子までなんとか歩かせて隣に座らせた。彼女は横から手でささやかな風を顔に送るが、のぼせたようになっている笑也の顔は真っ赤になったまま。椅子に座っていても息の荒い状態が続いた。巳影は彼の頭を膝の上に乗せ、愛用の扇子で優しく風を送りながら彼の回復を待った。笑也はその好意に甘え「すみません」とだけ答え、ただ静かに息を整えていた。そんな彼の言葉を聞いて彼女は静かに笑う。

 「いいんですよ、気になさらなくっても。あちらはとても楽しそうでしたから、その雰囲気を存分に楽しんだせいじゃないかしら。笑也さん、しばらくはこのままでいてくれればいいですよ。」
 「す、すみません……何から何までご迷惑かけて……」

 目をつぶったまま話す笑也にやさしく微笑みかける巳影。

 「私もご迷惑だったかなって思ってるんですよ。もしかしたら笑也さんはお忍びでここに来られたのかもしれませんし、もしくはお友達がここに来ててそちらの方とご一緒する予定だったのかもしれませんし……ただ私が強引にご一緒したいって言ったから……」
 「大丈夫です、それは気にしないで下さい。ぜんぜん気にしないで下さい。俺はひとりでここに来たんです。それに間違いありませんから。そんな……巳影さんからそんなこと言わないで下さい。」

 急に頭を上げた笑也だったが、やはり頭がのぼせているのかすぐに元の体勢に戻ってしまう……そしてまた巳影に「すみません」と謝るのだった。彼女は何も言わずにただにこやかに同じ動作を繰り返していた。


 巳影の座っている場所から外に目をやると池に睡蓮があった。濁水の中にありながら泥に染まらず、清浄な花をつける睡蓮……それを見て彼女は何を思うのだろうか。手は笑也のために動き続けていたが、頭の中では印象的な句を読んでいた。

 −紫の睡蓮の花 ほのかなる 息して嘆く 水の上かな−


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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2842/橘・巳影     /女性/ 22歳/花屋 従業員


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■         ライター通信          ■
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高峰温泉でのまったりの旅、参加された皆さんいかがだったでしょうか?
胸ときめく出会いあり、楽しい食事あり、ゆったりとした湯治ありと……いろいろありましたね。

今回は同時にご参加された場合でも、それぞれのノベルをご用意しました。
同じ内容でも視点が違ったり描写が違ったりします。その辺もお楽しみに!
巳影さんはとにかく優しいイメージを保ちました。女性陣の色分けくっきりだったので(笑)。

今回は本当にご参加ありがとうございました! また依頼やシチュノベでお会いしましょう!