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<期間限定・東京怪談ダブルノベル>


まったりしましょうよ。
 

 巳影と時間を示し合わせて露天風呂を出る予定だった笑也だったが、どうも風呂の中で舞ったのがよくなかったらしい。まったりどころか長風呂でのぼせてしまったらしく、ここの館内着に着替えるにも一苦労だった。ぼやける目で時計を確認し、早く外に出ないと行けないと急ぐのだが、いかんせん足が言うことを聞いてくれない。結局、笑也はよろよろと男湯から這い出るような形で脱出した。するとその姿を近くの休憩所で見ていた巳影は慌てて立ち上がる。長椅子に風呂桶を置いて彼の元へと駆けてきた。

 「笑也さん、大変……湯あたりかしら。大丈夫ですか、ほら肩をこちらに回してゆっくりと歩いてくださいね。」

 巳影は肩を貸し、彼を自分が座っていた長椅子までなんとか歩かせて隣に座らせた。彼女は横から手でささやかな風を顔に送るが、のぼせたようになっている笑也の顔は真っ赤になったまま。椅子に座っていても息の荒い状態が続いた。巳影は彼の頭を膝の上に乗せ、愛用の扇子で優しく風を送りながら彼の回復を待った。笑也はその好意に甘え「すみません」とだけ答え、ただ静かに息を整えていた。そんな彼の言葉を聞いて彼女は静かに笑う。

 「いいんですよ、気になさらなくっても。あちらはとても楽しそうでしたから、その雰囲気を存分に楽しんだせいじゃないかしら。笑也さん、しばらくはこのままでいてくれればいいですよ。」
 「す、すみません……何から何までご迷惑かけて……」

 目をつぶったまま話す笑也にやさしく微笑みかける巳影。

 「私もご迷惑だったかなって思ってるんですよ。もしかしたら笑也さんはお忍びでここに来られたのかもしれませんし、もしくはお友達がここに来ててそちらの方とご一緒する予定だったのかもしれませんし……ただ私が強引にご一緒したいって言ったから……」
 「大丈夫です、それは気にしないで下さい。ぜんぜん気にしないで下さい。俺はひとりでここに来たんです。それに間違いありませんから。そんな……巳影さんからそんなこと言わないで下さい。」

 急に頭を上げた笑也だったが、やはり頭がのぼせているのかすぐに元の体勢に戻ってしまう……そしてまた巳影に「すみません」と謝るのだった。彼女は何も言わずにただにこやかに同じ動作を繰り返していた。
 笑也は舞っている時に身体中から何かが抜けていく感触があった。彼はもしかしたらそれこそがまったりの原点なのかもしれない……そう考えていた。だが、今の状況をまったりと言えるのかどうかだけはいつまでも答えが出せないままだった。


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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2268/氷川・笑也    /男性/ 17歳/高校生・能楽家


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■         ライター通信          ■
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高峰温泉でのまったりの旅、参加された皆さんいかがだったでしょうか?
胸ときめく出会いあり、楽しい食事あり、ゆったりとした湯治ありと……いろいろありましたね。

今回は同時にご参加された場合でも、それぞれのノベルをご用意しました。
同じ内容でも視点が違ったり描写が違ったりします。その辺もお楽しみに!
笑也さんのキャッチフレーズから大きく外れるどぎまぎした姿、いかがでしたか?(笑)

今回は本当にご参加ありがとうございました! また依頼やシチュノベでお会いしましょう!